在留ざいりゅうカードと読よみ取とりアプリ

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１．在留ざいりゅうカード読よみとりアプリ

　出入国しゅつにゅうこく管理庁かんりちょう（入管にゅうかん庁ちょう）がそのウェブサイトで、「在留ざいりゅうカード等とう読取よみとアプリケーション」なるものを無料むりょう配布はいふしている。

在留ざいりゅうカード等とう読取よみとアプリケーション サポートページ | 出入国しゅつにゅうこく在留ざいりゅう管理庁かんりちょう

　これは、外国がいこく人じん住民じゅうみんの持もつ在留ざいりゅうカードや特別とくべつ永住えいじゅう者しゃ証明しょうめい書しょが偽造ぎぞうされたものかどうかを調しらべることができるアプリだ。このアプリを入いれたスマートフォンを在留ざいりゅうカードなどにかざすと、カードに埋うめ込こまれたICチップに記録きろくされたデータを読よみ込こむことができるというもののようだ。

　入管にゅうかん庁ちょうがこうしたアプリを無料むりょうでだれでもダウンロードできるかたちで配布はいふしているということについては、当然とうぜんながら批判ひはんがなされている。たとえば、以下いかの東京とうきょう新聞しんぶん記事きじでは、「アプリが差別さべつを助長じょちょうする可能かのう性せいを想定そうていできなかったのか」（伊藤いとう和子かずこ氏し）、「外国がいこく人じんの監視かんしに市民しみんが動員どういんされる」（鈴木すずき江理子えりこ氏し）といった批判ひはん的てきなコメントが紹介しょうかいされている。

【動画どうがあり】「外国がいこく人じん監視かんしに市民しみんを動員どういん」入管にゅうかん庁ちょうが在留ざいりゅうカード真偽しんぎ読取よみとアプリを一般いっぱん公開こうかい　難民なんみん懇こんが問題もんだい視し：東京とうきょう新聞しんぶん TOKYO Web(2021年ねん6月がつ15日にち 20時じ37分ふん)

　これらの批判ひはんには全面ぜんめん的てきに同意どういしつつ、しかし同時どうじに、そもそも在留ざいりゅうカードというものを通とおしてなされてきた外国がいこく人じん管理かんりシステム自体じたいを批判ひはん的てきにみていかなければならない、ということも思おもう。今回こんかいのアプリ以前いぜんに、在留ざいりゅうカードそのものを批判ひはん的てきに問とわなければならない。

２．2012年ねんに導入どうにゅうされた在留ざいりゅうカード

　さて、くだんのアプリは、在留ざいりゅうカードの偽造ぎぞうを見分みわけ、これを防止ぼうしすることを目的もくてきにしたものだろう。在留ざいりゅうカードを偽造ぎぞうして売うっている人ひとがいるわけで、そうした行為こういがよいことだとは思おもわないけれど、これを買かう人ひとたちには切実せつじつな事情じじょうがあることもある。なぜ偽造ぎぞうカードが必要ひつようとされるのかという点てんは、考かんがえる必要ひつようがあるだろう。

　在留ざいりゅうカードの導入どうにゅうがきまったのは、2009年ねんの入管にゅうかん法ほう改定かいていによってである。それ以前いぜんの制度せいどにおいては、外国がいこく人じんの在留ざいりゅう情報じょうほうは、２ふたつの法律ほうりつのもとで二元にげん的てきに管理かんりされていた。入管にゅうかん法ほうと外国がいこく人じん登録とうろく法ほうである。入管にゅうかん法ほうにもとづいて入国にゅうこく管理かんり局きょくが外国がいこく人じんの出入国しゅつにゅうこくと在留ざいりゅうの管理かんりをおこなう一方いっぽう、市区しく町村ちょうそんが外国がいこく人じん登録とうろくに関かかわる実務じつむをになっていた。この従来じゅうらいの制度せいどのもとでは、オーバーステイなどで在留ざいりゅう資格しかくのない外国がいこく人じんでも自分じぶんの住すんでいる市区しく町村ちょうそんに届とどけ出でれば外国がいこく人じん登録とうろくをすることができ、限定げんてい的てきながら一部いちぶの住民じゅうみんサービスを受うけることもできた。

