「醸造じょうぞうアルコール」って何なに？ なぜ使つかわれているの？ 【日本酒にほんしゅ用語ようご集しゅう】

「醸造じょうぞうアルコール」とは？

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「醸造じょうぞうアルコール」とは、日本酒にほんしゅの副ふく原料げんりょうとして使用しようが認みとめられたアルコールのこと。「醸造じょうぞうアルコール」という名前なまえから、合成ごうせいアルコールなどの化学かがく製品せいひんを思おもい浮うかべる人ひともいるようですが、そうではありません。

「醸造じょうぞうアルコール」の正体しょうたいは、多おおくの場合ばあいトウモロコシやサツマイモなどのでんぷん物質ぶっしつや、サトウキビの廃はい糖蜜とうみつなどの含糖物質ぶっしつを発酵はっこうさせ、連続れんぞく式しき蒸溜じょうりゅう機きで蒸溜じょうりゅうした高こう純度じゅんどアルコールです。加水かすいしてアルコール度数どすうを整ととのえる前まえの甲かぶと類るい焼酎しょうちゅうといえば、イメージしやすいかもしれません。

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「醸造じょうぞうアルコール」を添加てんかした「アル添酒」とは？

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醸造じょうぞうアルコールを添加てんかした「アル添酒」と「純じゅん米べい酒しゅ」との違ちがい

日本酒にほんしゅのおもな原料げんりょうは米こめと米べい麹こうじと水みず。これらを酵母こうぼ（酒さけ母はは）でアルコール発酵はっこうさせると、「醪もろみ（もろみ）」と呼よばれるどろどろの液体えきたいになります。この醪もろみを搾しぼってろ過かしたものが、日本酒にほんしゅの原酒げんしゅです。さらに火入ひいれや加水かすいなどの調整ちょうせいを行おこない、瓶詰びんづめしたものが商品しょうひんとして出荷しゅっかされます。

「醸造じょうぞうアルコール」は通常つうじょう30度ど程度ていどに希釈きしゃくし、醪もろみを搾しぼる1～2日にち前まえに加くわえられます。このことを「アルコール添加てんか」または「アル添」といいます。

一般いっぱんに、「醸造じょうぞうアルコール」を添加てんかしたものは「アルコール添加てんか酒しゅ（アル添酒）」、醸造じょうぞうアルコールを添加てんかしないものは「純じゅん米べい酒しゅ」と呼よばれています。つまり、純じゅん米べい酒しゅ系けいのお酒さけ以外いがいの日本酒にほんしゅはすべて「アル添酒」に分類ぶんるいされるということです。

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「特定とくてい名称めいしょう酒しゅ」のうち、「アル添酒」はどれ？

「醸造じょうぞうアルコール」を添加てんかした「アル添酒」の国内こくないシェアは、実じつに8割わり以上いじょうともいわれていて、「一般いっぱん酒しゅ（普通ふつう酒しゅ）」はもちろんのこと、「特定とくてい名称めいしょう酒しゅ」のなかにもたくさんあります。

特定とくてい名称めいしょう酒しゅは、原料げんりょう米まいをどれだけ磨みがいたかを表あらわす精米せいまい歩合ぶあいなどにより、大だい吟醸ぎんじょう酒しゅ、吟醸ぎんじょう酒しゅ、純じゅん米べい大だい吟醸ぎんじょう酒しゅ、特別とくべつ純じゅん米べい酒しゅ、純じゅん米べい吟醸ぎんじょう酒しゅ、純じゅん米べい酒しゅ、特別とくべつ本ほん醸造じょうぞう酒しゅ、本ほん醸造じょうぞう酒しゅの8種類しゅるいに分類ぶんるいされます。このうち、「純じゅん米まい」とつくものを除のぞくすべての特定とくてい名称めいしょう酒しゅに「醸造じょうぞうアルコール」が使つかわれています。以下いかで、それぞれの特徴とくちょうを見みていきましょう。

【大だい吟醸ぎんじょう酒しゅ】
精米せいまい歩合ぶあい50％以下いかの米こめを低温ていおんでゆっくり発酵はっこうさせた、華はなやかな香かおりとほんのり甘あまくすっきりした味あじわいが特徴とくちょうの日本酒にほんしゅ。原料げんりょう米まいをたくさん磨みがいているため、雑ざつ味あじが少すくなくキレイな酒さけ質しつに仕上しあがる傾向けいこうがあります。鑑かん評ひょう会かい出品しゅっぴん酒しゅが多おおいのもこのタイプ。

