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Solomon's Gate - 結果として
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Solomon's Gate  作者さくしゃ: さかもり
だいしょう うごはじめる世界せかい
97/226

結果けっかとして

 一瞬いっしゅんブラックアウトした直後ちょくごまぶしいひかり視界しかいはいった。ゲートをえたのはあきらかであり、それが意味いみするところをアイリスは察知さっちしている。


『エイリアンがぁぁっ!』


 急激きゅうげき方向ほうこう転換てんかん視界しかいはいったかがやきはビームほうである。おそらくはゲートに居残いのこった艦隊かんたいあわててはなったものだろう。だが、カザインの攻撃こうげき完全かんぜんにタイミングをのがしている。想定そうていがい進攻しんこうであり、かれらは通過つうかラグの合間あいまはなてなかったらしい。


 アイリスは素早すばや機体きたいあやつり、間一髪かんいっぱつのところでビームほう回避かいひしている。


「アイリス中尉ちゅうい、とんでもないことをしでかしたのではないですか!?」

集中しゅうちゅうしろ! おそらくもゲートをけてくるぞ! 砲撃ほうげき準備じゅんびだ!』


 たしかにいま問答もんどうしている場合ばあいではない。ミハルたちはわれていたのだ。くわえて、ここはゲートの裏側うらがわである。だけでなく、艦隊かんたいからの砲撃ほうげき考慮こうりょしなければならない。


こうちゅうまかせて大丈夫だいじょうぶですか!?」

まかせろ。貴様きさま艦隊かんたいにぶちんでやれ!』


 おそらく居残いのこった艦隊かんたいも、そのうちにこうちゅう射出しゃしゅつするだろう。ならば先手せんてとばかりにじゅうイオンほうむべきである。


たれぇぇ!」


 距離きょりはあったけれど、ミハルがはなったじゅうイオンほう減衰げんすいすることなくちゅういきながいた。どうやらゲートの裏側うらがわには抵抗ていこう粒子りゅうし散布さんぷされていないようだ。


「もういちせき!」


 照射しょうしゃラグが回復かいふくするやぐさまはなつ。密集みっしゅうして停泊ていはくしていた艦船かんせんすうせきいちいている。


ちろォォッ!!』


 アイリスもまた攻撃こうげき仕掛しかけていた。ゲートからあらわれた彼女かのじょ次々つぎつぎ照準しょうじゅんおさめていく。


 アイリスたちをいかけてゲートうらへともどってきたこうちゅうよんじゅうあまり。予想よそうよりもおおれてしまったようだ。


『ちっ、大量たいりょうだな! えさすぎたのかもしれん!』


 ミハルが艦船かんせんくや、アイリスがこうちゅう撃墜げきついする。しかし、流石さすがこうちゅうおおすぎる。支援しえんがないアイリスは次第しだいしゅうしない、まれていく。


『ミハル、こうちゅうめ! もどってきたやつらを牽制けんせいしろ! やつらをどうにかしないことには、どこまでもげることになるぞ!』


かってます! ねらってんですからだまっててください!」


 ミハルとて危機きき察知さっちできた。たすかったのは停泊ていはくした艦隊かんたい積極せっきょくてき攻撃こうげきしてこないことだ。ぐさまなお艦船かんせんよんせきあるだけで、おくがわ停泊ていはくした艦船かんせんすこしもうごかなかった。


つらぬけぇぇっっ!」


 砲身ほうしん真後まうしろをいている。ふくであったことは幸運こううんだった。ミハルがはなじゅうイオンほう強烈きょうれつかがやきをちゅういきのこしながら有人ゆうじんぐんく。


 よっつの爆発ばくはつこんちゅういききざまれた。なおもミハルは照準しょうじゅんにらけている。照射しょうしゃラグが回復かいふくするやはなってやろうと。


「いける!!」


 ふたたちゅういき一筋ひとすじひかり。その軌跡きせきには、またもや無数むすう爆発ばくはつきた。抵抗ていこう粒子りゅうし散布さんぷがないにしても、想像そうぞうぜっする威力いりょくである。


