岸田文雄内閣の支持率が、複数の国内メディアの世論調査で2021年10月の政権発足後の最低を相次ぎ記録した。岸田首相は自民党「安倍派」が政治資金パーティーの収入の一部を裏金にした疑惑を受けて批判が高まる中、同派閥出身の松野博一前官房長官ら4閣僚を交代させたが、世論の逆風はさらに強まっている。
いずれの調査でも支持率は10-20%台に落ち込み、大半で12年12月の自民党政権復帰後の最低を更新。一連の問題を受けて岸田首相の責任や指導力を問う声が強まっている。閣僚を交代させたことで問題は解決しないとの厳しい指摘も出ている。自民党の不支持率も上昇しており、派閥の解消を求める声も多い。
支持率はマイナンバーカードを巡るトラブルをきっかけに下落傾向に転じ、9月の内閣改造や11月の定額減税を柱とした経済対策の策定後も低迷。最大派閥の裏金疑惑がさらに追い打ちを掛けた。東京地検特捜部が近く強制捜査に乗り出すとも報じられており、政権浮揚の見通しが立たない事態に陥っている。
岸田首相は14日、松野氏の後任に岸田派の林芳正前外相、西村康稔経済産業相の後任に無派閥の斎藤健前法相を起用する人事に踏み切った。このほか、総務相に麻生派の松本剛明前総務相、農相に森山派の坂本哲志元地方創生担当相と安倍派以外の閣僚経験者をそれぞれ充てた。党幹部では萩生田光一政調会長、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長も辞意を示している。
16-17日に行われた(日本経済新聞は15-16日、読売新聞は15-17日)各社の調査結果の詳細は以下の通り:
日本経済新聞-内閣支持率が11月の前回調査比で4ポイント減の26%。自民党政権での支持率が20%台に落ち込むのは09年7月の麻生太郎内閣以来。不支持率は68%で、12年の政権復帰後、最も高い。政治資金問題について首相に「責任があると思う」と答えたのは67%。自民党の政党支持率も30%と、前回調査から4ポイント下落し、無党派層の32%を下回った。
毎日新聞-支持率が16%にまで落ち込んだ。20%台を下回るのは菅直人政権下に行われた11年8月(15%)以来で、前月比で5ポイント減。不支持率は前月の調査比で5ポイント増の79%となり、同紙が世論調査で内閣支持率を初めて質問した1947年7月以来、最も高いという。
共同通信-支持率が22.3%となり、前回調査の28.3%を下回って過去最低を更新した。不支持率は65.4%で過去最高。裏金疑惑を巡る首相の指導力について「発揮していない」が75%だった。自民の政党支持率も26%と政権復帰以降、初の20%台となった。
朝日新聞-支持率は23%、不支持率は66%。自民党の政権復帰以降で、それぞれ最低と最高を更新した。裏金疑惑を巡る岸田首相の対応について「評価しない」が74%で、「評価する」の16%を上回った。岸田首相に首相を「早く辞めてほしい」との回答も58%を占めた。
ANN-支持率は21.3%。前月より4.8ポイント減り、政権発足以降の最低となった。不支持率は60.4%で、その理由については「政策に期待が持てないから」が60%で最も多かった。岸田首相が安倍派に所属する閣僚を交代させたことで問題が「解決しない」との回答は9割を超えた。
読売新聞-支持率は25%と、自民党の政権復帰以降の最低だった前回11月調査の24%からほぼ横ばいだった。自民党の派閥は「解消するべきだ」との回答は59%と、「改革した上で存続させるべきだ」の34%を上回った。政治資金規正法の改正が必要だと「思う」は88%に上った。
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(朝日、ANN、読売の調査結果を追加して更新しました)