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Solomon's Gate - ミハルの進路
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Solomon's Gate  作者さくしゃ: さかもり
だいいちしょう こうちゅう学校がっこう
13/226

ミハルの進路しんろ

 あまりすすまなかったものの、就職しゅうしょくしないことには自宅じたくへと強制きょうせい送還そうかんである。


 ミハルは午後ごごいちからの予定よてい一時いちじになってからかっていた。それでなくともレースにけたミハルはおもかったというのに、余計よけい小言こごとまでかされるかとおもうと足取あしどりも軽快けいかいにとはならなかった。


 をいうとミハルの実家じっか事業じぎょうをしていて、かなりの資産しさんである。正真正銘しょうしんしょうめいのお嬢様じょうさまであった彼女かのじょ就職しゅうしょくなどしなくとも両親りょうしんおこられることはない。だからこそミハルはいまいままで面談めんだんすらけていなかったのだ。両親りょうしんからやかましくわれる同級生どうきゅうせいたちとはあきらかに切迫せっぱくかんちがっている。かといってミハル自身じしん実家じっかでの安穏あんのんとした生活せいかつなどのぞんでいなかった。


 あわただしく進路しんろ指導しどうしつへと入室にゅうしつ担当たんとう教員きょういん以前いぜんわらずグレンである。


「さてミハルさん、どうでしたかね? たのしめましたか?」


 ニヤリとしているグレンは結果けっかっているようだ。

 嫌味いやみにもこえるいかけだった。素直すなおみとめるのはなんだかくやしい。けれど、レースをたのしめたのは事実じじつだし、出場しゅつじょうしてかったともおもえる。


「ええまあ。けちゃいましたけど……」


 学校がっこう連勝れんしょう記録きろくめてしまったことはとくにしていない。それはグレンもおなじだったようで、かれはそのけんかんしてなにわなかった。


「ミハルさん、宇宙うちゅうひろいのですよ。こうちゅうかんしてもそう。セントグラードこうちゅう学校がっこうだけで宇宙うちゅうまわっているわけではありませんからね?」


先生せんせいっていたんですよね? わたしけるかもしれないってこと……」


「もちろん、っていましたよ。記念きねん大会たいかいとのことでティーンエイジクラスにまで軍部ぐんぶがエントリーしていたことや、じゅういち連勝れんしょうはミハルさんでなければ無理むりだってことも。ただわたし連勝れんしょう記録きろくなんてどうでもいとかんがえていました。だからすで進路しんろめていたニコルくん指名しめいしていたのです。それにミハルさんがこうちゅうみちからはずれようとかんがえていたとはあらわおもいませんでしたし」


 やはりはかられていたらしい。上手うませられたのはミハルもかっていたけれど、それでもミハルはレースをたのしめた。ここなん年間ねんかん一番いちばんたのしかったのだ。


「で、心境しんきょう変化へんかはありましたか? 大道具おおどうぐがかり貴方あなたきるみちではないこと。かっていただけましたか?」


 アナウンサーですとつぶやく。しかし、ぐにミハルはかおった。


わたしだれよりもこうちゅうきです! だれよりも上手うまびたいです!」


 気付きづいた本心ほんしん堂々どうどうつたえる。それはちいさなころからわらない気持きもちだった。


「それはかった。でしたら、ちょうどはなしがミハルさんにていますよ……」


 ってグレンはテーブルに資料しりょううつす。なんまいいち表示ひょうじしたものだから、つくえ隙間すきまなく資料しりょうくされていた。


「これは……?」


 ミハルのまえ表示ひょうじされた資料しりょうデータには推薦すいせん入所にゅうしょ申込もうしこみしょとある。


「これはレース協会きょうかいからメールでおくられてきたものです。さきのレースをられた協会きょうかいほう貴方あなた特待とくたいせいにしようとかんがえたらしいですね」


 グランプリレース協会きょうかいはそのとおりレースを運営うんえいする組織そしきだ。公的こうてきギャンブルであるレースには免許めんきょがなければ出場しゅつじょうできない。また免許めんきょはレース協会きょうかい運営うんえいするレーサー養成ようせいしょそつしょしないことには発行はっこうされないのだ。一攫千金いっかくせんきんねらえるレーサーは人気にんきのある職種しょくしゅであり、養成ようせいしょ毎年まいとし大勢おおぜいのパイロットが受験じゅけんする。一般いっぱん受験じゅけんならばひゃくにん一人ひとりしか合格ごうかくできないせまもんなのだが、推薦すいせん入所にゅうしょ申込もうしこみしょがあれば受験じゅけんなど必要ひつようなかった。


