BUCK-TICK、THE BLUE HEARTSらが築きずいた礎いしずえ　バンド活況かっきょうの扉とびらを開ひらいた80年代ねんだい後半こうはんのロックシーン

　3月3日にちに放送ほうそうされた『関せきジャム 完全かんぜん燃もえSHOW』（テレビ朝日てれびあさひ系けい）の「今いま改あらためて知しりたいBUCK-TICK特集とくしゅう」にて、1987年ねんにメジャーデビューしたバンドの顔かおぶれに出演しゅつえん者しゃたちが驚おどろいていた。そこで名前なまえが挙あがっていたのは、BUCK-TICK、THE BLUE HEARTS、ZIGGY、UNICORN。確たしかに1987年ねんは、1990年ねん前後ぜんこうに興隆こうりゅうしたバンドブームの扉とびらが開ひらいた年としと言いえる。この後のち「ホコ天てん」「イカ天てん」がキーワードになり、バンドは文化ぶんかや経済けいざいとも結むすびつくムーブメントになったのだ。

パンク／ニューウェイヴの流ながれから生うまれた80年代ねんだいロックの隆盛りゅうせい

　それまでの流ながれを振ふり返かえってみよう。1980年代ねんだい前半ぜんはんに世界中せかいじゅうで起おきたパンク／ニューウェイヴのムーブメントは、それまでとは違ちがったロックを生うみ出だした。日本にっぽんではYMO（Yellow Magic Orchestra）に始はじまるテクノポップも加くわわり、演奏えんそうスタイルやファッションは百花繚乱ひゃっかりょうらん。5億おく年ねん前まえに突如とつじょ多種たしゅ多様たような生物せいぶつが誕生たんじょうしたカンブリア爆発ばくはつさながら、バンドエクスプロージョンとでも言いいたい状態じょうたいに突入とつにゅうしていた。さらに日本にっぽん独自どくじの言語げんごやビートといったエッセンスも加くわわって、バンドはますます多様たようになっていった。

　そうした中なかで、新しん世代せだいバンドとしてまず注目ちゅうもくを集あつめたのが、雑誌ざっし『宝島たからじま』が「インディーズ御三家ごさんけ」と呼よんだラフィンノーズ、THE WILLARD、有頂天うちょうてん。いずれもインディーズレーベルを自みずから立たち上あげ活動かつどうするDIYを旨むねとしていたことも、若わかい世代せだいの独立どくりつ精神せいしんを大おおいに刺激しげきした。彼かれらの活動かつどう拠点きょてんとなるライブハウスが全国ぜんこく各地かくちに増ふえ、また高速こうそく道路どうろ網もうが広ひろがっていったことで機材きざい車しゃでツアーをするインディーズバンドが増ふえ、全国ぜんこく的てきにバンド熱ねつが活性かっせい化かしていった。その熱ねつの中なかから飛とび出だしてきたのが、THE BLUE HEARTSやBUCK-TICKだ。

　The Rolling Stonesや古ふるいブルースが好すきな甲かぶと本ほんヒロト（Vo）と、The Beatlesをはじめとするロックンロールに影響えいきょうを受うけていた真島まじま昌利まさとし（Gt）が、パンクに夢中むちゅうになりバンドを組くんだのはこの時代じだいの必然ひつぜんと言いえようか。真島まじまは初はつの著書ちょしょ『ROCK&ROLL RECORDER』でSex Pistolsの「God Save the Queen」を最初さいしょに聴きいたときの衝撃しょうげきを「ぶっ飛とびました。初はじめてビートルズを聴きいた時ときと同おなじように、僕ぼくは無言むごんのままで固かたまってしまいました」と記しるしている。

　Sex PistolsやThe Clash直系ちょっけいの破やぶれたTてぃーシャツや革かわジャン姿すがたで、ストレートなエイトビートを尖とがらせてシャウトする。〈ドブネズミみたいに美うつくしくなりたい〉（「リンダ リンダ」）という逆説ぎゃくせつ的てきな歌詞かしは、青々あおあおとした思おもいの吐露とろとして若わかい世代せだいに突つき刺ささった。脈絡みゃくらくなく連呼れんこする〈リンダ〉という名前なまえは誰だれにも当あてはまった。その鋭するどさは今いまも変かわらない。

