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Solomon's Gate - ハンター・スリー
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Solomon's Gate  作者さくしゃ: さかもり
だいよんしょう ははなるほし 
91/226

ハンター・スリー

 オリンポス基地きちへの異動いどう近付ちかづいていた。ミハルはすこしばかりかない日々ひびごしている。けれど、今日きょう今日きょうとて出撃しゅつげきがあった。このようなせわしない毎日まいにちもあとすこしだとかんがえると感傷かんしょうてきおもえている。


「ミハルちゃん、おつかれさま。今日きょうもキレのあるフライトだったね?」

「ありがとうございます。マンセル上級じょうきゅう曹長そうちょうもおつかれさまでした!」


 一緒いっしょ出撃しゅつげきしたマンセルにこえをかけられ、笑顔えがおでミハルはかえしている。

 マンセルの腕前うでまえ十分じゅうぶんだった。流石さすが中途半端ちゅうとはんぱなパイロットはおくってこなかったらしい。この様子ようすであればミハルもうれえることなく異動いどうできるというものだ。


 フレイトデータのチェックをしてからミハルはドックをあとにしていく。


「ミハルさん!」


 しかし、められてしまう。またミハルはこえおもについてだれであるのかかっていた。


「フィオナ……」


 会話かいわするのはひさしぶりだ。きょうれん担当たんとうでもないミハルが口出くちだしするのもちがっていたし、教練きょうれん担当たんとうおこられつづける彼女かのじょめるわけにはならない。


すこしおはなししたくて……」


 意外いがいはなしであったが、気持きもちは理解りかいできた。ミハル自身じしんもアイリスにはいたいことがあったのだ。


なに? べつかまわないけど……」


 おそらく気乗きのりしないはなしつづくだろう。アイリスを真似まねただけであるミハルは彼女かのじょただしてきたときの返答へんとうっていない。そのいにはいいよどむだけである。


 フィオナが近付ちかづいてきた。視線しせんはずしながらあゆ彼女かのじょには自然しぜんいきれてしまう。


「ミハルさん、あたし……」


 重々おもおもしい口調くちょうでフィオナがはなはじめた。ミハルは覚悟かくごをしてかねばならない。


たたかいたい――――」


 ところが、予想よそうちがっていた。フィオナはミハルへの不満ふまんをぶつけることなく、自身じしん希望きぼうげただけである。


 小首こくびかしげるミハル。単独たんどくでの訓練くんれんいられているフィオナの心情しんじょうはよくかったけれど、たたかいたいとの言葉ことば理解りかいできない。準備じゅんびととのえばグレックの許可きょかりるはず。いまだに訓練くんれんめいじられているフィオナがそのいきたっしているとはおもえなかった。


「フィオナはまだグレック隊長たいちょう許可きょかがないでしょう?」


 口調くちょうやわらげてさとすようにう。無下むげ否定ひていするような言葉ことばくちかなかった。


「でも、あたし……」


 小隊しょうたいのお荷物にもつとなっている現状げんじょうをフィオナは理解りかいしているようだ。つら役回やくまわりであったけれど、彼女かのじょをここにせたのはミハル自身じしんである。フィオナのはなしには真摯しんしわねばならない。


ちゅういき上下じょうげ左右さゆうからないだけじゃない。地上ちじょうくらべれば、視界しかいなどないにひとしい。見渡みわたかぎりの暗闇くらやみなかで、貴方あなた奥行おくゆきまで必要ひつようがある……」


 こうも苦労くろうするとはおもわなかった。学生がくせいというくくりではあるが、レースでてきなしだったフィオナがてきのいないちゅういき苦戦くせんするなんてと。


「あたしだっててます。だけどなにえません……」


 強気つよき彼女かのじょはなりをひそめていた。それは訓練くんれんかさねるごとに重症じゅうしょうしているかのようである。以前いぜん彼女かのじょであればこうも素直すなおこたえなかっただろう。


わたしとフィオナでえるものにちがいはない。だとしたら感覚かんかくてきなもの。それが貴方あなたけていることじゃないかな。以上いじょうのこと。AIによってらされる事象じしょうをもっとかんじてしい……」


 実際じっさい地上ちじょうへとりたミハルは情報じょうほうおおさにおどろいていた。建物たてものものだけでなく、地上ちじょうにはあきうみふうによってらめく木々きぎ太陽光たいようこうけてかがや水面すいめんまであった。視覚しかくうったえるものがおおすぎたのだ。だからこそフィオナは感覚かんかくてき情報じょうほう処理しょりできないのではないかとおもう。


