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2013年ねん3月31日にち(日)にち午後ごご9時じ00分ふん~9時じ49分ふん総合そうごう
“現代げんだいのベートーベン”と呼よばれる日本人にっぽんじんがいる。佐さ村むら河内かわち守もり(サムラゴウチ マモル)、49歳さい。14年ねん前まえに原因げんいん不明ふめいの病やまいで両りょう耳みみの聴力ちょうりょくを失うしないながら、クラシック作品さくひんの中なかで最もっとも困難こんなんとされる交響曲こうきょうきょくを書かき上あげた。現存げんそん作曲さっきょく家かの交響曲こうきょうきょくが演奏えんそうされる事ことがほとんどない中なか、彼かれの「交響こうきょう曲きょく第だい一番いちばん“HIROSHIMAひろしま”」は、広島ひろしま、東京とうきょう、京都きょうと、大阪おおさかなど5回かいも演奏えんそうされただけでなく、一昨年いっさくねん発売はつばいされたCDは、音楽おんがくチャートでTOP10入いりを果はたしJ-POPと上位じょういを競きそうなど、“偉業いぎょう”とも言いえる空前くうぜんのヒットを記録きろくした。 そんな彼かれが、今いま取とり組くんでいるのは、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの被災ひさい者しゃへ向むけたピアノ曲きょく「レクイエム」。彼かれの曲きょくに勇気ゆうきづけられたと、多おおくの被災ひさい者しゃから声こえが届とどいたことを受うけ、“鎮魂ちんこん”の思おもいを強つよく願ねがうようになったのだ。しかし、震災しんさいを体験たいけんした訳わけでもない自分じぶんに、納得なっとくできる鎮魂ちんこん曲きょくが作つくれるのか…。被災ひさい地ちを訪たずね、被災ひさいした人ひとたちとの交流こうりゅうを深ふかめるなど、佐さ村むら河内かわちの格闘かくとうの日々ひびが続つづいている。 番組ばんぐみでは、音おとのない世界せかいの住人じゅうにん、佐さ村むら河内かわちがいかにしてレクイエムを完成かんせいさせるのか。3月がつ上旬じょうじゅんに予定よていされている宮城みやぎでの演奏えんそう会かいに向むけた制作せいさく現場げんばに密着みっちゃく。さらに、彼かれの交響こうきょう曲きょくに救すくいを見みいだした被災ひさい者しゃたちの取材しゅざいも加くわえ、“命いのちを削けずり、音おとを紡つむぐ”作曲さっきょく家か・佐さ村むら河内かわち守もりの実像じつぞうに迫せまる。
私わたしが佐さ村むら河内かわうちさんと出会であったのは5年ねん前まえ。以来いらい、激はげしい耳鳴みみなりや偏頭痛へんずつうに苦くるしみながら作品さくひんを生うみ出だし続つづける佐さ村むら河内かわうちさんをずっと見み続つづけてきました。大量たいりょうの薬くすりを服用ふくようし、生いきていくだけでも困難こんなんな中なか、なぜ、作曲さっきょくを続つづけるのか。この問といに対たいし、佐さ村むら河内かわうちさんは「人生じんせいは苦くである。苦難くなん、闇やみの中なかにいるからこそ、真実しんじつの音おとをつかむことができる」と、折おりに触ふれお話はなしされてきました。同おなじ“ものを作つくる人間にんげん”として、その姿すがたにいつも勇気ゆうきをもらい、そのことを視聴しちょう者しゃの方ほうにも届とどけたいとの思おもいで、今回こんかいの番組ばんぐみを制作せいさくしました。 佐さ村むら河内かわうちさんは、「自分じぶんの作品さくひんを聴きくことができない悔くやしさとみじめさは、今いまも乗のり越こえられていない」と語かたります。それでもコンサート会場かいじょうには、足あしを運はこばれています。理由りゆうは、お客きゃくさんの拍手はくしゅの振動しんどうを感かんじることができ、それが唯一ゆいいつの救すくいだからとのことです。私わたしはこの先さきも佐さ村むら河内かわうちさんの音楽おんがくに、拍手はくしゅを送おくりたいと思おもいます。 ディレクター 古賀こが淳也あつや 「自分じぶんにできることは、まずは彼女かのじょの、そして彼女かのじょのママの魂たましいを救すくうこと。僕ぼくは1人にんしか救すくえませんよ。」 東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいで、母親ははおやをなくした少女しょうじょにささげるレクイエムの作曲さっきょくにあたり、佐さ村むら河内かわうちさんが発はっしたことばが、特とくに印象いんしょうに残のこったという声こえを、放送ほうそう後ご、多おおくの方ほうからいただきました。 佐さ村むら河内かわうちさんは言葉ことば通どおり、膨大ぼうだいなメールのやりとりや、石巻いしのまきに何なん度ども足あしを運はこぶなかで、少女しょうじょの喪失そうしつ感かんと対たいじし、レクイエムを作曲さっきょくされました。そして完成かんせい後ごも、交流こうりゅうを続つづけています。 まだ10歳さいの少女しょうじょは、ふだん悲かなしみを口くちに出だしたり、泣ないたりすることはほとんどありません。ただ、夜よる、祖母そぼの精子せいしさんと手首てくびをひもでつなぎ合あわないと眠ねむることができない姿すがたを見みると、その悲かなしみの深ふかさを突つきつけられます。 取材しゅざい中ちゅう、震災しんさいで失うしなわれたすべての命いのちの背後はいごに、こうした深ふかい悲かなしみが横よこたわっていることに、改あらためて身みがすくむ思おもいでいました。佐さ村むら河内かわうちさんが、たった1人にんのために生うみ出だした音楽おんがくが、今いまも悲かなしみのうちにある多おおくの方々かたがたに届とどくよう願ねがっています。 ディレクター 木下きのした千種ちぐさ
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