　2009年ねんに入管にゅうかん法ほうが改定かいていされるとともに外国がいこく人じん登録とうろく法ほうは廃止はいしされることになり、2012年ねん7月がつから外国がいこく人じんの在留ざいりゅう情報じょうほうは国くに（入管にゅうかん）によって一元いちげん的てきに管理かんりされることになった。従来じゅうらいの「外国がいこく人じん登録とうろく証しょう」にかわり、「在留ざいりゅうカード」または「特別とくべつ永住えいじゅう者しゃ証明しょうめい書しょ」が交付こうふされることになった。しかし、在留ざいりゅう資格しかくのない非ひ正規せいき滞在たいざい外国がいこく人じんは交付こうふを受うけられず、住民じゅうみん登録とうろくから排除はいじょされた、住民じゅうみんとしていわば存在そんざいしないかのようにあつかわれることになったのである。

　入管にゅうかんの公表こうひょうしている統計とうけいによると、この新あたらしい在留ざいりゅう管理かんり制度せいどの施行しこうされた2012年ねんの時点じてんでの「不法ふほう残留ざんりゅう者しゃ」数すうは6万まん人にん超ちょう。これほどの規模きぼの非ひ正規せいき滞在たいざい住民じゅうみんの存在そんざいをまったく前提ぜんていとしない（あるいは不在ふざいを前提ぜんていとする）かたちで、在留ざいりゅうカードは導入どうにゅうされたのである。

３．在留ざいりゅうカードが導入どうにゅうされた文脈ぶんみゃく

３ー１　「不法ふほう滞在たいざい者しゃ半減はんげん5カ年かねん計画けいかく」(2003年ねん～)

　この在留ざいりゅうカードの導入どうにゅうは、2000年ねんごろに始はじまる、非ひ正規せいき滞在たいざい外国がいこく人じんを日本にっぽん社会しゃかいから徹底的てっていてきに排除はいじょし、いわば「撲滅ぼくめつ」しようとするかのようなもろもろの政策せいさくとの関連かんれんにおいて、理解りかいする必要ひつようがあると思おもう。

　これは私わたしの個人こじん的てきな記憶きおくによるものなので、いずれちゃんと客観きゃっかん的てきに検証けんしょうしなければならないと思おもっているのだけれど、「不法ふほう滞在たいざい者しゃ」「不法ふほう滞在たいざい外国がいこく人じん」という、従来じゅうらいはさほど一般いっぱん的てきではなかった用語ようごがマスコミにあふれだしたのは2000年ねん前後ぜんこうだったと思おもう。「ピッキング」「サムターン回まわし」といった手口てぐちで建物たてものに侵入しんにゅうしての窃盗せっとうが「不法ふほう滞在たいざい外国がいこく人じん」による犯行はんこうだというかたちでテレビや新聞しんぶんでさかんに報道ほうどうされたのだ。

　いまにして考かんがえてみると、警察けいさつ当局とうきょくを情報じょうほう源げんとするこうした報道ほうどうは、その後ごの非ひ正規せいき滞在たいざい外国がいこく人じんに対たいする摘発てきはつ強化きょうかにむけての計画けいかくされた政治せいじ的てきプロパガンダであったのだろう。2003年ねん10月がつに法務省ほうむしょう入管にゅうかん、警察庁けいさつちょう、警視庁けいしちょう、東京とうきょう入管にゅうかんの4者しゃによる「首都しゅと東京とうきょうにおける不法ふほう滞在たいざい外国がいこく人じん対策たいさくの強化きょうかに関かんする共同きょうどう宣言せんげん」が出だされ、同年どうねん12月がつには政府せいふの犯罪はんざい対策たいさく閣僚かくりょう会議かいぎが「犯罪はんざいに強つよい社会しゃかいの実現じつげんのための行動こうどう計画けいかく」を発表はっぴょうした。これらは「不法ふほう滞在たいざい者しゃ」が「犯罪はんざいの温床おんしょう」であるという差別さべつ的てきな決きめつけをおこなったうえで、これに対たいする摘発てきはつ強化きょうかが必要ひつようだと述のべた文書ぶんしょである。