感覚かんかくてきなこと……?」


「セッティングが完了かんりょうしたいまであれば、AIは貴方あなた情報じょうほうあたえているはず。しかし、それは意識いしきしないことには確認かくにんできない。きっとフィオナはAIのこえ無視むししている……」


 地上ちじょう情報じょうほう思考しこうする必要ひつようがないものばかりだ。よって彼女かのじょ無意識むいしき情報じょうほうさえぎっているのだとおもう。りたいことだけをようとしていたはず。したがって、逐次ちくじつたえられるAIの情報じょうほう彼女かのじょ意識いしきけられずにいるのだろうと。


「リンクが煮詰につまってくれば、AIはもとめる情報じょうほう優先ゆうせんしてくれるわ。だから貴方あなた必要ひつよう情報じょうほうはや理解りかいすること。ろうとしなければからないの。ひとによってそれはことなってくるけれど、フィオナがもとつづけるかぎり、AIはかなら情報じょうほうをもたらせてくれる……」


 AIのディープラーニングはかずかさねなければならない。まだセッティングをえたばかりのフィオナには適切てきせつじゃない情報じょうほうおくられてしまうだろう。けれど、ミハルはそこからはじめるべきであるとく。


「ミハルさんはなにていますか? なにもないちゅういきなにもとめているのですか?」


 しかし、いがかえされてしまう。だが、ミハルはそれをふかかんがえたことがない。ただちゅういき情報じょうほうりたいとねがっただけ。彼女かのじょちゅういきこり未来みらいたかっただけだ。


わたしすべてをろうとおもった……」


 こんなばなしをしていのからない。年生ねんせいだったジュリアでさえ理解りかいできなかった内容ないようである。地球人ちきゅうじんであり、ルーキーでもあるフィオナにはむずかしすぎるはなしだった。


わたしちゅういきすべてをりたくなった。わたしんでいる裏側うらがわ視界しかいてであっても、確実かくじつとききざんでいるの。わたしにしていなくても、それらは勝手かってすすんでいく。わたしはそれが我慢がまんならなかった……」


 おもうがままにはなしすすめる。たとえ理解りかいできなかったとしても、本心ほんしんかたるだけだ。ミハルは自身じしん経験けいけんしたすべてをかたっていく。


ちゅういき未来みらいめたかった。わたしちゅういき中心ちゅうしんであるかのように。すべてをってしまえば、わたしおもうままにうごくとしんじていたのよ……」


 あるときから世界せかいひろがった。広大こうだい宇宙うちゅう中心ちゅうしん自分じぶんがいるようながしたのだ。それをった瞬間しゅんかんに、ミハルは未来みらいえたかのような感覚かんかくた。


「これはわたし感覚かんかくだからからないかもしれない。以前いぜんにこのはなしいたひとくびるだけだったわ。だから真似まねをするのはおすすめしない。でも自分じぶんったフライトがきっとあるはず……」


 そんなふうはなしる。ミハルはこれでいいと確信かくしんしていた。パイロットはそれぞれに長所ちょうしょ短所たんしょがあり、一律いちりつではないことをっていたから。


 ちいさくみをかべてフィオナをる。だが、そのとき……。


『マンセル上級じょうきゅう曹長そうちょう、ミハルさんとう曹士、緊急きんきゅう出動しゅつどうです! エスバニア区画くかくおき2000kmきろめーとる地点ちてんだい規模きぼ宇宙うちゅう海賊かいぞく。エスバニア基地きちより応援おうえん要請ようせいです!』


 緊急きんきゅう出動しゅつどうめいじられてしまう。場所ばしょ輸送ゆそうせん頻繁ひんぱんおそわれるちゅういきのよう。だい規模きぼとのことで救援きゅうえん要請ようせいはいっている。


 救援きゅうえん要請ようせい担当たんとうはマンセルとミハル。出撃しゅつげきから帰還きかんしたばかりの二人ふたりだが、ぐさまちゅういきへともどらねばならない。


「フィオナ、わたし出撃しゅつげきがあるからこれで。頑張がんばりなさいよ……」


 ミハルにとっては好都合こうつごうでもある。会話かいわはずまないフィオナとはなしつづけるより、出撃しゅつげきしたほう気分きぶんてきらくだ。パイロットは体得たいとくするしかないのだし、ミハルは教練きょうれんでもなかったのだから。


「ミハルさん、あたしもつれてってください!」


 ところが、すんなりとはわらなかった。どうしてかフィオナは同行どうこうするという。救援きゅうえん要請ようせい担当たんとうでもないし、彼女かのじょ通常つうじょう任務にんむからはずされていたというのに。


