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人工じんこう知能ちのう(AI)、ビッグデータ法務ほうむ コンテンツビジネス法務ほうむ知的ちてき財産ざいさんけん著作ちょさくけん

画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたコンテンツを自社じしゃサービスで利用りようするさい注意ちゅういすべき事項じこう

アバター画像 柿沼かきぬま太一たいち

Contents

1 画像がぞう生成せいせいAIをふく生成せいせいけいAIとビジネス

 ビジネス領域りょういきにおいて、画像がぞう生成せいせいAIをふく生成せいせいけいAI技術ぎじゅつ利用りようされる場面ばめんおおきくけると2つあるようにおもいます。
 1つはユーザーがわ利用りようする場面ばめん、つまり「生成せいせいけいAIを利用りようして生成せいせいしたコンテンツを自社じしゃプロダクトでもちいる場合ばあい」、もう1つはベンダがわ提供ていきょうする場面ばめん、つまり「生成せいせいけいAIのモデルそのものや当該とうがいモデルをベースとするアプリケーションを開発かいはつ提供ていきょうする場合ばあい」のふたつです。
 もちろん、企業きぎょうによっては「自社じしゃ生成せいせいけいAIツールを開発かいはつし、当該とうがいツールをもちいて生成せいせいしたコンテンツを自社じしゃプロダクトでもちいる」ということもあるでしょう。その場合ばあいは2つの領域りょういき双方そうほうにまたがった検討けんとう必要ひつようです。

(1) 生成せいせいけいAIのモデルそのものや当該とうがいモデルをベースとするアプリケーションを開発かいはつ提供ていきょうする場合ばあい

 生成せいせいけいAIのモデルそのものや、当該とうがいモデルをベースとするアプリケーションをベンダ・サービサーとして開発かいはつ提供ていきょうする場合ばあいです1著名ちょめいVCであるセコイアキャピタルによる、生成せいせいけいAIにかんする記事きじでは、過去かこから現在げんざいまでの生成せいせいけいAIの簡単かんたん歴史れきしかく領域りょういき(テキスト、コード、画像がぞう音声おんせい、ビデオ、3Dとう)におけるモデルの種類しゅるいとアプリケーションの適用てきよう範囲はんい今後こんごどのような領域りょういき利用りようされるかの予想よそうなどがまとめられており参考さんこうになります。画像がぞう生成せいせいAIでいうと、Imagen、DALL-E2、Midjourney、Stable Diffusionなどがベースとなるモデルであり、当該とうがいモデルをカスタマイズしたモデルや、それらのモデルをベースとしたアプリケーションが開発かいはつ販売はんばいされています。
 ベースとなるモデルそのものをフルスクラッチで開発かいはつするには、高度こうど技術ぎじゅつりょく大量たいりょう学習がくしゅうようデータと計算けいさん資源しげん必要ひつようとなるため、ごく一部いちぶのプレーヤーしかおこなえないでしょう。
 一方いっぽう公開こうかいされたモデルをベースに追加ついか学習がくしゅうとうおこなってモデルをカスタマイズしたり、第三者だいさんしゃ公開こうかいしたモデルをベースにしてアプリケーションを開発かいはつ提供ていきょうするビジネスにはすで多数たすうのスタートアップが参入さんにゅうしています。
 そして、ベースモデルのカスタマイズやアプリケーションの開発かいはつ提供ていきょう領域りょういきかんする法的ほうてき問題もんだいはざっくりいうと以下いかの4てんです。

1 ベースモデルはOSSとして公開こうかいされているため、当該とうがいOSSにかんするライセンス条件じょうけん的確てきかく解釈かいしゃく
2 追加ついか学習がくしゅうとう必要ひつようとなるデータやデータベースの収集しゅうしゅう利用りようをいかに適法てきほうおこなうか
3 開発かいはつしたモデルやアプリをユーザーに提供ていきょうするさいのサービス内容ないよう利用りよう規約きやく設計せっけい
4 公開こうかいしたモデルやアプリを利用りようしてユーザーが著作ちょさくけん侵害しんがいとう違法いほう行為こういおこなったさいのサービス提供ていきょうしゃ責任せきにんをどうかんがえるか

(2) 生成せいせいけいAIを利用りようして生成せいせいしたコンテンツを自社じしゃプロダクトでもちいる場合ばあい

 プロのイラストレーターが創作そうさくにAIツールを利用りようしたり、ゲーム企業きぎょうなどのエンタメけい企業きぎょうがAIツールを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ自社じしゃプロダクトない利用りようする場合ばあいです。ようするに、これまで人間にんげん制作せいさくしてきたコンテンツの一部いちぶをAI生成せいせいぶつ代替だいたいする場合ばあいですが、この場合ばあい法的ほうてき注意ちゅういすべき事項じこう以下いかの4てんです2実際じっさいにはこれらの事項じこうは、プロや企業きぎょうかぎらずAI生成せいせいぶつ利用りようするひと全員ぜんいん関係かんけいするのですが、プロ・企業きぎょうほうがシビアな問題もんだい発生はっせいする可能かのうせいがあるので、より注意ちゅういする必要ひつようがあります。

1 画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ著作ちょさくけん発生はっせいしているか
2 画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ利用りよう制限せいげんがないか
3 画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ第三者だいさんしゃ無断むだん利用りようした場合ばあい権利けんり行使こうし差止さしどめ請求せいきゅう損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう)ができるか
4 当該とうがいAI生成せいせいぶつ生成せいせい利用りよう行為こうい他者たしゃ権利けんり著作ちょさくけんとう)を侵害しんがいしないか