『ミハル、反転はんてんするぞ!』

了解りょうかい! つづき、こうちゅうみます!」


 かずったところで機首きしゅえ、アイリスも参戦さんせん二人ふたりしてこうちゅうぐんとしていく。


 一見いっけんするとだい規模きぼこうちゅうせんきたかのようだ。しかし、この戦闘せんとうはたったいちによってもたらされたものである。カザインにとっては惨状さんじょうともいえる結果けっかちゅういきにはのこされていた。


『よし、艦隊かんたいむぞ!』

「ええ!? かえすんじゃないのですか!?」


 ほぼこうちゅう殲滅せんめつしたところで、アイリスがふたた旋回せんかいする。このままゲートをくぐればかったというのに、彼女かのじょ停泊ていはくちゅう艦船かんせんへとなおっていた。


手土産てみやげ必要ひつようだ! このままもどっては司令しれい怒鳴どなられてしまう!』

「もう手遅ておくれですって!!」


 こえってうったえたが、アイリスはみみたない。このところのリハビリでまった鬱憤うっぷんらすかのようであった。


殲滅せんめつするんだ! 艦船かんせんはあとじゅうろくせき! 全部ぜんぶいちげきしずめろ!』

「ああもう、どうしてこんなことに!」


 ゲートに居残いのこっていた艦隊かんたいじゅうせき。そのうちよんせきばくないしあしめた。のこすところはじゅうろくせきである。


とどけぇぇ!!」


 回避かいひ機動きどうによって距離きょりひろがったけれど、感覚かんかくてきにはけるとおもう。主導しゅどうけんのないミハルは現状げんじょうれ、てるかぎりにこうとかんがあらためている。


 巨大きょだい爆発ばくはつきた。じゅうイオンほう途轍とてつもない威力いりょく発揮はっきしている。距離きょりったことは結果けっかてきかったのかもしれない。機動きどうりょくまさり、てきちいさい彼女かのじょたちは艦船かんせん圧倒あっとうできた。


『ミハル、おまえだけズルいぞ! わたしだけがおこられるじゃないか!?』

らないですよ! こんなところでにたくないだけです!」


 なおはなつ。攻勢こうせいてんじたミハルたちは次々つぎつぎ敵艦てきかんしずめていた。

 近寄ちかよることすらゆるさぬじゅうイオンほう間違まちがいなくあつたおしている。もしも艦船かんせんにカザインの兵士へいしのこっていたとすれば、恐怖きょうふにおののいていることだろう。


わたし攻撃こうげきするぞ! 小言こごとなどは御免ごめんだ! このちゅういき平定へいていし、ぎゃくめられてやる!』


 もうどうにでもなれとミハルはおもった。なにってもくはずがない。だとしたらのこ最善さいぜんくすのみ。


 ただし、ミハルも手応てごたえをかんじていた。この無謀むぼうたたかいの結末けつまつ。どうみてもカザインは足立あしだっており、積極せっきょくてき反撃はんげきてんずるようにはおもえなかったのだ。


「アイリス中尉ちゅうい素直すなおおこられるべき! 反省はんせいすべきです!」

猛省もうせいしておるからたたかっておるのだ! ちろぉぉっ!!』


 正直しょうじき宇宙うちゅう海賊かいぞくほう手強てごわい。ほぼ無抵抗むていこうなままカザインの艦隊かんたい次々つぎつぎ姿すがたしていく。

 ふとミハルはおもった。残存ざんそん部隊ぶたい指揮しきかんはどこにいるのだろうかと。


「アイリス中尉ちゅうい、ひょっとして指揮しきかん太陽系たいようけいがわにいるのではありませんか!?」


 いままで人類じんるいがゲートをえたことなどなかった。したがってカザインは残存ざんそん艦隊かんたい戦力せんりょくのこしていない可能かのうせいがある。指揮しきもののこっていない。だからこそ無抵抗むていこうなのではないかと。


