ローコード/ノーコードの現状
開発のモチベーション維持が課題
株式会社エイチシーエル・ジャパン
HCLSoftware
シニア・ダイレクター
吉田 賢治郎 氏
大和田 ローコード/ノーコード開発の活用状況を教えてください。
吉田 ローコード/ノーコードツールの導入は進んでいます。特にグローバルでは2024年にはアプリ開発の半数以上がローコード/ノーコードになるともいわれています。一方で、日本ではツールの導入は進んでいるけれど、申請・ワークフロー系から先に進んでいないという声が聞かれます。
大和田 活用が進まない要因はどこにあるのでしょう。
吉田 導入後のモチベーションが維持できないことです。特にITの専門知識がない従業員によるいわゆる市民開発の場合に、そうした傾向が見られます。具体的な原因としては「効果が分かりにくく、経営層の理解が得られない」ことが大きな要因です。さらに「市民開発だとローコードツールでは開発が難しい」一方で、「スキルのある人はノーコードでは満足なアプリ開発ができない」こともあります。また「必要なデータやシステムと連携できない」ことも原因です。こうしたことが重なるとローコード/ノーコード開発のモチベーションが下がってしまうのです。
効果が見えやすいアプリの開発に
使いやすいツールを選択
大和田 ローコード/ノーコードの活用を進める解決策はありますか。
吉田 まず、効果が見えるアプリから開発を進めることです。顧客接点を提供するアプリや全社員が日常的に利用するアプリなど、見えるところから取り組むことが大切です。
大和田 効果が見えるアプリを作っていく上で、使いやすいツールの要件はどのようなものでしょうか。
吉田 重要なのは、開発していて「ウキウキ」することです。ウキウキしてアプリを作れることで、業務に対して目に見える効果が生まれます。その上で、スキルの高い開発者にも、やりたいことができる機能を提供して達成感を感じてもらうことが必要です。こうした条件を満たすローコード/ノーコードツールの1つが、HCLSoftwareの「Volt MX」です。
大和田 Volt MXでは、開発を支援するためにどのような機能を提供していますか。
吉田 顧客接点向けのアプリを開発するときは、多様なデバイスに対応しないといけません。Volt MXではWindows、Mac、iPhone、Androidなどの多くのプラットフォームに対応したネイティブアプリを開発できます。また、テスト環境も統合しています。
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図:多様な開発に対応するHCLのVolt MX
ローコード/ノーコード開発でありながら、市民開発からプロの開発者まで幅広いスキルに対応する
大和田 役立つ機能を提供したB2Cの事例などはありますか。
吉田 北米の小売事業者は、ECや店舗での販売に利用できるアプリを開発しました。「自宅でインクがなくなったら、その商品のバーコードを読むだけで注文できる」といった、お客様のアイデアを入れた機能をどんどん取り込んで、アプリストアで高評価を得ています。AR(拡張現実)の応用では、自室に家具を配置した状態を確認できる機能を提供したり、店に陳列した商品にスマホのカメラを向けるだけで背面に記載されている成分表示などを確認できる機能を作ったりした事例もあります。
ローコード/ノーコード開発を
AIとの組み合わせでさらに強化
大和田 様々な機能を素早く作れて成果が現れれば、開発者にとってやりがいにもつながりますね。一方で企業が自社で使うようなアプリへの応用はありますか。
吉田 企業内ではポータルサイトやダッシュボードが多くありますが、使いにくいことも少なくありません。経営層向けに、複数のシステムの情報を統合してスマホでも見やすいポータルアプリを開発した事例があります。航空会社では、客室乗務員向けに搭乗客の情報や機内の不具合の連絡などに使うアプリを導入しています。客室乗務員の意見を反映しながら改善を続けて、業務改善に貢献しています。
大和田 最近はAIが注目されていますが、Volt MXでもAIは活用されていますか。
吉田 はい、様々なシーンでAIがアプリ開発を支援します。例えばデザインです。これまでアプリの画面イメージをデザイナーに渡してデザインができるのを待ちましたが、Volt MXでは画面の項目を3つほど入れるだけでAIが判断して最適なデザインやレイアウトを提案してくれます。また「こういう画面を作って」といった指示をチャットで入力することで、画面フォームを作成する機能もあります。さらに開発時の不明点を生成AIにたずねて、Volt MX 関連に絞って参考となる情報源を引き出すといった使い方もありますし、アプリのパフォーマンス向上にAIの力を借りることもあります。
大和田 人間とAIが手を組むことで、さらにウキウキしたローコード/ノーコード開発ができて、開発が楽しくなってきそうな気がしてきました。