「スタッフさんが、“ドラマの伝説が生まれた“って言ってた。え、これ、最終回でいいんじゃない?って(笑)」と、放送直前にムロツヨシと戸田恵梨香がインスタライブで語ったように、11月9日放送の『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)第5話は、伝説級の感涙シーンが待ち受けていた。
「好きと嫌いは選べない」と同じように、“報われる喜び”も“すれ違う悲しみ”も突然やってくるものだ。どんな状況の尚(戸田恵梨香)のことも愛しているのだと言った真司(ムロツヨシ)も、きっと自分から「別れよう」なんて言う日が来るとは思わなかったはず。贅沢な暮らしも、安定した結婚も、何もかも捨てて自分と“砂漠を歩こう”と決めてくれた尚を、真司はどうにか幸せにしたいと思った。だが、その想いが強いからこそ、同時に自分にできることの限界に絶望したのだ。
私たちは身体の好調と不調を繰り返しながら生きている。傷ついては修復し、調子のいい状態を保とうと努力する。それと同じように、心だって変動しているのだ。乾燥して敏感になったり、小さなキズがいつの間にか膿んでしまったり。見えないから、どれほど傷ついているのか見逃すこともある。だから、何かを決断しようとするときは、特に大事なものを手放すしかないと結論づけそうになるときは、自分の心が弱っていないかと、慎重に観察したほうがいい。
真司は身体を壊したのと同時に、心を深く傷つけた。愛する人を守ることのできない絶望。だが、その傷は今まで人を深く愛したことのない真司にとって、知らない傷だったのだ。心が弱ると、急激に視野が狭くなる。そして“これしかない”という極論に達してしまう。数多くある可能性とともに、自尊心が手のひらから、ハラハラとこぼれ落ちてしまうから。目の前には、尚の願いを叶えられる経済力を持ち、治療を共に進めることができる侑市(松岡昌宏)がいる。尚にとってそばにいるべき人は、自分じゃなくて、この人だ。そう思いこむことこそが、自分が尚にしてあげられる最善だ、と思ったのだろう。
もちろん、この真司の独りよがりな決断は尚を深く傷つける。そもそも尚の人生、誰と一緒に過ごすことが最善かは、尚が決めること。そばにいる人がしてあげられることなんて、それこそ「好きにさせてあげること」しかないのだから。そもそも相手のために何かをしてあげる、なんてことは多くが自分がそうしたいからでしかない。「これで尚を幸せにすることができた」。そう真司が思いたかったからに他ならない。