ポルノをるとのう縮小しゅくしょうするのか:研究けんきゅう結果けっか

ポルノ視聴しちょう時間じかんなが男性だんせいは、のうのある領域りょういきちいさい傾向けいこうがあるという研究けんきゅう結果けっか発表はっぴょうされた。ネットじょうでは不安ふあんこえひろがったが、たしてその実態じったいは。
ポルノを見ると脳は縮小するのか:研究結果
ドイツ国際こくさい公共こうきょうメディア「DW」は、「まめのようなのうポルノるとあなたののうちいさくなり、しぼんでいく」というタイトルの記事きじした。Image by flickr/ Liji Jinaraj

ポルノを頻繁ひんぱんているひとは、のう縮小しゅくしょうする──5月に権威けんいある医学いがく『JAMA Psychiatry』発表はっぴょうされたのうスキャン研究けんきゅうをきっかけに、ネットではこのような心配しんぱいひろまった。

ドイツ国際こくさい公共こうきょうメディア「DW」は、「まめのようなのう:ポルノをるとあなたののうちいさくなり、しぼんでいく」というタイトルの記事きじした。科学かがく記事きじあやしいことで定評ていひょうのある「Daily Mail」は、「ポルノをるとのうちぢまる」というタイトルの記事きじした。「ポルノ視聴しちょうは、のうにおけるはいしろしつすくなさと相関そうかん」という「Huffington Post」の記事きじもあった。

発端ほったんは、ドイツのマックス・プランク人間にんげん発達はったつ研究所けんきゅうじょ(Max Planck Institute for Human Development)の研究けんきゅうだった。調査ちょうさ対象たいしょうとなった男性だんせい64めい平均へいきん年齢ねんれい29さい)ののう調査ちょうさしたところ、かれらはみな精神せいしん神経しんけい障害しょうがいわずらっていたわけではなかった。すなわち、たとえかれらののう縮小しゅくしょうしていたとしても(これについてはあとれる)、それが重大じゅうだい問題もんだいこしてはいなかったということだ。

のうスキャンは3つの方法ほうほうおこなわれた。まず、のう構造こうぞう把握はあくするための単純たんじゅんなスキャン。それから被験者ひけんしゃ性的せいてきまたは性的せいてき画像がぞうているときののう活性かっせいパターンを調しらべるもの。そして、かれらが計測けいそく機器ききのなかで5分間ふんかんリラックスしているとき(いわゆる安静あんせい)ののう活動かつどう調査ちょうさだ。

被験者ひけんしゃたちはさらに、自分じぶんたちがどれだけポルノを鑑賞かんしょうしているか調査ちょうさされた。鑑賞かんしょうりょう平均へいきんしゅう4あいだとなり、また「インターネット・セックス・スクリーニングテスト」(Internet Sex Screening Test)において、「インターネット・セックス中毒ちゅうどく」であると評価ひょうかされたひとはいなかった。

研究けんきゅう結果けっか、ポルノ鑑賞かんしょう時間じかんながさは、のうぜん頭部とうぶ付近ふきん皮質ひしつ領域りょういきにおけるはいしろしつおおきさと、まけ相関そうかん関係かんけいにあることがかった。

この領域りょういきみぎ線条せんじょうたいばれており、報酬ほうしゅう処理しょりをはじめとする機能きのう関与かんよしていることがられるが、ポルノをよりおおているとこたえた男性だんせいほど、この領域りょういきはいしろしつちいさい傾向けいこうにあった。さらに、ポルノをよくひとほど、性的せいてき画像がぞうているときのひだり線条せんじょうたい活動かつどうひくく、また、みぎ線条せんじょうたいと、左側ひだりがわ前頭まえがしらぜん皮質ひしつがい側部そくぶとの接続せつぞくせいよわいとみられることがかった。

これらの結果けっかは、ポルノがのう縮小しゅくしょうさせることをしめしているのだろうか?

研究けんきゅうチームは、その可能かのうせいはあるとかんがえている。かれらはひとつの推測すいそくとして、「ポルノ鑑賞かんしょうによってのう頻繁ひんぱん活性かっせいすると、それにかかわるのう構造こうぞうおよび機能きのう消耗しょうもうし、ダウンレギュレーション(刺激しげきけにくくなること。依存いぞんしょう仕組しくみとされている)がこされるのかもしれない」とべている。

この研究けんきゅうもっと明白めいはく問題もんだいは、その横断おうだんてきな(いち時点じてんのみを調査ちょうさする)研究けんきゅう手法しゅほうにある。ポルノが線条せんじょうたいはいしろしつ縮小しゅくしょうさせる可能かのうせいがある一方いっぽうで、もともと線条せんじょうたいはいしろしつちいさい男性だんせいほどポルノをもとめる可能かのうせい同等どうとうにあるのだ。

