{"_buckets": {"deposit": "ceeb3c4b-5dd6-4cfa-bf55-679c5dc41ba2"}, "_deposit": {"created_by": 14, "id": "40530", "owners": [14], "pid": {"revision_id": 0, "type": "depid", "value": "40530"}, "status": "published"}, "_oai": {"id": "oai:soka.repo.nii.ac.jp:00040530", "sets": ["7873"]}, "author_link": ["93722", "93723"], "item_3_biblio_info_6": {"attribute_name": "書誌しょし情報じょうほう", "attribute_value_mlt": [{"bibliographicIssueDates": {"bibliographicIssueDate": "2021-03-31", "bibliographicIssueDateType": "Issued"}, "bibliographicIssueNumber": "73", "bibliographicPageEnd": "169", "bibliographicPageStart": "143", "bibliographic_titles": [{"bibliographic_title": "教育きょういく学がく論集ろんしゅう"}]}]}, "item_3_description_4": {"attribute_name": "抄録しょうろく", "attribute_value_mlt": [{"subitem_description": "（ 1 ）「風向かざむきの変化へんか（Tendenzwende）」（1）の中なかの陶冶とうや（Bildung）\n　「教育きょういく（学がく）的てきな決定けっていはどのような価値かちを志向しこうすべきか」。これは、あのWolfgang\nKlafkiが1985年ねんにハノーファー哲学てつがく・政治せいじアカデミー（Philosophisch-Politische Akademie\nin Hannover）から依頼いらいされた講演こうえんテーマであった（Klafki 1985：S. 31）。事情じじょうの詳細しょうさい\nは筆者ひっしゃには不明ふめいではあるが、この講演こうえんそれ自体じたいは実施じっしされることはなかった。それで\nも、彼かれの陶冶とうや理論りろん的てき・教授きょうじゅ学がく的てきな遺産いさんを確認かくにんするとともに、その死しを悼いたむ論文ろんぶん集しゅうの中なか\nに、上記じょうきの問といかけの回答かいとうを参照さんしょうできる。本ほん小しょう論ろんの問題もんだい関心かんしんを明確めいかくにするために、ま\nずは85年ねん当時とうじに書かかれた彼かれの遺稿いこうを追跡ついせきすることにしよう。\n　冒頭ぼうとうの問とい「教育きょういく（学がく）的てきな決定けっていはどのような価値かちを志向しこうすべきか」にKlafkiは、\n教育きょういく（学がく）的てきな決定けっていは陶冶とうやを志向しこうすべきだと回答かいとうしている（同上どうじょう：S. 37）。\n　Klafkiによると、陶冶とうや概念がいねんは1770年ねんから1830年ねんの間あいだに様々さまざまなヴァリエーションで展てん\n開ひらけし、この時期じきからドイツ語どいつご圏けんの教育きょういく（学がく）的てきな思考しこうの中心ちゅうしん概念がいねんになったという。そ\nこにはカント的てきな啓蒙けいもうの理念りねんが込こめられているとされる（同上どうじょう：S. 38）。彼かれが見みると\nころ、啓蒙けいもうを内包ないほうした陶冶とうや概念がいねんには、疑問ぎもん視しされるべき伝統でんとう、占有せんゆう関係かんけい、そして支配しはい\n関係かんけいに対たいする批判ひはんが含ふくまれている。H.