「でもわたしけましたよ……?」

たしかにパンフレットにはいちのパイロットは特待とくたいせい審査しんさ対象たいしょうになるとありましたね。ですがいちだった彼女かのじょ軍人ぐんじんですし、貴方あなた一般いっぱん出場しゅつじょうしゃさい上位じょういですから」


 かれ()おんな()ね――――とミハルはうすをグレンにけた。


 どこまでっているのか疑問ぎもんおもう。真偽しんぎ微妙びみょう情報じょうほうもと自分じぶん誘導ゆうどうしたのだとおもえてならない。それこそ人生じんせい左右さゆうする大切たいせつ問題もんだいであったというのに……。


「これ……わたしには必要ひつようありません!」


「えっ? とてもいおはなしですよ? 性格せいかくてきにもミハルさんはレーサーきだとおもいますけれど。それともご両親りょうしん意向いこうというものでしょうかね? まあ貴方あなたこうちゅうみちあゆむというのなら、さきいくらでもありますけど……」


 ミハルはレースにたくない理由りゆうとして、そんなふうはなしていた。けれど、実際じっさいはそこまできびしいこともなく、両親りょうしんはミハルのやりたいようにさせてくれる。


わたしこうちゅうぐん訓練くんれんしょすすもうとめましたから!」


 ポカンとした表情ひょうじょうのグレン。まった予想よそうがいだったらしい。彼女かのじょならまず間違まちがいなくレーサー養成ようせいしょもんたたくとかんがえていたのに。


 こうちゅうぐん訓練くんれんしょはGUNSの下部かぶ組織そしきだ。専用せんよう訓練くんれん施設しせつ訓練くんれんけの部隊ぶたいである。ただれっきとした部隊ぶたいであることから、かれらの出撃しゅつげき可能かのうせい否定ひていされていない。基本きほんてきには半年はんとしあいだ戦闘せんとう訓練くんれんほどこされる部隊ぶたいであり、訓練くんれん満了まんりょうしたものれて実戦じっせん部隊ぶたいへと転属てんぞくする仕組しくみである。


「ミハルさん、本気ほんきですか? 卒業生そつぎょうせいにレーサーのほう何人なんにんもいらっしゃいますけど、みなさんいずれも素晴すばらしい生活せいかつおくられていますよ?」


「グレン先生せんせい経済けいざいてきなことならにしません。わたし実家じっか結構けっこう裕福ゆうふくなんで! それよりもけっぱなしはわたし性分しょうぶんじゃない。絶対ぜったいたなきゃ駄目だめなんです!」


 グレンはあたまかかえている。どうやらくすりきすぎたらしい。レースへの参加さんかはミハルにこうちゅうへの興味きょうみたせるためだけの処方箋しょほうせんであったはず。しかし、現実げんじつ彼女かのじょねむれる闘争とうそう本能ほんのう目覚めざめさせる結果けっかとなった。


わたしはアイリス・マックイーンにちたい!!」


 ミハルはかんじたままをグレンにげた。それは志望しぼう動機どうきならない。けた相手あいてよりも、レースを観戦かんせんしただけのパイロットを彼女かのじょはターゲットにえらんでいた。


「ミハルさん、ちょっとってください。貴方あなたはジュリアさんにではなく、アイリス・マックイーン少尉しょうい喧嘩けんかるつもりですか!?」


 完全かんぜんななじょうくミハルにグレンは戸惑とまどいをかくせない。GUNS最強さいきょうほまたかいエースパイロットにいどもうとするとはあらわかんがえていないことだ。


 ミハルならば木星もくせいほこるパイロットになれるとグレンはうたがわない。それこそレーサーを目指めざしてくれたのなら、歴史れきしきざむパイロットになれたはずだと。


当然とうぜんですよ! わたしはアイリス・マックイーンにフライトを馬鹿ばかにされたんです! 彼女かのじょわたしのフライトをみとめないかぎり、わたしおさまることはありません!」


 どうにも本気ほんきらしい。ミハルのけんつよさをっていたから、グレンはレースへの出場しゅつじょううながしただけ。けれど、まさか軍部ぐんぶ代表だいひょうするエースにまで対抗心たいこうしんやすとは想定そうていがいはなはだしい。


 ながいきをついてから、グレンはおもむろかたした。


をいうとアイリス・マックイーン少尉しょういこう卒業生そつぎょうせいなのですよ。いもうとのジュリアさんは他校たこう卒業そつぎょうされておりますけど……」


 どうやらアイリス・マックイーンはミハルの先輩せんぱいであったようだ。ミハルのレースはこびをくわしくていたのは後輩こうはいであることが理由りゆうなのかもしれない。


はちねんまえですかね……。彼女かのじょ貴方あなたおなじティーンエイジクラスに出場しゅつじょうし、圧倒的あっとうてき勝利しょうりおさめました。当然とうぜんのこと特待とくたいせいとしてレース協会きょうかいからさそいをけたのですが、貴方あなたおなじようにアイリスさんはそのはなしってしまったのです。レースに出場しゅつじょうするまえ特待とくたいせいからレーサーになると息巻いきまいていたにもかかわらず……」