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【吟醸ぎんじょう酒しゅ】
精米せいまい歩合ぶあい60％以下いかの米こめを吟味ぎんみして醸造じょうぞうした、華はなやかな香かおりの日本酒にほんしゅ。米べいの持もつ味あじわいやフルーティーさがたのしめます。

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【特別とくべつ本ほん醸造じょうぞう酒しゅ】
精米せいまい歩合ぶあい60％以下いか、もしくは「長期ちょうき低温ていおん発酵はっこう」や「木き桶おけ搾しぼり」など「特別とくべつな製造せいぞう方法ほうほう」で造つくられた日本酒にほんしゅ。同等どうとうの精米せいまい歩合ぶあいの米べいで造つくられる吟醸ぎんじょう酒しゅに比くらべて香かおりは控ひかえめですが、すっきりとキレのよい飲のみ口こうとこだわりの製法せいほうで人気にんきを集あつめています。

【本ほん醸造じょうぞう酒しゅ】
精米せいまい歩合ぶあい70％以下いかの米こめを主おも原料げんりょうとした、軽かろやかでキレのよい日本酒にほんしゅ。すっきりとした辛口からくちな味あじわいが人気にんきの秘密ひみつです。

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なお、酒税しゅぜい法ほうによると、「醸造じょうぞうアルコール」などの使用しよう量りょうは、ほかの副ふく原料げんりょうを含ふくむ総量そうりょうが米べい麹こうじを含ふくむ米べいの重量じゅうりょうの50％を超こえない範囲はんいに制限せいげんされていますが、特定とくてい名称めいしょう酒しゅに関かんしては、米べいの重量じゅうりょうの10％以下いかと定さだめられているので、覚おぼえておくとよいでしょう。

普通ふつう酒しゅ（一般いっぱん酒しゅ）の「アル添酒」は2種類しゅるいある

普通ふつう酒しゅ（一般いっぱん酒しゅ）は、特定とくてい名称めいしょう酒しゅよりも「醸造じょうぞうアルコール」の比率ひりつを高たかくすることができます。具体ぐたい的てきにいうと、「醸造じょうぞうアルコール」が米べいの重量じゅうりょうの11％以上いじょう～50％以下いかのものは普通ふつう酒しゅに分類ぶんるいされます。

普通ふつう酒しゅの「アル添酒」には、糖類とうるいなどで調味ちょうみをしない「普通ふつうアル添酒」と、糖類とうるい・酸味さんみ料りょうなどを使用しようして味あじを整ととのえる「増ぞう醸酒」の2種類しゅるいが存在そんざいします。通常つうじょうは、「普通ふつうアル添酒」には原料げんりょう米まい1トンに対たいして280リットルまで、「増ぞう醸酒」には原料げんりょう米まいの半分はんぶんの重量じゅうりょうまで「醸造じょうぞうアルコール」が使用しようされています。

なお、これらの分類ぶんるいは過去かこの酒税しゅぜい法ほうに基もとづくものですが、今いまもこの規定きていに従したがって造つくられている場合ばあいが多おおいようです。

「醸造じょうぞうアルコール」を使つかうのはなぜ？

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「醸造じょうぞうアルコール」で腐敗ふはいを防ふせぐ

日本酒にほんしゅ造づくりで怖こわいのは、醪もろみの腐敗ふはいです。江戸えど時代じだいころには、火ひ落おち菌きんなどの雑菌ざっきんの混入こんにゅうによる腐敗ふはいを防ふせぐためにアルコールを添加てんかして度数どすうを高たかめ、酒さけ質しつの安定あんていがめざされていました。

しかし、ほとんどの雑菌ざっきんは高こうアルコール下かで死滅しめつするものの、火ひ落おち菌きんにはアルコール耐たい性せいがあるため、アルコール添加てんかだけで防ふせぐのは不十分ふじゅうぶんであったといえます。

品質ひんしつ管理かんり技術ぎじゅつが向上こうじょうした近年きんねんは、火入ひいれの温度おんど管理かんりや道具どうぐの洗浄せんじょう・殺菌さっきん、蔵人くろうどに衛生えいせい管理かんりを徹底てっていさせることで、火ひ落おち菌きんなどを防ふせいでいます。そのため、近年きんねんは腐敗ふはい防止ぼうしを主おも目的もくてきとして「醸造じょうぞうアルコール」を添加てんかすることは少すくなくなっているようです。

