猫が主役という異色の時代劇「猫侍」が注目されている。白猫、玉之丞(たまのじょう)を捨てた浪人・斑目(まだらめ)久太郎(北村一輝)が思い直し、一気に石段を駆け上がるシーンなど印象的な場面でたびたび登場しているのが、栃木県鹿沼市の加蘇山(かそやま)神社だ。
約100段続く石段や樹齢800年を超える巨木をはじめとする杉の木は苔(こけ)むしており、杉林の間から木漏れ日が差す。荒井和宏宮司(45)は「石裂(おざく)山が御神体で、山全体64万坪(約210万平方メートル)が境内。登山道に沿って下宮、中宮、奥宮がある」。
ロケをした下宮は登山コース(約4時間半)の出発地点でもある。コースは岩登りあり、鎖で登る場所ありで完全装備でないと登れない。ハイキングコースではなく、「クマ注意」「マムシ注意」「転落死亡事故多発」と足がすくむような看板が並ぶが、水が透き通った沢沿いの道は清々しい。「道を間違えると、反対側の麓に出てしまい、また山を登らないと戻れない」(荒井宮司)ので、25分歩いて栃木県天然記念物の「千本かつら」を見て引き返した。
平安時代の歴史書「日本三代実録」には、878年に従五位下の位階を贈られていることが記載されているし、日光輪王寺を開いた勝道上人が767年に開山したと伝えられる由緒ある古社だ。