先住せんじゅう猫ねこはちと２匹ひき目めハナ　トライアル開始かいしから２週間しゅうかん、譲渡じょうとを諦あきらめようと決断けつだんした

　愛あい猫ねこ「はち」の同居どうきょ猫ねこ候補こうほ、推定すいてい９歳さいの三さん毛もう猫ねこ「みーちゃん」を保護ほご猫ねこ団体だんたいB会かいでみつけ、トライアルを開始かいし。すべり出だしは順調じゅんちょうで、家いえの子こにするつもりで「ハナ」と名付なづけた。

　だが２週間しゅうかんが経たったとき、私わたしは考かんがえてしまった。

　はちとハナは、本当ほんとうにひとつ屋根やねの下したで同居どうきょできる相性あいしょうなのだろうか。

（末尾まつびに写真しゃしん特集とくしゅうがあります）

続つづく一触即発いっしょくそくはつの状態じょうたい

「多た頭あたま飼かいガイド」によると、先住せんじゅう猫ねこと新入しんいり猫ねこが威嚇いかくしたり攻撃こうげきし合あったりするのはだいたい最初さいしょの１週間しゅうかんだそうだ。２週間しゅうかんほど経たつと互たがいの存在そんざいに慣なれ、距離きょりをはかれるようになり、落おち着ついてくることが多おおいという。

　はちとハナの場合ばあいは、逆ぎゃくだ。最初さいしょは良好りょうこう、１週間しゅうかん経たつとはちが朝あさから激はげしく鳴ないたり、軽かるい膀胱ぼうこう炎えんになったりするなどストレスがかかっていることが表面ひょうめん化か。やがてハナを叩はたき、威嚇いかくするようになり、２週間しゅうかんが経過けいかする頃ころにはハナも応戦おうせんし、一触即発いっしょくそくはつの状態じょうたいが起おこるようになった。

　こういうケースは、本ほんを見みても、インターネットで検索けんさくしても出でてこなかった。

　また原因げんいんが、ハナの強引ごういんな鼻はなチューならぬ鼻はな突とっきというのも、謎なぞだった。

　新入しんいり猫ねこが子猫こねこだった場合ばあい、遊あそんでほしくて先住せんじゅう猫ねこを追おい回まわし、嫌いやがる先住せんじゅう猫ねこが威嚇いかくすることは日常にちじょう茶飯事さはんじのようだ。

　だが、人間にんげんに換算かんさんすれば50歳さいを超こえたメスの猫ねこが、同おなじ年ねんごろのオス猫ねこに強引ごういんに迫せまる、というケースは見みあたらなかった。もう遊あそびたい年としではないだろうし、ハナの場合ばあいは外そとでもずっと１匹ひきで生活せいかつしていたそうなので、「猫ねこが好すきな猫ねこ」というわけでもなさそうだ。

　ちなみに２匹ひきの関係かんけいがバトルまで発展はってんせず、「一触即発いっしょくそくはつの状態じょうたい」で止とまっているのは、私わたしが「ダメ！」と叫さけんで制せいするからだった。

　本当ほんとうは、どちらかが一方いっぽう的てきに相手あいてを追おい詰つめたり、流血りゅうけつ騒動そうどうに発展はってんしたりしそうでない限かぎりは、飼かい主ぬしの介入かいにゅうはNGだそうだ。飼かい主ぬし目線めせんでは不穏ふおんに映うつる光景こうけいでも、猫ねこたちにとっては距離きょりをはかるための手合てあわせで、人間にんげん側がわには猫ねこ同士どうしで折おり合あいをつけていく過程かていを見守みまもる度胸どきょうが必要ひつようという。

　だが私わたしは、２匹ひきが鬼おにのような形相ぎょうそうで向むき合あっているのを見みるだけでも耐たえられなかった。どこまでが介入かいにゅうしてはダメで、どこからがいいのか、その冷静れいせいな判断はんだんもできなかった。

迫せまるトライアル期日きじつ

　トライアル期間きかんは、原則げんそく２週間しゅうかんとなっていた。そろそろ決断けつだんを下くださなければいけないが、この状態じょうたいでは胸むねを張はって「うちの子ことして迎むかえます」とは言いえない。今いまのはちとハナの状況じょうきょうを説明せつめいしたらB会かいの人ひとたちは心配しんぱいするだろう。うちの子ことして迎むかえる自信じしんはないが、かといって「トライアルは白紙はくしに」と言いわれるのも怖こわかった。

　ハナは毎日まいにち、ケージの中なかで万歳ばんざいをした姿勢しせいでおなかを出だして寝ねている。この姿すがたが見みられなくなることは、想像そうぞうしがたくなっていた。

