史記しき/卷まき025

史記しき巻まき二に十じゅう五ご
律りつ書しょ第だい三さん
作者さくしゃ：司馬しば遷　西にし漢かん

王者おうじゃ制せい事ごと立法りっぽう，物もの度ど軌則，壹いち禀於六ろく律りつ〈【索さく隱かくれ】按：律りつ有ゆう十じゅう二に。陽ひ六ろく爲ため律りつ，黄き鐘がね、太ふとし蔟まぶし、姑しゅうと洗あらい、蕤賓、夷えびす則そく、無む射い；陰かげ六ろく爲ため呂りょ，大呂おおろ、夾鐘、中呂ちゅうろ、林はやし鐘かね、南みなみ呂りょ、應おう鐘しょう是也これや。名めい曰律者しゃ，釋しゃく名めい曰：「律りつ，述じゅつ也，所以ゆえん述じゅつ陽氣ようき也」。律りつ暦れき志こころざし云うん：「呂りょ，旅たび，陽ひ宣せん氣き也」。案あん：古こ律りつ用よう竹ちく，又また用もちい玉だま，漢かん末まつ以銅爲之ためゆき。呂りょ亦また稱たたえ間あいだ，故こ有ゆう六ろく律りつ、六ろく間あいだ之の説せつ。元もと間あいだ大呂おおろ，二に間あいだ夾鐘是也これや。漢かん京きょう房ぼう知ち五音ごいん六ろく律りつ之の數すう，十じゅう二に律りつ之の變へん至いたり六ろく十じゅう，猶なお八卦之變爲六十四卦也。故こ中呂ちゅうろ上生わぶ執と始はじめ，執と始はじめ下か生なま去さ滅ほろび，上下じょうげ相生あいおい，終おわり於南事ごと，而六ろく十じゅう律りつ畢。〉，六律爲萬事根本焉。〈【索さく隱かくれ】律りつ暦れき志こころざし云うん：「夫おっと推歴生せい律りつ，制せい器き規ぶんまわし圜矩方かた，權けん重じゅう衡平こうへい，準繩じゅんじょう嘉よしみ量りょう，探さがせ賾索隱かくれ，鉤かぎ深ふか致遠，莫不用よう焉」，是ぜ萬事ばんじ之の根本こんぽん也。〉

其於兵へい械尤所しょ重じゅう，〈【索さく隱かくれ】按：易えき稱しょう「師し出で以律」，是ぜ於兵械尤重也しげや。【正義まさよし】内成うちなり曰：器うつわ，外そと成なり曰：械，械謂弓ゆみ、矢や、殳、矛ほこ、戈ほこ、戟。劉りゅう伯はく莊そう云うん：「吹律審しん聲ごえ，聼樂知ち政せい，師し曠審歌か，知ち晉すすむ楚すわえ之の彊つよし弱じゃく，故こ云うん兵家へいか尤ゆう所しょ重じゅう。」〉故こ云うん「望もち敵てき知ち吉凶きっきょう，〈【索さく隱かくれ】凡敵陣じん之の上うえ，皆みな有ゆう氣色けしき，氣強きづよ則すなわち聲ごえ強きょう，聲こえ強きょう則そく其衆勁。律りつ者しゃ，所以ゆえん通氣つうき，故知こち吉凶きっきょう也。【正義まさよし】凡兩軍ぐん相しょう敵てき，上うえ皆みな有ゆう云うん氣き及日暈かさ。天てん官かん書しょ云うん：「暈かさ等とう，力ちから鈞ひとし；厚あつ長大ちょうだい，有ゆう勝かち；薄うす短小たんしょう。無む勝かち。」故こ望もち雲氣うんき知ち勝負しょうぶ彊つよし弱じゃく。引舊語ご乃曰：「故こ云うん」。〉聞聲效こう勝負しょうぶ」，〈【索さく隱かくれ】周しゅう禮あや「太ふとし師し執と同どう律りつ聼軍聲ごえ而占其吉凶きっきょう」是也これや。故こ左ひだり傳でん稱しょう師し曠知南風みなみかぜ之の不ふ競きそえ，此即其類也。【正義まさよし】周しゅう禮あや云うん：「太ふとし師し執と同どう律りつ以聼軍ぐん聲ごえ而詔其吉凶きっきょう」，左ひだり傳でん云うん師し曠知南風みなみかぜ之の不ふ競きそえ，即そく其類。〉百ひゃく王おう不易ふえき之の道也みちや。

武たけ王おう伐き紂，吹律聼聲，〈【索さく隱かくれ】其事當とう有ゆう所出しょしゅつ，今こん則のり未み詳しょう。〉推孟春もうしゅん以至於季冬きとう，殺氣さっき相しょう並なみ，〈【正義まさよし】人君じんくん暴虐ぼうぎゃく酷ひど急きゅう，即そく常つね寒かん應おう。寒かん生せい北方ほっぽう，乃殺氣き也。武たけ王おう伐き紂，吹律從したがえ春はる至いたり冬ふゆ，殺氣さっき相しょう並なみ，律りつ亦また應おう之の。故こ洪ひろし範はん咎とがめ徴ちょう云うん「急きゅう常つね寒かん若わか」是也これや。〉而音尚なお宮みや。〈【正義まさよし】兵書へいしょ云うん：「夫おっと戰せん，太ふとし師し吹律，合ごう商しょう則そく戰勝せんしょう，軍事ぐんじ張ちょう彊つよし；角かく則のり軍ぐん擾多變へん，失しつ士し心こころ；宮みや則そく軍ぐん和わ，主おも卒そつ同心どうしん；徴ちょう則そく將はた急きゅう數すう怒いか，軍ぐん士し勞ろう；羽わ則のり兵へい弱じゃく少しょう威い焉。」〉同どう聲こえ相しょう從したがえ，物もの之の自然しぜん，何なん足そく怪かい哉？

兵へい者しゃ，聖人せいじん所以ゆえん討彊暴，平ひら亂世らんせい，夷えびす險阻けんそ，救すくい危殆きたい。自じ含戴角かく之の獸しし見み犯則はんそく校こう，而況於人懷ふところ好惡こうお喜怒きど之の氣き？喜則よしのり愛あい心しん生せい，怒いか則のり毒どく螫加，〈【正義まさよし】螫音釋しゃく。〉情じょう性せい之の理り也。

