皇都レブナより遠く離れた宙域。そこには辺境惑星ガリアがあった。
リグルナム星院家は何とか領民の一割を連れ出せており、そこで再興を図っている。
「ベゼラ殿下、これが極秘資料の一部です……」
マルキスがベゼラに資料を手渡す。それは連軍のログを隈無く調べて手に入れたものである。
資料に目を通すベゼラだが、次の瞬間には声を失っていた。極秘資料とは間違いなく外部に漏れるはずがないものであると分かっていたというのに。
「これは……?」
「それこそが銀河間戦争の敵軍【太陽人】であります。また彼らは交戦を望んでいません。当初より脅すような態度はなく、寧ろ支援を申し出ていたらしいです」
資料には人類のデータがあった。和平を申し出た折に人類は太陽系に住む者と伝えたのだが、カザインはそれが人種であると判断したようだ。
ベゼラにはどう見ても同じ種族であるとしか思えなかった。連軍の発表では醜い野蛮な文明であり、相容れない星外種であると聞かされていたというのに。
「連軍はどうして嘘を公表した?」
「恐らくは食糧問題です。今も餓死する民が絶えません。敵となるものが同じような容姿をしていたのでは罪悪感が生まれると思いませんか?」
マルキスはベゼラの問いにそう答えた。敵となるものたちが同じような容姿をしていたのでは戦えないのではないかと。
「カザイン光皇はとんでもないことをしようとしている?」
「その通りです。侵略に対抗するための戦いとして、過剰となった民を切り捨てているのです。養いきれない分を兵として出撃させる。それはゼクスの臣民が死に絶えるまで続くことでしょう……」
資料にはハニエム皇連軍総統からデリナ参謀の会話まで含まれている。その全てが太陽人を敵とするための策略であり、臣民の敵意を光皇に向けさせないための方策であった。
「こんなのは駄目だ。一刻も早く戦争をやめさせないと……」
「へーゼン星院家と連絡が取れ次第、我々は行動を起こさねばなりません。カザイン皇の横暴を見逃してはならないのです」
ベゼラは思った。どれだけの支援を得られるのか分からないが、恐らく全員が餓死するような事態は避けられるはずと。カザイン光皇家さえ打倒できたのなら、再び光皇連はその足で歩んでいけるはずだと。
「マルキス、早急にへーゼン星院家と連絡を取れ。私は光皇家に探りを入れる。このような横暴は許されない。カザイン光皇は処罰されるべきだ」
「もっともでございます。我らは元よりそのつもりです。光皇を弾劾いたしましょう」
皇都レブナは厳戒態勢が敷かれている。人質も少なくない。けれど、ベゼラは自身の役割を見失わない。皇子として成すべきこと。民のために行動を起こさねばならないのだと。
たとえ家族が囚われの身であったとしても、自身は動き出さねばならない。無駄な戦争により失われる数と比較しては躊躇する理由にならないのだと……。
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