-J. Heydorn、M. Horkheimer、Th. W. Adorno、\nJ. Habermas、H. Blankertz、K. E. Nipkowの論ろん稿こうを脚注きゃくちゅうに指示しじしつつ―宗教しゅうきょう教育きょういく\n学がくを専門せんもんとしたNipkow以外いがいはフランクフルト学派がくは系列けいれつに属ぞくする―Klafkiは、陶冶とうや\n概念がいねんの中なかに社会しゃかい変革へんかくの端緒たんしょを求もとめている（同上どうじょう：S. 39 f.）。\n　「陶冶とうやは個人こじんの自己じこ決定けってい能力のうりょくと共同きょうどう決定けってい能力のうりょくとして、そして社会しゃかい的てき連帯れんたい能力のうりょくとして\n理解りかいされなければならない」（同上どうじょう：S. 40）。筆者ひっしゃの解釈かいしゃくに従したがえば、Klafkiにあの社会しゃかい\n変革へんかくの観点かんてんがあったがゆえに、この陶冶とうやは総合そうごう制せい学校がっこう（Gesamtschule）への制度せいど改あらため\n革かわを志向しこうすることになる。これによって陶冶とうやは、あらゆるものにとっての陶冶とうや\n（Bildung für alle）という意味いみで、「一般いっぱん的てき」だと形容けいようされる。またこの観点かんてんがあるが\nゆえに、いわゆる鍵かぎ的てき問題もんだい（Schlüsselprobleme）が価値かち内容ないようの柱はしらとして打うち立たてら\nれる（2）。これによって陶冶とうやは、平和へいわ、環境かんきょう、貧困ひんこん、労働ろうどう、そして民主みんしゅ主義しゅぎなど現在げんざいと\n将来しょうらいの私わたしたちが共通きょうつうして変革へんかくすべき問題もんだいを扱あつかうとの意味いみで、「一般いっぱん的てき」だと形容けいようされ\nている。彼かれはこの上記じょうき2 つの「一般いっぱん的てき」な陶冶とうやのメルクマールに加くわえて、これを更さらに\n全面ぜんめん的てきあるいは多おお方かた的てきという意味いみにおいて「一般いっぱん的てき」だと形容けいようし、そのための多様たような\n学習がくしゅう対象たいしょうへのアクセス可能かのう性せいを要請ようせいしている（同上どうじょう：S. 42-48）。そして最後さいごに言及げんきゅうす\nるのが、彼かれが陶冶とうやの範疇はんちゅうには属ぞくさないが、それでも断念だんねんし得えないものとして考かんがえる\n「道具どうぐ的てきな知識ちしき、能力のうりょく、そしていわゆる2 次じ的てきな美徳びとく［Sekundärtugenden］」（同上どうじょう：S.\n50）である。彼かれは次つぎのように述のべている。\nしかし、決定的けっていてきに重要じゅうようなのは、そのような諸しょ要素ようその位置いち価値かちを正ただしく規定きていするこ\nとである。道具どうぐ的てきな知識ちしき、能力のうりょく、技能ぎのう、2 次じ的てきな美徳びとくが話題わだいになっているのだが、\nこれらはそれ自体じたいとして根拠こんきょあるまた責任せきにんある活用かつようについては何なにも語かたることはな\nい。人間にんげん的てき、民主みんしゅ主義しゅぎ的てき、平和へいわ的てき、そして人間にんげん同士どうしの目的もくてきや行為こうい関連かんれんのために役やく\n立たてられるのとまったく同様どうように、競争きょうそう的てき闘争とうそうにも、他者たしゃ支配しはいにも、搾取さくしゅにも、不ふ\n安やすの増大ぞうだいにも、啓蒙けいもう、共同きょうどう決定けってい、機会きかい均等きんとうなどの妨害ぼうがいにも用もちいられ得える。それゆ\nえ、もし道具どうぐ的てきなものをいっそう洗練せんれんされた陶冶とうや目的もくてきと陶冶とうやプロセスの前提ぜんていに指ゆび\n定じょうして、これに事実じじつ的てきかつ時間じかん的てきな優位ゆういを割わり当あてるならば、それは誤あやまりである\nし、取とり返かえしのつかない結果けっかとなり得えるだろう。これは現在げんざいではいわゆる教育きょういく政せい\n策さく的てきな変化へんか［Wende］ のあらわれの中なかで―「教育きょういくへの勇気ゆうき［Mut zur\nErziehung］」と言いわれるボン・テーゼにおいてそうであるのだが―で当あたり\n前まえに起おこっている。それは保守ほしゅ主義しゅぎへの変化へんかであり、復古ふっこ主義しゅぎへの変化へんかの中なかで起おこり\nこっている。