■学生生活 お金のリアル(岡山県岡山市)
モンテッソーリ教育を学んで、保育士になりたいと考えて、岡山市にあるノートルダム清心女子大学人間生活学部児童学科3年の加藤小百合さん(仮名)は、進学先を決めました。中学生のときにノートルダム清心学園前理事長の渡辺和子さんが書いたベストセラー『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎)に感銘を受けたことも大きく影響しています。地元の静岡県から遠く離れた岡山市での一人暮らしは、どんな生活で、どのくらい費用がかかっているのでしょうか。(写真=ライトアップされた岡山城、本人提供)
日当たりのいい部屋に引っ越し
母が保育士で、小さい頃から自分も保育士になりたいと思っていた加藤さん。中学生時代に読んだ本、『置かれた場所で咲きなさい』は心の支えになっていました。また、祖母と母、そして加藤さん自身もカトリック信者だったこと、興味があったモンテッソーリ教育を学べることなどから、ノートルダム清心女子大学への進学を決めました。静岡県の実家を離れて一人暮らしになるため、父親は「なぜ岡山?」とショックを受けたものの、最終的には応援してくれました。
――ノートルダム清心女子大学での学びはいかがですか。
一度は親元を離れて一人で生活をしてみたいと思っていたこともあり、この大学を選びました。1年の時から、現場での経験が豊富な先生方に、基礎から丁寧に教えてもらっています。キャンパス内に附属幼稚園があり、実習や実技が多いので、実践体験を積みやすいのも魅力です。1、2年時はキリスト教の授業もあり、キリスト教の教えについても考えを深めることができました。
入学前からモンテッソーリ教育に興味があったので、ここで学ぶことができているのはうれしいです。少人数で和気あいあいとした雰囲気の中、勉強しています。卒業時には大学独自のモンテッソーリ教育免許を取得できます。
――大学はJR岡山駅に近く、便利な場所にありますね。
大学の近くに大きな公園があり、駅前にはお店がいっぱいあるので、生活する上で便利です。友達とは後楽園近くのカフェに行くこともあります。
地元の静岡は雨が多かったのですが、岡山は晴れの日が多いのもいいなと思っています。今、私が住んでいるのは学校から徒歩10分、自転車なら5分のところです。入学して1年半後に今の家に引っ越しました。実は母が合格発表前に、気持ちが焦っていたのか、岡山の物件を契約してくれたのですが、その家の日当たりと風通しが悪くて……。2年の秋まではそこに住んでいましたが、実習が落ち着いたタイミングで、自分で物件を探して今の家に決めました。建物がきれいで、日当たりと風通しがよく、独立した洗面台があるのが気に入っています。
家賃はそれまでの家よりも1万4千円上がって5万3千円になりましたが、両親も「1年半も我慢したからね」と許してくれました。それに前の家賃が相場より安すぎたと思います。水道光熱費は月によって変動がありますが、7千〜1万3千円で、家賃と水道代、ガス代は親が負担してくれています。
授業の実習費はアルバイト代から
――静岡から岡山への進学で、入学当初は知り合いがいなかったのでは?
高校の友達も多くは親元を離れて進学していますが、岡山に来たのは私一人で、初めは本当に寂しかったです。入学式から1カ月半は対面授業で大学に通っていましたが、5月から夏くらいまでは新型コロナウイルスの感染者が増えてしまったため、リモート授業になりました。この時が一番つらかったです。入学してすぐ友達が何人かできたものの、会うことができませんでした。
飲食店のアルバイトも入学直後に始めたのですが、コロナ禍で休業してしまいました。食費や交通費、電気代、その他の雑費は自分で負担しているので、それまで貯めてきたお小遣いを取り崩して乗り切りました。でも、その年の夏からはアルバイトができるようになり、今は月3万〜9万円の収入があります。まかないが出るのも助かっていて、アルバイトの後、お店で食べたり、家に持ち帰ったりしています。
アルバイト代からは授業の実習費なども出しているので、実習で忙しい時や帰省した時はその月の収入が減ってしまいます。だから、時間がある時はなるべくたくさんシフトを入れるようにしています。
「児童文化部」と「茶道部」の活動も充実
――サークル活動もしているのですか。
児童文化部に所属していて、子ども向けのイベントをボランティアで行っています。人前で話すのが苦手なので、もっと経験を積みたいと思ったのと、友達づくりのためにこの部に入りました。子どもたちと一緒にわらべうたを楽しんだり、工作をしたりしていて、保育士をめざす上でプラスになっています。
茶道部にも入っています。茶道は小学生の頃に習っていて、もう一度習ってみたいと思って始めました。作法が決まっていて、その間は他のことを考えないというところがいいです。きちんとお辞儀をしたり、作法をゆっくりと丁寧にしたりすることで心も落ち着きます。部活とは別に、茶道部の顧問の先生のご自宅でのお稽古にも通っていて、その月謝もアルバイト代から出しています。
暮らしのトラブルにもひとりで対処
――初めての一人暮らしで、家事などは大変ですか。
両親が共働きで、実家にいた時から家事をしていたので、そんなに大変ではありませんでした。でも、授業が一限からある時は、大学に行く前に洗濯を済ませたり、授業が終わって家に帰ってからご飯を作ったりするのは大変です。ランチも毎日学食だとお金がかかるので、家でおにぎりを作り、保温ジャーにスープを入れて持って行っています。食費は月1万〜2万円くらいです。
一人暮らしで大変だと思ったのは、何かトラブルがあった時に、全部自分で対処しなくてはいけないことです。以前、トイレに小瓶を落としてしまい、そのまま流れてしまったことがありました。業者に頼んでトイレを解体し、外の排水溝まで調べてもらいましたが、結局、小瓶は見つかりませんでした。どの業者に頼むのかを調べて、自分でやりとりして修理してもらう作業は本当に大変で、お金もかかりました。いい勉強になりました。
――帰省はしていますか。
春休み、夏休み、年末年始の年3回、帰省しています。新幹線だと静岡駅まで片道1万5千円ですが、使っていません。いつも利用しているのは、寝台列車の「サンライズ出雲・瀬戸」です。岡山駅を夜10時半に出発し、静岡駅に翌朝4~5時に着きます。一番安い「ノビノビ座席」だと片道1万2千円で、学割でもう少し安くなります。乗車日の1カ月前にJRの窓口で買っています。長距離バスだと片道7千〜8千円ですが、「サンライズ出雲・瀬戸」だと、横になれるので楽です。静岡駅に到着しても、実家の最寄り駅まで行く在来線はまだ走っていないので、在来線の始発まで駅で待ちます。実家に帰ると家族とペットがいるので、家の中がにぎやかでうれしい気持ちになれます。地元の友達にも会えるので、必ず帰省しています。
――長期休みの時は、帰省以外に何をしていますか。
アルバイトやクラブ活動以外では、旅行に行くこともあります。高校時代の友達はいろんな場所の大学に進学しているので、昨年夏はみんなで大阪に集合して遊びに行きました。
――4年生になると、就職活動が本格的に始まりますね。
卒業したら静岡に帰ろうと思っていましたが、今は岡山で数年間、経験を積もうかなと思っています。岡山には大学とつながりのある幼稚園がいくつもありますし、勤めている先輩がいるので幼稚園の情報も入りやすいからです。卒業まであと1年ですが、保育士をめざして頑張っていこうと思っています。
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※学年は取材時のものです。
(文=𠮷川明子)