　とはいえ、最さい優先ゆうせんで考かんがえるべきことは、先住せんじゅう猫ねこはちのことだ。このままストレスが続つづき、膀胱ぼうこう炎えんがぶり返かえし、さらにもっと重大じゅうだいな体調たいちょう不良ふりょうに陥おちいったら一大事いちだいじだ。

「これは想像そうぞうだけど」と前置まえおきしてツレアイは言いった。

「ハナは賢かしこい猫ねこだよ。だから、この環境かんきょうで生いきていくには、はちとうまくやっていくことが最さい重要じゅうようだと、本能ほんのう的てきに察知さっちしているんじゃないかな。それで、自分じぶんからはちに甘あまえる仕草しぐさをしたり、積極せっきょく的てきに鼻はなチューをしようとしているんだと思おもう」

　ハナの鼻はなチューは「はちが好すきだからではない」というのが、ツレアイの見解けんかいだった。

　はちは、新あたらしいものに対たいして比較的ひかくてき物怖ものおじしない性格せいかくだ。そのため、最初さいしょはハナに興味きょうみがあり、積極せっきょく的てきに近ちかづいて行いった。でも次第しだいに「自分じぶんの生活せいかつを脅おびやかす侵略しんりゃく者しゃ」ということがわかり、「受うけ入いれたくないから、攻撃こうげきするようになったのでは」とツレアイは言いった。

　私わたしはこれらの言葉ことばに納得なっとくし、今後こんごのことを２人ふたりで話はなし合あった。

２匹ひきの生活せいかつを守まもるために

　この状態じょうたいがいつまで続つづくのかはわからない。もっと若わかい猫ねこであれば、時間じかんをかければ相入あいいれる日ひがくるのかもしれない。

　でも２匹ひきは年齢ねんれいも年齢ねんれいだし、ともに猫ねこエイズキャリアだ。こちらのエゴで２匹ひきに無理むりをさせ、余計よけいなストレスをかけるよりは、それぞれ別べつの家庭かていで、穏おだやかに余生よせいを過すごしたほうが幸しあわせかもしれない。

　ハナにしても、先住せんじゅう猫ねこに気きをつかうことなく、自由じゆうに好すきなだけ飼かい主ぬしに甘あまえられる環境かんきょうのほうがよいに決きまっている。もともと、ハナは１匹ひきで飼かってもらえる家いえが希望きぼうの猫ねこだった。

　話はなし合あいの結果けっか、私わたしは譲渡じょうとを諦あきらめようと決断けつだんした。その旨むね、長ながい文章ぶんしょうにしたため、B会かいの人ひとたちに添付てんぷファイルにしてグループLINEで送おくった。

　翌日よくじつ、 B会かいのMさんから電話でんわがかかってきた。Mさんは、ハナが外そとにいたときに世話せわをしていた人ひとの1人ひとりで、「２匹ひきが老後ろうごの茶飲ちゃのみ友達ともだちのような関係かんけいになれるといいですね」と言いってくれた人ひとだ。

　皆みな、今日きょう明日あしたにでも正式せいしき譲渡じょうとの申込もうしこみが入はいるとばかり思おもっていたそうで、驚おどろかれた。「トライアル期間きかんはもう１週間しゅうかんのばすこともできますよ」と言いわれたが、その気きはなかった。

　正直しょうじき私わたしは、この２週間しゅうかんで少すこし疲つかれていた。はちとハナの相性あいしょうを探さぐることはもちろんだが、日々ひびの様子ようすをLINEで報告ほうこくするという行為こういも負担ふたんになっていた。頻度ひんどや内容ないようについては強制きょうせいされていなかったし、写真しゃしんや動画どうがを送おくるとB会かいの人ひとたちはとても喜よろこんでくれた。私わたしもうれしく、できるだけ規則正きそくただしく頻繁ひんぱんに様子ようすを知しらせようと、努力どりょくしていた。

　だが私わたしにはもともと、猫ねこの写真しゃしんや動画どうがを積極せっきょく的てきに撮とり、友人ゆうじんに送おくったりSNSに投稿とうこうしたりする習慣しゅうかんがなかった。慣なれないことを、少すこし無理むりをして行おこなっていたことは否いなめない。

　Mさんはすべてを理解りかいしてくれた。「みーちゃんを引ひき取とりにうかがう日ひは、また後日ごじつ決きめましょう」と言いわれて、電話でんわをきった。

（次回じかいは４月がつ５日にち公開こうかい予定よていです）

【前まえの回かい】「はちはハナのことを嫌いやがっているよ」　暗雲あんうん立たち込こめる２匹ひき目めの猫ねこのトライアル