…［中略ちゅうりゃく］…これら［道具どうぐ的てきで2 次じ的てきなもの］は、解放かいほう的てきな目的もくてき設しつらえ\n定じょう、内容ないよう、そして能力のうりょくとの関連かんれんにおいて習得しゅうとくされるべきである。すなわち、これ\nらは学習がくしゅう者しゃによって道具どうぐ的てきなものとして必要ひつようだと洞察どうさつされ得えるように習得しゅうとくされる\nべきであり、根拠こんきょある、人間にんげん的てきな、そして民主みんしゅ的てきな原理げんりから引ひき離はなされることな\nく習得しゅうとくされるべきである。（同上どうじょう：S. 48 f. 下線かせん・角かく括弧かっこ内ないは引用いんよう者しゃ）\n　上記じょうきの引用いんようから読よみ取とられ得えることは、1985年ねん当時とうじのKlafkiにとって、「教育きょういく（学がく）\n的てきな決定けっていはどのような価値かちを志向しこうすべきか」との問といに対たいする「陶冶とうやを志向しこうすべきで\nある」との回答かいとうが、保守ほしゅ主義しゅぎや復古ふっこ主義しゅぎへの変化へんか≒教育きょういく政策せいさく的てきな変化へんかとの緊張きんちょう関係かんけいあ\nるいは対抗たいこう関係かんけいの中なかで表現ひょうげんされていることにある。そしてこの変化へんかの事例じれいとして挙あげ\nられるのが「教育きょういくへの勇気ゆうき」とそこで宣言せんげんされた9 つのボン・テーゼであり、そこで\nは少すくなくとも彼かれには、陶冶とうやが2 次じ的てきな美徳びとくへの教育きょういく（Erziehung）に取とって代かわられ\nようとしていると見みられていた。その証拠しょうこに彼かれは、「私わたしがここでいくつか概要がいようを略図りゃくず\nした構想こうそうが、私わたしたちの社会しゃかい―私わたしたちのだけでない社会しゃかい―における現在げんざいの支配しはい的てきな\n風向かざむきに対たいする緊張きんちょうの中なかにあることは、私わたしにはもちろん意識いしきされている」と述のべると\nともに、「教育きょういく（学がく）的てきに決定けっていする際さいには、どのように現在げんざい支配しはい的てきな風向かざむき（そして「変へん\n化か」）に可能かのうな限かぎり同調どうちょうできるか、というのは私わたしのテーマではないし、そのようなテー\nマだったのなら、私わたしは講演こうえんすることもなかっただろう」と自己じこの教育きょういく（学がく）的てき、ある\nいは政治せいじ的てきな立たち位置いちを結むすびとして率直そっちょくに語かたっている（同上どうじょう：S. 50）。\n（ 2 ）「教育きょういくへの勇気ゆうき」とは\n　本ほん研究けんきゅうの主題しゅだいである「教育きょういくへの勇気ゆうき」は、1978年ねん1 月がつ9 日にち・10日とおかにドイツのボンに\n位置いちするバード・ゴーデスベルク科学かがくセンター（Wissenschaftszentrum Bonn-Bad\nGodesberg）で開催かいさいされた教育きょういくに関かんするフォーラムである。翌年よくねん79年ねんには報告ほうこく書しょが刊かん\n行くだりされているが、「『教育きょういくへの勇気ゆうき』の進行しんこうについて可能かのうな限かぎり実際じっさいの模様もようを示しめすため\nに、この本ほんの構成こうせいは会議かいぎの経過けいかに従したがっている」という（Mut zur Erziehung 1979：S.\n6 以下いかMzEと略記りゃっきする）。これを参照さんしょうすると、フォーラムの内容ないようとその順序じゅんじょはおおよ\nそ右みぎ下かの表ひょうにまとめることができる（MzE：S. 3 の目次もくじを参考さんこうに筆者ひっしゃ作成さくせい）。\n　まえがきの筆ふでを執とった1978年ねん1 月がつ当時とうじのバーデン＝ヴュルテンベルク州しゅう（Land\nBaden-Württemberg）文部もんぶ大臣だいじんのWilhelm Hahn、講演こうえんにコメントを寄よせたバイエル\nン州しゅう（Freistaat Bayern）文部もんぶ大臣だいじんのHans Maier、そして市議会しぎかい議員ぎいんのAlois Graf\nvon Waldburg-Zeilは、キリスト教きょう民主みんしゅ同盟どうめい（Christlich-Demokratische Union\nDeutschlands、以下いかCDUと略記りゃっき）／キリスト教きりすときょう社会しゃかい同盟どうめい（Christlich-Soziale Union in\nBayern、以下いかCSUと略記りゃっき） の政治せいじ家かである。