(Translated by https://www.hiragana.jp/)
宇宙広場で考える: 大村入管死亡事件について 6・24全国集会での発言

2023ねん6がつ29にち

大村おおむら入管にゅうかん死亡しぼう事件じけんについて 6・24全国ぜんこく集会しゅうかいでの発言はつげん



 

 6月24にちに「これからのたたかいにけた全国ぜんこく集会しゅうかい」(主催しゅさい入管にゅうかん民族みんぞく差別さべつ人権じんけん侵害しんがいたたか全国ぜんこく市民しみん連合れんごう)というのに参加さんかしてきました。改悪かいあく入管にゅうかんほうが6がつ9にち可決かけつ成立せいりつしてしまったことをけ、これからのたたかいをどう構想こうそうしていくのか、というテーマの集会しゅうかいです。

 ここで「大村おおむら入管にゅうかん死亡しぼう事件じけんについて」とだいして、すこしはなしをさせてもらいました。大村おおむら入管にゅうかんがナイジェリアじん男性だんせい餓死がしするにいたるまで放置ほうちした(見殺みごろしにした)背景はいけいには、入管にゅうかんちょう収容しゅうよう送還そうかんをめぐるどのような方針ほうしん指示しじがあったのか。また、その方針ほうしん指示しじはこの見殺みごろ事件じけんのあと、かわったのか、かわらなかったのか。そういったことをおはなししました。

 そうしてはなした内容ないようは、記録きろくとしてのちに参照さんしょうできるようにしておく意義いぎもあるのではないかとおもい、このブログにのっけておきます。ただ、当日とうじつ途中とちゅうまでしか原稿げんこうつくっていかなかったので、冒頭ぼうとうの3ぶんの1ぐらいをのぞいて、記憶きおく再現さいげんしています。実際じっさいにしゃべった内容ないようとは、すこしずれているとおもいます。



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死亡しぼう事件じけん」ではなく「殺人さつじん事件じけん

 今日きょうは6がつの24にちですが、4ねんまえ、2019ねんの6がつ24にちに、長崎ながさき大村おおむら入管にゅうかんセンターで、Aさんというナイジェリアじん男性だんせいくなりました。この4ねんまえ今日きょうこった事件じけんわすれてはならない、しんきざまなければならないとおもい、今日きょうはそのはなしをさせていただきます。

 「死亡しぼう事件じけん」とよくわれるんですけど、Aさんの事件じけんにしろ、ウィシュマさんの事件じけんにしろ、「見殺みごろ事件じけん」とぶべきじゃないかとおもいます。どちらも、死亡しぼうしつつあるひとを「たすけられなかった」という事件じけんではないんです。だって、たすけようとしなかったんだから。たすけられる手段しゅだんはあって、それはぜんぜんむずかしいことじゃなかった。でも、そのたすける手段しゅだんをとらずに見殺みごろしにした。それは「死亡しぼう事件じけん」というより、「見殺みごろ事件じけん」とか「殺人さつじん事件じけん」とぶのにふさわしいんじゃないでしょうか。

 具体ぐたいてきはなします。Aさんは、大阪おおさか入管にゅうかん大村おおむら入管にゅうかんセンターとあわせて、通算つうさんねんはんものあいだ入管にゅうかん施設しせつ収容しゅうようされていました。で、ここからしてほしいとハンガーストライキ、それもみずすらまない絶食ぜっしょくをおこなって、くなってしまったわけです。

 入管にゅうかんちょうは、そのとしの10がつ調査ちょうさ報告ほうこくしょ(「大村おおむら入国にゅうこく管理かんりセンター収容しゅうようしゃ死亡しぼう事案じあんかんする調査ちょうさ報告ほうこくしょ」)をしています。これは入管にゅうかん対応たいおう問題もんだいはなかったというようなことをっている報告ほうこくしょなのですが、Aさんが長期間ちょうきかん拘束こうそくされて自由じゆうがないということをって、「かり放免ほうめんでも強制きょうせい送還そうかんでもいいので、ここからしてください」と、そううったえてハンストをしていたことが記録きろくされているんです。なぜAさんがみずすらまず完全かんぜん絶食ぜっしょくをしていたのか、大村おおむら入管にゅうかん把握はあくしていた、ということです。ということは、入管にゅうかんは、かり放免ほうめん許可きょか検討けんとうするからハンストを中止ちゅうしして、医者いしゃ診察しんさつもうけてくださいと説得せっとくすることができたし、そう説得せっとくすればAさんがハンストを中止ちゅうしする可能かのうせいたかかったはずです。