昔むかし黃き帝みかど有ゆう涿鹿之の戰たたかえ，以定火災かさい；〈【集しゅう解かい】文ぶん穎曰：「神かみ農みのり子孫しそん暴虐ぼうぎゃく，黃き帝みかど伐き之これ，故こ以定火災かさい。」〉顓頊有ゆう共ども工こう之の陳ひね，以平いたいら水害すいがい；〈【集しゅう解かい】文ぶん穎曰：「共きょう工こう，主しゅ水みず官かん也。少しょう昊ひろし氏し衰おとろえ，秉政作さく虐しいたげ，故こ顓頊伐之の。本ほん主しゅ水みず官かん，因いん爲ため水すい行ぎょう也。」〉成なり湯ゆ有ゆう南みなみ巣す之の伐き，以殄夏なつ亂らん。〈【正義まさよし】南みなみ巣す，今こん廬いおり州しゅう巣す縣けん是也これや。淮南ワイナン子こ云うん：「湯ゆ伐き桀，放ひ之これ歴れき山やま，與あずか末すえ喜き同舟どうしゅう浮江，奔南巣す之の山やま而死。」按：巣す即そく山名やまな，古巣ふるす伯はく之の國くに。云うん南みなみ巣す者しゃ，在ざい中國ちゅうごく之の南みなみ也。〉遞興遞廢，勝者しょうしゃ用事ようじ，所しょ受於天てん也。

自じ是ぜ之これ後ご，名士めいし迭興，晉すすむ用よう咎とがめ犯はん，〈【正義まさよし】狐きつね偃也，咎とがめ季き也。又また云うん胥臣也。〉而齊用よう王子おうじ，〈【索さく隱かくれ】徐じょ廣ひろ云うん：「王子おうじ成なり父ちち。」〉呉ご用よう孫まご武たけ，申さる明あかり軍ぐん約やく，賞罰しょうばつ必信，卒そつ伯はく諸侯しょこう，兼けん列れつ邦土ほうど，雖不及三さん代だい之の誥誓，然しか身み寵ちょう君くん尊みこと，當世とうせい顯揚けんよう，可か不ふ謂いい榮さかえ焉？豈あに與あずか世よ儒闇於大おだい較，〈【索さく隱かくれ】大だい較，大法たいほう也。淳じゅん于髡曰：「車くるま不ふ較則不ふ勝かち其任」是也これや。較音角かく。〉不ふ權けん輕重けいちょう，猥云德化とっか，不ふ當用とうよう兵へい，大だい至いたる君くん辱はずかしめ失しつ守もり，〈【索さく隱かくれ】徐じょ廣ひろ云うん：「如宋襄じょう公おおやけ是也これや。」〉小しょう乃侵犯はん削そぎ弱じゃく，遂とげ執と不ふ移うつり等とう哉！故こ教きょう笞むち不可ふか廢はい於家，刑罰けいばつ不可ふか捐於國こく，誅伐ちゅうばつ不可ふか偃於天下でんか，用よう之の有ゆう巧拙こうせつ，行ぎょう之の有ゆう逆順ぎゃくじゅん耳みみ。

夏なつ桀、殷いん紂手搏豺狼おおかみ，足そく追おい四よん馬うま，勇いさむ非ひ微ほろ也；百ひゃく戰せん克かつ勝しょう，諸侯しょこう懾服，權けん非ひ輕けい也。秦しん二世宿軍無用之地，〈【索さく隱かくれ】謂いい常つね擁よう兵へい於郊野の之の外そと也。【正義まさよし】謂いい三さん十じゅう萬まん備北，五ご十じゅう萬まん守もり五ご嶺みね也。雲くも連れん兵へい於邊陲，即そく是ぜ宿やど軍ぐん無用むよう之の地ち也。〉連れん兵へい於邊陲，力ちから非ひ弱じゃく也；結ゆい怨匈奴やつ，絓禍於越，〈【正義まさよし】絓，胡えびす卦け反はん。顧野王おう云うん：「絓者，所しょ礙。」〉勢いきおい非ひ寡也。及其威い盡つき勢ぜい極ごく，閭巷之の人爲じんい敵國てきこく，咎とがめ生せい窮きゅう武之たけゆき不ふ知足ちそく，甘あま得え之これ心こころ不ふ息いき也。

髙祖有ゆう天下でんか，三さん邊へん外がい畔ほとり；大國たいこく之の王おう雖稱蕃しげる輔，臣節しんせつ未み盡つき。會かい髙祖厭いや苦く軍事ぐんじ，亦また有ゆう蕭しょう、張ちょう之の謀はかりごと，故こ偃武一いち休息きゅうそく，羈縻不備ふび。

歴れき至孝しこう文ぶん即位そくい，將軍しょうぐん陳ちん武たけし等とう議ぎ曰：「南越なんごし、朝鮮ちょうせん〈【正義まさよし】潮うしお仙せん二に音おと。髙驪平壤ぴょんやん城本しろもと漢かん樂らく浪なみ郡ぐん王おう險けん城じょう，即そく古こ朝鮮ちょうせん地ち，時じ朝鮮ちょうせん王おう滿まん據よりどころ之の也。〉自じ全ぜん秦しん時じ内屬ないぞく爲ため臣子しんし，後ご且擁兵へい阻阸，選せん蠕觀望かんぼう。〈【集しゅう解かい】阸音戹賣反はん。選せん音おん思おもえ兗反。蠕音而兗反はん。【索さく隱かくれ】蠕音軟。選せん蠕謂動どう身み欲よく有ゆう進取しんしゅ之の狀じょう也。〉髙祖時じ天下てんか新定しんじょう，人民じんみん小安おやす，未み可か復興ふっこう兵へい。今こん陛下へいか仁惠じんけい撫なで百姓ひゃくしょう，恩澤おんたく加か海内かいだい，宜むべ及士民しみん樂らく用よう，征討せいとう逆ぎゃく黨とう，以一封ふう疆。」孝文たかふみ曰：「朕ちん能のう任にん衣冠いかん，〈【正義まさよし】朕ちん音おん而禁反はん。〉念ねん不ふ到いた此。會かい呂りょ氏し之の亂みだれ，功臣こうしん宗室そうしつ共ども不ふ羞恥しゅうち，誤あやま居きょ正せい位い，常つね戰せん戰慄せんりつ慄，恐こわ事こと之の不ふ終おわり。且兵凶器きょうき，雖克所原ところはら，動どう亦また秏病，謂いい百姓ひゃくしょう遠方えんぽう何なに？又また先帝せんてい知ち勞ろう民みん不可ふか煩はん，故こ不ふ以爲意い。朕ちん豈あに自じ謂いい能のう？今こん匈奴きょうど内ない侵おかせ，軍ぐん吏無功こう，邊へん民みん父子ふし荷に兵へい日び久ひさ，〈【正義まさよし】荷に音おん何なに我わが反はん。〉朕ちん常つね爲ため動どう心こころ傷きず痛つう，無む日にち忘之。今こん未み能のう銷距，原はら且堅邊べ設しつらえ候こう，結ゆい和わ通どおり使し，休きゅう寧やすし北きた陲，爲ため功こう多た矣。且無議ぎ軍ぐん。」故こ百姓無内外之繇，得とく息いき肩かた於田畝うね，天下てんか殷いん富とみ，粟あわ至いたり十じゅう餘あまり錢ぜに，鳴な鷄にわとり吠ほえ狗いぬ，煙火えんか萬まん里り，可か謂いい和樂わらく者しゃ乎！