　後者こうしゃの「行動こうどう計画けいかく」が「不法ふほう滞在たいざい者しゃ半減はんげん5カ年かねん計画けいかく」に位置いちづけた翌よく04年ねんから08年ねんまでの入管にゅうかんと警察けいさつの連携れんけいしての徹底てっていした摘発てきはつがおこなわれ、結果けっか的てきにこの5年ねんのあいだに入管にゅうかんの推定すいていする「不法ふほう滞在たいざい者しゃ」数すうは約やく25万まん人にんから13万まん人にんほどまでほぼ「半減はんげん」している。2000年ねんごろに「不法ふほう滞在たいざい外国がいこく人じん」という言葉ことばが窃盗せっとうなどの犯罪はんざいと結むすびつけられたかたちでマスコミに氾濫はんらんしだしたのは、この大だい摘発てきはつ作戦さくせんにむけてのプロパガンダによるものと考かんがえるのが自然しぜんだ。

　ちなみに、東京とうきょう都と港みなと区くにある現在げんざいの東京とうきょう入管にゅうかんの庁舎ちょうしゃが完成かんせいし、その使用しようが開始かいしされたのが2002年ねん。収容しゅうよう人数にんずう800人にんとされる巨大きょだい収容しゅうよう場じょうをそなえた新しん庁舎ちょうしゃの建設けんせつも、大だい規模きぼな摘発てきはつを想定そうていしてのものだろう。

３ー２　不法ふほう就労しゅうろう助長じょちょう罪ざいの厳格げんかく化か

　こうして、政府せいふは2003年ねんごろから在留ざいりゅう資格しかくのない人ひとに対たいする徹底的てっていてきな摘発てきはつと送還そうかんをおこなってきたわけだが、そのいっぽうで、非ひ正規せいき滞在たいざい者しゃが日本にっぽん社会しゃかいでなんとか生いき抜ぬいていくための条件じょうけんをつぶしていくということもすすめてきた。2009年ねんの入管にゅうかん法ほう改定かいていには、非ひ正規せいき滞在たいざい外国がいこく人じんにとって死活しかつ問題もんだいとなりうる重大じゅうだいなポイントが、在留ざいりゅうカードの導入どうにゅうのほかにもあった。不法ふほう就労しゅうろう助長じょちょう罪ざいの厳格げんかく化かである。

　不法ふほう就労しゅうろう助長じょちょう罪ざいとは、「不法ふほう就労しゅうろう」となる外国がいこく人じんを雇用こようしたり仕事しごとをあっせんしたりする行為こういであり、罰則ばっそくとして3年ねん以下いかの懲役ちょうえきまたは300万まん円えん以下いかの罰金ばっきんが規定きていされている。09年ねんの改定かいていでは、この不法ふほう就労しゅうろう助長じょちょう罪ざいが、過失かしつであっても適用てきようされることになった。つまり、この法ほう改定かいていにより、在留ざいりゅう資格しかくや就労しゅうろう許可きょかがない外国がいこく人じんをそうと知しらずに雇やとった場合ばあいでも、雇やとい主ぬしなどが罪つみに問とわれうることになったのである。

　さらに、同おなじ年ねんの法ほう改定かいていでは、この不法ふほう就労しゅうろう助長じょちょう行為こういがあらたに退去たいきょ強制きょうせい事由じゆうにくわえられた。外国がいこく人じんがこの罪つみに問とわれた場合ばあいに、在留ざいりゅう資格しかくを取とり消けされ退去たいきょ強制きょうせい（強制きょうせい送還そうかん）の対象たいしょうになることもありうるようになったのだ。

　こうして、雇用こようする側がわにとって、非ひ正規せいき滞在たいざい者しゃを雇やとうことは大変たいへんなリスクをともなうようになった。雇用こよう者しゃが外国がいこく人じんの場合ばあいはそのリスクは致命ちめい的てきですらある。退去たいきょ強制きょうせいによって日本にっぽんでの生活せいかつも事業じぎょうもすべて失うしないかねないのだから。