 今回こんかい記事きじはこの4つの留意りゅういてんかんするものです。

2 画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ著作ちょさくけん発生はっせいしているか

 かり当該とうがいAI生成せいせいぶつ著作ちょさくけん発生はっせいしていないとすると、当該とうがい生成せいせいぶつ基本きほんてき第三者だいさんしゃにパクられ放題ほうだいということになりますので、プロや企業きぎょうにとってはおおきな問題もんだいとなります。
 この論点ろんてんについては、以前いぜん記事きじ解説かいせつをしたとおり、画像がぞう生成せいせいAIを利用りようしての創作そうさく活動かつどう人間にんげんの「創作そうさくてき寄与きよ」があるかかによって結論けつろんかれます。
 自分じぶん意図いとどおりに高画質こうがしつ画像がぞう生成せいせいするために、詳細しょうさいかつなが呪文じゅもんとなえて画像がぞう生成せいせいした場合ばあい呪文じゅもん自体じたいながさや構成こうせい要素ようそふくすうかい試行錯誤しこうさくごする場合ばあいおな呪文じゅもんなんとなえて複数ふくすう画像がぞう生成せいせいし、そのなかからこのみの画像がぞうをピックアップする場合ばあい自動じどう生成せいせいされた画像がぞう人間にんげんがさらに加筆かひつ修正しゅうせいをした場合ばあいなどは「創作そうさくてき寄与きよ」があるとして、それらの行為こういおこなった人間にんげん著作ちょさくしゃとして著作ちょさくけん発生はっせいすることになるでしょう。
 そして、プロや企業きぎょう創作そうさく行為こういおこな場合ばあい通常つうじょう試行錯誤しこうさくご取捨選択しゅしゃせんたく加筆かひつおこなうため「創作そうさくてき寄与きよ」があることがおおく、ほとんどのケースで著作ちょさくけん発生はっせいするのではないかとおもいます。
 以下いかほん記事きじでは当該とうがいAI生成せいせいぶつ著作ちょさくけん発生はっせいしていることを前提ぜんていとします。

3 画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ利用りよう制限せいげんがないか

 画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつをビジネスで利用りようする場合ばあいとく当該とうがいAI生成せいせいぶつ商用しょうよう利用りようできるか問題もんだいとなります。
 AI生成せいせいぶつ商用しょうよう利用りようふく自由じゆう利用りようできるためには、当該とうがいAI生成せいせいぶつ著作ちょさくけん発生はっせいしていることを前提ぜんていとして、① ユーザー自身じしん著作ちょさくけんっているか、あるいは②他者たしゃ(AIツール提供ていきょうしゃ場合ばあいおおいです)が著作ちょさくけんっている場合ばあいは、当該とうがい権利けんりしゃからユーザーがライセンスをけており、当該とうがいライセンス内容ないよう制限せいげんがない、のどちらかが必要ひつようです。
 この論点ろんてんは、利用りようするAIツールの利用りよう規約きやくにより結論けつろんおおきく左右さゆうされるので、利用りよう規約きやくをよく必要ひつようがあります。
 つぎ論点ろんてんである「4 画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ第三者だいさんしゃ無断むだん利用りようした場合ばあい権利けんり行使こうし差止さしどめ請求せいきゅう損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう)ができるか」にもAIツールの利用りよう規約きやく関連かんれんしますので、りょう論点ろんてんわせて「5 主要しゅようなAIツールの利用りよう規約きやく解説かいせつ」にて説明せつめいします。 

4 画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ第三者だいさんしゃ無断むだん利用りようした場合ばあい権利けんり行使こうし差止さしどめ請求せいきゅう損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう)ができるか

 この論点ろんてんについては「2 画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ著作ちょさくけん発生はっせいしているか」の論点ろんてんとは区別くべつする必要ひつようがあります。
 つまり、AI生成せいせいぶつ著作ちょさくけん発生はっせいしておりユーザーに著作ちょさくけん帰属きぞくしていても、利用りようしたAIツールの利用りよう規約きやくによってはユーザーが権利けんり行使こうしできなくなる可能かのうせいがあるのです。
 権利けんり行使こうしできない場合ばあい著作ちょさくけん発生はっせいしていても結局けっきょくパクられ放題ほうだいということになります。
 この論点ろんてん利用りようするAIツールの利用りよう規約きやくにより結論けつろんおおきく左右さゆうされますので、「5 主要しゅようなAIツールの利用りよう規約きやく解説かいせつ」で説明せつめいします。

5 主要しゅようなAIツールの利用りよう規約きやく解説かいせつ

 さきほど紹介しょうかいした「3 画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ利用りよう制限せいげんがないか」の論点ろんてんと「4 画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ第三者だいさんしゃ無断むだん利用りようした場合ばあい権利けんり行使こうし差止さしどめ請求せいきゅう損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう)ができるか」の論点ろんてんについては利用りようするAIツールの利用りよう規約きやく内容ないようおおきく影響えいきょうします。
 そこで、主要しゅようなAIツールの利用りよう規約きやくについて簡単かんたん解説かいせつします(利用りよう規約きやく確認かくにん時点じてんは2022ねん11月1にち)。

(1) stable-diffusion

 ▼ 利用りよう規約きやく内容ないよう
 
 stable-diffusionは画像がぞう生成せいせいAIモデルですが、その利用りよう規約きやくには、①モデル(「”Model”」)およ当該とうがいモデルをベースに開発かいはつされたカスタマイズモデル(「”Derivatives of the Model”」)のライセンス条件じょうけんと、②当該とうがいモデルを利用りようして生成せいせいされた出力しゅつりょく(”Output”)のライセンス条件じょうけん双方そうほうふくまれています。
 このうち、「②当該とうがいモデルを利用りようして生成せいせいされた出力しゅつりょく(”Output”)」にかんする権利けんりについての言及げんきゅう部分ぶぶん以下いかのとおりです。

6. The Output You Generate. Except as set forth herein, Licensor claims no rights in the Output You generate using the Model. You are accountable for the Output you generate and its subsequent uses. No use of the output can contravene any provision as stated in the License.
 (かりやく
 6. ユーザーが生成せいせいする出力しゅつりょく
 ほん契約けいやくさだめる場合ばあいのぞき、ライセンサーは、ユーザーがモデルを使用しようして生成せいせいした出力しゅつりょくについていかなる権利けんり主張しゅちょうしません。ユーザーは、ユーザーが生成せいせいした出力しゅつりょくおよびその使用しようについて説明せつめい責任せきにんうものとします。出力しゅつりょくのいかなる使用しようも、ほん使用しよう許諾きょだく記載きさいされたいかなる規定きていにもはんすることはできません。

 「ライセンサーはAI生成せいせいぶつ著作ちょさくけんについていかなる権利けんり主張しゅちょうしない」すなわち「AI生成せいせいぶつ著作ちょさくけんはユーザーに帰属きぞくする」という非常ひじょうにシンプルな内容ないようです。
 この規約きやく内容ないよう前提ぜんていとすると、stable-diffusionを利用りようした場合ばあい画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ利用りよう制限せいげんがないか」と「画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ第三者だいさんしゃ無断むだん利用りようした場合ばあい権利けんり行使こうし差止さしどめ請求せいきゅう損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう)ができるか」についての結論けつろんは、それぞれ「制限せいげんなし」「可能かのう」となります。

