(Translated by https://www.hiragana.jp/)
Solomon's Gate - 再び見る景色
表示ひょうじ調整ちょうせい
じる
挿絵表示切替ボタン
配色はいしょく
行間ぎょうかん
文字もじサイズ
▼メニューバー
×じる

ブックマークに追加ついかしました

設定せってい
0/400
設定せってい保存ほぞんしました
エラーが発生はっせいしました
文字もじ以内いない
ブックマークを解除かいじょしました。

エラーが発生はっせいしました。

エラーの原因げんいんがわからない場合ばあいヘルプセンターをご確認かくにんください。

ブックマーク機能きのう使つかうにはログインしてください。
Solomon's Gate  作者さくしゃ: さかもり
だいいちしょう こうちゅう学校がっこう
8/226

ふたた景色けしき

 壮絶そうぜつなゴールまえのバトル。たがいにスロットルはベタみのままだ。スピードにったミハルの機体きたいはグングンとろく号機ごうきせまっていく。


 近年きんねんまれるデッドヒートにがるスタンドまえ疾風迅雷しっぷうじんらいいきおいで、先頭せんとうならんでゴールラインをっていった……。


物凄ものすごいレースとなりました! どちらが勝利しょうりしたのか肉眼にくがんでは確認かくにんできません! 最終さいしゅうコーナーから猛追もうついするじゅう号機ごうき! りをはかったのはろく号機ごうきです! 勝敗しょうはい映像えいぞう判定はんていとなります!』


 ほぼ同時どうじにゴールラインをった実況じっきょうアナウンサーにも、その勝敗しょうはいからなかったようだ。勝負しょうぶ映像えいぞう判定はんていにてけっするようである。


『ああっと、結果けっかがでました! いちちゃくろく号機ごうきです! 先頭せんとうである優位ゆういかしった模様もよう! そしてちゃくじゅう号機ごうき! 猛追もうついおよばずしくもとどきませんでした! しかしながら、さんちゃく以下いかおおきくはなすデッドヒート! 観衆かんしゅう皆様みなさま、この素晴すばらしいレースを展開てんかいしたわかきパイロットたちにしみない賛辞さんじをおねがいたします!』


 実況じっきょう放送ほうそうにスタンドは一段いちだんかえっている。いたところかられんばかりの拍手はくしゅおくられていた。

 つぎのレース準備じゅんびはじめられないほど観客かんきゃくたちはさきほどのレースに熱狂ねっきょうし、選手せんしゅたちがドックへとげたいま万雷ばんらい拍手はくしゅひびいている。


 そんななか、ミハルは機体きたいのハッチをひらき、りるようにしてくだしていた。


「ミハルちゃんしかったね! おどろいたよ!」

 担当たんとう整備せいびってきたが、ミハルはちいさく微笑ほほえんだだけでやりごす。彼女かのじょにはさき確認かくにんしたいことがあったのだ。


 のドックからよっひだり。そこがミハルの目的もくてきだった。しかし、すでにパイロットの姿すがたはなくフルエイジクラスの操縦そうじゅうしゃ準備じゅんびはじめている。


かく表彰ひょうしょうしきはフルエイジクラスのあとよね……?」


 どこへったのかとミハルはかんがえる。おそらく表彰ひょうしょうしきもパイロットスーツのはず。だから着替きがえではないはずだ。


わたしなら……」


 ミハルはした。おもいついたらそく行動こうどう。それは彼女かのじょ欠点けってんであり、ある意味いみ長所ちょうしょでもある。躊躇ためらわない性格せいかくはパイロットとして問題もんだいがあったものの、咄嗟とっさ判断はんだんりょくためされるレーサーにはいているといえた。


「あれ? ここにもいない……。てか、そもそもわたしだれさがしてたんだっけ……?」

 あたま混乱こんらんしてしまう。もの自動じどう販売はんばいがあるエリアでミハルはくしている。

 ここにるまではたしかにおんなさがしていた。だが、冷静れいせいかんがえれば自分じぶんけたのはろく号機ごうきである。ミハルはろく号機ごうきをマークしていなかったから、どんなパイロットが操縦そうじゅうしていたのかおぼえていなかったのだ。