　この不法ふほう就労しゅうろう助長じょちょう罪ざいの厳格げんかく化かは、非ひ正規せいき滞在たいざい外国がいこく人じんが生活せいかつの糧かてをえるために働はたらく場所ばしょを徹底てっていしてつぶしていこうとするものだ。なんらかの経緯けいいで在留ざいりゅう資格しかくのない状態じょうたいで日本にっぽんに滞在たいざいしている人ひとたちの多おおくは、生活せいかつのために就労しゅうろうせざるをえない。就労しゅうろうの機会きかいは、社会しゃかい保障ほしょうから疎外そがいされた非ひ正規せいき滞在たいざい外国がいこく人じんにとってはなおさら生存せいぞんに不可欠ふかけつな条件じょうけんでもありうるのだ。

　それにしても、在留ざいりゅう資格しかくのない状態じょうたいで日本にっぽんに滞在たいざいするということがたとえ問題もんだいだと考かんがえるにしても、現げんにこの社会しゃかいで生いきている人間にんげんの生存せいぞんの条件じょうけんを破壊はかいしてまうのは、いくらなんでも度どをこしているのではないか。

４．在留ざいりゅうカードの偽造ぎぞうよりはるかに重大じゅうだいな問題もんだい

　以上いじょうみてきたような経緯けいいをふまえつつ、在留ざいりゅうカードの導入どうにゅう、そして問題もんだいになっているアプリについて考かんがえてみたい。

　バブル期き以降いこう1990年代ねんだいを通つうじて、日本にっぽん政府せいふは非ひ正規せいき滞在たいざい外国がいこく人じんの存在そんざいを一定いってい程度ていど黙認もくにんし、これを労働ろうどう力りょくとして活用かつようするという政策せいさくを事実じじつ上じょうとってきた。こうして日本にっぽん社会しゃかいは、非ひ正規せいき滞在たいざい者しゃの労働ろうどう力りょくに依存いぞんしてきたわけだが、これを徹底的てっていてきに排除はいじょしていこうという方向ほうこうへの転換てんかんを政府せいふが明確めいかくに打うち出だし始はじめたのが2003年ねんごろ。00年代ねんだいを通つうじて、「不法ふほう滞在たいざい者しゃ」に対たいする集中しゅうちゅう的てきな摘発てきはつがおこなわれるいっぽう、その就労しゅうろう機会きかいをつぶして社会しゃかいから締しめ出だしていこうということがくわだてられてきたのだということが言いえる。

　2012年ねんに廃止はいしされた外国がいこく人じん登録とうろく法ほうのもとでは、もちろんこの法ほう自体じたいは外国がいこく人じん住民じゅうみんをもっぱら管理かんりするためのものであったのだが、在留ざいりゅう資格しかくのない外国がいこく人じんでも居住きょじゅう地ちの自治体じちたいに届とどけ出でれば住民じゅうみん登録とうろくができた。地方自治体ちほうじちたいはこれをもとにして在留ざいりゅう資格しかくがなくても住民じゅうみんとしてあつかい、社会しゃかい保障ほしょう制度せいどを限定げんてい的てきながらも適用てきようする余地よちがあったのであり、実際じっさいにそうした例れいは少すくなくなかった。ところが、外そと登とう法ほうが廃止はいしされ同時どうじに在留ざいりゅうカードが導入どうにゅうされて以降いこうは、非ひ正規せいき滞在たいざいの外国がいこく人じんはほぼ完全かんぜんに社会しゃかい保障ほしょうから排除はいじょされることになった。

　こうして、2000年代ねんだい以降いこうの政策せいさくは、非ひ正規せいき滞在たいざい外国がいこく人じんがかろうじて生いきていくことを可能かのうにする、社会しゃかいのすき間まのようなところすら破壊はかいしつぶしていくことを指向しこうしたものだった。在留ざいりゅう資格しかくのない人ひとに対たいする摘発てきはつ・送還そうかんというかたちでの排除はいじょが強化きょうかされたのと同時どうじに、在留ざいりゅう資格しかくがない人ひとの生存せいぞんできない国くにづくり・社会しゃかいづくりが進すすめられていったのである。まさにこうした国くにづくり・社会しゃかいづくりにおいて導入どうにゅうされたのが在留ざいりゅうカードである。