(2) Dream Studio

▼ 利用りよう規約きやく内容ないよう

Copyright
中略ちゅうりゃく
All users, by use of DreamStudio Beta and the Stable Diffusion beta Discord service hereby acknowledge having read and accepted the full CC0 1.0 Universal Public Domain Dedication (available at https://creativecommons.org/publicdomain/zero/1.0/), which includes, but is not limited to, the foregoing waiver of intellectual property rights concerning any Content.
 User, by use of DreamStudio Beta and the Stable Diffusion beta Discord service, acknowledges understanding that such waiver also includes a waiver of any such user’s expectation and/or claim to any absolute, unconditional right to reproduce, copy, prepare derivate works, distribute, sell, perform, and/or display, as applicable, and further that any such user acknowledges no authority or right to deny permission to others to do the same concerning the Content. (後略こうりゃく

かりやく
著作ちょさくけん
中略ちゅうりゃく
 すべてのユーザーは、DreamStudio BetaおよびStable Diffusion beta Discordサービスを使用しようすることにより、CC0 1.0 Universal Public Domain Dedication (available at https://creativecommons.org/publicdomain/zero/1.0/) をみ、承諾しょうだくしたことをみとめます。この内容ないようは、いかなるコンテンツにかんする知的ちてき財産ざいさんけん放棄ほうきふくみますが、これにかぎるものではありません。
 ユーザーは、DreamStudioベータばんおよびStable DiffusionベータばんのDiscordサービスを使用しようすることにより、この権利けんり放棄ほうきは、該当がいとうする場合ばあい複製ふくせい、コピー、派生はせいぶつ準備じゅんび配布はいふ販売はんばい実行じっこう、および/または表示ひょうじする絶対ぜったいてき無条件むじょうけん権利けんりたいするユーザーの期待きたいおよび/または主張しゅちょう権利けんり放棄ほうきふくむこと、さらにユーザーは、コンテンツにかんしておなじことをおこな許可きょか他人たにん否定ひていする権限けんげんまたは権利けんりがないことを理解りかいしたものとみなします。

この利用りよう規約きやくさきほどのstable-diffusionとはかなりことなります。
  AI生成せいせいぶつ著作ちょさくけんがユーザーに帰属きぞくする3利用りよう規約きやくちゅう、AI生成せいせいぶつ著作ちょさくけん帰属きぞくかんする言及げんきゅうがないので、法律ほうりつじょう原則げんそくしたがってユーザーがAI生成せいせいぶつ著作ちょさくしゃになるとおもわれます。 ことは共通きょうつうなのですが、当該とうがいAI生成せいせいぶつについて「CC0 1.0 Universal Public Domain Dedication」でのライセンスがユーザーに義務ぎむづけられているのです
 この「CC0 1.0 Universal Public Domain Dedication」は、ようするに「すべての権利けんり放棄ほうきする」という内容ないようですので、結局けっきょくDream Studioを利用りようして生成せいせいされたAI生成せいせいぶつについてユーザーは「著作ちょさくけんゆうしているが権利けんり行使こうしできない」という状態じょうたいになります。すなわち著作ちょさくけん発生はっせいしていても、結果けっかてきには「著作ちょさくけん発生はっせいしてない」のとほぼおなじことになる、ということです。
 この規約きやく内容ないよう前提ぜんていとすると、Dream Studioを利用りようした場合ばあい画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ利用りよう制限せいげんがないか」については「制限せいげんなし」となります。
 しかし「画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ第三者だいさんしゃ無断むだん利用りようした場合ばあい権利けんり行使こうし差止さしどめ請求せいきゅう損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう)ができるか」については「できない」ということになります。

 

(3) NovelAI

▼ 利用りよう規約きやく内容ないよう

 1.3 Ownership. You, whether a legal or physical entity, retain all rights and ownership of your Content. We do not claim any ownership rights to your Content. Unless you agree and Anlatan agrees specifically to transfer your ownership to Anlatan.

 1.4 Content. Content refers to the generated material that you specifically create using our Services. Your content is wholly yours and is not representative or affiliated with Anlatan, we do not act as publisher or platform to publish your Content.

かりやく
1.3 所有しょゆうけん
 お客様きゃくさまは、法人ほうじんまたは物理ぶつりてき実体じったいにかかわらず、お客様きゃくさまのコンテンツのすべての権利けんり所有しょゆうけん保持ほじします。当社とうしゃは、お客様きゃくさまのコンテンツにたいするいかなる所有しょゆうけん主張しゅちょうしません。ただし、お客様きゃくさま同意どういし、 Anlatanがお客様きゃくさま所有しょゆうけんをAnlatanに譲渡じょうとすることにとく同意どういした場合ばあいは、このかぎりではありません。

1.4 コンテンツ
 コンテンツとは、お客様きゃくさま当社とうしゃのサービスを利用りようして具体ぐたいてき作成さくせいした生成せいせいぶつします。お客様きゃくさまのコンテンツはすべてお客様きゃくさまのものであり、 Anlatanを代表だいひょうしたり提携ていけいしたりするものではありません。またAnlatanはお客様きゃくさまのコンテンツを公開こうかいするための出版しゅっぱんしゃまたはプラットフォームとして機能きのうするものではありません。

 この利用りよう規約きやくはstable-diffusionの利用りよう規約きやく同様どうよう、「AI生成せいせいぶつ著作ちょさくけんはユーザーに帰属きぞくする」という非常ひじょうにシンプルな内容ないようです。
 この規約きやく内容ないよう前提ぜんていとすると、NovelAI を利用りようした場合ばあい画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ利用りよう制限せいげんがないか」と「画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいしたAI生成せいせいぶつ第三者だいさんしゃ無断むだん利用りようした場合ばあい権利けんり行使こうし差止さしどめ請求せいきゅう損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう)ができるか」についての結論けつろんは、それぞれ「制限せいげんなし」「可能かのう」となります。

(4) Midjourney

▼ 利用りよう規約きやく内容ないよう
 Midjourneyはちょっとややこしいです。ながいですが、以下いか利用りよう規約きやくのうち関連かんれんする部分ぶぶん引用いんようかりやくです。

まず冒頭ぼうとう部分ぶぶんです。
ここでは「the “Assets”」の定義ていぎ(=ほんサービスであなたが生成せいせいした画像がぞう、およびその資産しさん)が重要じゅうようです。

Thank you for using Midjourney’s image generation and chat services (the “Services”). These Terms of Service (the “Agreement”) spell out what rights you have with respect to the Service generated images, and other assets, which you generate (the “Assets”), your use of the Services, and other important topics like arbitration.

