2009 Brazil GP…ウエーバー今季2勝目、バトンは初の世界王座
予選11番グリッドに着いてデビュー戦を待つ小林可夢偉(トヨタ)
「レースは楽しかったけど、タイヤの使い方が難しかった」と、決勝後(9位)の小林可夢偉
今季F1第16戦ブラジル・グランプリは10月18日、サンパウロ郊外のインテルラゴス・サーキット(1周4・309km×71周)で行われ、予選2位のマーク・ウエーバー(レッドブル)が今季第9戦ドイツに次ぐ通算2勝目をゲット。2位はロベルト・クビカ(BMW)、3位はルイス・ハミルトン(マクラーレン・メルセデス)が入った。
タイトルを争うジェンソン・バトン(ブラウンGP)、ルーベンス・バリチェロ(ブラウンGP)、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)の3人は、ベッテル4位(合計74点)、バトン5位(89点)、バリチェロ8位(72点)で、バトンが2週間後の最終戦アブダビGPを待たず初の世界王座に輝いた。同時にブラウンGPのコンストラクターズ・タイトル(161点)も決定した。
荒れた予選にバリチェロが終止符
インテルラゴス・サーキットは予選の土曜日、激しいスコールに見舞われた。クラッシュによる赤旗中断が2回もあり、セッションは1時間41分遅延した。
この荒れた予選に終止符を打ったのは、地元インテルラゴス出身のルーベンス・バリチェロ。彼自身5年ぶりのポールポジションで、2004年のブラジル以来となった。きびしいコンディションの中でバリチェロは最高のポジションを得たが、ベッテルは16位と反撃には苦しいポジション。バトンもマシンのセットアップに悩み14位と出遅れた。
2週間前の鈴鹿で負傷したティモ・グロック(トヨタ)の代役としてF1デビューを果たした小林可夢偉は11位。可夢偉と同じくTDP(トヨタ若手育成プログラム)出身で、F1では先輩格の中嶋一貴(ウイリアムズ・トヨタ)は今季4回目の予選トップ10入りの9位。日本人2人に期待がかかった。
バトンを封じ込めた可夢偉
決勝日は前日の豪雨から一転の快晴。ポールポジションのバリチェロが1コーナーにホールショットを決め、これにウエーバーが続く。予選5位の座から鋭いダッシュを決めたキミ・ライコネンがそのウエーバーに競り掛けるものの接触、ピットイン。その直後にはエイドリアン・スーティル(フォースインデア)、ヤルノ・トゥルーリ(トヨタ)が接触し、リタイア。フェルナンド・アロンソもこの事故に巻き込まれ早々に姿を消してしまう。
このアクシデントでオープニングラップからセーフティーカーが出動。ここで頭脳プレーを見せたのがマクラーレン陣営で、ハミルトンをピットインさせて給油。変則2回、実質的に1回のピットストップに作戦変更することで、終盤一気に上位を襲うことになった。
セーフティーカー退去の後は首位バリチェロにウエーバー、クビカが遅れずついて行くが、ファンの注目を集めたのがその後方の小林可夢偉とバトンによる6位争い。バトンのフェイントを使ったあの手この手のアタックにもめげず可夢偉は18周の間バトンを封じ込め、レース後バトンからは「ヤツはクレージーだ!」と批判されたが、関係者からはその度胸と技に対して高い評価を受けることになる。ピットストップの後に中嶋一貴と接触したのは残念だったが(中嶋はリタイア)、可夢偉の結果は9位。F1デビュー戦で予選11位は日本人歴代2位。決勝9位は同1位タイの記録だった。
逆転王座の可能性が消えたバリチェロ
その後、首位争いはバリチェロが早目の給油に入ったことからウエーバー、クビカに先行され3位に転落。終盤にはハミルトンとの軽い接触でタイヤをパンクさせ予定外のピットイン。これで8位に転落。4位に浮上するのがやっとだったベッテルとともに逆転王座の可能性はここでなくなってしまった。
「いまはまだレースをしてる気分。シーズン前半はすばらしかったが、ここ数戦は予選でクルマをうまくセットアップすることができず悩んでいた。それをマスコミに非難されたことで大きなストレスも抱えていた」と、新チャンピオンのバトン。そのバトンに一目置かせた小林可夢偉は「楽しかったけど、タイヤの使い方などがうまく行かなかった。それができていれば得点できたと思うから、今日は40点」と、自己採点していた。可夢偉が最終戦アブダビにも参戦できるかどうかはグロックの回復次第。グロックの去就は10月22日に判明する。
バトン、今季最終戦飾れるか
今季F1最終第17戦は11月1日、中近東ではバーレーン、トルコに次いで3番目の開催となるアラブ首長国連邦のアブダビ郊外ヤスマリーナ・サーキット(1周5・554km×55周)で行われる。コースはバレンシア、シンガポールなどと同じく一部公道も使うストリートコースで、ピットロードが本コースの下をくぐるユニークな設計になっている。
チャンピオン争いのプレッシャーから解放されたバトンが第7戦トルコ以来の優勝を飾れるかどうかが焦点となるこのレースは、最高気温33度と炎暑のこともあって午後5時のスタート。GP2アジア・シリーズの第一戦も開催される。
プロフィール |
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西山平夫 にしやま・ひらお
1952年新潟県生まれ。レース雑誌「オートスポーツ」編集部を経て1984年、フリーランスのモータースポーツ・ライターとして独立し、国内外のレースを取材。1990年からはF1取材がメインとなる。現在「Racing On」「F1速報」「NAVI」などに寄稿。主な著書に「キレて疾れ! 片山右京を追ったF1GP日記」「ブリヂストンがグッドイヤーを追い抜いた日」などがある。趣味は居酒屋&古本屋探訪。贔屓のF1ドライバーはM・ハッキネン。現役ではF・アロンソ。
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(2009年10月21日 読売新聞)