 実際じっさい、ハンストなどで危険きけん状態じょうたいにある収容しゅうようしゃたいして、入管にゅうかんかり放免ほうめん許可きょかをするからとって食事しょくじをとるように説得せっとくするというれいはぜんぜんめずらしくはないです。入管にゅうかん収容しゅうようして自由じゆう制限せいげんしているひといのちさい優先ゆうせんするなら、そうするしかないわけです。ところが、大村おおむらのセンターは、そうしなかったんです。みずんでないわけだからそのまま放置ほうちしてたら1週間しゅうかん10日とおかぬことはかりきったことなのに、ほったらかしにした。これは見殺みごろしです。入管にゅうかんは「死亡しぼう事案じあん」とんでいるのですが、「見殺みごろ事件じけん」「殺人さつじん事件じけん」とぶべきだとおもいます。



見殺みごろ事件じけん方針ほうしんをかえなかった入管にゅうかんちょう

 ウィシュマさんが見殺みごろしにされた事件じけんおなじですよね。ウィシュマさんはハンストではなく、べたくてもべられない状態じょうたいになっていたということでAさんとはちがうのですけど、さきほどSTARTの支援しえんしゃのおはなしにもあったように、いのちすく方法ほうほうがはっきりしていた、それもぜんぜんむずかしいことではなかった、でも入管にゅうかんはその方法ほうほうをとらなかった、それで見殺みごろしにしたということです。入管にゅうかんはAさんやウィシュマさんのいのちかるくあつかいました。ではなにを入管にゅうかん重視じゅうししたのかといえば、収容しゅうよう継続けいぞくするということだったわけです。

 この、収容しゅうよう継続けいぞく重視じゅうしして、いのちかるくあつかうという入管にゅうかん姿勢しせいは、Aさん事件じけんのあとの入管にゅうかん対応たいおうにはっきりとあらわれています。Aさんが6がつ24にちくなり、その3週間しゅうかんの7がつ17にちに、入管にゅうかんちょう長官ちょうかん佐々木ささき聖子せいこさんというひと日本にっぽん記者きしゃクラブで記者きしゃ会見かいけんをしました*1佐々木ささき長官ちょうかんはここで「長期ちょうき収容しゅうようというのが非常ひじょう問題もんだいだという認識にんしき非常ひじょうつよって」いるとしつつも、「なんとしても送還そうかん迅速じんそくにおこなうことで長期ちょうき収容しゅうよう解消かいしょうしたいというのが入管にゅうかん基本きほんてきかんがえ」であるとべました。迅速じんそく送還そうかんによって、長期ちょうき収容しゅうよう解消かいしょうしようというのが入管にゅうかんかんがえだとったわけです。

 これは、ちょっとややこしい説明せつめいがいるんですけど、Aさんの事件じけんのあとも、入管にゅうかんはこれまでの方針ほうしん維持いじしますよという宣言せんげんです。入管にゅうかんは、2010ねんから15ねんまでのあいだは、長期ちょうき収容しゅうようかり放免ほうめんについて、いまとすこちが方針ほうしんをとっていました。それはどういうことかというと、「長期ちょうき収容しゅうよう問題もんだいだ」ということがまずあって、その長期ちょうき収容しゅうよう回避かいひするためにかり放免ほうめん制度せいど柔軟じゅうなん活用かつようしますと。そういう通達つうたつ入管にゅうかん内部ないぶ*2、プレスリリースも*3国会こっかい答弁とうべん国連こくれんなんかにもそうっていたんです。かり放免ほうめん柔軟じゅうなん活用かつようして長期ちょうき収容しゅうよう回避かいひするんだと。それが入管にゅうかん公式こうしき立場たちばでした。

 ところが、2015ねん9がつにその通達つうたつ廃止はいしされました*4かり放免ほうめん制度せいど活用かつようして長期ちょうき収容しゅうよう回避かいひするという通達つうたつ廃止はいしされ、それで、あくまでも送還そうかんによって長期ちょうき収容しゅうよう解消かいしょうするんだという方針ほうしんになったわけです。結局けっきょくそれはムチャなはなしで、この方針ほうしんによって2015ねん以降いこう全国ぜんこく入管にゅうかん施設しせつでどんどん収容しゅうよう長期ちょうきしていったということは、みなさんごぞんじのとおりですよね。この方針ほうしんにのっとって、大村おおむら入管にゅうかん瀕死ひんしのAさんにかり放免ほうめん許可きょか打診だしんをしなかった、そして見殺みごろしにしたのです。