かりやく
Midjourneyの画像がぞう生成せいせい・チャットサービス(以下いかほんサービス」)をご利用りよういただき、ありがとうございます。このサービス規約きやく以下いかほん契約けいやく」)は、ほんサービスであなたが生成せいせいした画像がぞう、およびその資産しさん以下いか資産しさん」)、ほんサービスの使用しよう、および仲裁ちゅうさいなどのその重要じゅうようなトピックにかんして、お客様きゃくさま権利けんりについてつづったものです。

つぎ権利けんりまわりにかんする部分ぶぶんです。

4. Copyright and Trademark
 In this section, Paid Member shall refer to a Customer who has subscribed to the latest Phase 3 payment plan, which became available as of 5/6/22.

かりやく
4.著作ちょさくけんおよ商標しょうひょうけん
 ほんこうにおいて、有料ゆうりょう会員かいいんとは、22ねん5がつ6にちづけ利用りよう可能かのうとなった最新さいしんだい3支払しはらいプランに加入かにゅうしたお客様きゃくさまします。

Rights you give to Midjourney
By using the Services, you grant to Midjourney, its successors, and assigns a perpetual, worldwide, non-exclusive, sublicensable no-charge, royalty-free, irrevocable copyright license to reproduce, prepare Derivative Works of, publicly display, publicly perform, sublicense, and distribute text, and image prompts you input into the Services, or Assets produced by the service at your direction. This license survives termination of this Agreement by any party, for any reason.

かりやく
客様きゃくさまがMidjourneyにあたえる権利けんり
 ほんサービスを利用りようすることにより、お客様きゃくさまは Midjourney、その後継こうけいしゃ、および譲受人ゆずりうけにんに、お客様きゃくさまほんサービスに入力にゅうりょくしたテキスト、および画像がぞうプロンプト、またはお客様きゃくさま指示しじによりほんサービスが生成せいせいした資産しさん複製ふくせい派生はせいぶつ作成さくせい公開こうかい表示ひょうじ公開こうかい実行じっこう、サブライセンス、および配布はいふかんする永久えいきゅう世界せかい排他はいた、サブライセンス可能かのう無償むしょう取消とりけし不能ふのう著作ちょさくけん許諾きょだくするものとします。このライセンスは、理由りゆう如何いかわず、いかなる当事とうじしゃによるほん契約けいやく終了しゅうりょう存続そんぞくします。

Your Rights
Subject to the above license, you own all Assets you create with the Services. This does not apply if you fall under the exceptions below.
Please note: Midjourney is an open community which allows others to use and remix your images and prompts whenever they are posted in a public setting. By default, your images are publically viewable and remixable. As described above, you grant Midjourney a license to allow this. If you purchase a private plan, you may bypass some of these public sharing defaults.

客様きゃくさま権利けんり
 上記じょうきのライセンスにしたがい、お客様きゃくさまほんサービスを使用しようして作成さくせいしたすべての資産しさん所有しょゆうします。ただし、以下いか例外れいがい該当がいとうする場合ばあいは、このかぎりではありません。
注意ちゅうい:Midjourneyはオープンなコミュニティであり、あなたの画像がぞうやプロンプトが公共こうきょう投稿とうこうされた場合ばあいひとがそれを使用しようし、リミックスすることを許可きょかしています。デフォルトでは、あなたの画像がぞう一般いっぱんてき閲覧えつらん可能かのうであり、リミックス可能かのうです。上記じょうきのように、お客様きゃくさまはMidjourneyにこれを許可きょかするライセンスを付与ふよしています。プライベートプランを購入こうにゅうされた場合ばあい、これらの公開こうかい共有きょうゆうのデフォルトの一部いちぶ回避かいひすることができます。

Exception 1: Non-Paid Members License Terms
If you are not a Paid Member, Midjourney grants you a license to the Assets under the Creative Commons Noncommercial 4.0 Attribution International License (the “Asset License”).
The full text is accessible as of the Effective Date here: .

例外れいがい1: 有料ゆうりょうメンバーライセンス条項じょうこう
 あなたが有料ゆうりょう会員かいいんでない場合ばあい、MidjourneyはあなたにCreative Commons Noncommercial 4.0 Attribution International Licenseのした資産しさん訳注やくちゅうほんサービスで生成せいせいされた画像がぞう、およびその資産しさん)にたいするライセンスを付与ふよします。
りゃく

Exception 2: Corporate-User License Terms
If you are an employee or owner of a company with more than $1,000,000 USD a year in gross revenue, and you are using the Services to benefit your Employer or company you must purchase a corporate membership plan to use the Services or copy the Assets for your company.
Corporate membership plans involve an upfront, non-refundable deposit for up to 12 months of service.

例外れいがい2:企業きぎょうユーザー・ライセンス条項じょうこう
 お客様きゃくさま年間ねんかんそう収入しゅうにゅう100まんドル以上いじょう企業きぎょう従業じゅうぎょういんまたはオーナーで、雇用こようぬしまたは企業きぎょうのためにほんサービスを使用しようする場合ばあい、お客様きゃくさま企業きぎょうのためにほんサービスを使用しようまたは資産しさんをコピーするには、法人ほうじんメンバーシッププランを購入こうにゅうする必要ひつようがあります。
コーポレート・メンバーシップ・プランには、最大さいだい12ヶ月かげつぶんのサービスにたいする前金まえきん返金へんきん不可ふか)がふくまれます。

 Midjourneyの場合ばあい利用りよう規約きやく(Terms of Service)以外いがいに、有料ゆうりょうプランをもうんださい表示ひょうじされる画面がめんにも利用りよう条件じょうけん記載きさいされており若干じゃっかん複雑ふくざつなのですが、おそらく以下いかのような整理せいりになるのだろうとおもわれます。