　09年ねんの法ほう改定かいていによって、不法ふほう就労しゅうろう助長じょちょう罪ざいは、過失かしつでも適用てきようされるようになった。雇用こよう主ぬしにとっては、雇用こようしようとする人ひとが外国がいこく人じんである場合ばあい、在留ざいりゅう資格しかくがあるのか、就労しゅうろう許可きょかの範囲はんい内ないなのか、確認かくにんしなければ自身じしんに危険きけんがおよぶ。「知しらなかった」ではすまなくなったわけで、外国がいこく人じんを雇用こようするさいに在留ざいりゅうカードを確認かくにんすることが雇用こよう者しゃらに義務ぎむづけられたということだ。

　こうなると、就労しゅうろう機会きかいから締しめ出だされた非ひ正規せいき滞在たいざい外国がいこく人じんのなかには、生いきるために偽造ぎぞう在留ざいりゅうカードを使つかわざるをえない人ひともでてくる。だったら自分じぶんの国くにに帰かえればよいじゃないかと言いう人ひともいるだろうが、身みに危険きけんがおよぶおそれがあるなど「帰国きこく」できない事情じじょうをかかえている人ひとも少すくなくない。そのうえ、問題もんだいの在留ざいりゅうカード読よみとりアプリである。それはさらに徹底てっていして非ひ正規せいき滞在たいざい者しゃなどの生存せいぞん手段しゅだんをつぶしていこうというものだ。

　「不法ふほう滞在たいざい」「不法ふほう就労しゅうろう」だとか、偽造ぎぞう在留ざいりゅうカードを使つかうことだとか、それは今いまある法ほうに違反いはんする行為こういであるとはいえ、他人たにんを傷きずつけたりその財産ざいさんを盗ぬすんだりするものではまったくない。これに対たいして、上うえにみてきたような為政者いせいしゃの所業しょぎょうは、「不法ふほう滞在たいざい者しゃ」とされた人間にんげんの生存せいぞんの手段しゅだんを破壊はかいしていこうとするもので、端はし的てきに言いえば「人殺ひとごろし」である。ある人ひとがルールに違反いはんしている状態じょうたいにあるからといって、その人ひとの生存せいぞん手段しゅだんをうばってよいはずがない。

　非ひ正規せいき滞在たいざい者しゃらを就労しゅうろう機会きかいから締しめ出だそうとして日本にっぽん政府せいふが執拗しつようにおこなってきた諸しょ政策せいさくは、たとえるならば、懲罰ちょうばつ的てきな動機どうきによって特定とくていの住民じゅうみんの水道すいどうや電気でんきを止とめてしまうとか、ホームレス状態じょうたいにある人ひとを野宿のじゅくしている公園こうえんから締しめ出だすとか、そういった行為こういに近ちかい。また、生存せいぞんするうえで必要ひつようになっている条件じょうけんを破壊はかいしていくというやり口くちは、雑草ざっそうや害虫がいちゅうを駆除くじょするやり方かたにそっくりである。あるいは戦争せんそう状態じょうたいにおける軍事ぐんじ的てきな作戦さくせんのようでもある。この社会しゃかいに暮くらす人間にんげんたちが生いきられるようにするための施策しさくではなく、特定とくていのカテゴリーに位置いちづけられた住人じゅうにんを生いきられなくする施策しさくである。

　「不法ふほう就労しゅうろう」やら偽造ぎぞう在留ざいりゅうカードとやらを問題もんだいにするまえに、私わたしたちの社会しゃかいはやるべきことがある。それは、ここに暮くらすあらゆる人間にんげんの生存せいぞんを保証ほしょうし尊重そんちょうしなければならないという社会しゃかい的てきな合意ごういをつくることである。こんなことも満足まんぞくにできていないような現状げんじょうで、「不法ふほう就労しゅうろう」の防止ぼうしだとか在留ざいりゅうカード偽造ぎぞうの防止ぼうしだとか、くだらないことをほざいてる場合ばあいではないのだ。人間にんげんを害虫がいちゅうのようにあつかう国家こっかをただしていくことこそ優先ゆうせんしてとりくまなければならない課題かだいであって、批判ひはん的てきに問とわれるべきなのは「不法ふほう滞在たいざい者しゃ」などではなく日本にっぽん国こくのあり方かたである。