AIを搭載とうさいしたちょう小型こがた衛星えいせいが、宇宙うちゅうからやま火事かじつけ

人工じんこう衛星えいせいにAIを搭載とうさいして画像がぞう解析かいせきとデータ圧縮あっしゅく宇宙うちゅう実行じっこうさせることで、従来じゅうらいより500ばいはや森林しんりん火災かさい検出けんしゅつできる技術ぎじゅつをオーストラリアの科学かがくしゃたちが開発かいはつした。やま火事かじ早期そうき発見はっけんだけでなく、自然しぜん災害さいがい早期そうき警戒けいかいシステムとしても役立やくだつことが期待きたいされている。
CubeSat(キューブサット)と呼ばれる超小型人工衛星のイメージ。
CubeSat(キューブサット)とばれるちょう小型こがた人工じんこう衛星えいせいのイメージ。Photograph: Thibault Renard/Getty Images

人工じんこう衛星えいせいとらえた大量たいりょうのハイパースペクトル画像がぞうひかり波長はちょうごとに分光ぶんこうして撮影さつえいした画像がぞうデータ)を地球ちきゅう送信そうしんするまえ衛星えいせい軌道きどうじょう解析かいせきできれば、貴重きちょう時間じかんとエネルギーを大幅おおはば節約せつやくできる。そこでオーストラリアの科学かがくしゃたちは、CubeSat(キューブサット)とばれるちょう小型こがた人工じんこう衛星えいせい人工じんこう知能ちのう(AI)搭載とうさいすることで、衛星えいせいじょう画像がぞう処理しょりとデータ圧縮あっしゅく実行じっこうすることに成功せいこうした。

従来じゅうらい地球ちきゅう観測かんそく衛星えいせいには、リアルタイムに地球ちきゅううつした複雑ふくざつ画像がぞう軌道きどうじょう分析ぶんせきする処理しょり能力のうりょくはありませんでした」と、サウスオーストラリア大学だいがく(UniSA)の地理ちり空間くうかん学者がくしゃのステファン・ピーターズ博士はかせ説明せつめいする。この課題かだい克服こくふくするためにピーターズらが構築こうちくしたのが、キューブサットのかぎられた処理しょり能力のうりょく消費しょうひ電力でんりょく、わずかなデータストレージの制約せいやくない動作どうさする軽量けいりょうなAIモデルだ。

オーストラリアの大学だいがく研究けんきゅう機関きかんによるコンソーシアム「SmartSat CRC」から資金しきん援助えんじょけてUniSAが主導しゅどうするこのプロジェクトでは、みなみオーストラリアはつとなるキューブサット「Kanyini(カニーニ)」に搭載とうさいすべく、オンボードのAIをもちいたエネルギー効率こうりつきわめてたか早期そうき火災かさいけむり検出けんしゅつシステムを、ピーターズひきいる研究けんきゅうチームが開発かいはつした。宇宙うちゅうから火災かさい早期そうき発見はっけんすることで、被害ひがい最小限さいしょうげんおさえることが目的もくてきだ。

くもけむり見分みわけて送信そうしんデータを最小さいしょう

カニーニのプロジェクトは、みなみオーストラリアしゅう政府せいふとSmartSat CRC、パートナー企業きぎょう協力きょうりょくによって実現じつげんした。そのミッションは、6Uサイズ(たて10cm×よこ10cm×たかさ60cm)のキューブサットを地球ちきゅうてい軌道きどうげて森林しんりん火災かさい検出けんしゅつするほか、内陸ないりく沿岸えんがん水質すいしつをモニターすることにある。

衛星えいせいのセンサーが地球ちきゅうからの反射はんしゃこうことなる波長はちょうとらえて詳細しょうさい地表ちひょうマップを生成せいせいするハイパースペクトルイメージングは、火災かさいかん水質すいしつ評価ひょうか土地とち管理かんりなど、さまざまな用途ようと活用かつようされる。

オンボードAIを活用かつようしたあらたなモデルは、このハイパースペクトル画像がぞうをダウンリンク(衛星えいせいから地球ちきゅうへの送信そうしん)するさいのデータりょうもとサイズの16%までらすことで、エネルギー消費しょうひを69%削減さくげんすることに成功せいこうした。これにより、従来じゅうらい地上ちじょうがわでの処理しょりの500ばいはやさで火災かさい発生はっせいけむり検出けんしゅつできるようになったという。

がるまえにセンサーが火災かさい判別はんべつする最初さいしょ兆候ちょうこうけむりです。これを早期そうき検出けんしゅつできるかにかかっています」と、ピーターズはう。

ピーターズによると、目的もくてき達成たっせい必要ひつよう重要じゅうよう情報じょうほうは、ほとんどの場合ばあいにおいて収集しゅうしゅうされるデータのほんの一部いちぶにしかふくまれていない。しかし、従来じゅうらい人工じんこう衛星えいせいではデータをオンボードで処理しょりできないことから、すべてのデータをいったん地上ちじょうにダウンリンクしたうえで解析かいせきする必要ひつようがあった。

そこで、実際じっさいにオーストラリアで発生はっせいした森林しんりん火災かさいのシミュレーション画像がぞうもちいてけむりくも区別くべつできるAIモデルをトレーニングすることで、地上ちじょうにダウンリンクして解析かいせきするデータを最小限さいしょうげんおさえたというわけだ。過去かこみなみオーストラリアのクーロン地域ちいき発生はっせいした火災かさいのシミュレーションでは、カニーニのオンボードAIがけむり検出けんしゅつして南極なんきょく地上ちじょうきょくにデータを送信そうしんするまで14ふんもかからなかったという。

「この研究けんきゅうにより、オンボードAIをもちいた画像がぞう処理しょり恩恵おんけい十分じゅうぶん証明しょうめいされました。森林しんりん火災かさいだけにかぎらず、自然しぜん災害さいがいたいする早期そうき警戒けいかいシステムとしても価値かち見出みだしだせるのではないでしょうか」

研究けんきゅうチームは、カニーニのミッションが始動しどうする2025ねん目処めどに、衛星えいせい軌道きどうじょうでオンボードAIを使つかった火災かさい検出けんしゅつ実証じっしょう計画けいかくしている。また将来しょうらいてきには、この技術ぎじゅつ商業しょうぎょうくわえて、地球ちきゅう規模きぼ衛星えいせい分散ぶんさん配置はいちするコンステレーションに導入どうにゅうすることで、1時間じかん以内いない火災かさい検出けんしゅつできるシステムの構築こうちく目指めざかんがえだ。

(Edited by Daisuke Takimoto)

※『WIRED』による宇宙うちゅう関連かんれん記事きじはこちら人工じんこう衛星えいせい関連かんれん記事きじはこちら


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