挑戦ちょうせんの講演こうえん者しゃのSpaemannは、\nHabermasによって「モデルネ以前いぜん4 4 のさまざまな立場たちばへの回帰かいきを推奨すいしょうする」「老年ろうねん保ほ4 4 4\n守もり派は4 4 」の哲学てつがく者しゃだと見みられている（ハーバーマス著ちょ／三島みしま訳やく 2000：41頁ぺーじ）。更さらに、社しゃ\n会かい民主党みんしゅとう（Sozialdemokratische Partei Deutschlands、以下いかSPDと略記りゃっき）の支持しじ者しゃで\nあった哲学てつがく者しゃのLübbeも、『知識ちしき人じんの悲惨ひさん―連邦れんぽう共和きょうわ国こくにおける左翼さよく理論りろん』の著者ちょしゃ\nである政治せいじ学者がくしゃのSontheimerも、「『常識じょうしき』なるものを重視じゅうしし、それによって支ささえら\nれている国家こっかの諸しょ制度せいどへの信頼しんらいに満みちた委任いにんを要求ようきゅうする」とされている（三島みしま1991：225頁ぺーじ）（3）。\n教育きょういく政策せいさくにおける変化へんかを講演こうえんした政治せいじ学者がくしゃのSchwanは、当初とうしょはSPDに所属しょぞくしていたが、78年ねん10月がつに\nSPDのPeter Glotz議員ぎいんが大学だいがくで「共産きょうさん主義しゅぎの扇動せんどうと左翼さよく社会しゃかい主義しゅぎの行動こうどう同盟どうめいを容認ようにんし、\n推進すいしんしていると非難ひなん」されたことをきっかけに、これ以後いごCDUに鞍替くらがえしている\n（Berufliches 1978）。\n　このように、「教育きょういくへの勇気ゆうき」の登壇とうだん者しゃの多おおくには、所属しょぞくする党派とうはや語かたられること\nについてそれぞれ差異さいはあるものの、三島みしま憲一けんいちの枠組わくぐみを援用えんようするならば、「新しん保守ほしゅ主ぬし\n義ぎという名称めいしょうに包括ほうかつされる思想しそうの動うごき」が通つう底そこしていると捉とらえることができる（三島みしま\n1991：224頁ぺーじ）（4）。\n（ 3 ）先行せんこう研究けんきゅう\n　フランクフルト学派がくはの批判ひはん理論りろんの影響えいきょう下かにあったKlafkiにとっては、「教育きょういくへの勇いさむ\n気き」とその9 つのテーゼは、陶冶とうやを押おしのける保守ほしゅ主義しゅぎや復古ふっこ主義しゅぎへの転換てんかんの象徴しょうちょうで\nあったが、しかしわが国くににおいてこれらが、必かならずしも彼かれによって評価ひょうかされたような\n「風向かざむきの変化へんか」として語かたられていたわけではなかった。\n　筆者ひっしゃの追跡ついせきによれば、「教育きょういくへの勇気ゆうき」をわが国くにに最初さいしょに紹介しょうかいしたのは、ドイツの\n教育きょういく学者がくしゃによるものであった。1978年ねん10月がつに来日らいにちしたWalter Asmusである。「ドイツ\n連邦れんぽう共和きょうわ国こくにおける道徳どうとく教育きょういくの現況げんきょう」と題だいした講演こうえんが上智大学じょうちだいがくと玉川大学たまがわだいがくで行おこなわれて\nいる。そこで彼かれは批判ひはん理論りろんが浸透しんとうした解放かいほう的てき教育きょういく学がくの終焉しゅうえんを語かたり、それに代かわる伝統でんとう\n回帰かいきの宛先あてさきとしてJ. F. Herbartを参照さんしょうするとともに、道徳どうとく教育きょういくの条件じょうけんを素描そびょうしてい\nる。その条件じょうけんをボン・テーゼを引用いんようすることで示しめし、これらが西にしドイツの「道徳どうとく教育きょういく\n綱領こうりょう」だと述のべている（アスムス著ちょ／金子かねこ訳やく 1979：111-129頁ぺーじ）。