太ふとし史し公おおやけ曰：文ぶん帝みかど時じ，會かい天下でんか新しん去さ湯ゆ火ひ，〈【索さく隱かくれ】謂いい秦はた亂らん，楚すわえ漢かん交兵之の時とき，如遺墜湯火ひ，即そく書しょ云うん：「人ひと墜塗炭ずみ」是也これや。〉人民じんみん樂らく業ぎょう，因いん其欲然しか，能のう不ふ擾亂じょうらん，故こ百姓ひゃくしょう遂とげ安やす。自じ年とし六ろく七なな十翁亦未嘗至市井，遊ゆう敖嬉戲きぎ如小兒しょうに狀じょう。孔子こうし所しょ稱しょう有德うとく君子くんし者しゃ邪よこしま！〈【索さく隱かくれ】論語ろんご曰：「善人ぜんにん爲ため邦くに百ひゃく年ねん，亦また可か以勝殘のこ去ざ殺ころせ」也。〉

書しょ曰：「七なな正せい」，二に十じゅう八はち舍しゃ。〈【索さく隱かくれ】七なな正せい，日にち、月つき、五ご星ほし。七者可以正天時。又また孔あな安國やすくに曰：「七なな正せい，日月じつげつ五ご星ほし各かく異い政せい」也。二十八宿にじゅうはっしゅく，之これ所しょ舍しゃ也。舍しゃ，止とめ也。宿やど，次じ也。言げん日月じつげつ五ご星ほし運行うんこう，或ある舍しゃ於二に十じゅう八はち次じ之の分ぶん也。〉律りつ暦れき，天てん所以ゆえん通どおり五ご行ぎょう八はち正之まさゆき氣き，〈【索さく隱かくれ】八はち謂いい八はち節せつ之の氣き，以應八はち方ぽう之の風ふう。天てん所以ゆえん成なり孰萬物ぶつ也。〉舍しゃ者しゃ，日月じつげつ所しょ舍しゃ。舍しゃ者しゃ，舒氣也。

不ふ周しゅう風ふう居きょ西北せいほく，主しゅ殺生せっしょう。東ひがし壁かべ居い不ふ周しゅう風ふう東ひがし，主しゅ辟生氣き〈【索さく隱かくれ】辟音辟。而東之の。〉至いたり於營室しつ。〈【索さく隱かくれ】定てい星ほし也。定てい中ちゅう而可以作室しつ，故こ曰：營室。其星有ゆう室しつ象ぞう也，故こ天てん官かん書しょ主しゅ廟びょう。此言「主しゅ營胎陽氣ようき而産之の」，是ぜ説せつ異い也。【正義まさよし】天てん官かん書しょ云うん「營室爲ため淸きよし廟びょう，曰：離宮りきゅう、閣かく道どう」，是ぜ有ゆう宮室きゅうしつ象ぞう。此言「主しゅ營胎陽氣ようき而産之の」，二に説せつ不同ふどう。〉營室者しゃ，主しゅ營胎〈【集しゅう解かい】徐じょ廣ひろ曰：「一作いつさく『含』。」〉陽氣ようき而産之の。東ひがし至いたり於危。危，垝也。〈【索さく隱かくれ】垝音鬼おに毁反。〉言げん陽氣ようき之の垝，故こ曰：危。十じゅう月がつ也，律りつ中ちゅう應おう鐘がね。〈【正義まさよし】應おう，乙おつ證しょう反はん。白虎びゃっこ通どおり云うん：「應おう者しゃ，應おう也，言げん萬物應陽而動下藏也。」漢かん初はつ依よ秦しん以十じゅう月がつ爲ため歳とし首くび，故こ起おこり應おう鐘がね。〉應おう鐘かね者しゃ，陽氣ようき之の應おう，不ふ用事ようじ也。其於十じゅう二に子し爲ため亥い。亥い者しゃ，該也。〈【索さく隱かくれ】按：律りつ暦れき志こころざし云うん「該閡於亥」。【正義まさよし】孟はじめ康かん云うん：「閡，藏ぞう塞ふさが也。陰かげ雜ざつ陽氣ようき藏ぞう塞ふさが，爲ため萬物ばんぶつ作さく種しゅ也。」〉言げん陽氣ようき藏くら於下おした，故こ該也。

廣こう莫風居きょ北方ほっぽう。廣こう莫者，言げん陽氣ようき在ざい下した，陰かげ莫陽廣大こうだい也，故こ曰：廣こう莫。東ひがし至いたり於虚。虚きょ者しゃ，能實のうじつ能のう虚むなし，言げん陽氣ようき冬ふゆ則そく宛あて藏ぞう於虚，〈【正義まさよし】宛あて音おん蘊。〉日にち冬至とうじ則そく一いち陰かげ下か藏ぞう，一陽いちよう上じょう舒，故こ曰：虚きょ。東ひがし至いたり於須女おんな。〈【索さく隱かくれ】婺女名めい也。〉言げん萬物ばんぶつ變動へんどう其所，陰かげ陽氣ようき未み相そう離はなれ，尚なお相あい胥也，故こ曰：須女。十一月じゅういちがつ也，律りつ中ちゅう黃き鐘がね。〈【正義まさよし】白虎びゃっこ通どおり云うん：「黃き中和ちゅうわ之の氣き，言げん陽氣ようき於黃泉いずみ之の下しも動どう養やしなえ萬物ばんぶつ也。」〉黃き鐘かね者しゃ，陽氣ようき踵かかと黃泉よみ而出也。其於十じゅう二に子し爲ため子こ。子こ者しゃ，滋しげる也；滋しげる者しゃ，言げん萬物滋於下也。其於十じゅう母はは爲ため壬みずのえ癸みずのと。壬みずのえ之の爲ため言げん任にん也，言げん陽ひ氣任きまかせ養やしなえ萬物ばんぶつ於下おした也。癸みずのと之の爲ため言げん揆也，言げん萬物ばんぶつ可か揆度，故こ曰：癸みずのと。東ひがし至いたり牽牛けんぎゅう。牽牛けんぎゅう者しゃ，言げん陽氣ようき牽引けんいん萬物ばんぶつ出で之の也。牛うし者しゃ，冒おかせ也，言げん地ち雖凍，能のう冒おかせ而生也。牛うし者しゃ，耕こう植うえ種しゅ萬物ばんぶつ也。東ひがし至いたり於建星ぼし。建けん星ほし者しゃ，建たて諸しょ生なま也。十二月じゅうにがつ也，律りつ中ちゅう大呂おおろ。大呂おおろ者しゃ。其於十じゅう二に子し爲ため丑うし。〈【集しゅう解かい】徐じょ廣ひろ曰：「此中闕不説せつ大呂おおろ及丑也。」【正義まさよし】案あん：此下闕文。或ある一本いっぽん云うん「丑うし者しゃ，紐ひも也。言げん陽氣ようき在ざい上うえ未み降くだ，萬物厄紐未敢出也」。〉

