絵本から抜け出してきたようなかわいい絵柄。ぬいぐるみや人形のようにキュートなモチーフ。クレヨンの箱をのぞいたようなにぎやかな色彩。手に触れるとやわらかさとともにぬくもりも感じます。女の子も男の子も、子どもたちが自然と笑顔になる。そんな魔法のようなキッズウエア、それが「Misha & Puff」(ミーシャ アンド パフ)です。デザイナーの Anna Wallack(アンナ・ウォーラック)さんは、キッズウエアの世界でも指折りのセンスを持っていることで知られています。彼女がつくり出すニットやピマコットンの服はユニークでオリジナル。ロンハーマンでも、2018年からお付き合いを始めて以来、すっかり定番に。毎シーズン、新しいコレクションが登場するのを心待ちにしているファンもたくさんいます。ロンハーマンではおなじみのブランドですが、アンナさんの言葉とともに、その魅力について改めて紹介しましょう。
アメリカ発「Misha & Puff」(ミーシャ アンド パフ)のデザイナーのAnna Wallack(アンナ・ウォーラック)さん。手がける服のように、明るい笑顔が印象的
今ではすっかり人気のキッズウエアブランドになったMisha & Puffですが、ある一枚のニットが、その誕生のきっかけでした。アンナさんはアートスクールに通った後、スタイリストとして10年間働いていました。そして、結婚して子どもができ、男の子を授かることに。「最初の子どもが生まれたとき、息子のために特別な一枚を編もうと思いました。意味があって、時代を超えた特別な服を着せてあげたかったんです。そのニットがMisha & Puffの始まりでした。彼はもうすぐ14歳になります」。「Misha & Puff」——とても個性的な名前ですが、どのようにネーミングしたのでしょう。「『Misha』は、共同創業者でもある夫のニックネーム、そして『Puff』は付き合い始めたときに彼が私に付けたニックネームでした。この名前はブランドを始める前から存在していました。ただ、いつも響きがかわいいと思っていたんです。運命といってもいいでしょうね」。何と素敵な話でしょう。夫婦の愛、子どもへの愛、家族の愛情からMisha & Puffは生まれたのです。服に宿ったやさしいぬくもりの理由の一つがここにあります。
Misha & Puffは創造的なデザインながら、耐久性も高く機能性にも富んでいる。服のダメージを気にすることなく、子どもたちに毎日、元気で遊んで笑顔でいてほしい、というアンナさんの思いが込められている
アンナさんは、シーズンごとに次々と新しいデザインを生み出します。どれもアンナさんのセンスが感じられ、アートワークのようにクリエイティブです。いったい、このようなたくさんのデザインのアイデアはどこからやってくるのでしょうか。「 子どもが最初のインスピレーションの源ですが、実はヴィンテージの服も大好きなんです。子どもたちに服を着せることで、彼ら彼女たちの色彩に対する愛情や、服を通して子どもたちの創造性や個性を表現する方法について考えています。それが大きなインスピレーションになります」。そして、アンナさんは人生そのものがインスピレーションとも語ります。「必要なのは、インスピレーションを受け入れることだと思います。美術館や旅行、本、友人との会話、映画など、あらゆるものが私のデザインの源になります。私はいつも探しているんですよ。普段からメモをしたりスケッチブックに絵を残したり、写真を撮ったりしています。それがいつ将来のコレクションになるかわかりませんから」。
ニットは、ペルーの女性の職人たちによって、一枚一枚、ハンドメイドでつくられる。繊細で巧みなニッティングの技術は世界トップレベルのクオリティ。やわらかい肌触りに子どもたちも満足するはず
息子のために編んだ一枚のニットから始まったMisha & Puffですが、今では世界的に知られるようになり、多くの子どもたちが着るようになりました。アンナさんは服づくりを通して、キッズウエアブランドとは何かということを問おうとしています。「私は毎日の暮らしの中に映画のような、ドラマが存在することを信じています。日々、服を着ることで生まれる物語。子どものころ、特別な服を着るのがどれほど楽しかったかを鮮明に覚えています。スタイルや色を通じて、世界に自分をどのように見せたいかを表現できました。この考え方が私を前進させ、今でも新しいものをデザインする原動力になっています。一日一日が、子どもたちに本当にかけがえのないものだと信じています。だから、私にとって最高の服とは子どもたちが毎日着られるものであり、日々の着用に耐えられなければなりません。Misha & Puffは常に自分たちが知る限りベストの方法で服をつくることを目標としています。私たちはMisha & Puffが使用する材料や服づくりをする方々を、リスペクトしています」。
コットンウエアは、世界三大高級綿の一つ、ピマコットンを使用。栽培から織りまですべて監修しているので、デザインパターンや染色、配色の組み合わせまで独自の世界を表現できる
「服づくりをする方々への敬意」——Misha & Puffのニットのタグには、手がけた職人の名前が記されています。その名前はすべてペルーの女性たち。なぜなら、アンナさんは、彼女たちが編むニットこそが、世界最高の品質であると信じているからです。「 Misha & Puffのためにニットを編む女性たちは、ハイレベルな技術を持つ職人たちです。彼女たちのおかげで、このブランドは成り立っているのです。彼女たちと仕事をするために初めてペルーに行ったときから、その技術に畏敬の念を抱きました。私たちは現在、多くのニッターのグループと仕事をしています。彼女たちはコミュニティでニットを編むことで、自宅で仕事ができ、キャリアを築くことができています」。アンナさんは、ペルーの首都リマにMisha & Puff専用のニッティングセンターを構えました。そこには託児所もあり、食事の提供も。女性たちは安心して働くことができ、安定した収入を得ることができます。そこからもアンナさんの「子どもたちにとってより住みやすい世界をつくるために」という思いを感じ取ることができます。
バイタリティとクリエイティビティにあふれるアンナさん。次に何を新しく生み出すのか楽しみでならない
Misha & Puffの人気によって、多くの子どもたちに笑顔を与えて、女性たちのコミュニティにも貢献してきたアンナさん。この先の夢は何でしょうか。「その質問、大好き! 私はいつも『次の何か』を探しています。落ち着きがない性格なので」と笑います。「常に前向きで前進し、改善し、成長し続けることが大好きなんです。リスクをおかしてでも新しいことに挑戦しているときが一番幸せなの。それはMisha & Puffにとっても同じことがいえるわ」。さて、アンナさんは、この先、何を生み出し、創造していくのでしょうか。Misha & Puffの新作コレクションのように、子どもたちや私たちをワクワクさせてくれるはず。いずれにしても、その根底にあるアンナさんの思いは変わることはないでしょう。「子どもたちこそが、この惑星を受け継ぐ人たちなのだから……」。