 この場合ばあいは、Paid Member(Corporate-Userふくむ)にAI生成せいせいぶつ著作ちょさくけん帰属きぞくします。
 これは、利用りよう規約きやくじょう「the “Assets”」(ほんサービスでユーザが生成せいせいした画像がぞう、およびその資産しさん)について、一定いってい例外れいがいのぞいて「上記じょうきのライセンスにしたがい、お客様きゃくさまほんサービスを使用しようして作成さくせいしたすべての資産しさん所有しょゆうします。」と記載きさいされているためです。
 ただし、この場合ばあいでも「お客様きゃくさまがMidjourneyにあたえる権利けんり」として、ユーザーはMidjourneyにたいして一定いってい権利けんりをライセンスすることになっています。
 この「ユーザー→Midjourneyへのライセンス」には、「Midjourney→第三者だいさんしゃへの(サブ)ライセンス」けんふくまれています。
 問題もんだいは、この「Midjourney→第三者だいさんしゃへの(サブ)ライセンス」の内容ないようですが、「生成せいせい画像がぞうやプロンプトが公共こうきょう(public setting)に投稿とうこうされた場合ばあいひとがそれを使用しようし、リミックスすること」がふくまれるようです。一方いっぽう当該とうがいライセンスにもとづいて、あるMidjourneyユーザが生成せいせいした対象たいしょう画像がぞう第三者だいさんしゃ商用しょうよう利用りよう可能かのうかどうかは利用りよう規約きやくじょう明記めいきされておらず不明ふめいです。
 もっとも、すくなくともMidjourneyのユーザや、Non-Paid Memberについては、Non-Paid Memberが生成せいせいした画像がぞうについて、自分じぶん自身じしんですら商用しょうよう利用りようできないこととのバランスからかんがえると、他人たにん生成せいせいした画像がぞうについては商用しょうよう利用りよう不可ふかおもわれます。
 しめすとこんな構造こうぞうですね。
 

 この構造こうぞうしたでは、Paid Member(Corporate-Userふくむ)が生成せいせいした画像がぞうかんしては、「生成せいせいユーザーみずからの利用りよう第三者だいさんしゃへの利用りよう許諾きょだくふくむ)になんらかの制約せいやくがないか」については「制約せいやくなし」ということになります。
 一方いっぽう第三者だいさんしゃ許諾きょだく利用りようしたことにたいして生成せいせいユーザーが著作ちょさくけん侵害しんがいもとづく権利けんり行使こうし差止さしどめ請求せいきゅう損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうとう)できるか」については、「Midjourneyが第三者だいさんしゃ付与ふよしているライセンスの範囲はんいがい行為こういたいしてのみ権利けんり行使こうし可能かのう」ということになります。

② Non-Paid Memberが生成せいせいした画像がぞう

 この場合ばあいは、いったんNon-Paid MemberにAI生成せいせいぶつ著作ちょさくけん帰属きぞくしたのち、Midjourneyに当該とうがい著作ちょさくけん移転いてんします。
 このてんについては利用りよう規約きやくじょう明記めいきされているわけではないのですが、利用りよう規約きやくじょう例外れいがい1: 有料ゆうりょうメンバーライセンス条項じょうこう」として「あなたが有料ゆうりょう会員かいいんでない場合ばあい、MidjourneyはあなたにCreative Commons Noncommercial 4.0 Attribution International Licenseのした資産しさんたいするライセンスを付与ふよします。」と記載きさいされていることからみちびくことができます(Midjourneyに著作ちょさくけん移転いてんしていなければ、Midjourney がCC4.0NCでユーザーにライセンスすることもできないため)。
 もっとも、Midjourneyは、当該とうがいAI生成せいせいぶつ創作そうさくしたNon-Paid Memberにたいして、CC4.0NCのした、ライセンスをすることになっています。
 しめすとこんな構造こうぞうです。さきほどの「Paid Member(Corporate-Userふくむ)が生成せいせいした画像がぞう」とAI生成せいせいぶつ権利けんりしゃやライセンス内容ないようことなります。

 この構造こうぞうしたでは、Non-Paid Memberが生成せいせいした画像がぞうかんしては「生成せいせいユーザーみずからの利用りよう第三者だいさんしゃへの利用りよう許諾きょだくふくむ)になんらかの制約せいやくがないか」については「CC4.0NCのしたでのみ利用りよう可能かのう」ということになります。つまりユーザーはみずか生成せいせいした画像がぞう複製ふくせい改変かいへん可能かのうですが、商用しょうよう利用りようはできませんし、第三者だいさんしゃに(サブ)ライセンスすることもできません。
 また、「第三者だいさんしゃ許諾きょだく利用りようしたことにたいして生成せいせいユーザーが著作ちょさくけん侵害しんがいもとづく権利けんり行使こうし差止さしどめ請求せいきゅう損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうとう)できるか」についても、「生成せいせいユーザーは著作ちょさくけんゆうしておらず、MJから付与ふよされているCCNC4.0ライセンスしかゆうしていないので、著作ちょさくけん侵害しんがいもとづく権利けんり行使こうしはできない」ということになります。

6 当該とうがいAI生成せいせいぶつ生成せいせい利用りよう行為こうい他者たしゃ権利けんり著作ちょさくけんとう)を侵害しんがいしないか

(1) 論点ろんてん整理せいり

 このてんについては、AI生成せいせいぶつをビジネス利用りようしようとする企業きぎょうからとくによく質問しつもんされる論点ろんてんです。
 たとえば画像がぞう生成せいせい指示しじさいして特定とくてい作家さっか名前なまえ入力にゅうりょくして生成せいせいする行為こうい著作ちょさくけん侵害しんがい該当がいとうするか」「画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいした画像がぞうが、第三者だいさんしゃ創作そうさくした既存きそん画像がぞう同一どういつ類似るいじしていた場合ばあい著作ちょさくけん侵害しんがい該当がいとうするか。当該とうがい既存きそん画像がぞう学習がくしゅうようデータセットにふくまれていた場合ばあいはどうか。」などが典型てんけいてき質問しつもんです。
 この論点ろんてんについては、まず入力にゅうりょく行為こうい出力しゅつりょく行為こうい、つまり① 画像がぞう生成せいせい指示しじ入力にゅうりょくする行為こうい著作ちょさくけん侵害しんがい該当がいとうするかと、② 出力しゅつりょく行為こういおよ出力しゅつりょくされた画像がぞう利用りよう行為こうい著作ちょさくけん侵害しんがい該当がいとうするか、にけてかんがえる必要ひつようがあります。
 また、入力にゅうりょくデータ・出力しゅつりょくデータがそれぞれ「著作ちょさくぶつ既存きそん著作ちょさくぶつ4著作ちょさく物性ぶっせい発生はっせいしないみじかいプロンプトや著作ちょさくけん保護ほご期間きかん満了まんりょうしている画像がぞうなどが該当がいとうします。」なのか「他人たにん既存きそん著作ちょさくぶつ」なのかについてもけて検討けんとうする必要ひつようがあります。