初はじめて邦訳ほうやくされた9\nつのテーゼを是認ぜにんしながら、彼かれは変化へんかした風向かざむきに順風じゅんぷうを送おくっていた。\n　順風じゅんぷうでも逆風ぎゃくふうでもない、「教育きょういくへの勇気ゆうき」のわが国くににおける紹介しょうかい記事きじは、管見かんけんの限きり\nりであるが、天野あまの正治しょうじ（1984）が初出しょしゅつである。彼かれは西にしドイツにおける戦後せんごの教育きょういく政策せいさく\nの歩あゆみをまとめた後のちで、SPDとCDU／CSUとの教育きょういく政策せいさくの対立たいりつを整理せいりする。そして\n「教育きょういく目標もくひょうをめぐる対立たいりつ」の一いち例れいとして「教育きょういくへの勇気ゆうき」を紹介しょうかいしている。そこでは、\n9 つのボン・テーゼのうち、3 、4 、6 、そして8 だけが訳出やくしゅつされているが、それば\nかりでなくテーゼそれぞれの直後ちょくごに、チュービンゲン声明せいめいによるアンチテーゼも併記へいき\nされている（5）。この声明せいめいの邦訳ほうやくは、たとえ一部いちぶに過すぎないとはいえ、これが初はじめてと\nなる。ボン・テーゼとチュービンゲン声明せいめいの全訳ぜんやくは、Christoph Führ（1988）：\nSchulen und Hochschulen in der Bundesrepublik Deutschlandの邦訳ほうやく出版しゅっぱんを待まてたなけ\nればならない（フュール著ちょ／天野あまの・木戸きど・長島ながしま訳やく 1996）。\n　「教育きょういくへの勇気ゆうき」に当時とうじのカリキュラム政策せいさく転換てんかんの「下地したじ」の役割やくわりを見みるのが原田はらだ\n信之のぶゆきである（6）。彼かれは「保守ほしゅ派はと革新かくしん派はとの対立たいりつが先鋭せんえい化かする中なか、バーデン・ヴュルテ\nンベルク州しゅうでは、フォーラム『教育きょういくへの勇気ゆうき』の開催かいさい後ご、人間にんげん的てきな育成いくせいにかかわる教きょう\n育そだて目標もくひょうを復権ふっけんさせる改革かいかくに着手ちゃくしゅし始はじめる」として、これをいわゆる教育きょういくの現代げんだい化かから\n人間にんげん化かへの呼よび水みずだったと捉とらえている。新しん保守ほしゅ主義しゅぎが教育きょういくの人間にんげん化かを呼よび込こんだとの\n見方みかたである。「教育きょういくへの勇気ゆうき」の中身なかみそれ自体じたいについては、9 つのボン・テーゼに共きょう\n通つうする表現ひょうげん様式ようしきの「……に反対はんたいする」の部分ぶぶんまでが、そしてチュービンゲン声明せいめいの1\nと3 の一部いちぶだけが紹介しょうかいされている（原田はらだ 2010：222-223頁ぺーじ）。\n　変化へんかする以前いぜんの風向かざむきから「教育きょういくへの勇気ゆうき」に言及げんきゅうするのが、宮崎みやざき俊明としあき（1986）で\nある。同どうフォーラムは「教育きょういくにおけるイデオロギー・レベルでの実践じっせん優位ゆういと理論りろん不信ふしん\nといった方向ほうこうづけのマニフェストとなり、先行せんこうした教育きょういく学理がくり論ろんにはその社会しゃかい学がく的てき一いち面めん\n性せいを、技術ぎじゅつ論ろんにはそのナイーブさを責せめる一方いっぽう、歴史れきし的てき伝統でんとう的てき事実じじつと哲学てつがく的てき人間にんげん学がく的てき\n理論りろんを重視じゅうしし、そこでの多元たげん性せいと効率こうりつ性せいをむしろ『理論りろん』の検証けんしょう基準きじゅんや成立せいりつ母体ぼたいとし\nた」と述のべ、直後ちょくごに講演こうえん者しゃの1 人にんである教育きょういく学者がくしゃのAurin（MzE：S. 35 ff.）の参照さんしょう指ゆび\n示しめせが打うたれている。更さらに彼かれは「教育きょういくへの勇気ゆうき」には「理論りろん的てきなものへの敵意てきいや教育きょういく学がく\nの追おい落おとしの素顔すがおがみえる」として、これはHabermasの眼めには「『反はん啓蒙けいもうのプラッ\nトフォーム』と映うつっている」という（宮崎みやざき 1986：51-52頁ぺーじ）。