【９月がつ14日にち】1975年ねん（昭あきら50）　本日ほんじつ安息日あんそくび　優勝ゆうしょう目め前まえでも試合しあいに出でなかったシェーン

【広島ひろしま４−３巨人きょじん】ゲーム差さなしの３厘りん差さで首位しゅい阪神はんしんを追おう広島ひろしま。地元じもとでの巨人きょじん２４回戦かいせんは石いしにかじりついでも勝かちたい試合しあいだった。ところが、レギュラー選手せんしゅのリッチ・シェーン右翼うよく手しゅが「きょうは何なにがあっても試合しあいには出でない」と古こ葉は竹ちく識監督かんとくに事前じぜんに申もうし出でていた。

　シェーンは敬虔けいけんなユダヤ教徒きょうと。９月くがつ14日にちはユダヤ教きょうでの安息日あんそくびにあたり、その日ひは仕事しごとを一切いっさいしてはならないというのが、“欠席けっせき理由りゆう”だった。広島ひろしまベンチは頭あたまを抱かかえた。それもそのはず、安息日あんそくびまでのシェーンは当あたりに当あたっていたからだ。

　巨人きょじん３連戦れんせんの初戦しょせんとなった１２日にち、広島ひろしまは４−１で先勝せんしょうしたが、１１号ごうソロ本塁打ほんるいだを含ふくむ４打点だてんはすべてシェーンのバットから。翌よく１３日にち、６回かいまでノーヒット投球とうきゅうの巨人きょじん・小川おがわ邦和くにかず投手とうしゅから初はつ安打あんだとなる同点どうてん適時てきじ打だを放はなったのもシェーン。この一打いちだが突破口とっぱこうとなり、７回かいに一挙いっきょ６点てんを奪うばい、終おわってみれば７−１で大勝たいしょうしていた。

　いないものは仕方しかたがない。広島ひろしまはシェーンの定てい位置いち６番ばん・右翼うよくに深沢ふかざわ修一しゅういち外野がいや手しゅを入いれた。試合しあいは前日ぜんじつのビッグイニングの勢いきおいのまま臨のぞんだ広島ひろしまが初回しょかいに４連打れんだなどで３点てんを奪うばい、先発せんぱつの高橋たかはし一三かずみ投手とうしゅをわずか１３球きゅうでＫＯ。７回かいに王おう貞治さだはる一塁いちるい手しゅの６０打席だせきぶりの２７号ごう２つーランなどで追おい上あげられたが、４−３で逃にげ切きり首位しゅいを奪回だっかい。１カ月かげつトップの座ざを守まもりきり、１０月がつ１５日にちの初はつ優勝ゆうしょうまで駆かけ込こんだ。

　信仰しんこうに厚あつい反面はんめん、３３歳さいのスイッチヒッターは茶目ちゃめっ気けたっぷりだった。本名ほんみょう「シャインブルーム」を日本人にっぽんじんに親したしみやすいように、往年おうねんの西部せいぶ劇映画げきえいが「シェーン」にちなんで“改名かいめい”するという球団きゅうだん案あんを喜よろこんで受うけ入いれたり、ナインに溶とけ込こもうと日本語にほんごをいち早はやく覚おぼえ、卑俗ひぞくな言葉ことばを使つかって同僚どうりょうを笑わらわせた。

　来日らいにち後ごに覚おぼえたパチンコにハマり、自宅じたくマンションに台だいを置おくほど。医師いしを目指めざし、空あき時間じかんがあれば医学いがく書しょを開ひらくゲイル・ホプキンス一塁いちるい手しゅとは対照たいしょう的てきな存在そんざいだったが、大だいリーグ、ロイヤルズで同僚どうりょうだった２人ふたりは意外いがいとウマが合あった。

　極端きょくたんなアッパースイングで開幕かいまく前まえの評判ひょうばんは高たかくなかったが、打率だりつ２割わり８分ふん１厘りんはセ・リーグ１１位いの成績せいせき。１３本塁打ほんるいだ５６打点だてんだが、巨人きょじん、阪神はんしん戦せんと客きゃくの入はいる試合しあいでは滅法めっぽう強つよく、カープＶ１戦士せんしとして忘わすれ難がたいプレーヤーの１人ひとりだ。(2007年ねん９月がつ14日にち分ぶん再さい録ろく)