• 給食きゅうしょくで食たべたあのチーズ
• 実じつは技術ぎじゅつが必要ひつよう
• 型かた抜ぬきチーズ誕生たんじょうに込こめられた思おもい

パンダや新幹線しんかんせんなどの形かたちになったチーズ、見みたことありますか？　プロセスチーズで有名ゆうめいなQBBの「型かた抜ぬきチーズ」がSNSで話題わだいになりました。「給食きゅうしょくで食たべた」「懐なつかしい」という声こえがある一方いっぽうで「見みたことない」という反応はんのうもありました。地域ちいきや年代ねんだいによって違ちがいはあるのか、今いまは主おもにどこで流通りゅうつうしているのか、メーカーに取材しゅざいしてみました。（朝日新聞あさひしんぶんデジタル企画きかく報道ほうどう部ぶ・武田たけだ啓あきら亮あきら）

給食きゅうしょくで食たべたあのチーズ

話題わだいになっていたのは六甲ろっこうバター株式会社かぶしきがいしゃが製造せいぞうしているQBBブランドの「型かた抜ぬきチーズ」です。1個いっこずつパウチされたチーズがパンダやライオン、飛行機ひこうきやサッカーボールなどの形かたちに成型せいけいされているのが特徴とくちょうです。

SNS上じょうでは「めっちゃ懐なつかしい」「昔むかし、給食きゅうしょくで出でたな」といった反応はんのうが。
約やく20年ねん前まえ、記者きしゃが通かよっていた千葉ちば市しの小学校しょうがっこうでも給食きゅうしょくに並ならんでいた記憶きおくがあります。

一方いっぽうで「初はじめて見みた」「ジェネレーションギャップかな」「地域ちいき差さや年代ねんだい差さがあるのかも」といった反応はんのうも。

型かた抜ぬきチーズはカニやパンダ、トラなど可愛かわいらしいデザインが特徴とくちょう的てきです 出典しゅってん： 六甲ろっこうバター株式会社かぶしきがいしゃ提供ていきょう

型かた抜ぬきチーズはいつごろから、どこで流通りゅうつうしているのでしょうか。

同社どうしゃに取材しゅざいを申もうし込こんだところ、マーケティング本部ほんぶ長ちょうの黒田くろだ浄きよし治ちさん（62）が説明せつめいしてくれました。

「型かた抜ぬきチーズが発売はつばいされたのは1980年代ねんだいです。当初とうしょは『ポコットチーズ』という商品しょうひん名めいでスーパーなどで販売はんばいされていたのですが、その後ごまもなく、学校がっこう給食きゅうしょくに採用さいようされることになりました。今いまでは給食きゅうしょく用ようの需要じゅようが圧倒的あっとうてきに多おおいです」

大人おとなはつい「懐なつかしい」と口走くちばしってしまいますが、今いまも学校がっこう給食きゅうしょくで子こどもたちに親したしまれているようです。
給食きゅうしょくに採用さいようされるかどうかに、地域ちいき差さや年代ねんだいによる違ちがいはあるのでしょうか？

「弊社へいしゃは神戸こうべ市しにある会社かいしゃということもあり、給食きゅうしょくに採用さいようしてくださっている自治体じちたいは神戸こうべ市しや明石あかし市しなど関西かんさい圏けんが多おおいです。ただ、相模原さがみはら市しなど他たの地域ちいきでも採用さいようされています」と黒田くろださん。

また、学校がっこう給食きゅうしょくにどんな食品しょくひんを使つかうかは年度ねんどごとに変かわるため、同おなじ自治体じちたいでも採用さいようされる年としとされない年としがあるそうです。

「タイミングによっては、同おなじ地域ちいき出身しゅっしんで年齢ねんれいが近ちかい方ほうでも、給食きゅうしょくで型かた抜ぬきチーズを食たべたことがある方ほうとそうでない方ほうがいるかもしれませんね」

実じつは技術ぎじゅつが必要ひつよう

黒田くろださんによると、学校がっこう給食きゅうしょく用ようの出荷しゅっかがメインではあるものの、近年きんねんはネット通販つうはんやスーパーなどで一般いっぱんの人ひとが購入こうにゅうする機会きかいも増ふえているとのこと。

「親御おやごさんが『懐なつかしい』『子こどもが楽たのしみながら食たべてくれる』と買かっていかれることが多おおいようです。最近さいきんは普通ふつうのスーパーでも『型かた抜ぬきチーズを小売こうりさせてもらえないか』というお話はなしをいただくこともあり、ありがたい限かぎりです」と話はなします。

型かた抜ぬきチーズのデザインは全部ぜんぶで10種類しゅるい。団子鼻だんごばなが特徴とくちょう的てきな0系けい新幹線しんかんせんなど、時代じだいを感かんじさせるものもあります。