だれさがしてるんだ?」


 そんなとき、ふと背後はいごからこえがする。

 ミハルがくと、そこには青色あおいろのパイロットスーツにつつんだおとこがいた。


 かがやくようなブロンドのかみ。すらりとしてたかい。としころはミハルとわらないだろう。


貴方あなた……だれ……?」

だれとは挨拶あいさつだな? おれはさっきのレースに参加さんかしてたパイロットだけど?」


 かれ記憶きおくはまるでなかった。けれど、さきほどのレースに参加さんかしていたのならミハルにとって好都合こうつごうだ。

 戸惑とまどうミハルにかまうことなく、かれはジュースを購入こうにゅうかわいたのどうるおしている。


「ねぇ、ろく号機ごうきのパイロットってだれなの?」

「……ん? どうしてろく号機ごうきのパイロットをさがしてる? そういうおまえじゅう号機ごうきのパイロットだよな?」


「ええ、わたしはセントグラードこうちゅう学校がっこうのミハル・エアハルト……」

 おとこはミハルの挨拶あいさつうなずいていたが、とく情報じょうほうもなかったのかポリポリとあたまいていた。


けたはらいせをするためにさがしてるのか?」

ちがうわよ! べつけたからってさがしているんじゃないわ!」


 ミハルの反応はんのうおとこみをこぼした。かれいちミハルへと近付ちかづいて、


おれがそうだけど……?」


 と予想よそうがいはなしくちにする。

 おどろきのあまりごえうしなうミハル。しかし、失礼しつれいいてペコリとあたまげた。


「ごめんなさい。わたしかおおぼえてなくて……」

「ああ、いいよ。なにかしきりにさん号機ごうきのやつをにらみつけてたな?」


てたの!? や、でもどんなかなっておもうじゃない? ぐんにいるエースのいもうととかさ!」

「あいつ有名人ゆうめいじんなのか? それはらなかったな……」


 すごずかしい。ほかにも競技きょうぎしゃがいたというのに一人ひとりしかていなかったとか。しかも優勝ゆうしょうしゃかおすららないだなんて本当ほんとうもうわけないとおもった。


すご有名ゆうめいらしいわ。でも、腕前うでまえたいしたことなかったみたい。貴方あなたほうがずっとはやかったもの……」


 さん号機ごうきかんしては正直しょうじき期待きたいはずれだった。いていたほどの実力じつりょくはなかったらしい。


「おまえはやかったよ。背後はいごからのプレッシャーは相当そうとうなものだった。もしもおれだいそとわくだったなら勝敗しょうはいちがっていたかもしれないな……」


べつにお世辞せじはいらないわ。わたし自分じぶん実力じつりょくがよくかったし……」

「まあ、そうへこむな。軍部ぐんぶだとおれ技術ぎじゅつたいしたことない。それにおれじゅうきゅうさいだし、おまえとは経験けいけんちがうから……」


 かれもまた軍人ぐんじんなのだという。けれど、たったいちねんだ。そのはなしなぐさめてくれただけだとミハルは理解りかいしている。


只今ただいまより、表彰ひょうしょうしきおこないます。入賞にゅうしょうしゃ中央ちゅうおうステージまでおしください』


 館内たてうち放送ほうそうによって、二人ふたり表彰ひょうしょうしき時間じかんらされた。

 前座ぜんざであるフルエイジクラスとティーンエイジクラスのみさき表彰ひょうしょうするらしい。


「おっ、やべ! ミハル、いそぐぞ!」


 二人ふたりとも受賞じゅしょうしゃである。こんなところで無駄話むだばなしをしている場合ばあいではない。ミハルはかれつづいて、ステージへとつながる通路つうろはしった。


 舞台ぶたいそでからるスタンドはまさにひとうみだ。流石さすがのミハルも緊張きんちょうしてしまう。キョロキョロとかなくしていると、進行しんこうやく男性だんせいがステージにつ。


只今ただいまより、アマチュアクラス部門ぶもん表彰ひょうしょうをさせていただきます! まずはティーンエイジクラスの表彰ひょうしょうです! さあ、入賞にゅうしょうしゃたちに盛大せいだい拍手はくしゅをおねがいたします!』


 だい歓声かんせい選手せんしゅたちをむかえた。

 みみいたいほどにとど歓声かんせい。ミハルはいきんでスタンドを見渡みわたしている。


「みんな、わたしたちのレースをてくれたんだ……」


 そうおもうと地鳴じなりのような歓声かんせい心地ここちよくかんじた。

 ちゃんと記憶きおくにある。あのデッドヒート。おもしただけでもしんいたかのようにかんじる。あつくたぎるなにかがミハルに芽生めばえていた。


『では、表彰ひょうしょうしきはじめましょう! だいさんさん号機ごうき搭乗とうじょうされていましたメンシスこうちゅう学校がっこう代表だいひょうマイ・ニシムラ選手せんしゅ!』


 壇上だんじょうがったのはなんさん号機ごうきおんなだった。彼女かのじょすこ出遅でおくれたものの、後半こうはんかえしてにゅうちゃくしていた模様もようだ。


「えっ? このってかくかジュリア……?」


 ミハルはずっと間違まちがえていたらしい。彼女かのじょはマイ・ニシムラ。になっていたひとではなかった。


「じゃあ、ジュリアってだれよ!?」


 当然とうぜん疑問ぎもん解消かいしょうできなかった。かんがえるあいだもなくミハルは名前なまえばれてしまったのだ。


『さあ、ちゃくまいりましょう。またもおんなですね! まだ鮮烈せんれつおもされます! 歴史れきしのこ最終さいしゅうコーナーからのデッドヒート! しくもちゃくやぶれましたが、流石さすが名門めいもんセントグラード代表だいひょうです! まただいそとわくからのちゃくはお見事みごとでした! じゅう号機ごうき搭乗とうじょうされましたセントグラードこうちゅう学校がっこう代表だいひょう、ミハル・エアハルト選手せんしゅ!』