『その可能かのうせい十分じゅうぶんかんがえられる。とりあえず速攻そっこうわらせるぞ! やつらのもど場所ばしょ壊滅かいめつへとみ、我々われわれ救援きゅうえんく』


「いや、いますぐにかいましょうよ!?」


 アイリスがミハルの意見いけんれる可能かのうせい皆無かいむである。これまでもすこしですら考慮こうりょしてもらえなかったのだ。


駄目だめだ! ここは一掃いっそうしておかねばならない!』


 やはり一蹴いっしゅうされてしまう。けれど、それは自己じこ保身ほしんのためではなかった。またも叱責しっせきけるための行動こうどうかとおもいきや、意外いがいにもアイリスは状況じょうきょう把握はあくできている。


『ミハル、よくろ。おそらくかっておくがわ艦船かんせんはもぬけのからだ。戦闘せんとうはじまってからすこしもうごいていない。現状げんじょう稼働かどうしているのはよんせきのみ。それ以外いがい乗組のりくみいん大戦たいせんげているとおもわないか?』


 大戦たいせん直後ちょくごひゃくせきあまりがゲートにのこっていた。だが、その大半たいはん大戦たいせんははぼし方向ほうこうへともどっている。アイリスはそれにおおくの乗組のりくみいん搭乗とうじょうしていたのだと予想よそうしているらしい。


「いやでも、どうして!?」


『この愚妹ぐまいめ。よくかんがえろ? やつらはゲートに生産せいさん拠点きょてんがない。エネルギーの補給ほきゅうもままならんのだぞ? おそらくおくがわ艦隊かんたいわれらを牽制けんせいするためだけじゃなく、臨時りんじ補給ほきゅうげんとなっている。有人ゆうじんぐんがわざわざわれらをってもどってきたのはそれが理由りゆうちがいない。ゲートうら予備よび戦力せんりょくかっていたからだろう……』


「ならどうしてかれらは侵攻しんこうしたのですか!? 偵察ていさつにしてはだい規模きぼすぎます!」


 ミハルにはからなかった。だい規模きぼ侵攻しんこうといっても、GUNSの戦力せんりょくからすれば問題もんだいないレベルだ。てる見込みこみはすこしもなかったのだから、それは無駄むだでしかないと。


『それはアレがやつらにとって問題もんだいとなっているからだ……』


 アイリスはかたる。きゅう侵攻しんこう意図いと。その目的もくてきなにであるのかを……。


『オリンポス基地きちがな――――』


 カザインの目的もくてき気付きづかされたミハル。たしかに新造しんぞう基地きち存在そんざい発見はっけんしたとすれば、詳細しょうさい必要ひつようがある。以前いぜん大戦たいせんもイプシロン基地きちねらわれたのだ。つぎなるたたかいがいつになるのか不明ふめいだが、カザインが情報じょうほう収集しゅうしゅうはじめたとして不思議ふしぎではなかった。


したがってゲートうら陣取じんどやから殲滅せんめつする。すこしの情報じょうほうらしてはならない。ゲートの裏表うらおもて関係かんけいなくわれらはすべてを撃墜げきついするのみ……』


 ミハルはかんがえさせられていた。規律きりつまもるべきだといまおもうけれど、アイリスのはなし理解りかいできるものだ。大局たいきょくるならば、たしかにここでたたいておくべきだろうと。


了解りょうかいしました。はやわらせて救援きゅうえんかいましょう」

決定けっていだな! われらは苦楽くらくともにする姉妹しまい弟子でし! エイリアンを一掃いっそうするぞ!』


 ってアイリスは機体きたいななめにすべらせるようなするど機動きどうをし、艦隊かんたいはなつビームほう回避かいひさらには猛然もうぜん艦隊かんたいんでいく。その機動きどう完全かんぜん復活ふっかつ予感よかんさせるもの。並外なみはずれた才能さいのうのみがなりせるわざであった。