條じょう風ふう居きょ東北とうほく，主おも出で萬物ばんぶつ。條じょう之の言げん條じょう治ち萬物ばんぶつ而出之の，故こ曰：條じょう風ふう。南みなみ至いたり於箕。箕み者しゃ，言げん萬物ばんぶつ根ね棋，〈【集しゅう解かい】徐じょ廣ひろ曰：「一作いつさく『橫よこ』也。」〉故こ曰：箕み。正月しょうがつ也，律りつ中ちゅう泰たい蔟まぶし。〈【正義まさよし】蔟まぶし音おん千せん豆まめ反はん。白虎びゃっこ通どおり云うん：「泰たい者しゃ，大だい也。蔟まぶし者しゃ，凑也。言げん萬物始大凑地而出之也。」泰たい蔟まぶし者しゃ，言げん萬物ばんぶつ蔟まぶし生せい也，故こ曰：泰たい蔟まぶし。〉其於十じゅう二に子し爲ため寅とら。寅とら言げん萬物始生螾然〈【索さく隱かくれ】音おと引，又また音おと以愼反はん。〉也，故こ曰：寅とら。南みなみ至いたり於尾，言げん萬物始生如尾也。南みなみ至いたり於心，言げん萬物始生有華心〈【集しゅう解かい】徐じょ廣ひろ曰：「一作いつさく『莖くき』。」〉也。南みなみ至いたり於房。房ぼう者しゃ，言げん萬物ばんぶつ門戸もんこ也，至いたり於門則そく出で矣。

明あかり庶風居きょ東方とうほう。明あかり庶者，明あかり衆しゅ物ぶつ盡つき出で也。二に月がつ也，律りつ中ちゅう夾鐘。〈【正義まさよし】白虎びゃっこ通どおり云うん：「夾，孚まこと甲かぶと也。言げん萬物ばんぶつ孚まこと甲かぶと，種類しゅるい分ぶん也。」〉夾鐘者しゃ，言げん陰陽いんよう相しょう夾厠也。其於十じゅう二に子し爲ため卯う。卯之うの爲ため言ごと茂也しげや，言げん萬物ばんぶつ茂也しげや。其於十じゅう母はは爲ため甲乙こうおつ。甲かぶと者しゃ，言げん萬物ばんぶつ剖符〈【集しゅう解かい】音おと孚まこと。甲きのえ【索さく隱かくれ】符ふ甲かぶと猶なお孚まこと甲かぶと也。〉而出也；乙おつ者しゃ，言げん萬物生軋軋也。南みなみ至いたり於氐者しゃ。〈【正義まさよし】氐音丁ちょう禮あや反はん。〉氐者，言げん萬物ばんぶつ皆みな至いたり也。南みなみ至いたり於亢。亢者，言げん萬物ばんぶつ亢見也。南みなみ至いたり於角。角かく者しゃ，言げん萬物皆有枝格如角也。三月さんがつ也，律りつ中ちゅう姑しゅうと洗あらい。〈【正義まさよし】姑しゅうと音おん沽。洗あらい音おん先さき典てん反はん。白虎びゃっこ通どおり云うん：「沽者，故こ也。洗あらい者しゃ，鮮也。言げん萬物去故就新，莫不鮮明せんめい也。」〉姑しゅうと洗あらい者しゃ，言げん萬物ばんぶつ洗あらい生せい。其於十じゅう二に子し爲ため辰たつ。辰たつ者しゃ，言げん萬物ばんぶつ之の蜄〈【集しゅう解かい】音おと之の愼まき反はん。【索さく隱かくれ】蜄音振ふ。或ある作さく「娠」，同音どうおん。律りつ暦れき志こころざし云うん「振ふ羨とも於辰」。〉也。

淸明せいめい風ふう居きょ東南とうなん維，主しゅ風吹ふぶき萬物ばんぶつ而西之の。軫。軫者，言げん萬物益大而軫軫然。西にし至いたり於翼。翼つばさ者しゃ，言げん萬物皆有羽翼也。四よん月がつ也，律りつ中ちゅう中呂ちゅうろ。〈【正義まさよし】中音ちゅうおん仲なか。白虎びゃっこ通どおり雲くも「言げん陽氣ようき將はた極ごく中なか充たかし大だい也」，故こ復ふく申さる言ごと之の也。〉中呂ちゅうろ者しゃ，言げん萬物盡旅而西行也。其於十じゅう二に子し爲ため巳み。巳み者しゃ，言げん陽氣ようき之の已やめ盡つき也。西にし至いたり於七なな星ほし。七星ななえ者しゃ，陽ひ數すう成なり於七，故こ曰：七なな星ほし。西にし至いたり於張。張ちょう者しゃ，言げん萬物ばんぶつ皆みな張ちょう也。西にし至いたり於注。〈【索さく隱かくれ】音おと丁ちょう救すくい反はん。注ちゅう，咮也。天てん官かん書しょ云うん「柳やなぎ爲ため鳥とり咮」，則のり注ちゅう，柳やなぎ星ぼし也。〉注ちゅう者しゃ，言げん萬物ばんぶつ之の始はじめ衰おとろえ，陽氣ようき下か注ちゅう，故こ曰：注ちゅう。五月ごがつ也，律りつ中ちゅう蕤賓。〈【正義まさよし】蕤音仁じん佳よ反はん。白虎びゃっこ通どおり云うん：「蕤者，下しも也。賓まろうど者しゃ，敬けい也。言げん陽氣ようき上じょう極ごく，陰氣いんき始はじめ賓まろうど敬之たかゆき也。」〉蕤賓者しゃ，言げん陰氣いんき幼少ようしょう，故こ曰：蕤；痿陽不ふ用事ようじ，故こ曰：賓まろうど。