 一際ひときわおおきな歓声かんせいがミハルの思考しこうめた。

 360からとど絶叫ぜっきょうにも声援せいえん意味いみ身体しんたいふるえた。いちすすむたびにつよ脈動みゃくどうするむね視線しせんうごかすたびあせにじんだ。


 優勝ゆうしょうしたわけでもなかったのに。学校がっこう連勝れんしょう記録きろくめてしまったのに……。


 ミハルはだい歓声かんせいびながら表彰台ひょうしょうだいる。大会たいかいのスポンサーらしきひと握手あくしゅをして、メダルが彼女かのじょくびけられた。


 地味じみかがやぎんメダル。それは優勝ゆうしょうのがしたものいろだ。


ぎんメダル……」


 かつてミハルはおなしょくのメダルをにしていた。おさな彼女かのじょぎんメダルに歓喜かんきしたあと、くやなみだながしている。


じょうちゃん、ちゃくけだぞ?――――』


 いまわすれない。あの一言ひとことがどれだけくやしくてかなしかったのかを。ちゃく価値かちなどないとおさな彼女かのじょった。もう絶対ぜったいけるもんかとミハルはしんめたはず。なのに、あれからじゅうねんぎ、ふたた彼女かのじょむねにはおなしょくのメダルがかがやいている。


「これはあのわたしせられないな……」


 ミハルはしんうちおもう。じゅうねんにまたもおなじメダルをもらうだなんてはなしをすれば、幼少ようしょう自分じぶん激怒げきどしたはずと。自身じしん不甲斐ふがいなさが我慢がまんならなかっただろうと。


「ごめんね……」


 ちいさくつぶやく。しかし、ミハルはみをかべた。くやしくないとすればうそだ。けれど、けたことにより、彼女かのじょはようやくおもせたのだ。


 あの感情かんじょう自身じしんついやしてきたすべて。人生じんせいとおしてこうちゅうともにあった。この場所ばしょまで自身じしんつづけてたことを彼女かのじょおもしていた。


「もうけないから……」


 勝者しょうしゃにしかえない景色けしきがある。ミハルはちゃくになることでそれに気付きづいた。一段いちだんひく表彰台ひょうしょうだいながめはいつもてきたものと明確めいかくことなる。やはり一番いちばんたかいところ。表彰台ひょうしょうだいなかでなければ納得なっとくできない。ミハルはこの景色けしきわすれずにいようとおもう。いつでもあのくやしさがおもせるようにと。


つづきまして優勝ゆうしょうしゃ表彰ひょうしょうです! こちらもろくわくという不利ふりをものともしない圧巻あっかんのフライトでした! 壮絶そうぜつなゴールまえあらそいをせいしましたのは……』


 まだミハルはかんがんでいた。優勝ゆうしょうしゃ表彰ひょうしょうがあるというのに、彼女かのじょうつむいたまま。どれだけなまけていたのかをやみつづけている。

 ところが……。


『GUNSセントラル基地きち所属しょぞくジュリア・マックイーン一等いっとうこうちゅうです!』


 つづけられた選手せんしゅめいにミハルは唖然あぜんとしてとなりかえった。


 一段いちだんたかくなった表彰台ひょうしょうだいなか。そこにはさきほどったろく号機ごうきかれがいる。ミハルがずっとにしていたおんな姿すがたはどこにもない……。


ほんさくはネット小説しょうせつ大賞たいしょう応募おうぼちゅうです!

ってもらえましたら、ブックマークと評価ひょうかいただけますとうれしいです!

どうぞよろしくおねがいいたしますm(_ _)m

ブックマークに追加ついか
ブックマーク機能きのう使つかうにはログインしてください。
いいねをするにはログインしてください。
ポイントをれて作者さくしゃ応援おうえんしましょう!
評価ひょうかをするにはログインしてください。
当方とうほうランキングサイトに参加さんかしております。
↓(灬ºωおめがº灬)ポチッとな↓
小説しょうせつになろう 勝手かってにランキング
感想かんそう場合ばあいログインしてください。
+注意ちゅうい+

とく記載きさいなき場合ばあい掲載けいさいされている作品さくひんはすべてフィクションであり実在じつざい人物じんぶつ団体だんたいとうとは一切いっさい関係かんけいありません。
とく記載きさいなき場合ばあい掲載けいさいされている作品さくひん著作ちょさくけん作者さくしゃにあります(一部いちぶ作品さくひんのぞく)。
作者さくしゃ以外いがいほうによる作品さくひん引用いんようえる無断むだん転載てんさい禁止きんししており、おこなった場合ばあい著作ちょさくけんほう違反いはんとなります。

この作品さくひんはリンクフリーです。ご自由じゆうにリンク(紹介しょうかい)してください。
この作品さくひんはスマートフォン対応たいおうです。スマートフォンかパソコンかを自動じどう判別はんべつし、適切てきせつなページを表示ひょうじします。
作品さくひん読了どくりょう時間じかんまいぶん500文字もじむと想定そうていした場合ばあい時間じかんです。目安めやすにしてください。

↑ページトップへ