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カナダの大地を踏みしめて ホッキョクグマを探しに行く旅へ - ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版

陸上りくじょう最大さいだい肉食にくしょく動物どうぶつながら、しろ優雅ゆうがあしあいらしい顔立かおだちで人気にんきあつめるホッキョクグマ。カナダ中部ちゅうぶのチャーチルでは、そのホッキョクグマに「あるいていにく」ことができる。ホッキョクグマにせられ、現地げんちあしはこんだ小泉こいずみ陽子ようこ体験たいけんした「ホッキョクグマとの神秘しんぴてき出会であい」とは。

小泉こいずみ 陽子ようこ
グローバル ユース ビューロー
執行しっこう役員やくいん企画きかく開発かいはつ部長ぶちょう

ユニークなたびづくりに定評ていひょうがある旅行りょこう企画きかく会社かいしゃ、グローバル ユース ビューローにて、小泉こいずみみずか企画きかくした野生やせい動物どうぶつるツアーはつねにキャンセルちの人気にんき。ホッキョクグマにせられ、ハイキングツアー実現じつげんにこぎつけた。

ハイキングツアー https://secure.gyb.co.jp/tourlist/info_Tour.php

1ねんにたった3週間しゅうかんだけできる、こおりみち
「シロクマ・ハイウェイ」

カナダのだい自然しぜんにはすうおおくの野生やせい動物どうぶつ生息せいそくしています。そのなかでもホッキョクグマ(シロクマ)は特別とくべつ存在そんざいです。おおきいものは体長たいちょう2.5メートル、体重たいじゅう600キログラムにもなる堂々どうどうとした姿すがたしろうつくしい毛並けなみから、「きた王者おうじゃ」ともしょうされています。

普段ふだん沿岸えんがんひろ地域ちいきらばって生息せいそくしているホッキョクグマが、毎年まいとし10がつまつからの3週間しゅうかんだけ、カナダ中部ちゅうぶのマニトバしゅう北端ほくたんにあるチャーチルあつまってきます。ハドソンわんなかでも最初さいしょ凍結とうけつするチャーチルかわ河口かこうから、徐々じょじょひろがっていくうみこおるのをってだい好物こうぶつのアザラシをつかまえにいくためです。

まちからホッキョクグマをられる場所ばしょは、世界せかいでもチャーチルだけです。ホッキョクグマの子育こそだての様子ようすや、オス同士どうしがじゃれってプレイファイティングする姿すがた観察かんさつできます。このような野生やせいのホッキョクグマを目当めあてに、この時期じきのチャーチルには世界中せかいじゅうから観光かんこうきゃくがやってきます。四輪よんりん駆動くどうのツンドラバギーにり、氷上ひかみあるくホッキョクグマを観察かんさつするのです。

©emi nakamura

オスの個体こたい同士どうしのプレイファイティング。まるで相撲すもうっているようにもえる

© Frontiers North Adventures

カナダでシロクマツアーなどを展開てんかいするFrontiers North Adventuresしゃのツンドラバギー。たかげたくるまだか巨大きょだいなオフロードタイヤでこおったツンドラの原野げんやはしることができる

わたしがチャーチルでホッキョクグマをはじめてたのは、2016ねんなつでした。そのさい経験けいけんしたのは、なつのツンドラをはしるツンドラバギーとゾディアックボート(小型こがたのゴムボート)にって沿岸えんがんのシロクマをさがす2種類しゅるいのアクティビティでした。うんよくなんとうかけることができて感激かんげきしましたが、同時どうじに「もっとちかくで、よりたくさんのホッキョクグマと出会であいたい」「お客様きゃくさまにもこの感動かんどうあじわってもらいたい」とかんがえるようになりました。

そのためには、「あきのホッキョクグマのだい移動いどう時期じき」に、「24あいだホッキョクグマが観察かんさつできる場所ばしょ滞在たいざい」して、「ホッキョクグマとおな目線めせんあるいて出会であうハイキングツアー」であることが必要ひつようでした。そこで帰国きこくして情報じょうほうあつめたところ、この3つの条件じょうけんたし、「究極きゅうきょくのシロクマ体験たいけん」をさせてくれる現地げんち旅行りょこう会社かいしゃ出会であったのです。

氷上ひかみ飛行機ひこうきでしかけないツンドラのなか一軒家いっけんやロッジを拠点きょてんにしたツアーで、ホッキョクグマの生息せいそく域内いきないはいるため、24時間じかんいつでもホッキョクグマに出会であうチャンスがあります。ロッジの周囲しゅういしがらみかこんでいるので、敷地しきちないにホッキョクグマがはいむことはありません。このロッジに滞在たいざいするツアーなら、ホッキョクグマに出会であえるチャンスもおおいのではないだろうか。そうかんがえ、2022ねん視察しさつおとずれました。

黄金おうごんしょくのホッキョクグマと
意思いしつうった瞬間しゅんかん

© Global Youth Bureau

ロッジのガラスしにホッキョクグマを観察かんさつする。よるになると宿泊しゅくはくきゃく全員ぜんいんがロビーにあつまり、自分じぶん撮影さつえいした写真しゃしんう。野生やせい動物どうぶつつうじて、見知みしらぬものどうしがしんかよわせる

©Dafna Bennun / Churchill Wild

しがらみがあるものの、宿泊しゅくはくきゃくそとてホッキョクグマを観察かんさつするさいかならずガイドがう。まんいち事故じこふせぐのがおも目的もくてきだが、人間にんげんとホッキョクグマが不用意ふよういちかづきすぎないように見守みまもるのもガイドの役割やくわり

