DXフォーラムの締めくくりは、プログラム受講生によるピッチ(短いプレゼンテーション)と、講評者によるディスカッション。テーマは「社会の課題を解決する新たなビジネスモデル」で、日本設計の木野内剛氏、SORABITOの青木隆幸氏が20分ほどテーマに基づいたプレゼンテーションを行った。
木野内氏は「建築物におけるリジェネラティブ・アプローチ」について発表。サブタイトルは「畑の土を用いた立体木摺土壁の開発および実装」である。最初にサーキュラーエコノミーの概念を説明し、資源の循環的な利用と再生の重要性を強調した。リジェネラティブ・アプローチとは、場所やシステムを改善し人間と自然の共生を図ることで、持続可能な建築や都市を実現するというもの。この考え方に基づき、畑の土を再生利用した立体木摺土壁(特許出願中)の開発と実装を行った。
この土壁は、伝統工法である日干し煉瓦工法を応用し、畑の土とおがくずを混ぜて作られている。施工では、クライアントとワークショップを開催し、参加者に壁の施工体験を提供したと説明。
注目されたのは開発した土壁のCO2排出量のケーススタディ。様々な資材の配合パターンを検証し、樹脂やにかわ墨汁などが大きな影響を与えることが分かったという。さらに、他の内装材との比較評価も行い、自然素材を使った土壁が低炭素であることを確認した。
そればかりではなく、この取り組みが環境と経営にどのように結びつくかについて考察した。環境負荷低減への貢献、企業のブランド価値向上、建設コストや運用コストの削減など、様々な可能性があると強調した。また、炭素クレジット市場への参入の可能性と課題についても言及した。講評者とのディスカッションでは、土壁にブランド価値をどうやって持たせるかという点を指摘した上で、リジェネラティブに注目している点を評価する声が多かった。