超ちょう注目ちゅうもくの怪かい作さくは、ある一言ひとことから生うまれた。『ダンダダン』龍りゅう幸伸ゆきのぶ×林はやし士し平ひら対談たいだんインタビュー

龍りゅう幸伸ゆきのぶ

2010年ねん『正義せいぎの禄ろく号ごう』（講談社こうだんしゃ刊かん）で漫画まんが家かデビュー。2013年ねん『FIRE BALL!』（講談社こうだんしゃ刊かん）。集英社しゅうえいしゃ・少年しょうねんジャンプ＋にて『ダンダダン』を2021年ねん４月がつ６日にちから連載れんさい中ちゅう。

林はやし士し平たいら

2006年ねんに集英社しゅうえいしゃに入社にゅうしゃ。少年しょうねんジャンプ＋にて『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『HEART GEAR』『ダンダダン』『神かみのまにまに』を担当たんとう中ちゅう。過去かこの立たち上あげ作品さくひんは『青あおの祓はらい魔ま師し』『この音おととまれ！』『ファイアパンチ』『怪物かいぶつ事変じへん』『左ひだりききのエレン』『地獄じごく楽らく』『カッコカワイイ宣言せんげん！』『貧乏神びんぼうがみが！』『ムーンランド』『ドリキャン!!』他た

Twitterアカウント→https://twitter.com/SHIHEILIN

最初さいしょから振ふり返かえると、「月刊げっかん少年しょうねんマガジン」で描えがいていた『正義せいぎの禄ろく号ごう』が初はつ連載れんさいで、25歳さいのときですね。

1年ねんもせず打うち切きりになり、2年ねん後ごには『FIRE BALL！』という作品さくひんを連載れんさいしたんですが、こちらも1年ねん半はんほどで終了しゅうりょうしました。

そのときの担当たんとうさんとは反そりが合あわなくなってしまい、他たの雑誌ざっしに持もち込こんでみようと「ジャンプSQ.」に電話でんわをかけて、林はやしさんが担当たんとうについてくれたんです。

そうですね。

当時とうじは月刊げっかん誌しで探さがしていて、「ジャンプ」系列けいれつがいいかなと「SQ.」に電話でんわしたんですよね。

いつだろう、古ふるいメールを見返みかえせばわかるかもしれません。

2015年ねん1月がつに持もち込こみを受うけた記録きろくがありますね。その後ご2015年ねん夏なつの増刊ぞうかんに『恋愛れんあい栽培さいばい法ほう』を、2015年ねん秋あきに『神様かみさまのいる街まち』を載のせています。

途中とちゅうで林はやしさんが「SQ.」から「ジャンプ＋」に異動いどうになったから付ついていって。

けれどその後ごも「週刊しゅうかん少年しょうねんジャンプ」で連載れんさいを目指めざしていました。

実じつは連載れんさいネームを「ジャンプ＋」に提出ていしゅつしたのは、『ダンダダン』が初はじめてなんです。

「週刊しゅうかん少年しょうねんジャンプ」と「SQ.」でダメだったから、「ジャンプ＋」に回まわしてみようかという感かんじで。

2019年ねんの「ジャンプ＋GW読切よみき祭さい」で載のせた『山田やまだキキ一発いっぱつ』は、龍りゅう先生せんせいの時間じかんが空あいたから描えがいてもらったんですよね。

この読よみ切きりの前後ぜんごでは、アシスタントをしながら、数かぞえ切きれないほど連載れんさい企画きかくを出だし続つづけていた覚おぼえがあります。連載れんさいネームの沼ぬまですね。