『ワハハ! これでミハルも同罪どうざいだぁぁっ!!』


 つづけられた台詞せりふまゆしかめる。いつまでってもアイリスというひと理解りかいできない。真面目まじめ戦局せんきょくかんがえているかとおもえば、冗談じょうだんにもはなしくちにする。


っときますけど、わたし反対はんたいでしたからね?」


 まあしかし、戦闘せんとうのことをかんがえられるのはすごいとかんじる。叱責しっせきける場面ばめんすべてが無事ぶじわったことを意味いみするのだから。


『さあけミハル! 巨大きょだい充電じゅうでん土手どてぱらけぇぇっ!』


 よんせき艦船かんせんでは彼女かのじょたちをめられなかった。それは巨大きょだいてきでしかなく、一発必中いっぱつひっちゅうとの言葉ことばどおり、またた彼女かのじょたちはちゅういき平定へいていしてしまう。


中尉ちゅうい、もう反応はんのうはありません。はやもどりましょう!」

『ああ、いそぐぞ! ベイルのやつはどうでもいいが、いとしいおとうと心配しんぱいだ!』


 アイリスは機首きしゅえソロモンズゲートにさい突入とつにゅうしていく。もうすで援軍えんぐんているはずだが、加勢かせいしようと全開ぜんかい機動きどうである。


 またもや視界しかいくらくなった。モニターがわる瞬間しゅんかんやみ。しかし、何事なにごともなかったかのようにぐさま視界しかい回復かいふくしている。


 太陽系たいようけいがわ派手はで爆発ばくはつこんいくつもえた。てき味方みかた判別はんべつができない数多すうた残骸ざんがいちゅうっている。


『そこを退しりぞけぇぇ!』


 早速さっそくとアイリスがはなつ。まだてきこうちゅうのこっており、彼女かのじょは僚機の援護えんごはじめていた。


 敵艦てきかんたいじゅうイオンほうこうちゅうせんだん艦船かんせんによりすべてがあしめた模様もようすべてのこうちゅう排除はいじょすれば、このたび交戦こうせん終結しゅうけつとなるはずだ。


『こちら管制かんせい、PT001応答おうとうせよ……』


 不意ふい通信つうしんとどいた。それはおそれていたことである。許可きょかなく交戦こうせん参加さんかしただけでなく、ゲートをえてしまったのだ。められる要素ようそがあるとすれば、無事ぶじ帰還きかんしたことくらいであろう。


『アイリス・マックイーンだ。交戦こうせんちゅうだぞ?』


 管制かんせいにアイリスが応答おうとうする。うしろめたいとかんがえていないのか彼女かのじょ強気つよきなままだ。


帰還きかんめいずる。これはたたかえ団長だんちょう指示しじである。かんすみやかに帰還きかんしてくれ』

『ふん、テレンス大佐たいさか……。かった。帰還きかんする……』


 意外いがいにもアイリスは素直すなお命令めいれいおうじている。

 テレンス大佐たいさ彼女かのじょ所属しょぞくするだいさんこうちゅうせんだんせん団長だんちょうであり、フロントばつ重鎮じゅうちんでもあった。戦局せんきょく収束しゅうそくかっていたし、アイリスもいま以上いじょう問題もんだいおおきくしたくなかったのかもしれない。


 オリンポス基地きちへとかうはずが、ミハルはどうしてかふたたびイプシロン基地きちへともどっていた。しかも捕虜ほりょ尋問じんもんするような部屋へやへと連行れんこうされている。


中尉ちゅういのせいですよ?」

らん! タイミングあらわれるエイリアンがわるい!」


 しばらくはにんきりであった。ギアも没収ぼっしゅうされており、正確せいかく時間じかんすらからない。ミハルは非常ひじょうながいとかんじたけれど、アイリスはれているのか鼻歌はなうたじりである。


 どれくらい経過けいかしただろう。牢屋ろうやにも重厚じゅうこうとびらひらく。あらわれたのは大柄おおがら男性だんせいおそらくははなしにあったテレンス大佐たいさであるはずだ。


