他にも1980年に「黎紅堂」が始めた貸レコード店が瞬く間に全国に増え、円高のおかげで輸入盤が安くなり専門店も増加、様々な音楽を手軽に楽しめる場になった。また安価になったカセットテープで、1980年頃から各地で開局したFM局の番組を録音したり、自分たちのオリジナル曲を録音して配布・販売するバンドも多かった。そして1982年から一般発売されるようになったCDが1988年には年間生産数(11553万枚)でアナログレコード(3946万枚)を上回った(※1)。カセットウォークマンに続きCDウォークマンも発売され、歩きながら音楽を聴くのも当たり前になったのがこの頃だ。BUCK-TICKのメジャー初シングル曲「JUST ONE MORE KISS」がCDラジオカセットレコーダー「CDian」のCMに使われたこともこの時代を象徴している。ラジオとカセットレコーダー/プレイヤーが一体化したラジカセは、当時の10代・20代にとって必需品だった。
中でもJICC出版局(現・宝島社)の『バンドやろうぜ』(通称、『バンやろ』)は、まさにバンドを組もうとする若者の必読誌だった。その創刊35周年を祝って2023年8月に各地のラジオ局が東名阪で主催した『バンドやろうぜ -ROCK FESTIVAL- THE BAND MUST GO ON!!』に出演したのは、JUN SKY WALKER(S)、GO-BANG’S、PERSONZ、岸谷香、筋肉少女帯、ZIGGY、RESPECT UP-BEAT。当時の誌面を賑わしたバンドブームの申し子であり、1987年前後のシーンを牽引したバンドたちだ。このイベントで見せた健在ぶりは、あの時代の熱が今も脈々と受け継がれていることを感じさせた。