ボツになった企画きかくの数かず、めちゃくちゃあると思おもいます。

その中なかのいくつかは何なん回かいか直なおして出だし続つづけていましたね。獣人じゅうじんの企画きかく、ロボットの企画きかく、キョンシーの企画きかく。

どれも連載れんさいで始はじまっておかしくなかったし、いま見みても僕ぼくは面白おもしろいと思おもっています。

ただ、どれも連載れんさい会議かいぎには通とおらなかったんですよね…。

イメージボードがあります。

これめっちゃいいな〜！いいカットだな〜！かっこいいよなぁ、これ。イケてたと思おもうなあ…。

僕ぼくも読よみたかった（笑）。何なんで始はじめさせてくれなかったんだろう…。

面白おもしろくなっただろうな〜！これ読よみたい人ひといっぱいいるんだろうな〜。

（笑）。

作品さくひんによって描えがいたり描えがかなかったりですね。

昔むかし行おこなった「ピクサー展てん」でイメージボードの作つくり方かたを知しって、真似まねしてみたら自分じぶんには合あっているなと。

イメージを掴つかみやすいし、林はやしさんにもイメージを伝つたえやすいし。

そうですね、藤本ふじもとくんの読よみ切きり時代じだいからです。それまでは別べつの職場しょくばにいたんですが、うまくいかなくて。

それでいいところはないかって林はやしさんに聞きいて紹介しょうかいしてくれたのが、『ファイアパンチ』が始はじまるちょっと前まえの藤本ふじもとくんの職場しょくば。

龍りゅう先生せんせいに「初はつ連載れんさいの新人しんじんがいるので入はいってくれませんか？」と言いって1話わから入はいってもらいました。

当時とうじは賀来かく（ゆうじ）先生せんせいがレギュラーアシスタントとして、遠藤えんどう（達哉たつや）先生せんせいもヘルプで入はいってくれていて、今いま思おもうとやたら上手うまい人ひとばかりが集あつまっていた（笑）。

藤本ふじもとくんの職場しょくばではコロナ禍かになる前まえまで毎年まいとし、年末ねんまつに「今年ことしも一いち年ねんお疲つかれ様さまでした」という集あつまりをしていて。

夕方ゆうがたくらいから集あつまって夜中よなかまでわーわー話はなすんです。そこで藤本ふじもとくんは大体だいたいゆうじさんを呼よぶ。

もうアシスタントに入はいっていないのに、ゆうじさんが好すきで話はなしたくて仕方しかたがないから。

担当たんとうしている先生せんせいのアシスタントの方ほうなど、お世話せわになっている人ひとたちに僕ぼくからも挨拶あいさつをする場ばなんですよ。

『ダンダダン』のネームを出だす前まえに、マンガを描えがけなくなっちゃった時期じきがあって…。

まさに年末ねんまつの藤本ふじもとくんたちとの集あつまりで、林はやしさんに「描えがけない」と言いった覚おぼえがあるんですよ。

2019年ねんの年末ねんまつの飲のみ会かいですね。

本誌ほんしと「SQ.」の連載れんさい会議かいぎのたびに新あたらしい企画きかくを出だしていたんですけど、もう全然ぜんぜん通とおらなかったんです。

そして、2019年ねん夏なつに連載れんさい会議かいぎに出だしたキョンシーものの企画きかくがボツになったのが、自分じぶんにとっては大おおきな出来事できごとで。

「これでもダメか」と思おもうと、そこから描えがけなくなっちゃって…。

いま見返みかえしても面白おもしろい作品さくひんばかりなんですけど、どうやっても通とおる気配けはいがない。

「何なにでだよ」「納得なっとくいかねえ」って二人ふたりで憤いきどおっていましたね。

「誰だれもわかっちゃくれねえ！」みたいにキレていた覚おぼえがある（笑）。

キョンシーものの企画きかくは龍りゅう先生せんせいが持もっているものを全部ぜんぶ出だし切きってくれて、本当ほんとうに面白おもしろいマンガだったんですよ。

それでも連載れんさいが通とおらなかったから、プツンと糸いとが切きれてしまったんですよね。

それで年末ねんまつの飲のみ会かいで、龍りゅう先生せんせいに「何なにも考かんがえず自由じゆうに描えがいてみたらいいんじゃない」みたいな話はなしをした。

そう言いわれて描えがいたのが『ダンダダン』なんです。

連載れんさいにおける「こう考かんがえましょう」みたいなことって、龍りゅう先生せんせいには超ちょう長ながい期間きかん話はなし続つづけてきたから、もはやこの人ひとはそんなことを考かんがえなくてもいいんじゃないかと思おもったんです。