ハイキングは1にち2かい参加さんかしゃ全員ぜんいんがひとかたまりになって、ガイドにはさまれるかたちすすみます。「自分じぶんよりおおきな動物どうぶつがいる」とホッキョクグマにおもわせるためです。ハイキングにまりきったコースはなく、こおり状況じょうきょうながら海岸かいがんせん沿ってあるくこともあれば、ロッジちかくでかけたホッキョクグマのうごきを予測よそくしてすすむこともあります。ゆきなかこおりうえあるきながら、時折ときおりあしめてガイドが説明せつめいする動植物どうしょくぶつはなしみみかたむける。自然しぜん調和ちょうわしながらごすことで、気持きもちがおだやかになるひとときでした。

© Global Youth Bureau

ハイキングでは、おな防寒ぼうかんジャケットを着用ちゃくようし、参加さんかしゃ全員ぜんいんがひとかたまりになって行動こうどうする

そんななごやかなハイキングのさなか、突然とつぜん緊張きんちょうはしりました。わずか20メートルさきに、ホッキョクグマが姿すがたせたのです。ガイドがホッキョクグマの様子ようすうかがって、すこがっておとなしく見守みまもるという判断はんだんをしました。かえってみればわらばなしになるかもしれませんが、そのときはぜん逆立さかだつようなおもいでした。

ちょうどそのとき、ホッキョクグマの背後はいごから夕陽ゆうひみ、おおきな体躯たいくがはっきりとかびました。すると、それまでしろかった黄金おうごんしょくまり、まるでホッキョクグマがひかりつつまれているようにえたのです。

あまりのまばゆさと神々こうごうしさに、全員ぜんいんいきみました。ふとまわりを見回みまわすと、だれもがなみだながしていました。もちろんわたしもです。ホッキョクグマの生命せいめいうつくしさにふか感動かんどうするとともに、自分じぶんいまここにいること、きていることに感謝かんしゃする気持きもちでいっぱいになりました。

以前いぜん参加さんかしたホッキョクグマ鑑賞かんしょうクルーズでは、「ホッキョクグマがいるきしにはりてはいけない」とおしえられました。興奮こうふんしたホッキョクグマにおそわれるかもしれないからです。でもこうしていまかれらとおな大地だいち共有きょうゆうし、おたがいの存在そんざいみとっている。人間にんげん野生やせい動物どうぶつ意思いしつうわせることができるという事実じじつに、むねあつくなりました。

©Ian Johnson / Churchill Wild

夕日ゆうひびて黄金おうごんしょくかがやくホッキョクグマにうばわれる。野生やせい動物どうぶつ人間にんげんがおたがいの存在そんざいみとい、共生きょうせいできるということを、カナダの自然しぜんなか実感じっかんする

オーロラをびてかがやくホッキョクグマに
いにしえからつたわる人々ひとびと歴史れきしおも

わたし幼少ようしょう欧州おうしゅう生活せいかつした経験けいけんがあり、ケニアをはじめとしたアフリカ諸国しょこくなんおとずれました。百獣ひゃくじゅうおうばれるライオンもこのたことがあります。それでも、ホッキョクグマはやはりわたしにとって特別とくべつ存在そんざいです。れをなすライオンとはちがい、たった1とうきるかれらのたくましさに気高けだかさをかんじたからかもしれません。

ツンドラのなかのロッジに滞在たいざいちゅう、オーロラを鑑賞かんしょうする機会きかいにもめぐまれました。幻想げんそうてきにたなびくみどりのオーロラをながめていると、そこに1とうのホッキョクグマが突然とつぜんあらわれました。じつはホッキョクグマのいろ透明とうめいで、ひかり反射はんしゃけてしろえています。オーロラにらしされたホッキョクグマはなんとおりものひかりをまとい、いきむようなうつくしさでした。そのときあたまかんだのは、土産物みやげものてんかけた絵葉書えはがきです。先住民せんじゅうみんえがいたのは、まさにオーロラのひかりけてかがやくクマのでした。ホッキョクグマをとおして、ながくこのらしてきた人々ひとびと歴史れきしれたような感覚かんかくでした。

ホッキョクグマは現在げんざい絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅ指定していされています。地球ちきゅう温暖おんだん影響えいきょうにより、エサであるアザラシをるためにかせないこおり期間きかんみじかくなったことで、徐々じょじょにそのかずらしています。わたしが2022ねんおとずれたさいも、例年れいねんよりあたたかいためこおりるのがおくれているようで、「ホッキョクグマにえないかもしれない」とわれました。さいわいにも滞在たいざい初日しょにち夜中よなかもう吹雪ふぶききて一気いっきみ、一夜いちやにしてこおりみました。ホッキョクグマにえるかもしれないとよろこんだ一方いっぽうで、野生やせい動物どうぶつたちはこのような環境かんきょう変化へんか直接ちょくせつ影響えいきょうけるのだとはだかんじ、複雑ふくざつおもいにもなりました。

教科書きょうかしょまなんだことや、写真しゃしん以上いじょうのものがここにはあります。ホッキョクグマとおな大地だいちみしめたとき、なにかんじるのか。ホッキョクグマのために、なにをしてあげたいとおもうのか。自分じぶんしんいかけるたびを、体験たいけんしてみませんか。

© Destination Canada

こおり期間きかんみじかくなったことで、おも栄養えいようげんであるアザラシが捕獲ほかくしづらくなった。温暖おんだん影響えいきょうは、ホッキョクグマにもおよんでいる

©Dennis Fast / Churchill Wild

うつくしいオーロラをひとめできるのも、宿泊しゅくはくしゃだけの特権とっけん自然しぜん自分じぶん、そして宇宙うちゅう地球ちきゅうのつながりを実感じっかんする瞬間しゅんかん