 つまり「入力にゅうりょく×出力しゅつりょく」と「著作ちょさくぶつ既存きそん著作ちょさくぶつ×他人たにん既存きそん著作ちょさくぶつ」のわせでかんがえる必要ひつようがあるのですが、わせとしては以下いかの4つがあります。

この4つのパターンをもうすこしわかりやすく図示ずししたのが以下いかです。

 パターンAは「著作ちょさくぶつ既存きそん著作ちょさくぶつ」を入力にゅうりょくしたところ「著作ちょさくぶつ既存きそん著作ちょさくぶつ」が出力しゅつりょくされるパターンです。
 たとえば、著作ちょさくぶつ該当がいとうしないような呪文じゅもんや、特定とくてい作家さっか名前なまえ著作ちょさくものです)を呪文じゅもんとして入力にゅうりょくしたところ、既存きそん著作ちょさくぶつとは類似るいじ画像がぞう生成せいせいされた場合ばあいや、すで著作ちょさくけん保護ほご期間きかん満了まんりょうした画像がぞう入力にゅうりょくしたところ、既存きそん著作ちょさくぶつとは類似るいじ画像がぞう生成せいせいされた場合ばあいなどです。
 この場合ばあい入力にゅうりょく行為こうい出力しゅつりょく行為こういいずれにも著作ちょさくけん侵害しんがい行為こうい存在そんざいしないため、とく問題もんだいとなりません。
 一方いっぽう、パターンBは、「著作ちょさくぶつ既存きそん著作ちょさくぶつ」を入力にゅうりょくしたところ「他人たにん既存きそん著作ちょさくぶつ同一どういつ類似るいじ画像がぞう」が出力しゅつりょくされたパターン(出力しゅつりょく行為こうい著作ちょさくけん侵害しんがい問題もんだいとなるパターン)、パターンCは「他人たにん既存きそん著作ちょさくぶつ同一どういつ類似るいじ著作ちょさくぶつ」を入力にゅうりょくしたところ「著作ちょさくぶつ既存きそん著作ちょさくぶつ」が出力しゅつりょくされたパターン(入力にゅうりょく行為こうい著作ちょさくけん侵害しんがい問題もんだいとなるパターン)、パターンDはパターンBとパターンCのわせです。
 パターンB~Dにおいては他人たにん既存きそん著作ちょさくぶつ利用りようされているため著作ちょさくけん侵害しんがい有無うむ問題もんだいとなります。

(2) 出力しゅつりょく行為こうい著作ちょさくけん侵害しんがい(パターンB)

 「著作ちょさくぶつ既存きそん著作ちょさくぶつ」を入力にゅうりょくしたところ「他人たにん既存きそん著作ちょさくぶつ同一どういつ類似るいじ画像がぞう」が出力しゅつりょくされたパターンです。
 このパターンにおいては、著作ちょさくけん侵害しんがい要件ようけんのうち、とくに「依拠いきょせい」が問題もんだいとなりますが、当該とうがい既存きそん著作ちょさくぶつ学習がくしゅうようデータにふくまれていない場合ばあいと、ふくまれている場合ばあいけて検討けんとうする必要ひつようがあります。

① 既存きそん著作ちょさくぶつ学習がくしゅうようデータにふくまれていない場合ばあい

 

 このパターンは、ユーザにおいて、当該とうがい既存きそん画像がぞうっていれば依拠いきょせい肯定こうていされ、らなければ依拠いきょせい否定ひていされて独自どくじ創作そうさくとして著作ちょさくけん侵害しんがい否定ひていされます。
 その意味いみにおいては、このパターンは従来じゅうらいがた著作ちょさくけん侵害しんがい紛争ふんそうおな問題もんだい状況じょうきょうです。
 もっとも、ユーザが、画像がぞう生成せいせいさいして、プロンプトとして、ある特定とくてい作家さっか名称めいしょう既存きそん画像がぞう入力にゅうりょくし、その結果けっか当該とうがい作家さっか既存きそん著作ちょさくぶつ当該とうがい既存きそん画像がぞう同一どういつ類似るいじ画像がぞう出力しゅつりょくされた場合ばあいには依拠いきょせい肯定こうていされことになるでしょう。
 画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして生成せいせいされたAI生成せいせいぶつかんする著作ちょさくけん侵害しんがい裁判さいばんあらそわれた場合ばあい著作ちょさくけん侵害しんがい主張しゅちょうするがわ原告げんこく)は、「これほどまでに類似るいじしている画像がぞうが『偶然ぐうぜん生成せいせいされるはずがない。生成せいせいしゃ原告げんこく名称めいしょう原告げんこく作成さくせいした既存きそん画像がぞう入力にゅうりょくしたにちがいない」と主張しゅちょうすることがかんがえられます。それにたいして、うったえられたがわ被告ひこく)は、そのような入力にゅうりょく行為こういおこなっていないことを証明しょうめいできるよう、いわば自衛じえいのために画像がぞう生成せいせい過程かていのログをとる必要ひつよう今後こんごはあるかもしれません。