 ところが、入管にゅうかんちょう長官ちょうかんは、こういういたましい事件じけんがあってもなお、これまでの方針ほうしんえません、維持いじしますと宣言せんげんした。反省はんせいしなかった。見直みなおさなかった。そうして、ウィシュマさんの事件じけんがあったということです。Aさんを見殺みごろしにした事件じけん再発さいはつ防止ぼうし失敗しっぱいしたのです。



本庁ほんちょう指示しじにもとづく現場げんばでの蛮行ばんこう

 収容しゅうよう長期ちょうきになってもかり放免ほうめんはしないんだと、あくまでも送還そうかんだいいちであってそのために収容しゅうよう継続けいぞくするんだと、そうした方針ほうしんのもとで、Aさんが見殺みごろしにされました。で、Aさんのがあっても、入管にゅうかんちょう長官ちょうかんはこの方針ほうしんあらためない、維持いじすると記者きしゃ会見かいけん宣言せんげんしました。

 では、佐々木ささき長官ちょうかんのこの宣言せんげんけて、入管にゅうかんセンターなどの現場げんばはどう対応たいおうしたのか、ということをおはなしします。

 このときに入管にゅうかんがおこなった行為こういは、日本にっぽん政府せいふによる蛮行ばんこう残虐ざんぎゃく行為こういとして歴史れきしのこり、なんひゃくねんかたがれるとおもいます。

 2019ねんの5がつ、6がつごろ――Aさんが大村おおむらでハンストをおこなったのとどう時期じきですが――牛久うしく東日本ひがしにっぽん入管にゅうかんセンター)でも、ぬのを覚悟かくごしてのいのちがけのハンストをやるひと複数ふくすうてきていました*5。2015ねんぐらいからはじまる収容しゅうよう長期ちょうきが、このころには収容しゅうようしゃたちにとって心身しんしん限界げんかいにきていたということです。そして、Aさんの死後しごも、かり放免ほうめんしないならぬまでつづけるという覚悟かくごでのハンストをするひとは、牛久うしくでも大村おおむらでもつぎつぎにてきて、やみませんでした。

 これにたいし、入管にゅうかんは「かり放免ほうめんします」とってハンストを中止ちゅうしするよう説得せっとくし、ハンストしゃがハンストをやめると、自力じりきでなんとか歩行ほこうできるぐらいまで体力たいりょく回復かいふくするのをってかり放免ほうめんするという対応たいおうをとりました。

 ところが、かり放免ほうめん収容しゅうようくのはたったの2週間しゅうかんだけ。2週間しゅうかんにふたたび収容しゅうようするという措置そち入管にゅうかんはとりました。こうしてまた収容しゅうようされたひとがふたたび、あるいはみたびハンストすると、入管にゅうかんは2週間しゅうかんだけかり放免ほうめんしてまた収容しゅうようするということを、くりかえしたのです*6

 一度いちど収容しゅうよういて希望きぼうをもたせ、それをたたきつぶすということを、入管にゅうかんはくりがえしやったわけです。収容しゅうよう長期ちょうきしてもかり放免ほうめんはしない、あくまでも収容しゅうよう継続けいぞくし、送還そうかん帰国きこくむんだという2015ねん以来いらい方針ほうしんは、2019ねんにAさんの事件じけんがあってもかわらなかった。この方針ほうしんにのっとって、2週間しゅうかんだけかり放免ほうめんしてまたつかまえるという、魚釣さかなつりのキャッチ・アンド・リリースみたいなすさまじい蛮行ばんこうが、現場げんばではおこなわれました。

 Aさんの事件じけんから、入管にゅうかんはある意味いみでは教訓きょうくんをえたといえばえたのです。ただし、それは、ころすところまでんでしまったのはマズイということにすぎなかった。ころさない程度ていどいためつけろという入管にゅうかんかんがえが、この2週間しゅうかんかり放免ほうめんさい収容しゅうようのくりがえしにはあらわれています。



改悪かいあく入管にゅうかんほう成立せいりつ連帯れんたい

 2020ねん以降いこう、コロナの感染かんせん拡大かくだいで、収容しゅうようしゃすうらすという入管にゅうかん方針ほうしんがあり、これにおうじて収容しゅうよう長期ちょうきはある程度ていど解消かいしょうしてはいます。しかし、さきにべた人命じんめい軽視けいし方針ほうしんつづいていることは、ウィシュマさんの事件じけんからもあきらかです。