特徴とくちょう的てきな見みた目めの0系けい新幹線しんかんせんのチーズ。この車両しゃりょうは2008年ねんに運用うんようを終おえているので、今いまの小学生しょうがくせいは知しらないかもしれません 出典しゅってん： 六甲ろっこうバター株式会社かぶしきがいしゃ提供ていきょう

子こどもが喜よろこぶデザインに成型せいけいしたチーズ。類似るいじ品ひんが登場とうじょうしてもおかしくなさそうですが、そうならないのはなぜでしょうか。

プロセスチーズは原料げんりょうとなる複数ふくすうのチーズを混まぜ合あわせて溶とかし、固かためて作つくります。
型かた抜ぬきチーズの場合ばあいは、溶とかしたチーズを型かたに充填じゅうてんしてから固かためることで、動物どうぶつや乗のり物ものなどの形かたちにしています。

「簡単かんたんそうに思おもうかもしれませんが、粘ねば度たびの高たかいチーズを型かたに充填じゅうてんするのには技術ぎじゅつが要いるんです」

型かた抜ぬきチーズのデザインを決きめる過程かていで、型かたを作つくる段階だんかいまで進すすんだものの、形かたちが複雑ふくざつすぎて充填じゅうてんがうまくいかないなどの理由りゆうで製品せいひん化かできず「お蔵ぞう入いり」になってしまったデザインもあるそうです。

「手間てまがかかりノウハウも必要ひつような一方いっぽうで、普通ふつうのチーズと比くらべて利益りえきが大おおきいというわけでもありませんから、そもそも参入さんにゅうしようという会社かいしゃ自体じたいが少すくないのかもしれませんね」

型かた抜ぬきチーズ誕生たんじょうに込こめられた思おもい

味あじや栄養えいよう価かは同社どうしゃが作つくる普通ふつうのプロセスチーズと変かわらないという型かた抜ぬきチーズ。
なぜ形かたちを変かえる手間てまをかけようと思おもったのでしょうか。

「『チーズで子こどもたちの会話かいわのきっかけを作つくれれば』という狙ねらいがあったようです。大人おとなの視点してんだけで作つくると、どうしても味あじや栄養えいよう価かなど実用じつよう一辺倒いっぺんとうになってしまう。見みた目めの要素ようそを加くわえて、子こどもたちを楽たのしませられないかという発想はっそうだったようです」と黒田くろださんは語かたります。

確たしかに、SNS上じょうでも「友達ともだちと好すきな形かたちのチーズを交換こうかんしていた」といった投稿とうこうが見受みうけられます。

SNS上じょうでは「ライオンが好すきだった」などの投稿とうこうが。耳みみやひげなど細部さいぶまで作つくり込こまれています 出典しゅってん： 六甲ろっこうバター株式会社かぶしきがいしゃ提供ていきょう

「型かた抜ぬきチーズに限かぎらず、商品しょうひん開発かいはつの際さいには、子こどもたちに食たべてもらうことを強つよく意識いしきしてきた歴史れきし的てきな背景はいけいがあります」

同社どうしゃの前身ぜんしんとなる平和へいわ油脂ゆし工業こうぎょうが創業そうぎょうしたのは戦後せんご間あいだもない1948年ねん。食糧しょくりょう不足ふそくが続つづくなか、「子こどもたちに少すこしでもカロリーがある食たべ物ものを」と、当初とうしょはマーガリンなどを中心ちゅうしんに製造せいぞう・販売はんばいしていたそうです。

その後ご、1958年ねんにはソーセージ型がたに成型せいけいしたスティックチーズを発売はつばい。
「まだチーズが高級こうきゅう品ひんだった時代じだい、家庭かていでも手軽てがるにチーズを食たべてもらえるようにというコンセプトでした」

刃物はものを使つかって切きり分わけたりする必要ひつようがなく、子こどもでも自分じぶんの手てで包装ほうそうを開あけて食たべられることもポイントでした。

現在げんざいまで続つづく子こどもたちにも配慮はいりょした商品しょうひん作づくりですが、あるジレンマも。

「家庭かていでも学校がっこうでも、最終さいしゅう的てきに商品しょうひんを選えらぶのは大人おとなですから、なかなかアピールが難むずかしいんです」

SNSで型かた抜ぬきチーズがたびたび話題わだいに上のぼることについて黒田くろださんは「『懐なつかしい』と言いってもらえるのは、それだけうちの商品しょうひんが楽たのしい思おもい出でと結むすびついているからなのかなと。もしそうであれば、こんなにうれしいことはありません」

覚おぼえてる?見みたことない？　型かた抜ぬきチーズ全ぜん10種しゅ

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