繋つながったその温ぬくもりを　目めを開あけると、今いま一いち番ばん見みたい顔かおがそこにあった。
「アルトさん」
　思おもわず名前なまえを呼よぶと、アルトは僅わずかに微笑ほほえんだように見みえた。
「すまない、起おこしてしまったか。どうだ、調子ちょうしは」
　そう問とわれ、ミランは自みずからの状況じょうきょうを改あらためて確認かくにんする。熱ねつを出だして寝込ねこんでいた。少すこし前まえまでは何なんともなかったのだ。それが急きゅうに発熱はつねつし、体調たいちょうが悪わるくなった。ふらふらしているところを元もと軍師ぐんしである宰相さいしょうに見みつけられ、強制きょうせい的てきにベッドに押おし込こまれて医者いしゃの診察しんさつを受うけさせられ、この数日すうじつ間あいだ薬やくを飲のんで寝ねていたのだった。だが、そのお陰かげで以前いぜんよりは少すこし良よくなっている気きがする。そう自みずからを分析ぶんせきしたミランはアルトにそれを伝つたえ、それから肩かたを落おとした。
「……情なさけないなぁ……今いままでほとんどこんなことなかったし、少すこし前まえまでは全然ぜんぜんぴんぴんしてたんですけど」

存在そんざいが消きえる病やまいのフリーナちゃんのお話はなし僕ぼくの存在そんざいは少すこしづつ消きえていく


僕ぼくは少すこしづつ存在そんざいが消きえる病やまいにかかってる。
この病やまいは原因げんいんがよく分わかっていなくて、ただわかるのは存在そんざいが消きえていく病やまいってことだけ。
乖離かいり症しょうとも呼よばれている。
だから、僕ぼく、フリーナという存在そんざいは少すこしづつ消きえていく。周まわりには気付きづかれないほどゆっくりだけど確実かくじつに消きえていく。そしていつかはみんなの前まえから消きえて居いなくなって、多分たぶん記憶きおくにも残のこらないと思おもう。そんな寂さびしい病やまいだ。

だからいつもは僕ぼくはずっと病やまいの進行しんこうを止とめる効果こうかがある、医療いりょうカプセルの中なかにいて外そとに出でる時ときは体からだに小ちいさな機械きかいを付つけて生命せいめい維持いじをしてる。
その機械きかいがないと僕ぼくは歩あるくこともあまり出来できなくて、病やまいの進行しんこうも速はやくなる。
医療いりょうカプセルも機械きかいも僕ぼくを拾ひろってくれた組織そしきの人ひとが僕ぼくの為ために用意よういしてくれたものだ。彼かれらはみんな優やさしくて、機械きかいがあれば少すこしだけど外そとに出でれて皆みなと同おなじ様さまに歩あるけてそして与あたえられた任務にんむもできる。

エプロン何なにやらいい匂においがしてきて俺おれは目めが覚さめた。
朝あさの６時じ。
そろそろ起おきないといけないな…。

今日きょうはナタルが朝食ちょうしょくを作つくる番ばんだ。
一緒いっしょに住すみ始はじめた当時とうじは料理りょうりが苦手にがてだったナタルも、今いまではトーストやハムエッグを焦こがさず作つくれるようになった。
もう少すこしだけ、と、ベッドの中なかでまどろむ慌あわただしさの前まえの至福しふくの時間じかん。

「バン！」
「おい、起おきろ！もう7時じだぞ」
ナタルがドアを蹴破けやぶる勢いきおいで入はいってきた。
「ふえ？」
どうやら俺おれは寝ねてしまっていたらしい。
眠ねむい目めをこすり起おき上あがるとふとナタルか身みにつけているエプロンに目めがいった。
見みたことないピンクのエプロン。
買かったのかな？
ふと見みると
「Du bist heute auch süß！」ー今日きょうも可愛かわいいぞー