本当ほんとうにいろんなトライをしましたしね。そういう意味いみでは、『ダンダダン』は龍りゅう先生せんせいの素もとが出でている作品さくひんと言いえるかもしれません。

リハビリみたいなものだと思おもって、本当ほんとうに勢いきおいだけで描えがきましたからね。

だから、イメージボードもプロットもないんです。ネームを切きった後のちにキャラ表ひょうは描えがきましたけど。

そうですね、いきなりネームから描えがきました。

ログラインというものがあって、「マンガを一言ひとことで表あらわすとどういうことなのか」というものなんですけど、それをたくさん書かき殴なぐったノートがあるんです。

そのノートを見返みかえしていたら、「『貞子さだこvs伽とぎ椰子やし』が面白おもしろい」って書かいてあったから、「あ、これをやろうかな」って（笑）。

それがオカルトをテーマにした理由りゆうです。

すぐ描えがけましたね、自由じゆうに描えがいていいと言いわれたからこそかもしれない。

だから翌年よくねん1月がつにはネームを出だしました。

「林はやしさんが面白おもしろがってくれればいいや」くらいのテンションだったんです。

ひさびさにページ数すうも何なにも気きにせず描えがきました。

ページ数すう制限せいげんがないから、自由じゆうな発想はっそうを邪魔じゃましなかったのかもしれないですね。

龍りゅう先生せんせいは大胆だいたんなコマ運はこびで派手はでに画面がめんを使つかうのが向むいている先生せんせいだと思おもいますし。

『ダンダダン』に限かぎらず、いつも自分じぶんは面白おもしろいと思おもって描えがいているんですよ。

手応てごたえを感かんじるかどうかは林はやしさんの反応はんのう次第しだいですね。

『ダンダダン』は林はやしさんに見みせて「面白おもしろい」って言いってもらえたから、そういう意味いみで手応てごたえはありました。

いつも通とおりしっかり面白おもしろかったので、今いま作さくもちゃんと連載れんさい会議かいぎに向むけて準備じゅんびするぞという感かんじでしたね。

龍りゅう先生せんせいは絶対ぜったい世よに出でる人ひと、絶対ぜったい売うれていく人ひとって思おもっていましたから。

はい、明確めいかくに。力量りきりょうが段違だんちがいの方ほうで、絵えもネームも素晴すばらしい。

うちは連載れんさい会議かいぎのハードルは高たかいんですが、載のってしまえば校了こうりょうまでほとんどチェックされないんです。

だから極論きょくろん、連載れんさいを始はじめてしまえばこっちのものというか、龍りゅう先生せんせいと面白おもしろい作品さくひんを世よに送おくり出だせると思おもっていました。

連載れんさい会議かいぎ自体じたいは2020年ねん春はるに一発いっぱつで通かよっていたんですけどね。

「ジャンプ＋」の場合ばあいはページ数すう制限せいげんもないから、連載れんさい会議かいぎに通かよってから連載れんさいを始はじめるまでの期間きかんを割わりと自由じゆうに決きめれるんですよ。

連載れんさいが決きまったときは、もう、とにかく嬉うれしかったです。「やっと始はじめられる！」と思おもった。

『ダンダダン』の企画きかくができた頃ころはアシスタントとして入はいっていた『チェンソーマン』と『地獄じごく楽たのし』の終おわりが見みえている時期じきだったんですよね。

どちらも最後さいごまでしっかりお手伝てつだいしてから連載れんさいを始はじめたかったんです。

その分ぶん、連載れんさい会議かいぎ用ようの『ダンダダン』1〜3話わは時間じかんをかけてじっくり作画さくがを進すすめました。

4話わ以降いこうのネームもすごく丁寧ていねいにやった覚おぼえがあります。

2話わ以降いこうはプロットを結構けっこうちゃんと作つくったりしました。

ただ、回かいによりますね。いきなりネームを切きった回かいもあったと思おもいます。

このプロットももう懐なつかしいですね。

本当ほんとうにありがたいです。

王道おうどうというよりはそれなりにトリッキーな作品さくひんだと思おもうんですが、想像そうぞう以上いじょうにお客きゃくさんが読よみ込こんでくれている。

僕ぼくはもうめちゃくちゃ面白おもしろいと思おもっていたんですけど、連載れんさいが始はじまる前まえはこの尖とがった面白おもしろさがちゃんと伝つたわるかどうか、少すこしだけ不安ふあんだったんです。