「まずおまえたちにく。どうして交戦こうせん参加さんかした?」


 かいの簡易かんい椅子いす着席ちゃくせきするや、テレンスがいた。どうしてとわれてもミハルに理由りゆうはない。よって質問しつもんこたえたのはアイリスである。


「どうしてもなにてきあらわれたんだ。あのかずだぞ? われらが早々そうそう参戦さんせんしなければどうなっていたかは貴方あなたにもかるだろう?」


 アイリスは臆面おくめんもなく正当せいとうせい主張しゅちょうする。結果けっかとして最小限さいしょうげん被害ひがいんだのは事実じじつだが、命令めいれい違反いはんあきらかであったというのに。


 かんがえるような素振そぶりのテレンス。実際じっさいかれたすけられたともかんがえていた。しかし、団員だんいんまとめる立場たちばではアイリスの主張しゅちょうみとめるわけにはならない。


結果けっかではない。過程かていうているのだ。すくなくとも中尉ちゅうい管制かんせい指示しじあおぐべきであった。どのような結果けっかをもたらそうとも先走さきばしった行動こうどうゆるされない」


もとよりわたしばちけるつもりだ。しかし、ミハルは関係かんけいない。わたし一存いちぞんまわしただけだからな!」


 アイリスのはなし意表いひょうをつくものであった。ミハルはおもわずアイリスに視線しせんけている。てっきり共謀きょうぼうしたようにわれるものとかんがえていたけれど、彼女かのじょはミハルをかばっていた。


「それは通話つうわデータから確認かくにんみだ。よってミハルさんとう曹士はいち週間しゅうかん独房どくぼうきとなる」

「ちょっとて! ミハルは関係かんけいないと説明せつめいしただろう!?」


 せん団長だんちょうであるというのに、アイリスはこえらげている。本当ほんとう意外いがい光景こうけいであった。あのアイリスがここまで擁護ようごしてくれるなんてかんがえもしないことだ。


軍規ぐんき抵触ていしょくしたのだ。これは寛大かんだい処置しょちである。ちなみにアイリス中尉ちゅういいちヶ月かげつ謹慎きんしんくわえ、降格こうかくまった……」


 いきむミハル。すこしばかりいいかえしたくもなるけれど、彼女かのじょなん弁明べんめいくちにできない。ぐん決定けっていさからうなんてできなかった。


 したらすアイリスはけわしい表情ひょうじょうをしている。どうにもいち悶着もんちゃくきそうな雰囲気ふんいきだ。


「まあしかし、はなしもある」


 テレンスがつづける。つたえられたことはすべばつであったというのに、朗報ろうほうともべるはなしがまだあるのだと。


さきほど機体きたいデータの解析かいせきちゅう統轄とうかつ本部ほんぶ議会ぎかい軍規ぐんき変更へんこうとなった――――」


 どうやら議題ぎだいがっていた専守防衛せんしゅぼうえいという規定きてい改定かいてい議案ぎあんがようやく可決かけつしたらしい。それによりゲートをえて侵攻しんこうする準備じゅんびととのったようだ。


「もうすこはやければ不問ふもんすこともできたかもしれない。しかし、きみたちの行動こうどう履歴りれき明確めいかく施行しこうまえである。緊急きんきゅうであったため交戦こうせん参加さんかまではどうにかできただろうが、ゲートをえてしまった事実じじつはどうしようもない」


「いやしかし、例外れいがいがあっただろう!? かくか、やむをない場合ばあいのぞくとあったはずだ!」


 アイリスは反論はんろんする。軍規ぐんき変更へんこうされる以前いぜんからやむをない事態じたいにはゆるされるはずだと。さらには即時そくじ施行しこうとなったのなら、なに問題もんだいなかろうと。


 ところが、テレンスはくびった。軍部ぐんぶとしても損失そんしつでしかない二人ふたりのパイロットをばっしたわけ。それには判然はんぜんとした理由りゆうがあったようである。