 ところが、ミハルはまった。

 交戦こうせん遠巻とおまきにるだけならばかまわないようなもするが、フィオナはグレックにたたかいをきんじられている。命令めいれい違反いはんおかすのは流石さすがむずかしい。けれど、言葉ことば説明せつめいするよりも行動こうどうしめしたほうがずっと簡単かんたんだ。このあとも執拗しつよう質問しつもんされるならば、いっそのことミハルは彼女かのじょれてこうとおもう。


「グレック隊長たいちょうには秘密ひみつにしてね?」


 悪戯いたずらみをかべてった。どう誤魔化ごまかしてもバレてしまうのはかっていたけれど、大目おおめてもらえるようなもしている。


「もちろんです! かまわないのですか!?」

指定していした場所ばしょ交戦こうせんるだけ。約束やくそくできる?」


 再度さいど確認かくにんにはおおきな返事へんじがある。ならばミハルはれるだけだ。まんいち場合ばあいはない。ミハルは彼女かのじょちゅういきにまで注意ちゅういはらうとめていたから。


「さっさと着替きがえてきなさい。いていくわよ?」

「ありがとうございます!」


 セントラル基地きちはじめての笑顔えがおかもしれない。ミハルにかえされた台詞せりふ期待きたいとやるちたものであった。


 マンセルとフィオナがそろってドックへとはしってくる。当然とうぜんながらマンセルはおどろいていたけれど、ミハルは彼女かのじょ見学けんがくであることをマンセルにげて機体きたいへとんでいた。


『ミハルちゃん!? どうしてフィオナちゃんまでいるの!?』


 シエラにつかるのは仕方しかたがない。だが、グレックは夜勤やきんけでているはず。もしもフィオナにおしえることがあるとすれば、それをつたえるのはいましかない。この機会きかいのがしてつぎはなかった。


隊長たいちょうには極秘ごくひでおねがいします。絶対ぜったい彼女かのじょまもりますから見逃みのがしてください……」


 シエラが同意どういしなければこの計画けいかくはここまでだ。ミハルはたのむだけ。シエラにあたまつづけるしかない。


 ところが、モニターにうつるシエラはわらっている。なにやら悪魔あくまてきにもえる邪悪じゃあくみだ。


『ウフフ、なんだかかんないけど、了解りょうかいしました。絶対ぜったいまもってあげること。それを確約かくやくできるのなら許可きょかしましょう。グレック隊長たいちょう承認しょうにんキーきで!』


 唖然あぜんとするミハル。たしかにシエラはグレックの承認しょうにんキーをあずかっている。けれど、意味いみ不明ふめい隊員たいいん出撃しゅつげきみとめてしまうなんてありないことだ。


「もちろん、安全あんぜん場所ばしょてもらうつもりですけど、シエラさんはいのですか? たぶんすごおこられるとおもいますが……」


『へーきへーき! たっかいおさけさんほんってわたしぶんばした馬鹿ばか隊長たいちょうのことなんてにしない!』


 どうやらレースでった配当はいとうだい部分ぶぶんがグレックの酒代さかだいえたらしい。シエラはそれをうらんでいるようで、この対応たいおうはその仕返しかえしであるようだ。


『それに隊長たいちょう酒代さかだいはミハルちゃんがったからよ。なにをさせたいのかからないけど、ミハルちゃんならわるいようにはしない。だからわたし許可きょかすわ』


 シエラは満面まんめんみだ。すこしもミハルをうたがっていない様子ようすただすこともない彼女かのじょ背中せなかつづけている。


「ありがとうございます。わたし世話せわになったセントラル基地きちなにかをのこしたい。恩返おんがえしがしたいとかんがえています……」


 旅立たびだちのちかい。だからこそミハルは恩義おんぎむくいたかった。


「このたたかいはわたしのケジメです――――」


 みぎひだりからないなかれてくれたこと。全員ぜんいん自身じしん成長せいちょう見守みまもってくれた。いがあったからていくのではなく、ミハルはここになにかをのこしたいとおもう。


『そっか……。ミハルちゃん頑張がんばって! はやくしないとバーナード少尉しょういいちゃうわよ?』


 即座そくざにハッチがひらく。ミハルの出撃しゅつげきをシエラは許可きょかしている。トップシューターになったとはいえ、まだねんのミハルをしんじていた。


 ミハルはひといきった。この信頼しんらいかならかたちにしてかえそうと。セントラル基地きち上手うままわるように一肌脱ひとはだぬぐのだとめた。


「ハンター・スリー発進はっしんします!――――」

ほんさくはネット小説しょうせつ大賞たいしょう応募おうぼちゅうです!

ってもらえましたら、ブックマークと★評価ひょうかいただけますとうれしいです!

どうぞよろしくおねがいいたしますm(_ _)m

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