② 既存きそん著作ちょさくぶつ学習がくしゅうようデータにふくまれている場合ばあい

ⅰ 依拠いきょせいについて

 このパターンにおいて依拠いきょせいみとめられるかについて、既存きそん著作ちょさくぶつ学習がくしゅうようデータセットにふくまれていれば依拠いきょせいみとめるべきであるとするかんがかた肯定こうていせつ)と、パラメータ(機械きかい学習がくしゅうにより生成せいせいされた係数けいすう自体じたいはアイデアであるから、既存きそん著作ちょさくぶつがパラメータされている場合ばあいには依拠いきょせいみとめるべきではないというかんがかた否定ひていせつ)があり、現時点げんじてんでは明確めいかく結論けつろんていないのは以前いぜん記事きじ紹介しょうかいしたとおりです。
 なお、わたし以前いぜん記事きじ執筆しっぴつしたのちに、いや定説ていせつとなえる記事きじつけました。
 ABEJAに所属しょぞくする古川ふるかわただしひろし弁護士べんごし執筆しっぴつ記事きじです(2022-12-17執筆しっぴつ)。ちなみに古川ふるかわ弁護士べんごしは、わたしなかもっともAIの技術ぎじゅつめん法律ほうりつめん・ビジネスめんくわしい弁護士べんごしです。
 古川ふるかわ弁護士べんごしどう記事きじなか以下いかのようにべて明確めいかく否定ひていせつっておられます。

学習がくしゅうようデータそのものがパラメータになっているわけではなく、学習がくしゅうようデータやその類似るいじぶつをそのまま出力しゅつりょくするわけではないので、つまりは学習がくしゅう結果けっかから学習がくしゅうようデータの表現ひょうげん本質ほんしつてき部分ぶぶんえているので、依拠いきょせいみとめられないとおもっています。こうかんがえると、著作ちょさくけん侵害しんがいをしたひとが、うそをついて「AIでつくった」と抗弁こうべんすることを心配しんぱいするひともいますが、学習がくしゅうようデータと類似るいじするデータを生成せいせいするかくりつひく以上いじょう抗弁こうべんするがわである程度ていど主張しゅちょう立証りっしょうする必要ひつようがあるとおもいますので、問題もんだいはなかろうとおもいます。
 つまりは、AIを使つかって画像がぞうなりを生成せいせいするがわ適切てきせつ記録きろくっておくべきだとおもっています。
 なお、学習がくしゅう上手うまっていない場合ばあいへん学習がくしゅうをさせた場合ばあい特定とくてい作者さくしゃ特定とくていのキャラクターの画像がぞうのみ学習がくしゅうさせた)はぎゃく依拠いきょせいみとめられるとおもいます。

ⅱ 過失かしつについて

 かりにこのパターンにおいて依拠いきょせいみとめられ、著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつしたとしてもユーザに故意こい過失かしつがなければ、不法ふほう行為こういもとづく損害そんがい賠償ばいしょう責任せきにん発生はっせいしません。
 画像がぞう生成せいせいAIを利用りようするユーザからすると、当該とうがいAIの学習がくしゅうようデータのなかに、出力しゅつりょくされた画像がぞう同一どういつ類似るいじ既存きそん著作ちょさくぶつふくまれていることをらない(故意こいはない)のが通常つうじょうだとおもわれます。
 問題もんだいは、このような場合ばあいでも、ユーザに過失かしつ注意ちゅうい義務ぎむ違反いはん)がみとめられるかどうかです。不法ふほう行為こうい文脈ぶんみゃくでは、「過失かしつ」とは日常にちじょう用語ようごの「うっかりしていたこと」ではなく、簡単かんたんうと「ある注意ちゅうい義務ぎむ違反いはんしたこと」をいいます。
 「行為こういしゃにある注意ちゅうい義務ぎむ(「・・・をしてはならない」あるいは「・・・をしなければならない」という義務ぎむ)がされていたのに、その注意ちゅうい義務ぎむたさずに行為こういおこなったこと」が「過失かしつ」となるのです。
 既存きそん著作ちょさくぶつ学習がくしゅうようデータにふくまれている場合ばあいにおけるユーザの注意ちゅうい義務ぎむとしてかんがえられるのは「当該とうがい画像がぞう生成せいせいAIの学習がくしゅうようデータとしてどのような既存きそん著作ちょさくぶつ利用りようされているかを確認かくにんし、自分じぶん出力しゅつりょくした著作ちょさくぶつ当該とうがい既存きそん著作ちょさくぶつ類似るいじしているかを照合しょうごうする注意ちゅうい義務ぎむ」です。
 このような注意ちゅうい義務ぎむがユーザーにされるのであれば、「当該とうがい注意ちゅうい義務ぎむおこたったこと(照合しょうごう行為こういおこなわなかったこと)」が過失かしつになりますし、注意ちゅうい義務ぎむされなければ、そのような照合しょうごうおこなわなくとも過失かしつはないことになります。
 このような注意ちゅうい義務ぎむについては、一部いちぶ画像がぞう生成せいせいAIにかぎっていえば、技術ぎじゅつてきにはその履行りこう不可能ふかのうではありません。たとえば、 Stable Diffusion の学習がくしゅうもちいられている学習がくしゅうようデータセットLAION-5Bにふくまれる画像がぞう検索けんさくできるウェブアプリ「Have I Been Trained?」などが公開こうかいされており、そのようなアプリを利用りようすれば照合しょうごう可能かのうです 。
 しかし、安易あんいにこの注意ちゅうい義務ぎむ照合しょうごう義務ぎむ)をユーザーにしてしまうと、ユーザーに過失かしつみとめられる範囲はんいきわめてひろくなり、画像がぞう生成せいせいAIの利用りよう萎縮いしゅくすることにもなりかねません。また、これまでの裁判さいばんれい傾向けいこうからすると、おそらく通常つうじょうのユーザには、このようなアプリを利用りようしてまでの高度こうど照合しょうごう義務ぎむされず、かり当該とうがい照合しょうごう義務ぎむ履行りこうしなかったとしても注意ちゅうい義務ぎむ違反いはん過失かしつ)はないとおもわれます。
 一方いっぽう、プロのクリエイターやコンテンツビジネスを生業せいぎょうとしている事業じぎょうしゃ場合ばあい、そのような照合しょうごう義務ぎむがあり、当該とうがい義務ぎむおこたった場合ばあいには過失かしつありとされる可能かのうせいがあります。しかし、その場合ばあいでもそもそも技術ぎじゅつてきにそのような照合しょうごう行為こうい不可能ふかのう場合ばあい(データセットとしてなに利用りようされたか公開こうかいされていない画像がぞう生成せいせいAIモデルを利用りようした場合ばあいには照合しょうごう不可能ふかのうです)には、不可能ふかのういることはできないので、照合しょうごう義務ぎむ存在そんざいせず過失かしつはないことになるとおもいます。
③ まとめ
 以上いじょう、かなりこまかく検討けんとうしてきました。
 ただ、ちゃぶだいがえしをするようですが、そもそも拡散かくさん生成せいせいモデルを利用りようした画像がぞう生成せいせいAIについては、特殊とくしゅ学習がくしゅうをさせないかぎり、学習がくしゅうようデータと同一どういつ類似るいじ画像がぞう自動じどう生成せいせいされる可能かのうせいきわめてひくいとおもわれます。
 したがって、この「出力しゅつりょく行為こうい著作ちょさくけん侵害しんがい」の論点ろんてんは、理論りろんてきには興味深きょうみぶかいものの、実際じっさいにはおおきなリスクとしてとらえる必要ひつようはないのかもしれません5さきほど紹介しょうかいした古川ふるかわ弁護士べんごし記事きじ同様どうよう指摘してきをしています。

