高砂たかさご親方おやかた「朝あさ青あお龍りゅうのメールは読よまずに消けすよ！」定年ていねん記念きねんに語かたり尽つくす相撲すもう人生じんせい

1986年ねんに結婚けっこんし、35年ねんたった今いまも新婚しんこんのように仲なかがいい高砂たかさご親方おやかたと妻つま・恵めぐみさん。親方おやかたは、部屋へやを継承けいしょうさせた今いまも、稽古けいこ場じょうで指導しどうを続つづける

　12月9日にちに65歳さいの誕生たんじょう日びを迎むかえる、先代せんだい・高砂たかさご親方おやかた（元もと大関おおぜき・朝あさ潮しお）。日本にっぽん相撲すもう協会きょうかいの定年ていねんとなり、高砂たかさご部屋へやは元もと関脇せきわけ・朝あさ赤あか龍りゅうが継承けいしょうすることになった。学生がくせい相撲すもうから鳴なり物入ものいりで入門にゅうもんして「大だいちゃん」ブームを巻まき起おこした現役げんえき時代じだいから、現在げんざいまでを振ふり返かえってもらった。

【関連かんれん記事きじ：元もと横綱よこづな「朝あさ青あお龍りゅう」の甥おいっ子こ高校生こうこうせいが新しん弟子でし検査けんさで合格ごうかく】

「近畿大きんきだいを卒業そつぎょう後ご、22歳さいで入門にゅうもんして、もう40年ねん以上いじょう。あっという間あいだだったね。高砂たかさご部屋へやを選えらんだのは、年上としうえの人ひとが少すくなかったから。当時とうじはまだ、学生がくせい相撲すもう出身しゅっしんというと、反感はんかんを買かうことが多おおかったんですよ。『なにが大学だいがく出でだ！』なんて、もし年上としうえの人ひとが多おおい部屋へやに入はいっていたら、相当そうとうやっかまれてたと思おもうよ」

　プロ入いりしたときからの目標もくひょうが、「打倒だとう・北きたの湖うみ」だった。

「ほかにも横綱よこづなはいたけど、やっぱり “王者おうじゃ” は北きたの湖うみさん。『とにかくあの人ひとを倒たおしたい、勝かたないと俺おれの名なは売うれないんだ』と、そういう気持きもちでぶつかっていったんです」

「憎にくらしいほど強つよい」とまで言いわれた大だい横綱よこづな・北きたの湖うみ戦せんは、通算つうさんで13勝しょう7敗はい。朝あさ潮しおに苦くるしめられた横綱よこづなは、北きたの湖うみだけではない。対戦たいせんした横綱よこづな9人にんすべてから勝かち星ぼしを挙あげ、「対たい横綱よこづな戦せん通算つうさん40勝しょう」という、途方とほうもない記録きろくを残のこしているのだ。

「輪島わじまさんは、また違ちがう存在そんざいで、学生がくせい相撲すもう出身しゅっしん力士りきしにとっては憧あこがれでした。自分じぶんよりかなり年上としうえだったけど、ずいぶんかわいがってもらったものです。

　五木いつきひろしさんを紹介しょうかいしてもらったし、そのほかにも大おおきな会社かいしゃの社長しゃちょうさんとか、何人なんにんも紹介しょうかいしてもらった。この世界せかい、そういう人脈じんみゃくは、ものすごく大事だいじなんですよ」

　千代ちよの富士ふじは年としが一緒いっしょで、一門いちもんも同おなじだった。

「最初さいしょは俺おれのほうが番付ばんづけが上うえだったけど、あっという間まに追おい抜ぬかれた（笑）。あいつとは優勝ゆうしょう決定けってい戦せんを2回かいやって、2回かいとも負まけてるんだ。『2回かいのうち1回かいでもお前まえが勝かってれば、お前まえも横綱よこづなになってたよ』って、あいつに言いわれた。そのへんの勝負しょうぶ強つよさがね、千代ちよの富士ふじにはあったよね」

　大関おおぜき昇進しょうしんは、入門にゅうもんから5年ねん後ごの1983年ねん。それから36場所ばしょ、丸まる6年間ねんかん、大関おおぜきの地位ちいを守まもり通とおした。

「現役げんえき生活せいかつは11年間ねんかん。半分はんぶん以上いじょう、大関おおぜきを務つとめたわけだから、まあ『力士りきしとしてはよし』といっていいでしょう。自分じぶんは大関おおぜきから落おちてまで、相撲すもうを取とるつもりはまったくなかった。