「醸造じょうぞうアルコール」で華はなやかな香かおりに

「醸造じょうぞうアルコール」を醪もろみに添加てんかすることで、華はなやかな香かおりの日本酒にほんしゅに仕上しあがるといわれています。日本酒にほんしゅの香かおり成分せいぶんは水みずよりもアルコールに溶とけやすいため、米べいと米べい麹こうじと水みずだけで造つくられる純じゅん米べい酒しゅよりも「醸造じょうぞうアルコール」が添加てんかされた「アル添酒」のほうが香かおりを感かんじやすくなるようです。

香かおりも重要じゅうようなチェックポイントとされる鑑かん評ひょう会かい用ようの日本酒にほんしゅに、アル添していない「純じゅん米べい大だい吟醸ぎんじょう酒しゅ」ではなく、「醸造じょうぞうアルコール」が添加てんかされた大だい吟醸ぎんじょう酒しゅが多おおいのはこのためです。

「醸造じょうぞうアルコール」は味あじを軽かろやかにする

「醸造じょうぞうアルコール」は、アルコール度数どすう約やく95度どの純度じゅんどの高たかい蒸溜酒じょうりゅうしゅ。連続れんぞく式しき蒸溜じょうりゅう機きで繰くり返かえし蒸溜じょうりゅうされる過程かていで不純物ふじゅんぶつのほとんどが取とり除のぞかれているため、味あじや匂においはほとんどありません。このほぼ無味むみ無臭むしゅうの「醸造じょうぞうアルコール」を添加てんかすることで、日本酒にほんしゅの味あじわいにキレが出でて、すっきりとした軽かろやかな飲のみ口こうになるといわれています。

「醸造じょうぞうアルコール」は蒸溜じょうりゅうしたての高こうアルコールのまま添加てんかされるわけではなく、水みずを加くわえて30度ど前後ぜんこうに度数どすう調整ちょうせいしてから使用しようされるのが一般いっぱん的てきです。

「醸造じょうぞうアルコール」でコストを抑おさえながら質しつを求もとめる

日本酒にほんしゅ（清酒せいしゅ）造づくりで「醸造じょうぞうアルコール」などを加くわえる場合ばあいは、前述ぜんじゅつのとおり米べいの重量じゅうりょうの半分はんぶん以下いかにしなければなりません。各かく蔵ぞうではこれを上限じょうげんに、飲のみ手てが入手にゅうしゅしやすい価格かかくと品質ひんしつ、味あじわいを追求ついきゅうした酒造さけづくりが行おこなわれています。

なかには、上限じょうげんまで「醸造じょうぞうアルコール」を加くわえれば日本酒にほんしゅの量りょうを最大さいだい2倍ばいにまで増量ぞうりょうできることから、コストダウンを目的もくてきに使用しようされるケースもあるようです。しかし、競争きょうそうが激化げきかする日本酒にほんしゅ業界ぎょうかいにおいて、「安やすかろう、悪わるかろう」の商品しょうひんが淘汰とうたされていくことは疑うたがう余地よちもありません。

高価こうかなお酒さけは例外れいがいとして、多おおくの場合ばあい、蔵元くらもとが優先ゆうせんすべきはコストと品質ひんしつ、そして味あじわいとのバランス。「醸造じょうぞうアルコール」は、なるべくリーズナブルな価格かかくでおいしさを実現じつげんするための役割やくわりを担になっているという面めんは否定ひていできません。

「醸造じょうぞうアルコール」を添加てんかした日本酒にほんしゅは低級ていきゅう品ひん？

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アルコール添加てんかの歴史れきしは古ふるい

「醸造じょうぞうアルコール」を添加てんかした日本酒にほんしゅ造づくりの歴史れきしは、江戸えど時代じだいにまでさかのぼります。当時とうじの「醸造じょうぞうアルコール」は乙おつ類るい焼酎しょうちゅう（現在げんざいの本格ほんかく焼酎しょうちゅう）のようなもので、それらを添加てんかする技法ぎほうを「柱はしら焼酎しょうちゅう（はしらしょうちゅう）」と呼よんでいました。

「柱はしら焼酎しょうちゅう」は、醪もろみの腐敗ふはいを防ふせぐためにアルコール度数どすうの高たかい焼酎しょうちゅうを加くわえるというもので、「アルコール添加てんかの先駆さきがけ」として知しられています。江戸えど時代じだいには、アルコール度数どすうの高たかい粕取かすとり焼酎しょうちゅうや米べい焼酎しょうちゅうなどを醪もろみに加くわえたり搾しぼりたての酒さけに混まぜたりすることで、雑菌ざっきんの繁殖はんしょくを防ふせいでいたのです。