\n　これまでの先行せんこう研究けんきゅうから看取かんしゅできるのは、「教育きょういくへの勇気ゆうき」が言及げんきゅうされる場合ばあいには、\nそれが変化へんかした風向かざむきの順風じゅんぷうであれ逆ぎゃく風ふうであれ、あるいは無風むふうであれ、Aurinを参照さんしょう\nした宮崎みやざきの数すう行ぎょうを例外れいがいとして、いずれもボン・テーゼとチュービンゲン声明せいめいの一部いちぶが\n紹介しょうかいされるにとどまっていて、同どうフォーラムの背景はいけいや内容ないようの細部さいぶ4 4についてはほとんど\n不明ふめいなままであった、ということである。\n　近年きんねんこれに進展しんてんが見みられる。確たしかに「教育きょういくへの勇気ゆうき」の背景はいけいや詳細しょうさいは、教育きょういく学がく関連かんれん\n学会がっかいの自由じゆう研究けんきゅう発表はっぴょうにおいて論究ろんきゅうされてはいたものの（牛田うしだ 2018）、しかし刊行かんこう物ぶつと\nして公おおやけにされてはいなかった。これが参照さんしょう可能かのうになったのは眞壁まかべ宏ひろし幹みき（編へん）『西洋せいよう教きょう\n育そだて思想しそう史し（第だい2 版はん）』（慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく出版しゅっぱん会かい、2020年ねん3 月がつ）による寄与きよが大おおきい。同書どうしょ\n第だい1 版はん（2016年ねん4 月がつ）を紐解ひもとくと、第だい12章しょう「第だい2 次じ世界せかい大戦たいせん後ごの教育きょういく思想しそうと教育きょういく学がく」\nの第だい1 節せつ「戦後せんご社会しゃかいと教育きょういく思想しそう」には、1 「民主みんしゅ主義しゅぎ化かと戦後せんご教育きょういく」、2 「フランク\nフルト学派がくはと教育きょういく思想しそう・教育きょういく学がく」、そして3 「解放かいほう的てき教育きょういく学がく（批判ひはん的てき教育きょういく科学かがく）」が収おさむ\nめられているが、第だい2 版はんでは3 に続つづいて、4 「保守ほしゅ派はの教育きょういく論ろん」が新あらたに加くわえられて\nいる。この4 では「教育きょういくへの勇気ゆうき」の概要がいようが、SpaemannとTenbruckを参照さんしょうすること\nで紹介しょうかいされるとともに、同どうフォーラムに対たいする教育きょういく学がくからの反はん応おうも簡潔かんけつに整理せいりされて\nいる。この項目こうもくを担当たんとうした森もり祐ゆう亮あきらは、同年どうねん9 月がつにGünther Buckのヘルバルト解釈かいしゃくと\n保守ほしゅ知識ちしき人じんの教育きょういく論ろんとの親和しんわ性せいの究明きゅうめいを試こころみるが、この保守ほしゅ知識ちしき人じんとして同定どうていされる\nのが「教育きょういくへの勇気ゆうき」である。ここでもSpaemannとTenbruckが参照さんしょうされ、「文化ぶんかや\n伝統でんとうは教育きょういくにとって否定ひてい的てきなものではなく、必要ひつよう不可欠ふかけつなものと捉とらえる姿勢しせいである。\n…［中略ちゅうりゃく］…彼かれらはそのような立場たちばから解放かいほう的てき教育きょういく学がくや教育きょういくの科学かがく化かといった事態じたいに\n警鐘けいしょうを鳴ならした」として、「保守ほしゅ知識ちしき人じんの思考しこう図式ずしき」がまとめられている（森もり 2020：\n173頁ぺーじ）。\n　本ほん小しょう論ろんの目的もくてきは、「教育きょういくへの勇気ゆうき」の背景はいけいと詳細しょうさいを究明きゅうめいすることにある。それゆえ\nここでは、同どうフォーラムの輪郭りんかくを浮うき上あがらせる端緒たんしょとなった2020年ねん以降いこうの研究けんきゅうの補ほ\n完かんが意図いとされている。「教育きょういくへの勇気ゆうき」はいったい何なにを批判ひはんしていたのか。あの\nKlafkiが「きわめてドグマ的てき」（Klafki 1989：S. 152）だとまで酷評こくひょうした同どうフォーラム\nは何なにを主張しゅちょうしていたのか。MzE（1979）を一いち次じ資料しりょうとして参照さんしょうし、これら2 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