　高校こうこうの同級生どうきゅうせいを中心ちゅうしんに組くまれたBUCK-TICKも、1980年代ねんだい前半ぜんはんの熱ねつを思おもい切きり浴あびてバンドを組くんだ。今井いまい寿ひさし（Gt）が強つよく影響えいきょうを受うけたのはザ・スターリンやYMO。またThe Cure、Bauhaus、Joy Divisionなど英えいニューウェイヴの影響えいきょうもBUCK-TICKには色濃いろこい。注目ちゅうもくを集あつめたヘアスタイルやファッション、ポップな曲きょくにダークな歌詞かしといった手法しゅほうにそれが見みて取とれる。彼かれらがバンドを組くんだ頃ころ、地元じもと・群馬ぐんまの先輩せんぱいバンド BOØWYが人気にんきを高たかめつつあった。その後ごを追おう同郷どうきょうバンドに注目ちゅうもくが集あつまり、ちょっとした“群馬ぐんまブーム”が起おきていた。ROGUEやBUCK-TICKは、そんな後輩こうはいバンドという位置いちづけもされていた。

　UNICORNは、ソニー・ミュージックエンタテインメントのアマチュアオーディション『CBSソニーオーディション』からデビューしたバンド。地元じもと・広島ひろしまで活動かつどうしていたアマチュアバンドの精鋭せいえいメンバーが組くんで掴つかんだチャンスだった。ライブハウスに出でるのと同様どうように、アマチュアオーディションでも腕試うでだめしとばかりに応募おうぼしていたバンドたちの中なかから、頭角とうかくを現あらわすものがいるのも当然とうぜんの流ながれだ。

　バンドの爆発ばくはつ的てきな増加ぞうかから生うまれたのが「ホコ天てん」ブーム。1970年代ねんだいから全国ぜんこく的てきに広ひろがった歩行ほこう者しゃ天国てんごくの中なかで、1980年代ねんだいになると東京とうきょうの原宿はらじゅく駅えき付近ふきんから代々木公園よよぎこうえん沿ぞいの通とおり（都道とどう413号ごう）に集あつまって踊おどる「竹たけの子こ族ぞく」「ローラー族ぞく」といったダンス集団しゅうだんが話題わだいになったが、1980年代ねんだい中頃なかごろからアマチュアバンドが並ならぶようになり、バンド目当めあての若者わかものが集あつまるようになった。当初とうしょのバンドたちはストリートパフォーマンスのつもりだったようだが、次第しだいにライブハウス代かわりの演奏えんそう場所ばしょ、バンドを知しってもらう場所ばしょといった意味合いみあいが強つよくなっていく。いわゆるノルマ方式ほうしき（出演しゅつえんのためにチケットのノルマを課かす）のライブハウスが増ふえたため、お金かねのない若わかいバンドや売うれていないバンドにとって敷居しきいが高たかくなったことも、彼かれらをホコ天てんに向むかわせた一因いちいんだ。地方ちほうからやってくるバンドも少すくなくなく、前夜ぜんやから車くるまを駐ちゅうめて場所ばしょの争奪そうだつ戦せんが起おこったほど。そうした中なかで人気にんきの高たかいバンドはメジャーへの切符きっぷを手てに入いれる。先陣せんじんを切きったのはJUN SKY WALKER(S)だった。

　ライブハウスも活況かっきょうを呈ていし、メジャーレーベルは人気にんきバンドと契約けいやくしていく。筋肉きんにく少女しょうじょ帯たいやゲルニカなど、それ以前いぜんならメジャーが手てを出だすと思おもえないバンドが成功せいこうを収おさめ、当時とうじのサブカルブームと呼応こおうして“新人しんじん類るい”というワードを象徴しょうちょうする存在そんざいにもなった。パンク／ニューウェイヴから派生はせいした新あらたな音楽おんがくは若者わかもの文化ぶんかの中心ちゅうしんとなり、世代せだいを超こえて認識にんしきされるようになった。