「ピアノの練習は好きとか嫌いではなく“習慣”になっていた」(ヒイズミ)
ーー『侍JAZZクリニック』を通して子どもたちと向き合う中で、どんな発見がありましたか。
ヒイズミ:子どもは「楽しいということに敏感」だと感じました。それに、適応する能力の早さは凄いですね。ありきたりな言葉ですけど、無限の可能性を感じます。正直に言うと、自発性はもっと欲しいですが、そこをどうやって引っ張ってあげるか、というところが課題ですね。
ーー10月24日から開催される『侍JAZZキッズ~PE'ZとJAZZで学ぼう、遊ぼう、楽しもう!~秋冬教室〜』が音楽と出会うきっかけになる生徒さんもいると思うのですが、お二人が音楽と出会ったきっかけを教えてください。
航:僕は小学校4-5年生のときに、近所のお祭りで太鼓を叩く人の姿を見て、叩かせてもらってビビっときました。中学時代はブラスバンドをやっていたんですが、打楽器担当の人たちがみんなドラム小僧だったので、そこに加わって3年間、みんなでドラムの勉強をしていました。形式的にはブラスバンドでいろいろな打楽器をやるけれど、みんな裏でドラムの練習をしていました。わりとフュージョン系のものにも挑戦したりして、テクニカルな部分を早いうちから楽しんでましたね。
ヒイズミ:僕はあんまり覚えていないんですけど、気づいたら4歳くらいからピアノを習っていました。僕がビビっと来た瞬間は、近所のピアノ教室で、先生がピアノを弾いてみんなで歌を歌うときに、先生が弾きながら素早く譜めくりをしたときなんです。それを「すごいかっこいい!」って思って(笑)。そういう音楽と関係ないことがいろいろ記憶に残ってたりしますね。「レッスンが終わった後のジュース何にしようか」とか(笑)。練習は好きとか嫌いではなく“習慣”になっていて、あんまり考える暇もなくやっていました。「今日はうまく弾けなかった…けどジュース!」みたいな(笑)。毎日2時間弾くというのは高校時代まで継続していました。
ーー“習慣”でずっと続いていったのは、同時に音楽の面白さを感じていたからでしょうか。
ヒイズミ:根本的に女性的な性格だったのかもしれないです。みんなとも遊んではいましたけど、1人で遊ぶのが好きでした。
航:僕も、中学校で授業が終わったあと、周りがサッカーや野球の部活をやっている中で、テーブルを叩いてドラムの練習をしていました。他が全然気にならなくて。音楽がそれだけ好きだったんだと思います。周りと同じようにスポーツをやりたいとか全く思いませんでした。
ヒイズミ:中学に入ったときも、吹奏楽部にちょっと入りたいと思ったんですけど、みんなと違っててもいいや、って思って、レッスンに通い続けました。それがターニングポイントだったように思えますね。「みんな部活に入らなきゃいけない」みたいな、みんなと何かをするとかが嫌だったし、高校も地域の学校じゃなくて、遠くの音楽高校を1人で専願しました。仲良くない人たちとの団体行動は今でもちょっと苦手ですね。知っている人たちだけだったら何とか。
ーークリニックの秋冬教室は全10回で開催されますが、今度はどんな内容になりそうでしょうか。
ヒイズミ:来た生徒さんによって考えようかな、と思っています。「どこを伸ばすか」ということを一瞬で見極めなきゃいけないので、非常にプレッシャーですが。
ーー初めて楽器を触る、という人もいるでしょうけれど、特にドラムなどは、初めての子はなかなか難しいのではないでしょうか。
航:前回は日程が連続していたのですが、今回は1週間に1回なので、持ち帰って練習したりする時間もあります。なので、教える側としても、もう少し踏み込んだ講習にしたいと思っています。全てを教えることは無理かもしれませんけど、それが音楽を好きになる、楽器を好きになるきっかけになってくれればいいなと。
ヒイズミ:キーボード界、ピアノ界の変人としましては(笑)、やっぱり普通ではない感じでいきたいと思うんですけど、「来てよかったな」と思える時間を全力で作りたいと思います。