「おまえたちは艦隊かんたい一掃いっそうしただろう? あれは帰還きかんするための適切てきせつ機動きどうではなかった」


 げられたのはかれとおもって行動こうどうした結果けっかである。オリンポス基地きち情報じょうほうまもるために帰還きかんするという選択せんたくて、ちゅういきからてきぐん排除はいじょしたのだ。


「それが問題もんだいか? 上層じょうそう馬鹿ばかあつまりじゃないか? われにんたたかったからこそ、オリンポスの情報じょうほうれなかったのだぞ?」


「もちろん、それは軍部ぐんぶ評価ひょうかしている。だが、規則きそくとはまもられるためにあるのだ。違反いはんしたものばっするためにある。だからこそ、おまえたちにんともばちけるのだよ」


「この非常時ひじょうじにどういうことだ! 大佐たいさはそれでかまわんのか!? ばちあたえるならわたしだけにしろ! 納得なっとくいくまでわたしはここをうごかんぞ!」


 正論せいろんべているのはテレンスである。けれど、かれ自身じしんもこの決定けっていには不服ふふくだった。彼女かのじょたちの行動こうどう英雄えいゆうてき価値かちがあると内心ないしんかんがえている。


け。一応いちおうたたかえだんとして上申じょうしんしている。圧倒的あっとうてきなデータをかえったのだ。PT001が情報じょうほうはこれまでで一番いちばん価値かちがあるものだ。新型しんがたのテストデータよりもはるかに有意義ゆういぎなもの。その価値かち評価ひょうかしてもらい軽減けいげんしてもらおうとしている。しばらく独房どくぼうしずかにしていろ。クェンティン司令しれいなにとかしてくれるだろう……」


 部隊ぶたいどころか派閥はばつうごいてくれるようだ。ともにトップシューターとなった実績じっせきがある。つみをなかったことにはできないようだが、なが独房どくぼうにいるようなことはけられるのかもしれない。


仕方しかたないな……。ミハル、しばらく我慢がまんしてくれ……」


 嘆息たんそくするアイリスはようやく語気ごきよわめた。ミハルのばっ軽減けいげんされるのなら、それでかまわないとったふうに。


「ただでさえわたし異動いどうさき目立めだ立場たちばだっていうのに……。反省はんせいしてくださいよ?」


 愚痴ぐちのようにかえしたミハルだが、をいうととがめるつもりはなかった。


 無茶むちゃであり独断どくだんすぎた行動こうどうならないけれど、結果けっかてきにアイリスの行動こうどう正義せいぎだとかんじる。きっと、このあと大勢おおぜいいのちすくうことになるだろうとおもえてならない。

 ゲートにいていたてきぐん一掃いっそうされたのだ。あらたな局面きょくめんへとかうけになるだろうと。


 二人ふたり独房どくぼうへと連行れんこうされている。素直すなおしたがったからか、手錠てじょうはなく係員かかりいん誘導ゆうどうされてあるいてく。ベッドしかない簡素かんそ部屋へやへと各々おのおのめられていた。


 ミハルはベッドへとこしをかけている。

 木星もくせいにいたこん朝方あさがたには予想よそうできない現状げんじょうだ。今頃いまごろあたらしい配属はいぞくさきいていたころだろうに、独房どくぼうけているなんて。


「まあわるかんはしたけどね……」


 現状げんじょうかんがえうる最悪さいあく想定そうていすらえていたけれど、アイリスが操縦そうじゅうって時点じてんでトラブルはけられないとかんがえてもいたのだ。ミハルは特別とくべつおもばちでもなかったから、ひさしぶりにゆっくりできる時間じかんられたとかんがなおすことにした。


休暇きゅうかおもえばらくでしょ。ごはんとどくはずだし……」


 ゴロリとベッドに寝転ねころがる。パイロットスーツのままであったけれど、ミハルはぐにねむってしまう。シャトルライナーで十分じゅうぶんねむったはずなのに、すで寝息ねいきてていた……。


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