景けい風ふう居きょ南方なんぽう。景けい者しゃ，言げん陽氣ようき道どう竟，故こ曰：景けい風ふう。其於十じゅう二に子し爲ため午うま。午うま者しゃ，陰陽いんよう交，故こ曰：午うま。〈【索さく隱かくれ】律りつ暦れき志こころざし云うん「咢布於午」。〉其於十じゅう母はは爲ため丙へい丁ひのと。丙へい者しゃ，言げん陽ひ道どう著ちょ明あきら，故こ曰：丙へい；丁ひのと者しゃ，言げん萬物之丁壯也，故こ曰：丁ひのと。西にし至いたり於弧。弧こ者しゃ，言げん萬物ばんぶつ之の呉ご落〈【集しゅう解かい】徐じょ廣ひろ曰：「呉ご，一作いっさく『柔やわら』。」〉且就死し也。西にし至いたり於狼。狼おおかみ者しゃ，言げん萬物ばんぶつ可か度量どりょう，斷だん萬物ばんぶつ，故こ曰：狼おおかみ。

凉風居きょ西南せいなん維，主おも地ち。地ち者しゃ，沈奪萬物ばんぶつ氣き也。〈【正義まさよし】沈，一いち作さく「洗あらい」。〉六ろく月がつ也，律りつ中林なかばやし鐘がね。〈【正義まさよし】白虎びゃっこ通どおり云うん：「林はやし者しゃ，衆しゅう也。言げん萬物ばんぶつ成熟せいじゅく，種類しゅるい多た也。」〉林はやし鐘かね者しゃ，言げん萬物就死氣林林然。其於十じゅう二に子し爲ため未ひつじ。未ひつじ者しゃ，言げん萬物ばんぶつ皆みな成なり，有ゆう滋味じみ也。〈【索さく隱かくれ】律りつ暦れき志こころざし云うん「昧薆於未」，其意殊こと也。〉北きた至いたる於罰。罰ばっ者しゃ，言げん萬物氣奪可伐也。北きた至いたり於參。〈【正義まさよし】音おと所しょ林りん反はん。〉參まいり言げん萬物可參也，故こ曰：參さん。七なな月がつ也，律りつ中ちゅう夷えびす則そく。〈【正義まさよし】白虎びゃっこ通どおり云うん：「夷えびす，傷きず也。則のり，法ほう也。言げん萬物ばんぶつ始はじめ傷きず，被ひ刑法けいほう也。」〉夷えびす則そく，言げん陰かげ〈【集しゅう解かい】徐じょ廣ひろ曰：「一作いつさく『陽ひ』。」〉氣き之の賊ぞく〈【集しゅう解かい】徐じょ廣ひろ曰：「一作いつさく『則のり』。」〉萬物ばんぶつ也。其於十じゅう二に子し爲ため申さる。申さる者しゃ，言げん陰かげ用事ようじ，申さる賊ぞく萬物ばんぶつ，〈【集しゅう解かい】徐じょ廣ひろ曰：「賊ぞく，一いち作さく『則のり』。」【索さく隱かくれ】律りつ暦れき志こころざし「物堅ものがた於申」也。〉故こ曰：申さる。北きた至いたり於濁。〈【索さく隱かくれ】按：爾しか雅みやび「濁にご謂いい之の畢」。〉濁にご者しゃ，觸さわ也，言げん萬物皆觸死也，故こ曰：濁にご。北きた至いたり於留。〈【索さく隱かくれ】留とめ即そく昴すばる，毛もう傳つたえ亦また以留爲ため昴すばる。〉留とめ者しゃ，言げん陽氣ようき之の稽留也，故こ曰：留とめ。八はち月がつ也，律りつ中南なかみなみ呂りょ。〈【正義まさよし】白虎びゃっこ通どおり云うん：「南みなみ，任にん也。言げん陽氣ようき尚なお任にん包つつめ，大生おおう薺なずな麥むぎ也。」〉南みなみ呂りょ者しゃ，言げん陽氣ようき之の旅たび入藏いりくら也。其於十じゅう二に子し爲ため酉とり。酉とり者しゃ，萬物ばんぶつ之の老ろう也，〈【索さく隱かくれ】律りつ暦れき志こころざし「留とめ孰於酉とり」。〉故こ曰：酉とり。

閶闔風ふう居きょ西方せいほう。閶者，倡也；闔者，藏ぞう也。言げん陽氣ようき道どう萬物ばんぶつ，闔黃泉いずみ也。其於十じゅう母はは爲ため庚かのえ辛からし。庚かのえ者しゃ，言げん陰氣いんき庚かのえ萬物ばんぶつ，故こ曰：庚かのえ；辛からし者しゃ，言げん萬物ばんぶつ之の辛からし生せい，故こ曰：辛からし。北きた至いたり於胃。胃い者しゃ，言げん陽氣ようき就藏，皆みな胃い胃い也。北きた至いたり於婁。婁者，呼よび萬物且内之也。北きた至いたり於奎。〈【集しゅう解かい】徐じょ廣ひろ曰：「一作いつさく『■』。」【索さく隱かくれ】按：天てん官かん書しょ「奎爲溝みぞ瀆，婁爲聚衆，胃い爲ため天てん倉くら」，今こん此説並なみ異こと，及六ろく律りつ十じゅう母はは，又また與あずか漢書かんしょ不同ふどう，今こん各かく是ぜ異こと家か之の説せつ也。〉奎者，主しゅ毒どく螫殺萬物ばんぶつ也，奎而藏ぞう之の。九月くがつ也，律りつ中ちゅう無む射しゃ。〈【正義まさよし】音おと亦また。白虎びゃっこ通どおり云うん：「射い，終おわり也。言げん萬物隨陽而終，當とう復ふく隨ずい陰かげ而起，無む有終ゆうしゅう已やめ。」此説六呂十干十二支與漢書不同。〉無む射い者しゃ，陰氣いんき盛もり用事ようじ，陽氣ようき無む餘よ也，故こ曰：無む射しゃ。其於十じゅう二に子し爲ため戌いぬ。戌いぬ者しゃ，言げん萬物ばんぶつ盡つき滅ほろび，故こ曰：戌いぬ。〈【索さく隱かくれ】律りつ暦れき志こころざし「畢入於戌」也。〉