 グレンのはなしには矛盾むじゅんおぼえる。ミハル自身じしんはレーサーになるつもりなどなかったから、レース協会きょうかいからの推薦すいせんじょう不要ふようだった。けれども、レーサーを目指めざしていた彼女かのじょにはそれが必要ひつようだったはず。


「どうしてですか……?」


 自然しぜんいをかえしていた。自身じしんおなどうえらんだわけ。のぞんでいた推薦すいせんじょうった理由りゆうについて。


貴方あなたおなじです。きずきあげた自信じしん崩壊ほうかいしたらしいですね。レースにこそちましたが、彼女かのじょ人生じんせいえるほどのフライトをてしまったようです……」


 われてミハルは理解りかいした。アイリスもまたなにかをたのだと。おなじような性格せいかくをした人間にんげんであれば、おなじような結論けつろんしたはず。おもえが将来しょうらいぞうよりも重要じゅうようなものをつけたにちがいない。


「グレン先生せんせい、それならやはりわたしはあのひとたなくちゃなりません。将来しょうらいのこととか関係かんけいない。わたし自信じしんってつづけるには彼女かのじょみとめられるしかありませんから!」


 毅然きぜんこたえるミハルにグレンは眉根まゆねせた。なにとか説得せっとくするじゅつかんがえている。アイリスの現状げんじょうかぎり、彼女かのじょ才能さいのうかしれているとはおもえなかったからだ。


貴方あなた心意気こころいき否定ひていするつもりはないのですけれど、かり貴方あなたがそれを達成たっせいしたとき、ふたたこうちゅうたいする熱意ねついうしなってしまうんじゃないかと危惧きぐしています。また貴方あなた才能さいのう軍部ぐんぶうずもれてしまうことも懸念けねんされます。一時いちじてき感情かんじょうによる目的もくてきなど、なが人生じんせいには不利益ふりえきであることのほうおおいのですからね……」


 グレンの指摘してき妥当だとうであり、ただしいともおもう。だが、ミハルはくびった。一時いちじてき感情かんじょうにはちがいなかったが、彼女かのじょこうちゅうパイロットとしてきるみちにそれが必要ひつようだとしんじてうたがわない。けてとおるようなルートはミハルに用意よういされていなかった。


先生せんせい、どうかおねがいします! いまわたし目的もくてき達成たっせいしたあとのことなんかかりません。だけどわたし軍部ぐんぶすすみたい! 一番いちばんにならなきゃ駄目だめなんです! けるのは絶対ぜったいいや! このさきわたし銀河ぎんがまわるのであれば、あのひとつしかありません!」


 グレンにとっては幼稚ようち理由りゆうでしかなかった。しかし、わかきパイロット特有とくゆうあつおもいもかれ理解りかいしている。長年ながねんわた教員きょういん生活せいかつにおいて、そういったぐなおもいをグレンはことあるごとにてきたのだ。


まった貴方あなたというひとは……。まあかりました。ってもかないでしょうし、その方向ほうこうすすめましょうか……。ただし、軍部ぐんぶ貴方あなた想像そうぞうしている以上いじょうきびしい場所ばしょですよ? こうちゅうぐんはいることはこのほしけい守護しゅごする一角いっかくになうこと。訓練くんれんだけでしてしまうもの大勢おおぜいいるのですから……」


 実際じっさい訓練くんれんしょすすんだものにん一人ひとりこころざしなかばで退役たいえきしている。現在げんざい軍部ぐんぶてきとなるものちゅういきらす宇宙うちゅう海賊かいぞくかぎられていたが、それでも訓練くんれん過酷かこくさはGUNS創設そうせつ当初とうしょからなにわっていない。


まかせてください! かならずや彼女かのじょちます! 絶対ぜったいたおしてせますから! わたし先生せんせい期待きたいこたえます!」


 とても進路しんろめたとはおもえない台詞せりふいまはなし理解りかいしたようにはえない笑顔えがお

 この、グレンのいき途切とぎれることはなかった……。


ほんさくはネット小説しょうせつ大賞たいしょう応募おうぼちゅうです!

ってもらえましたら、ブックマークと★評価ひょうかいただけますとうれしいです!

どうぞよろしくおねがいいたしますm(_ _)m

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