このてん研究けんきゅうチームも理解りかいしている。「線条せんじょうたいちいさい人々ひとびとは、快楽かいらくあじわうためによりおおくの外部がいぶ刺激しげき必要ひつようとする」ため、よりつよくポルノをもとめている可能かのうせいがあると論文ろんぶんではべられており、「さらなる研究けんきゅう必要ひつよう」と結論けつろんしている。

また、研究けんきゅう著者ちょしゃのひとりシモーネ・キューンは『The Daily Telegraph』たいして、「ポルノ鑑賞かんしょうのう変化へんかさせるのか、それとも、特定とくていタイプののうをもつひとがポルノをおおるのかは不明ふめいだ」と、説明せつめいしている(それにもかかわらず、同紙どうしは「ポルノをると男性だんせいのう損傷そんしょうする」というタイトルで記事きじ掲載けいさいした)。

もうひとつ、相関そうかん調しらべる研究けんきゅうでさらに問題もんだいなのは、未知みちなるだい3の因子いんし(およびその要素ようそ)が存在そんざいしている可能かのうせいがあるてんだ。

ポルノ鑑賞かんしょうりょうは、外向がいこうせいたかさや勤勉きんべんせい(まじめさ)のひくさ、および刺激しげきもとめる欲求よっきゅうつよさなどの、被験者ひけんしゃ性格せいかくおおまかな指標しひょうにもなる。

たとえば、2013ねん研究けんきゅうでは、「情緒じょうちょ不安定ふあんていせい(Neuroticism)、協調きょうちょうせい勤勉きんべんせい、および強迫きょうはくてき確認かくにん傾向けいこうはいずれも、インターネット・ポルノの利用りようふく強迫きょうはく行動こうどう潜在せんざいてき尺度しゃくど相関そうかんしていた」と報告ほうこくされている。

今回こんかい研究けんきゅうチームは、被験者ひけんしゃうつ傾向けいこう中毒ちゅうどく傾向けいこうがないことは確認かくにんしているが、被験者ひけんしゃたちの性格せいかく特性とくせいについては調査ちょうさしていない。もしその調査ちょうさおこなっていれば、かれらの性格せいかくやそののう構造こうぞうつよ相関そうかん発見はっけんした可能かのうせいがある。

たとえば、すでにおこなわれた研究けんきゅうにおいて、刺激しげきもとめる傾向けいこうのあるひとは、刺激しげきつよ画像がぞう(ヌードや残酷ざんこくなものなど)にたいする感受性かんじゅせい低下ていかしていることがあきらかになっている。さらには、安静あんせいのう活動かつどうは、個々人ここじん性格せいかくによってことなるという研究けんきゅう結果けっかや、外向がいこうてき経験けいけんたいしてオープンなひとは、性的せいてき画像がぞうもちいた広告こうこく説得せっとくされやすいという研究けんきゅう結果けっかもある。

このような「性格せいかくてき因子いんし」を測定そくてい調整ちょうせいしていないため、今回こんかい研究けんきゅう結果けっかは、ほぼ無意味むいみだとえる。男性だんせい被験者ひけんしゃ自己じこ申告しんこくによるポルノ鑑賞かんしょう時間じかんというデータも、その被験者ひけんしゃ自身じしん私生活しせいかつ詳細しょうさいをどの程度ていどまでかくしたいタイプなのかといった、被験者ひけんしゃ性格せいかくおおまかにしめすものでしかない。

また、刺激しげきもとめる傾向けいこうのような重要じゅうよう性格せいかくじょう特性とくせいは、特定とくていパターンののう構造こうぞう反応はんのう関連かんれんづけられることがすでにあきらかになっているが、今回こんかい研究けんきゅうは、被験者ひけんしゃ長期ちょうき追跡ついせきしていないため、ポルノ鑑賞かんしょうがそもそもなにかの影響えいきょうをもたらすものかどうかを証明しょうめいできていない。

さらには、ポルノ以外いがいのメディア利用りよう傾向けいこうについても調しらべていないため、たとえなにかの影響えいきょう確認かくにんされたとしても、それがポルノ鑑賞かんしょう影響えいきょうなのか、あるいはポルノ鑑賞かんしょう相関そうかんせいのあるほかのメディア活動かつどう暴力ぼうりょくてき映画えいが鑑賞かんしょうやオンラインギャンブルなど)の影響えいきょうなのか判断はんだんできない(ただし今回こんかい研究けんきゅうでは、被験者ひけんしゃにおけるインターネット全般ぜんぱん利用りようちがいについては調整ちょうせいしており、調整ちょうせい研究けんきゅう結果けっかわりはなかったという)。

TEXT BY CHRISTIAN JARRETT

TRANSLATION BY TOMOKO TAKAHASHI, HIROKO GOHARA/GALILEO