けれど、想像そうぞう以上いじょうに楽たのしんでもらえているから、最近さいきんは龍りゅう先生せんせいの描えがきたいものを思おもい切きり描えがいていけばちゃんと届とどくんだろうなと考かんがえています。

もちろんコミックスが出でてみないとわからない部分ぶぶんはあるんですが、連載れんさいを始はじめる前まえに比くらべれば自信じしんを持もって毎まい話はなし送おくり出だせています。

とにかくありがたいという気持きもちでいっぱいです。

自分じぶんは過去かこ作品さくひんがどれも打うち切きりで終おわっているから、ずっと漠然ばくぜんとした不安ふあんがあるんですよ。

いまだにどうやったら喜よろこんでもらえるかよくわからないというか、自分じぶんとしては好すきなものを楽たのしく描えがけているけれど、林はやしさんと二人ふたりの世界せかいで完結かんけつしちゃっているような感覚かんかく。

林はやしさんが面白おもしろかったらそれでいいやと思おもって描えがいているんだけど、そこから外そとに作品さくひんを送おくり出だすとなると一気いっきに不安ふあんになっちゃう。

1話わ公開こうかいのときは前日ぜんじつから緊張きんちょうして寝ねれなかったです。手てがめちゃくちゃ冷つめたくなった（笑）。

本当ほんとう、全然ぜんぜん寝ねれてませんでしたよね（笑）。

そこからあれだけの反響はんきょうをもらえて本当ほんとうに良よかった。

でも、やっぱりずっと不安ふあんが残のこっている。いまも毎週まいしゅう載のるたびに不安ふあんですよ。

毎週まいしゅう、林はやしさんとバカ話はなしをしながら考かんがえているんですよね。

ターボババアの話はなしがひと段落だんらくした後のちで、「超ちょうくだらない提案ていあんをするんですけど、キンタマなくなったらどうなります？」って言いったら大だい爆笑ばくしょうしてくれましたよね（笑）。

「それしかない！」となったんですよね（笑）。大だい正解せいかいでした。

それぐらいのフランクさでいろんなアイデアをああじゃない、こうじゃないってキャッチボールしています。

基本きほん的てきにバカ話はなしなんですけど、たまに正解せいかいが出でるんですよね。

バトルでの敵てきの倒たおし方かたも、「こうしたら面白おもしろくない？」とすごくくだらない話はなしを二人ふたりでして。

ちゃんとくだらない話はなしなんだけど、龍りゅう先生せんせいがマンガにしたらすごく面白おもしろくなるようなアイデアを拾ひろってくれています。

そういう感想かんそうをもらえると嬉うれしいですね。

『ダンダダン』は毎まい話はなし、中身なかみ優先ゆうせんで好すきに描えがいているんですよ。

もちろん目処めどはつけているんですが、ページ数すうも決きめないで描えがくのでよく増ふえちゃうんです。25ページとか。

自分じぶんの首くびが締しまります（笑）。

かなり多おおいですね、19ページが基本きほんなんで。

うーん、必死ひっしに頑張がんばっている（笑）。

アシスタントの皆みなさんと一緒いっしょに、毎日まいにちめちゃくちゃ描えがいてもらっています。

いまは5人にんいて、週刊しゅうかん連載れんさいだったらすごく多おおいというわけでもないくらいの人数にんずう。

スタッフさんたちには本当ほんとうに助たすけられています、ありがたいです。

龍りゅう先生せんせいはこれからも挑戦ちょうせん的てきなマンガ表現ひょうげんをどんどん描えがいてくれると思おもうので、引ひき続つづき楽たのしんでいただければいいなと思おもいます。

僕ぼくからは、とにかく読よんでいただけることに感謝かんしゃしています。

本当ほんとうにありがとうございます。今後こんごとも『ダンダダン』をよろしくお願ねがいします。