 で、今回こんかい成立せいりつした改悪かいあく入管にゅうかんほう。これは、いまべてきたような送還そうかん強硬きょうこう方針ほうしん延長線えんちょうせんじょうにあるものです。この法律ほうりつ成立せいりつしてしまったということは、その以前いぜんからの送還そうかん強硬きょうこう方針ほうしん入管にゅうかん今後こんごつづけていくのを後押あとおしすることになるとおもいます。そして、入管にゅうかん送還そうかん強硬きょうこうにすすめていこうとしたときに、そのおもな方法ほうほうは、収容しゅうようです。かり放免ほうめんしゃさい収容しゅうようする、長期ちょうき収容しゅうようする、そうしていためつけて、帰国きこく強要きょうようする、ということを今後こんごますます強化きょうかしてくる可能かのうせいたかい。

 しかし、今回こんかい入管にゅうかんほう改悪かいあく反対はんたいする運動うんどうおおきくがり、たくさんのひと入管にゅうかん差別さべつ人権じんけん侵害しんがい問題もんだい関心かんしんをもち、さらに行動こうどうにうつすのをにして、とても勇気ゆうきづけられました。入管にゅうかん包囲ほういするわたしたちの連帯れんたいは、いままでになくつよくなっているとおもいます。長期ちょうき収容しゅうようさせない。さい収容しゅうようさせない。送還そうかんさせない。入管にゅうかんが「送還そうかん忌避きひしゃ」とぶ、送還そうかん拒否きょひせざるをえないひとびとについて、難民なんみん認定にんてい審査しんさ適正てきせい在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかによって入管にゅうかん在留ざいりゅう資格しかくさせる。そのために知恵ちえい、ともにちからわせましょう。



ちゅう

*1: 会見かいけん動画どうがは、以下いかのページにリンクされている。
 佐々木ささき聖子せいこ出入国しゅつにゅうこく在留ざいりゅう管理庁かんりちょう長官ちょうかん 会見かいけん | 日本にっぽん記者きしゃクラブ JapanNationalPressClub (JNPC) 

*2: 2010ねん7がつ27にち法務省ほうむしょう入国にゅうこく管理かんりきょくきょく長長ながなが退去たいきょ強制きょうせい令書れいしょにより収容しゅうようするものかり放免ほうめんかんする検証けんしょうとうについて(通達つうたつ)」   

*3: 2010ねん7がつ30にち法務省ほうむしょう入国にゅうこく管理かんりきょく「プレスリリース 退去たいきょ強制きょうせい令書れいしょにより収容しゅうようするものかり放免ほうめんかんする検証けんしょうとうについて」   

*4: 2015ねん9がつ18にち退去たいきょ強制きょうせい令書れいしょにより収容しゅうようするものかり放免ほうめん措置そちかか運用うんよう動静どうせい監視かんしについて(通達つうたつ)」 

 *5: 2019ねん5がつごろから東日本ひがしにっぽん入管にゅうかんセンターでいのちがけのハンストを実行じっこうする収容しゅうようしゃてきたことについて、以下いかかり放免ほうめんしゃかいによる記録きろく
 長期ちょうき収容しゅうようへの抗議こうぎを!(東日本ひがしにっぽん入管にゅうかんでのハンストをめぐって)(2019ねん6がつ19にち)
 東日本ひがしにっぽん入管にゅうかんセンターでのハンスト、50にちちかくになるひと(2019ねん6がつ25にち

 *6: 以下いかは、2週間しゅうかんかり放免ほうめん収容しゅうようのくりがえしについて、東日本ひがしにっぽんおよび大村おおむら入管にゅうかんセンターにたいする抗議こうぎ記録きろく
 抗議こうぎ声明せいめい入管にゅうかんによるせしめ・恫喝どうかつ目的もくてきとしたさい収容しゅうようについて(2019ねん7がつ29にち)
 東日本ひがしにっぽん入管にゅうかんセンターに抗議こうぎしました――かり放免ほうめん2週間しゅうかんののちのさい収容しゅうようについて(2019ねん8がつ6にち)
 さい収容しゅうようおよび長期ちょうき収容しゅうようについて抗議こうぎもうれ(8/21、東日本ひがしにっぽん入管にゅうかんセンターに)(2019ねん8がつ27にち)
 抗議こうぎのよびかけ】人命じんめいをもてあそぶ入管にゅうかんによる再々さいさい収容しゅうようについて(2019ねん10がつ29にち)
 10月30にち 大村おおむら入管にゅうかんセンターに抗議こうぎもうれ(収容しゅうようしゃ死亡しぼう事件じけんとハンストしゃさい収容しゅうようとうについて)(2019ねん11月5にち)

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