岸田文雄首相が14日昼、次期総裁選に出馬せず退陣する考えを明らかにした。岸田首相の党総裁任期は9月末までで、新総裁選出後に退任することになる。このお盆休みの最中の突然の退陣表明で、「ポスト岸田」レースは一気に白熱化するが、岸田首相の掲げた「新生自民への脱皮」は容易ではなく、「何が起こるかわからない、出たとこ勝負の総裁選」(自民長老)となりそうだ。
これまで、「岸田首相の出方次第」と息をひそめていた総裁候補たちも、「意表を突く岸田流決断」に戸惑いを隠せず、「まずは一変した総裁選の構図を見極めたうえで、出馬の可否を決める」ことを余儀なくされそうだ。もちろん、茂木敏充幹事長、石破茂元幹事長、高市早苗経済安保担当相、河野太郎デジタル担当相は出馬を前提に態勢づくりを急ぐ。ただ、「この中の誰が選ばれても、岸田首相の言う『新生自民』のイメージとは程遠い」のが実態だ。
このため、大胆な世代交代を求める声が強まれば、40代の小泉進次郎元環境相や、永田町で「コバホーク」と呼ばれる小林鷹之前経済安保担当相の急浮上も想定される。ただ、小泉、小林両氏の担ぎ出しをめぐって、麻生太郎副総裁、菅義偉前首相に加え、森喜朗元首相や二階俊博元幹事長ら党長老が暗躍する事態となれば、「これまで通りの談合総裁選となって、国民の自民離れが止まらない状況」(閣僚経験者)に陥りかねない。
そうした中、「突然の退陣表明での岸田首相の狙いは、麻生、菅、二階、森各氏の長老を道連れにして自民党の権力構造を一変させること」(側近)との見方も浮上する。いずれにしても「想定外の“岸田ショック”に長老や実力者たちがどう対応するかで、自民党の未来が決まる」(同)ことは間違いない。
「新生自民」の最初の一歩は「私が身を引くこと」
14日午前11時半から始まった岸田首相の記者会見は、これまでで最短のわずか23分で終わった。歴代首相の退陣表明会見でも例がない短さ。官邸記者団も虚を突かれた形で、質疑応答も「核心に迫るやり取り」もなく、あっけない幕切れとなった。
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