律りつ數すう：九きゅう九きゅう八はち十じゅう一いち以爲宮みや。三さん分ふん去さ一いち，五ご十じゅう四よん以爲徴ちょう。三さん分ふん益えき一いち，七なな十じゅう二に以爲商しょう。三さん分ふん去さ一いち，四よん十じゅう八はち以爲羽わ。三さん分ふん益えき一いち，六ろく十じゅう四よん以爲角かく。黃き鐘かね長ちょう八はち寸すん七なな分ふん一いち，宮みや。索さく隱かくれ黃き鐘かね長ちょう八はち寸すん十じゅう分ふん一宮いちのみや。案あん：上うえ文ぶん云うん「律りつ九きゅう九きゅう八はち十じゅう一いち以爲宮みや」，故こ云うん長ちょう八はち寸すん十じゅう分ふん一宮いちのみや。而云黃き鐘かね長ちょう九きゅう寸すん者しゃ，九分くぶ之の寸すん也。劉りゅう歆、鄭てい玄げん等とう皆みな以爲長ちょう九きゅう寸すん即そく十じゅう分ふん之の寸すん，不ふ依よ此法也。云うん宮みや者しゃ，黃き鐘がね爲ため律りつ之の首くび，宮みや爲ため五音ごいん之これ長ちょう，十じゅう一月以黃鐘爲宮，則のり聲ごえ得とく其正。舊きゅう本ほん多作たさく「七なな分ふん」，蓋ぶた誤あやま也。大呂おおろ長ちょう七なな寸すん五ご分ふん三さん分ふん。〈【索さく隱かくれ】謂いい十じゅう一月以黃鐘爲宮，五ご行ぎょう相しょう次じ，土生はぶ金きん，故こ以大呂りょ爲ため商しょう者しゃ，大呂おおろ所以ゆえん助じょ陽ひ宣せん化か也。〉太ふとし蔟まぶし長ちょう七なな寸分すんぶん二に，角かく。夾鐘長ちょう六ろく寸分すんぶん三さん分ふん一いち。姑しゅうと洗あらい長ちょう六ろく寸分すんぶん四よん，羽わ。〈【索さく隱かくれ】亦また以金生水なまみず故こ也。〉仲なか呂りょ長ちょう五ご寸すん九きゅう分ふん三さん分ふん二に，徴ちょう。蕤賓長ちょう五ご寸すん六ろく分ふん三さん分ふん。林はやし鐘かね長ちょう五ご寸分すんぶん四よん，角かく。〈【索さく隱かくれ】水生すいせい木き，故こ爲ため角かく。不用ふよう蕤賓者しゃ，以陰氣き起おこり，陽ひ不ふ用事ようじ，故こ去さ之これ也。〉夷えびす則そく長ちょう五ご寸すん三さん分ふん二に，商しょう。南みなみ呂りょ長ちょう四よん寸分すんぶん八はち，徴ちょう。無む射い長ちょう四よん寸すん四よん分ふん三さん分ふん二に。應おう鐘かね長ちょう四よん寸すん二に分ふん三さん分ふん二に，羽わ。

生なま鐘かね分ぶん：〈【索さく隱かくれ】此算術さんじゅつ生せい鐘かね律りつ之の法ほう也。【正義まさよし】分ぶん音おん扶問反はん。〉子こ一いち分ふん。〈【索さく隱かくれ】自じ此已下か十じゅう一いち辰たつ，皆みな以三さん乘じょう之の，爲ため黃き鐘しょう積つもる實じつ之これ數すう。〉丑うし三さん分ふん二に。〈【索さく隱かくれ】案あん：子こ律りつ黃き鐘かね長ちょう九きゅう寸すん，林はやし鐘かね丑うし衝長六ろく寸すん，以九比ひ六ろく，三さん分ふん少しょう一いち，故こ云うん丑うし三さん分ふん二に。即そく是ぜ黃き鐘がね三さん分ふん去さ一いち，下した生せい林りん鐘がね之の數也かずや。〉寅とら九きゅう分ふん八はち。〈【索さく隱かくれ】十じゅう二律以黃鐘爲主，黃き鐘かね長ちょう九きゅう寸すん，太ふとし蔟まぶし長ちょう八はち寸すん，寅とら九きゅう分ふん八はち，即そく是ぜ林りん鐘かね三さん分ふん益えき一いち，上生わぶ太たい蔟まぶし之の義也よしや。【正義まさよし】孟はじめ康かん云うん：「元氣げんき始はじめ起おこり於子。未ひつじ分ぶん之の時とき，天地人てんちじん混合こんごう爲一ためいち，故こ子こ數すう獨どく一いち。」漢書かんしょ律りつ暦れき志こころざし云うん：「太極たいきょく元氣げんき，函はこ三さん爲ため一いち，行ぎょう於十じゅう二に辰たつ，始動しどう於子，參さん之の於丑，得とく三さん；又また參さん於寅，得とく九きゅう；又また參さん之の於卯，得とく二に十じゅう七なな；又また參さん之の於辰，得とく八はち十じゅう一いち；又また參さん之の於巳，得とく二に百ひゃく四よん十じゅう三さん；又また參さん之の於午，得とく七なな百ひゃく二に十じゅう九きゅう；又また參さん之の於未，得とく二に千せん一いち百ひゃく八はち十じゅう七なな；又また參さん之の於申，得とく六ろく千せん五ご百ひゃく六ろく十じゅう一いち；又また參さん之の於酉，得とく萬まん九きゅう千せん六ろく百ひゃく八はち十じゅう三さん；又また參さん之の於戌，得とく五ご萬まん九きゅう千せん四よん十じゅう九きゅう；又また參さん之の於亥，得とく十じゅう七なな萬まん七なな千せん一いち百ひゃく四よん十じゅう七なな。此陰陽ひ合あい德とく，氣き種しゅ於子，化生かせい萬物ばんぶつ者しゃ也。」然しか丑うし三さん分ふん二に，寅とら九きゅう分ふん八はち者しゃ，並なみ是ぜ分ぶん之の餘よ數すう，而漢書しょ不ふ説せつ也。〉卯う二に十じゅう七なな分ふん十じゅう六ろく。〈【索さく隱かくれ】此以丑うし三さん乘じょう寅とら，寅とら三さん乘じょう卯う，得とく二に十じゅう七なな。南みなみ呂りょ爲ため卯う，衝長五ご寸すん三さん分ふん寸すん之の一いち，以三さん約やく二に十じゅう七なな得とく九きゅう，即そく黃き鐘がね之の本數ほんすう。又また以三さん約やく十じゅう六ろく得とく五ご，餘あまり三分之一即南呂之長，故こ云うん卯う二に十じゅう七なな分ふん十じゅう六ろく，亦また是ぜ太ふとし蔟まぶし三さん分ふん去さ一いち，下した生せい南みなみ呂りょ之の義ぎ。已やめ下か八はち辰たつ並なみ準じゅん此。然しか云うん丑うし三さん分ふん二に，寅とら九きゅう分ふん八はち者しゃ，皆みな分ぶん之の餘よ數也かずや。〉辰たつ八はち十じゅう一いち分ふん六ろく十じゅう四よん。巳み二に百ひゃく四よん十じゅう三さん分ふん一いち百ひゃく二に十じゅう八はち。午うま七なな百ひゃく二に十じゅう九きゅう分ふん五ご百ひゃく一いち十じゅう二に。未み二に千せん一いち百ひゃく八はち十じゅう七なな分ふん一いち千せん二に十じゅう四よん。申さる六ろく千せん五ご百ひゃく六ろく十じゅう一いち分ふん四よん千せん九きゅう十じゅう六ろく。酉とり一いち萬まん九きゅう千せん六ろく百ひゃく八はち十じゅう三さん分ふん八はち千せん一いち百ひゃく九きゅう十じゅう二に。戌いぬ五ご萬まん九きゅう千せん四よん十じゅう九きゅう分ふん三さん萬まん二に千せん七なな百ひゃく六ろく十じゅう八はち。亥い十じゅう七なな萬まん七なな千せん一いち百ひゃく四よん十じゅう七なな分ふん六ろく萬まん五ご千せん五ご百ひゃく三さん十じゅう六ろく。