(3) 入力にゅうりょく行為こうい著作ちょさくけん侵害しんがい(パターンC)

 つぎに、画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして画像がぞう生成せいせいするにさいして、既存きそん著作ちょさくぶつ入力にゅうりょくする行為こうい著作ちょさくけん侵害しんがい該当がいとうするかを検討けんとうします。
 このパターンは、たとえばText-to-Imageタイプの画像がぞう生成せいせいAIにおいて、他人たにん小説しょうせつ一節いっせつ著作ちょさくぶつ該当がいとうする程度ていどながさのもの)をプロンプトとして入力にゅうりょくする行為こういや、Image -to-Imageタイプの画像がぞう生成せいせいAIにおいて他人たにん画像がぞう入力にゅうりょくする行為こうい(ただし、いずれの場合ばあいでも、結果けっかとして出力しゅつりょくされた画像がぞう著作ちょさくぶつ既存きそん著作ちょさくぶつとする)が該当がいとうします。

 

 この問題もんだいについては、まず個人こじん私的してき領域りょういきない手元てもとのローカルなモデルに入力にゅうりょくする場合ばあいや、クラウドじょうのモデルにプライベートモードで入力にゅうりょくする場合ばあい)で既存きそん著作ちょさくぶつ画像がぞう生成せいせいAIの「呪文じゅもん」として入力にゅうりょくする行為こういは、法的ほうてきには「複製ふくせい」に該当がいとうしますが、私的してき使用しようのための複製ふくせいほう30じょう)ですので適法てきほうとなります。
 一方いっぽう個人こじんが「私的してき領域りょういきがい」で入力にゅうりょく行為こういおこな場合ばあい(クラウドじょうのモデルに、入力にゅうりょくプロンプトが公開こうかいされる形式けいしき入力にゅうりょくする場合ばあいとう)、あるいは法人ほうじんによる入力にゅうりょく行為こういについてはほう30じょう適用てきようはありません。
 もっとも、当該とうがい入力にゅうりょく行為こういは、入力にゅうりょく対象たいしょうとなる既存きそん著作ちょさくぶつを、画像がぞう生成せいせいAIを利用りようして画像がぞう生成せいせいするための「材料ざいりょう」として利用りようしているにぎないため、ほうだい30じょうの4だい3ごうあるいはどうじょうばしらしょ「その当該とうがい著作ちょさくぶつ表現ひょうげんされた思想しそうまた感情かんじょうみずか享受きょうじゅまた他人たにん享受きょうじゅさせることを目的もくてきとしない場合ばあい」に該当がいとうする可能かのうせいがあるようにおもわれます。
 その解釈かいしゃくただしいとすると、このパターンでの既存きそん著作ちょさくぶつ入力にゅうりょく行為こうい適法てきほうとなるのですが、この論点ろんてんについてはまだほとんど議論ぎろんがされていないため、さらに検討けんとうしたいとおもいます。

7 まとめ

 以上いじょうほん記事きじでは、ビジネス領域りょういきにおいて、画像がぞう生成せいせいAIをふく生成せいせいけいAI技術ぎじゅつ利用りようされる場面ばめんのうち「(2) 生成せいせいけいAIを利用りようして生成せいせいしたコンテンツを自社じしゃプロダクトでもちいる場合ばあい」の法的ほうてき留意りゅういてんてんについて解説かいせつをしました。
 とくに、利用りようするAIツールによって、生成せいせいしたコンテンツの利用りよう範囲はんい権利けんり行使こうし可能かのう範囲はんいことなるてんについては十分じゅうぶん注意ちゅうい必要ひつようです。
 ビジネス領域りょういきにおいて、画像がぞう生成せいせいAIをふく生成せいせいけいAI技術ぎじゅつ利用りようされるもう1つの場面ばめんである「(2)生成せいせいけいAIのモデルそのものや当該とうがいモデルをベースとするアプリケーションを開発かいはつ提供ていきょうする場合ばあい」についてもべつ機会きかい検討けんとうしたいとおもいます。
 おたのしみに!

文中ぶんちゅう脚注きゃくちゅう

  • 1
    著名ちょめいVCであるセコイアキャピタルによる、生成せいせいけいAIにかんする記事きじでは、過去かこから現在げんざいまでの生成せいせいけいAIの簡単かんたん歴史れきしかく領域りょういき(テキスト、コード、画像がぞう音声おんせい、ビデオ、3Dとう)におけるモデルの種類しゅるいとアプリケーションの適用てきよう範囲はんい今後こんごどのような領域りょういき利用りようされるかの予想よそうなどがまとめられており参考さんこうになります。
  • 2
    実際じっさいにはこれらの事項じこうは、プロや企業きぎょうかぎらずAI生成せいせいぶつ利用りようするひと全員ぜんいん関係かんけいするのですが、プロ・企業きぎょうほうがシビアな問題もんだい発生はっせいする可能かのうせいがあるので、より注意ちゅういする必要ひつようがあります。
  • 3
    利用りよう規約きやくちゅう、AI生成せいせいぶつ著作ちょさくけん帰属きぞくかんする言及げんきゅうがないので、法律ほうりつじょう原則げんそくしたがってユーザーがAI生成せいせいぶつ著作ちょさくしゃになるとおもわれます。
  • 4
    著作ちょさく物性ぶっせい発生はっせいしないみじかいプロンプトや著作ちょさくけん保護ほご期間きかん満了まんりょうしている画像がぞうなどが該当がいとうします。
  • 5
    さきほど紹介しょうかいした古川ふるかわ弁護士べんごし記事きじ同様どうよう指摘してきをしています。
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