たのしいおさけも、ぎるとこころ(のう)のやまいへとつながる危険きけんがある

すこしのあいだだけわすれさせてくれるアルコール。うまくっていけば人生じんせいゆたかにしてくれる一方いっぽうで、さけによってほろぼすひとがいるのも事実じじつだ。

最近さいきん、「うつびょう」という言葉ことば社会しゃかい浸透しんとうしてくるにつれ、うつとアルコール依存いぞん関係かんけい注目ちゅうもくされるようになってきている。アルコールとうつの関連かんれん、そしてアルコール依存いぞん治療ちりょう現状げんじょうについて、きり和会かずえグループの精神せいしん波多野はたの良二りょうじ先生せんせい解説かいせつしてもらった。

うつびょうとは

意欲いよく低下ていか」や「ゆううつな気分きぶん」といったいわゆる「うつ状態じょうたい」がしばらくつづくと、「うつびょううたがいたくなるかもしれない。しかし、波多野はたの先生せんせいは「2週間しゅうかん程度ていどわる一時いちじてき不調ふちょうであればとく問題もんだいはないでしょう」とはなす。

だが、「めてもなににつかない」「ねむれない」「きていたくない」といった深刻しんこくな「うつ状態じょうたい」が長期間ちょうきかんにわたってつづ場合ばあいは、うつびょう可能かのうせいがあるため、精神せいしん心療内科しんりょうないかといった医療いりょう機関きかん受診じゅしんすべきだという。

うつびょうとアルコールは「たまごとニワトリ」の関係かんけい

うつびょう患者かんじゃさんのなかにはアルコールをおおひとおおく、またアルコールを多量たりょうひとにはうつびょう患者かんじゃさんがおおい。では、うつびょうとアルコールにはどういった関連かんれんせいがあるのだろうか。波多野はたの先生せんせい解説かいせつする。

「うつびょうひとは、『はやねむりたい』『不安ふあんかんをなくしたい』などの理由りゆうから、治療ちりょうやくもとめるようにおさけんでしまうことがあります。しかしたくさんおさけむと、ねむりにれたとしてもねむりがあさくなりますし、一時いちじてき気晴きばらしにはなってもうつびょう悪化あっかします」。

アルコールはうつびょう誘発ゆうはつするだけではない。長期ちょうきにわたってつづけることによって、比較的ひかくてきわか年齢ねんれいのう萎縮いしゅくするリスクがたかくなるとの報告ほうこくもあるという。

「アルコールとうつびょうは、診療しんりょう現場げんばでは『ニワトリがさきたまごさきか』とおなじで、はっきりとしたことはかりづらいこともおおいです。しかし密接みっせつ関係かんけいがあり、アルコールを多量たりょう摂取せっしゅするとこううつやくがあまりかなくなるという問題もんだいもあります」と、波多野はたの先生せんせい警鐘けいしょうらす。

アルコール依存いぞん治療ちりょう現状げんじょう

まんいちアルコール依存いぞんになってしまったら、早期そうき社会しゃかい復帰ふっき目指めざすためにせんもん医療いりょう機関きかんなどで治療ちりょうける必要ひつようがある。実際じっさい現場げんばでは、どのような更生こうせいプログラムがおこなわれているのだろうか。

「まず、『生活せいかつ様式ようしきえてアルコールをけるようにする』『友人ゆうじんさそわれたときにうまくことわる』といった認知にんち行動こうどう療法りょうほうおこなわれます。また、自助じじょグループやだんしゅかいへの参加さんか、ご家族かぞくへの指導しどうなどもおこなわれます」。

認知にんち行動こうどう療法りょうほうとは、みずからの「思考しこうくせ」を改善かいぜんして、物事ものごと多角たかくてきかつ柔軟じゅうなんかんがえられるよう、認識にんしきえて行動こうどううつしていく治療ちりょうほうで、うつの対症療法たいしょうりょうほうとしても活用かつようされている。服用ふくようやくについてはどうだろうか。

やくにはシアナミドやアカンプロサートなどがあります。アルコールは体内たいない酵素こうそにより『アセトアルデヒド』、酢酸さくさんて『とうしつ』『中性ちゅうせい脂肪しぼう』などに変化へんかします。シアナミドを服用ふくようすると、アセトアルデヒドの段階だんかい代謝たいしゃめることにより、『二日酔ふつかよいで飲酒いんしゅはこりごり』という状態じょうたいになります。アカンプロサートは、興奮こうふん作用さようをもつ神経しんけい伝達でんたつ物質ぶっしつである『グルタミン酸ぐるたみんさん』をおさえることによって、アルコールをほっしないようになります」。

食前しょくぜんしゅ1はい飲酒いんしゅ健康けんこうい?

百薬ひゃくやくちょう」とも「ひゃくどくちょう」ともしょうされるアルコールに、わたしたちはどのようにったらよいのだろうか。

医療いりょう現場げんばでは、日本酒にほんしゅ換算かんさんしていちにち3ごう以上いじょうひとを『常習じょうしゅう飲酒いんしゅ』、5ごう以上いじょうひとを『だい酒家しゅか』といいます。いちにちに3ごうまでならきも障害しょうがいをきたさないという研究けんきゅう結果けっかがあり、『食前しょくぜんしゅ1はい程度ていど日々ひび飲酒いんしゅ健康けんこうい』という研究けんきゅうしゃもいます。いずれにせよ、飲酒いんしゅ社会しゃかいのモラルにはんすることのないよう、『適度てきどりょう』でたのしくむようにしましょう」。

写真しゃしん本文ほんぶん関係かんけいありません

記事きじ監修かんしゅう: 波多野はたの良二りょうじ(はたの りょうじ)

1965ねん京都きょうとまれ。千葉大学ちばだいがく医学部いがくぶどう大学院だいがくいん卒業そつぎょう医学いがく博士はかせ精神せいしん保健ほけん指定してい日本にっぽん精神せいしん神経しんけい学会がっかい専門医せんもんい日本内科学会にほんないかがっかい総合そうごう内科ないか専門医せんもんい東京とうきょう城東じょうとう地区ちく基盤きばんきり和会かずえグループで、日夜にちやおおくの患者かんじゃさんの診療しんりょうにあたっている。