生なま黄き鐘かね術じゅつ曰：以下いか生者しょうじゃ，〈【索さく隱かくれ】生なま鐘かね術じゅつ曰：以下いか生者しょうじゃ。案あん：蔡邕曰：「陽ひ生せい陰かげ爲ため下か生せい，陰かげ生せい陽ひ爲ため上生わぶ。子こ午うま已やめ東ひがし爲ため上生わぶ，已やめ西にし爲ため下か生せい」。又また律りつ暦れき志こころざし云うん「陰陽いんよう相生あいおい自じ黄き鐘しょう始はじめ，黄き鐘しょう太ふとし蔟まぶし，左ひだり旋八八はち爲ため五ご」。从子至いたり未み得とく八はち，下した生せい林はやし鐘しょう是也これや。又また自じ未み至いたり寅とら亦また得え八はち，上生わぶ太たい蔟まぶし。然しか上下じょうげ相生あいおい，皆みな以此爲ため率りつ也。〉倍ばい其實，三さん其法。〈【索さく隱かくれ】謂いい黄き鐘かね下か生せい林りん鐘かね，黄き鐘かね長ちょう九きゅう寸すん，倍ばい其實者しゃ，二に九きゅう十じゅう八はち，三さん其法者しゃ，以三さん爲ため法ほう，約やく之これ得え六ろく，爲ため林りん鐘がね之の長ちょう也。〉以上いじょう生者しょうじゃ，四よん其實，三さん其法。〈【索さく隱かくれ】四よん其實者しゃ，謂いい林りん鐘がね上生わぶ太たい蔟まぶし，林はやし鐘かね長ちょう六ろく寸すん，以四よん乘じょう六ろく得とく二に十じゅう四よん，以三さん约之得とく八はち，即そく爲ため太ふとし蔟まぶし之これ長ちょう。〉上うえ九きゅう，商しょう八はち，羽わ七なな，角かく六ろく，宮みや五ご，徴ちょう九きゅう。〈【索さく隱かくれ】此五聲之數亦上生三分益一，下した生せい三さん分ふん去さ一いち。宮下みやした生なま徴ちょう，徴ちょう益えき一いち上生わぶ商しょう；商しょう下か生せい羽わ，羽はね益えき一いち上生わぶ角かく。然しか此文似に數すう錯，未み暇ひま研けん覈也。〉置おけ一而九三之以爲法。〈【索さく隱かくれ】漢書かんしょ律りつ暦れき志こころざし曰：「太極たいきょく元氣げんき，函はこ三さん爲ため一いち，行ぎょう之の於十じゅう二に辰たつ，始動しどう於子，参さん之の於丑得三とくぞう，又また参さん之の於寅得とく九きゅう。」是ぜ謂いい因いん而九三之さんの也。韋昭曰：「置おけ一いち而九，以三さん乘じょう之の是也これや。」樂らく産さん云うん：「一氣いっき生せい於子，至いたり丑うし而三，是ぜ一いち三也みつや。又また自じ丑うし至いたり寅とら爲ため九きゅう，皆みな以三さん乘じょう之の，是ぜ九きゅう三さん之これ也。又また参さん之の卯う，得とく二に十じゅう七なな；参さん之の於辰，得とく八はち十じゅう一いち；又また参さん之の於巳，得とく二に百ひゃく四よん十じゅう三さん；又また参さん之の午うま，得とく七なな百ひゃく二に十じゅう九きゅう；又また参さん於未，得とく二に千せん六ろく百ひゃく八はち十じゅう七なな；又また参さん之の於申，得とく六ろく千せん五ご百ひゃく六ろく十じゅう三さん；又また参さん於酉，得とく萬まん九きゅう千せん六ろく百ひゃく八はち十じゅう三さん；又また参さん於戌，得とく五ご萬まん九きゅう千せん四よん十じゅう九きゅう；又また参さん至いたり於亥，得とく十じゅう七なな萬まん七なな千せん一いち百ひゃく四よん十じゅう七なな：謂いい之の该數。此陰陽ひ合あい德とく，氣き鐘がね於子，化生かせい萬物ばんぶつ也。然しか丑うし三さん分ふん，寅とら九きゅう分ふん者しゃ，即そく分ぶん之の餘よ數也かずや。」〉實じつ如法にょほう，得とく長ちょう一いち寸すん。〈【索さく隱かくれ】實じつ如法にょほう得一とくいち。實じつ謂いい以子一いち乘じょう丑うし三さん，至いたり亥い得とく十じゅう七なな萬まん七なな千せん一いち百ひゃく四よん十じゅう七なな爲ため實數じっすう。如法にょほう謂いい以上いじょう萬まん九千六百八十三之法除實得九，爲ため黄き鐘がね之これ長ちょう。言げん「得一とくいち」者しゃ，算術さんじゅつ設しつらえ法ほう辞じ也。「得とく」下しも有ゆう「長ちょう」，「一いち」「寸すん」者しゃ，皆みな衍字えんじ也。韋昭云うん得とく九きゅう寸すん之の一也かずや。姚氏謂いい得とく一即黄鐘之子數。〉凡得九きゅう寸すん，命いのち曰：「黄き鐘がね之の宮みや」。故こ曰：音おと始はじめ於宮，窮きゅう於角；〈【索さく隱かくれ】即そく如上じょじょう文ぶん宮下みやげ生せい徴ちょう，徴しるし上生わぶ商しょう，商しょう下か生せい羽わ，羽はね上生わぶ角かく，是ぜ其窮也。〉數かず始はじめ於一，終おわり於十，成なり於三さん；氣き始はじめ於冬至とうじ，周しゅう而复生せい。

