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Defuturing(だつ未来みらい)と Refutureing(さい未来みらい)にけたはしがき:SZ Newsletter VOL.230

りすぐりの限定げんてい記事きじめる『WIRED』の好評こうひょうサブスクリプションサービス「SZ MEMBERSHIP」が4がつよりアップデート、編集へんしゅうちょうからSZメンバーにてた週末しゅうまつのニュースレターが復活ふっかつした。リブート一発いっぱつは、だつ未来みらいさい未来みらいについて。
Defuturing(脱未来化)と Refutureing(再未来化)に向けたはしがき:SZ Newsletter VOL.230
BORCHEE/GETTY IMAGES, WIRED JAPAN

だれにもづかれていないとおもうのだけれど、今年ことし、『WIRED』日本にっぽんばんはついにエイプリルフールの投稿とうこうをやめることにした。コンデナストから復刊ふっかんした翌年よくねんの2012ねんから連綿れんめんつづく“伝統でんとう”で、ぼくが編集へんしゅうちょうになって以降いこうもそのバトンはいできた(いまかえると、19ねん以降いこうは「予言よげん自己じこ成就じょうじゅてき傾向けいこうわっているけれど)。いまやオンライン空間くうかんにこれだけディープフェイクにせ情報じょうほうあやま情報じょうほうい、生成せいせいAIあぶらそそごうとうでまくりをしているときに、エイプリルフールのジョークを無垢むくなものだとおもうこと自体じたいがジョークでしかない、というのがその理由りゆうだ。

でも一方いっぽうで、わらいや風刺ふうしには、社会しゃかいの“常識じょうしき”という固定こてい観念かんねん既得きとく権益けんえきいちしをくわえ、これまでたりまえだとかんがえていたものを、それまでとちょっとちが角度かくどからせてくれるちからがある(ということをヴォネガットもっていたはずだ)。この生成せいせいAIの時代じだいに、ジョークとはいかなる意味いみをもつようになるのだろうか? それについては、これからもかんがつづけようとおもっている。

というわけで4がつである。『WIRED』日本にっぽんばん好評こうひょうサブスクリプションサービス「SZ MEMBERSHIP」はこの4がつ1にちからいくつかアップデートをかさねている。まずは、いまおみのニュースレターだ。2023ねんのはじめからこれまで、編集へんしゅうえらぶメンバー限定げんてい記事きじのインサイトをさらにくポッドキャスト「SNEAK PEEKS at SZ MEMBERSHIP」を毎週まいしゅう公開こうかいし、その一部いちぶ抜粋ばっすいして週末しゅうまつSZ Newsletterとしておとどけしてきた。今後こんご週末しゅうまつのニュースレターはこのとおり、やく1ねんりに「編集へんしゅうちょうからSZメンバーへのレター」形式けいしきでおとどけすることになる。でもご安心あんしんしていただきたい。すっかり人気にんきとなったポッドキャストシリーズはもちろん絶賛ぜっさんオンエアちゅうだ。

ちなみに今週こんしゅうのポッドキャストでは、4がつ1にち公開こうかいしたSZメンバー限定げんてい記事きじオッペンハイマー、68ねん名誉めいよ回復かいふく──そのられざる舞台裏ぶたいうら」を起点きてん映画えいが『オッペンハイマー』について編集へんしゅうの3にんかたっている。作品さくひんとしての強度きょうどもさることながら、とく最先端さいせんたん科学かがく技術ぎじゅつだれがいつどうやってあつかうのかという問題もんだいは、『WIRED』にとっても重要じゅうよういとなっている。ぜひ映画えいが記事きじあわせておきいただきたい。

SZメンバー限定げんてい記事きじはこの4がつからもこれまで同様どうようつき20ほんのペースでおとどけする予定よていだ。ただし「毎週まいしゅうのテーマ」を設定せっていして平日へいじつ記事きじ5ほんをキュレーションするスタイルをあらため、よりタイムリーでフレキシブルに、かつこれまでとおりにインサイトあふれるロングリードを中心ちゅうしんりすぐりの記事きじをおとどけしていくので、ほかにはない『WIRED』クオリティの限定げんていコンテンツをぜひたのしみにしていただきたい。くわえて、SZメンバーなら通常つうじょうのWIRED.jp記事きじつき3ほんえて放題ほうだいとなる。

