• 2021.06.14
• 種山たねやま雅夫まさお（元もと航空こうくう科学かがく博物館はくぶつかん展示てんじ部長ぶちょう 学芸がくげい員いん）

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ユナイテッド航空こうくうの発注はっちゅうで再度さいど脚光きゃっこうを浴あびた超ちょう音速おんそく旅客機りょかくきですが、実じつはこれまで実用じつよう化かされたものは「コンコルド」など2モデルのみです。実じつは歴史れきしを振ふり返かえると、実用じつよう化かには、騒音そうおんや燃費ねんぴだけではない難むずかしさがあるようです。

時代じだいの寵児ちょうじになるはずだった「超ちょう音速おんそく旅客機りょかくき」

　2021年ねん現在げんざい、ジェット旅客機りょかくきは時速じそくでいえば800から900km/h、いわゆる「亜あ音速おんそく」といった速度そくど帯たいで飛とぶことが一般いっぱん的てきです。実じつはこのスピード、いわゆる超ちょう音速おんそく機きを除のぞけば半はん世紀せいき以上いじょうにわたり変化へんかがありません。

　そのようななか、アメリカのユナイテッド航空こうくうが、同国どうこくのスタートアップ企業きぎょう「ブーム・テクノロジー」が開発かいはつを進すすめる超ちょう音速おんそく旅客機りょかくき「オーバーチュア（Overture）」を2021年ねん6月がつに発注はっちゅうしました。この巡航じゅんこう速度そくどはマッハ1.7。ブーム・テクノロジーは。そのスピード感かんを「既存きそんのジェット旅客機りょかくきのおよそ2倍ばい」と説明せつめいしています。

拡大かくだい画像がぞう

　これまでに実用じつよう化かされた超ちょう音速おんそく旅客機りょかくきは2モデルしかありません。イギリスとフランスが共同きょうどう開発かいはつした「コンコルド」と、旧きゅうソ連それんのツポレフ設計せっけい局きょくが開発かいはつしたTu-144です。

　ともに開発かいはつスタートは1960年代ねんだい。このころは「超ちょう音速おんそく旅客機りょかくきが将来しょうらい民間みんかん航空こうくう市場いちばの主力しゅりょく機きになる」と予想よそうされており、各国かっこくが競きそうように開発かいはつにまい進しんしていました。ただ現実げんじつはそうはならず、「ジャンボジェット」ことボーイング747の席巻せっけんに代表だいひょうされる「亜あ音速おんそくで飛行ひこうしながら機体きたいの容量ようりょうを大おおきくする」という時代じだいへ。その後ご2021年ねん現在げんざいの「亜あ音速おんそくの適切てきせつな大おおきさの旅客機りょかくきで、より環境かんきょうに良よく、燃費ねんぴが良よく、騒音そうおんの低ひくい機体きたいを使つかう」時代じだいへと移うつり変かわったわけです。

　なぜ超ちょう音速おんそく旅客機りょかくきは、これまで実用じつよう化かされたモデルがここまで少すくなかったのでしょうか。もちろん、スピードを出だすぶん燃料ねんりょうも多おおく使つかいますし、騒音そうおんも大おおきかったことから、時代じだいに歓迎かんげいされなかったという側面そくめんもありますが、実用じつよう化かそれ自体じたいが結構けっこう難むずかしいことであるというのもひとつのポイントでしょう。