　1989年ねんの大阪おおさかで引退いんたいしたけど、カド番かどばんで辞やめたわけじゃない。大阪おおさかだからですよ。出身しゅっしん大学だいがくがあって、デビューの場所ばしょも、大関おおぜき昇進しょうしんを決きめたのも、唯一ゆいいつ優勝ゆうしょうできたのも大阪おおさか。だから大阪おおさかは自分じぶんにとって特別とくべつな場所ばしょだった。

　その大阪おおさかで1年ねん後ご、また大関おおぜきとして土俵どひょうに立たっていられるか——その自信じしんがなかった。だから、あそこで引退いんたいしたんです」

　引退いんたい後ごも、人気にんき者しゃだった。

「我わがながら、よく働はたらいたと思おもいます。また、いっぱい働はたらけた時代じだいでもあった。引退いんたい直後ちょくごは、まだバブルの時代じだい。講演こうえん会かいだテレビだって、スケジュールがびっしりだったね。『なるほど！ザ・ワールド』なんて、準じゅんレギュラーだったからね。

　自分じぶんはそのおかげで、こうやって自分じぶんの部屋へやも建たてることができた。時代じだいがよかった」

　親方おやかたとして、横綱よこづな・大関おおぜきを含ふくむ9人にんの関取せきとりを育そだて上あげた。

「横綱よこづなや大関おおぜきもいるから、十分じゅうぶんにやったといっていいんだろうけど、横綱よこづなは横綱よこづなでも、問題児もんだいじだったからね……」

　1999年ねんに入門にゅうもん、幕内まくうち優勝ゆうしょう25回かいという輝かがやかしい成績せいせきを残のこしながら、2010年ねんに角界かくかいを引退いんたいした横綱よこづな・朝あさ青あお龍りゅう。親方おやかたは、弟子でしが不祥事ふしょうじを起おこすたびに、対応たいおうに追おわれた。当とうの朝あさ青あお龍りゅうは先月せんげつ、《長ながい間あいだご苦労くろうさまでした♪高砂たかさご親方おやかた!!》とツイートしていたが、朝あさ青あお龍りゅうのほうから連絡れんらくは、一いち度どもないという。

「もし、メールを送おくってきても、読よまずに消けすよ！」

　部屋へやを継承けいしょうした元朝がんちょう赤あか龍りゅう（現げん・高砂たかさご親方おやかた）は、朝あさ青あお龍りゅうと同時どうじにモンゴルから来日らいにち。そして、同おなじ明徳義塾めいとくぎじゅく高校こうこうから、1年ねん遅おくれで入門にゅうもんしてきた。

「同おなじモンゴル人じんなのに、まったくタイプが違ちがうね。彼かれほど、おとなしい人ひとは珍めずらしいよ。とにかく人当ひとあたりがいいんだ。親方おやかたとしてのポリシー？　まあ、嘘うそをつかない、人ひとを騙だまさないってことですよ。人ひとの生いき方かたとまったく同おなじだよ」

　2020年ねん、朝あさ乃山が大関おおぜきに昇進しょうしん。横綱よこづなへ、と夢ゆめは繋つながっていく。

「朝あさ乃山は、横綱よこづなという大だい目標もくひょうがある。（幕下まくしたの）村田むらたも4番ばん勝かったし、関取せきとりに上あがれそうな幕下まくしたも増ふえてきている。まだまだ楽たのしみですよ」

　妻つま・恵めぐみさんが語かたる。

「右みぎも左ひだりもわからないうちに、おかみさんになって30年ねん。最初さいしょの10年ねんは無我夢中むがむちゅう、次つぎの10年ねんは、なにがなんだかわからない大変たいへんな10年ねん、そして最後さいごの10年ねんはとても楽たのしかった。

　弟子でしたちの成長せいちょうを、間近まぢかで見みられて幸しあわせでした。今いまはほっとした気持きもちもありますが、少すこし寂さびしい気きもします」

　最後さいごに、定年ていねん後ごにやりたいことを親方おやかたに聞きくと……。「まったくないね。どうせコロナでどこにも行いけないんだから、考かんがえるだけ無駄むだだよ！」と、“大だいちゃん節ぶし” が飛とび出だした。

写真しゃしん・桝元清香きよか
コーディネート・金本かなもと光弘みつひろ

（週刊しゅうかんFLASH　2020年ねん12月22日にち号ごう）