神生かんのう於無，〈【正義まさよし】無形むけい爲ため太ふと易やす氣き，天地あまち未み形かたち之の時とき，言げん神しん本ほん在ざい太虚たいきょ之の中ちゅう而無形がた也。〉形成けいせい於有，〈【正義まさよし】天地てんち旣すんで分ぶん，二に儀ぎ已やめ質しつ，萬物之形成於天地之間，神在かみあり其中。〉形かたち然しか後こう數すう，形かたち而成聲ごえ，〈【正義まさよし】數すう謂いい天てん數也かずや，聲こえ謂いい宮みや、商しょう、角すみ、徴ちょう、羽はね也。言げん天てん數すう旣すんで形がた，則のり能成よしなり其五聲ごえ也。〉故こ曰：神かみ使し氣き，氣き就形。形かたち理り如類有可ゆか類るい。或ある未み形かたち而未類るい，或ある同形どうけい而同類るい，類るい而可班はん，類るい而可識。聖せい人知じんち天地てんち識之別べつ，故こ從したがえ有ゆう以至未み有ゆう，〈【正義まさよし】從したがえ有ゆう謂いい萬物ばんぶつ形質けいしつ也，未み有ゆう謂いい天地てんち未み形かたち也。〉以得細ほそ若氣わかげ，微ほろ若わか聲ごえ。〈【正義まさよし】氣き謂いい太ふとし易えき之の氣き，聲こえ謂いい五ご聲ごえ之の聲こえ也。〉然しか聖人せいじん因いん神しん而存之の，〈【正義まさよし】言げん聖人せいじん因いん神しん理り其形體たい，尋ひろ迹至於太易えき之の氣き，故こ云うん因いん神しん而存之の，上うえ云うん從したがえ有ゆう以至未み有ゆう是也これや。〉雖妙必效情じょう，核かく其華道者どうしゃ明あかり矣。〈【正義まさよし】妙みょう謂いい微妙びみょう之これ性せい也。效こう猶なお見み也。核かく，硏けん核かく也。華道かどう，神妙しんみょう之の道也みちや。言げん人じん雖有微妙びみょう之これ性せい，必須ひっす程ほど督とく己おのれ之の情理じょうり，然しか後こう硏とぎ核かく神妙しんみょう之の道みち，乃能究きわむ其形體たい，辨べん其成聲ごえ，故こ謂いい明あかり矣。故こ下した云うん「非ひ有ゆう聖心せいしん以乘聰明そうめい，孰能存そん天地てんち之の神かみ而成形せいけい之の情じょう哉」是也これや。〉非ひ有ゆう聖心せいしん以乘聰明そうめい，孰能存そん天地てんち之の神かみ而成形せいけい之の情じょう哉？神かみ者しゃ，物もの受之而不能ふのう知ち其去來きょらい，〈【正義まさよし】言げん萬物受神妙之氣，不能ふのう知覺ちかく，及神去來きょらい，亦また不能ふのう識其往復おうふく也。〉故こ聖人せいじん畏かしこ而欲存そん之の。唯ただ欲よく存そん之の，神かみ之の亦また存そん。〈【正義まさよし】言げん聖人せいじん畏かしこ神妙しんみょう之の理り難なん識，而欲常つね存そん之の；唯ただ欲ほし常つね存そん之の，故こ其神亦また存そん也。〉其欲存そん之これ者しゃ，故こ莫貴焉。〈【正義まさよし】言げん平凡へいぼん之これ人にん欲得よくとく精神せいしん存そん者しゃ，故こ亦また莫如貴き神かみ之の妙みょう焉。〉

太ふとし史し公おおやけ曰：旋璣玉だま衡以齊ひとし七なな政せい，即そく天地てんち二に十じゅう八はち宿しゅく。〈【正義まさよし】宿やど音おん息いき袖そで反はん，又また音おと肅。謂いい東方とうほう角かく、亢、氐、房ぼう、心しん、尾お、箕み，南方みなかた井い、鬼おに、柳やなぎ、星ほし、張ちょう、翼つばさ、軫，西方せいほう奎、婁、胃い、昴すばる、畢、觜、參まいり，北方ほっぽう斗と、牛うし、女おんな、虚きょ、危、室しつ、壁かべ，凡二に十じゅう八はち宿しゅく一いち百ひゃく二に十じゅう八はち宿しゅく星ほし也。〉十じゅう母はは，〈【正義まさよし】十干じっかん：甲きのえ、乙おつ、丙へい、丁ちょう、戊つちのえ、己おのれ、庚かのえ、辛からし、壬みずのえ、癸みずのと。〉十じゅう二に子し，〈【正義まさよし】十二支じゅうにし：子こ、丑うし、寅とら、卯う、辰たつ、巳み、午うま、未み、申さる、酉とり、戌いぬ、亥い。〉鐘しょう律ただし調ちょう自じ上古じょうこ。建たて律ただし運うん歴れき造づくり日び度ど，可か據よりどころ而度也。〈【正義まさよし】度ど音田おとだ洛らく反はん。〉合符あいふ節ぶし，通つう道德どうとく，即そく從したがえ斯之謂いい也。

【索さく隱かくれ述じゅつ贊さん】自じ昔むかし軒のき后きさき，爰命伶綸。雄お雌めす是ぜ聼，厚あつ薄うす伊い均ひとし。以調氣候きこう，以軌星辰せいしん。軍ぐん容よう取と節ふし，樂器がっき斯因。自じ微ほろ知とも著ちょ，測はか化か窮きゅう神しん。大だい哉虚受，含養生ようじょう人じん。