もうひとつ、SZメンバーにこのタイミングでぜひおらせしたいのが、待望たいぼう雑誌ざっし定期ていき購読こうどくがスタートしていることだ。とし契約けいやくのSZメンバーならなんと4わり以上いじょうとくとなり、かみ雑誌ざっしやく半額はんがくめることになる。もちろん、SZメンバーなら直近ちょっきん2ごう雑誌ざっしばんをPDFでダウンロードできるサービスがあるし、あなたが12.9インチのiPad Proをおちなら、それで快適かいてき読書どくしょ体験たいけん約束やくそくされているだろう。だが定期ていき購読こうどく再開さいかい記事きじでもいたとおり、「いまや時代じだい一周いっしゅうまわり、雑誌ざっしという手触てざわりのあるメディアそのものが、ラグジュアリーな体験たいけん約束やくそくするものとなっている」。ちなみにぼく自身じしんとく洋書ようしょなど、「通勤つうきん運転うんてんちゅうくAudible」「検索けんさくよう電子でんし書籍しょせき」「せき読&読書どくしょようかみ書籍しょせき」とおなじタイトルを3つのメディア形式けいしきそろえることもある。それが極端きょくたんだとしても、かみのメディアは身体しんたいてき情報じょうほう摂取せっしゅ可能かのうにするし、とても有用ゆうようだ。ぜひご検討けんとういただきたい。

さて、今回こんかいのニュースレターのタイトルを「Defuturing(だつ未来みらい)とRefutureing(さい未来みらい)にけたはしがき」としたのは、それを今年ことしのSZ(スペキュラティブゾーン=実験じっけん)のテーマにしようとかんがえているからだ。「Defuturing(だつ未来みらい)」というのはもともとデザイン理論りろんトニー・フライが定義ていぎした言葉ことばで、1999ねんには『Defuturing: A New Design Philosophy』(邦訳ほうやく)という著書ちょしょしている(その2020ねんにいまのはんになってからも増刷ぞうさつかさねている)。だつ未来みらいとは、近視眼きんしがんてき短期たんき主義しゅぎてき社会しゃかいのあらゆるデザインと未来みらい追求ついきゅうが、結局けっきょく地球ちきゅう環境かんきょう人間にんげん社会しゃかい破壊はかいし、未来みらい人々ひとびとからうば結果けっかにつながっていることをう。未来みらい毀損きそんされている、というニュアンスだ。

ぼくがはじめてこの言葉ことばったのは、21_21 DESIGN SIGHTで展示てんじディレクターをつとめた企画きかくてん2121ねん Futures In-Sight」において、デザインリサーチャーで京都工芸繊維大学きょうとこうげいせんいだいがく教授きょうじゅ水野みずの大二郎だいじろうさんが提示ていじしたい「Why futures start?」にされたつぎ記述きじゅつによってだった。

水野みずの“チルドレン”のひとりでもあるスペキュラティブ・ファッションデザイナーでSynflux CEOの川崎かわさき和也かずやさんも、『WIRED』30周年しゅうねん記念きねんごうとなる「Next Mid-Century」特集とくしゅうでの未来みらい学者がくしゃププル・ビシュトとの「未来みらい植民しょくみん」をめぐる素晴すばらしい対談たいだんのなかで、これまでの西欧せいおう偏重へんちょうだった未来みらい解体かいたいする契機けいきとしてのDefuturing(だつ未来みらい)に言及げんきゅうしている。ぼくが今回こんかい、Defuturing(だつ未来みらい)/Refutureing(さい未来みらい)でかんがえているのも、水野みずのさんや川崎かわさきさんのニュアンスによりちかい。戦略せんりゃくとしては、フランスの思想家しそうかドゥルーズ/ガタリが提示ていじした「だつ領土りょうど」「さい領土りょうど」を補助ほじょせんとして意識いしきしている(だつ未来みらいさい未来みらいと、だつ領土りょうどさい領土りょうどのアナロジーについては、かえりのクルマのなかでChatGPT4と英語えいごで1間近まぢか議論ぎろんしたところだ)。

いまちまた流布るふし、喧伝けんでんされている、あるいは人々ひとびと所与しょよのものとしてれようとしている“未来みらい”に果敢かかんいをぶつけ、さぶり、いったん解体かいたいし、だつ構築こうちくすること。それによって、これまでえていなかったり、かんがえることが困難こんなんだったり、可能かのうだとはおもわれていなかったりしたような、より多元的たげんてき持続じぞくてき未来みらいさい生成せいせい(re-generate)に加担かたんしていくこと。それが所与しょよ未来みらいとなったら、またおなじサイクルをかえすこと。結局けっきょくのところ、それこそが未来みらい実装じっそうするメディアとしての『WIRED』が、このSZという実験じっけんでメンバーのみなさんと一緒いっしょんでいきたいことなのだ。未来みらいだつ構築こうちくするこの営為えいいは、もしかしたら、これまでなら「ジョーク」というものがその一端いったんになっていたのかもしれないな、とあらためておもいをせながら。

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いつの時代じだいもファッションは未来みらいまつわってきた。だからこそいま、その可能かのうせいかたるためのあらたな文脈ぶんみゃく必要ひつようだ。10ねんぶりとなるファッション特集とくしゅう「FASHION FUTURE AH!」にせて、『WIRED』日本にっぽんばん編集へんしゅうちょう松島まつしま倫明みちあきからのエディターズレター。