結果けっか的てきに、「柱はしら焼酎しょうちゅう」により日本酒にほんしゅの香かおりがよくなり、味あじわいが軽かろやかで後口あとくちもすっきりする効果こうかが認みとめられたことから、衛生えいせい管理かんりや品質ひんしつ管理かんりの方法ほうほうが確立かくりつした現代げんだいにも「醸造じょうぞうアルコール」を用もちいた酒造さけづくりが受うけ継つがれています。

悪わるいイメージは戦後せんごの「三さん倍ばい増ぞう醸酒（三増みませ酒しゅ）」から

普通ふつう酒しゅの一種いっしゅである「増ぞう醸酒」は、今いまでこそ、原料げんりょう米まいの半分はんぶんの重量じゅうりょうにまで「醸造じょうぞうアルコール」の使用しよう量りょうが制限せいげんされていますが、米べい不足ふそくが深刻しんこく化かした終戦しゅうせん後ごには3倍ばいにまで水増みずましされた「三さん倍ばい増ぞう醸酒((通称つうしょう：三増みませ酒しゅ（さんぞうしゅ）))」が流通りゅうつうしていました。「三増みませ酒しゅ」とは、「醸造じょうぞうアルコール」を加くわえて薄うすくなった味あじを糖類とうるいや調味ちょうみ料りょう、グルタミン酸ぐるたみんさんなどを加くわえて補おぎなったもの。この低てい給きゅう品ひんが一時いちじは主流しゅりゅうとなったため、「アル添酒」に対たいするネガティブなイメージが定着ていちゃくしてしまったのです。

平成へいせい18年ねん（2006年ねん）の酒税しゅぜい法ほう改正かいせいで「三増みませ酒しゅ」が清酒せいしゅの品目ひんもくから外はずれた今いまも、「増ぞう醸酒といえば三さん増ぞう酒しゅ」という印象いんしょうが色濃いろこく残のこっているようですが、「アル添酒＝品質ひんしつが悪わるいもの」と決きめつけるのは間違まちがいで、現在げんざいの「アル添酒」とかつての「三増みませ酒しゅ」はまったくの別物べつものといえます。

日本にっぽん国内こくないで流通りゅうつうする日本酒にほんしゅの約やく8割わり、「全国ぜんこく新酒しんしゅ鑑かん評ひょう会かい」に出品しゅっぴんされる吟醸ぎんじょう酒しゅの約やく9割わりが「アル添酒」という現状げんじょうから考かんがえても、「醸造じょうぞうアルコール」を添加てんかした日本酒にほんしゅのほうが一般いっぱん的てきには広ひろく飲のまれているお酒さけになっています。

悪酔わるよいするの？

「醸造じょうぞうアルコールが入はいった日本酒にほんしゅを飲のむと悪酔わるよいする」という説せつもあるようですが、これは正ただしい情報じょうほうではありません。前述ぜんじゅつしたように、「醸造じょうぞうアルコール」自体じたいは不純物ふじゅんぶつを取とり除のぞいた高こう純度じゅんどの蒸溜酒じょうりゅうしゅで混まざりものはほぼなし。醪もろみに添加てんかする際さいは30度ど前後ぜんこうに水みずで薄うすめて使用しようされるので、日本酒にほんしゅのアルコール度数どすうを大おおきく高たかめるものでもありません。

ではなぜ、悪酔わるよいしたと感かんじる人ひとがいるかというと、ほとんどの場合ばあいはアルコールを分解ぶんかいする速度そくどが飲のむペースに追おいついていないことが原因げんいんと考かんがえられます。「純じゅん米べい酒しゅ」に比くらべて「アル添酒」にはすっきりとしていて飲のみやすいものが多おおいため、つい飲のみすぎてしまいがち。料理りょうりやつまみと一緒いっしょにゆっくりしたペースで飲のむよう心こころがけたいものです。


「純じゅん米べい酒しゅ」の混まじり気けのない美味おいしさ、その素晴すばらしさは疑うたがいようがありません。いっぽうで「醸造じょうぞうアルコール」は、昨今さっこんの日本酒にほんしゅとは切きっても切きれない副ふく原料げんりょう。「純じゅん米べい酒しゅ」の良よさを尊重そんちょうしたうえで、蔵元くらもとの工夫くふうによって造つくられた「アル添酒」を正ただしく理解りかいしてたのしむのも選択肢せんたくしといえそうです。