武士ぶし道どう

かつての日本にっぽんには、わが国くに固有こゆうの伝統でんとう精神せいしんがあった。武士ぶし道どうもそのひとつである。それは、新渡戸にとべ稲造いなぞうが1899年ねんに英文えいぶんで『武士ぶし道どう』を発表はっぴょうし、世界せかい的てきな大だい反響はんきょうを巻まき起おこしたことでもわかる。当時とうじの日本にっぽんは、まさに文明開化ぶんめいかいかの真まっ只中ただなかであった。怒涛どとうの如ごとく押おし寄よせる西洋せいようの新あたらしい価値かち観かんによって、社会しゃかい全体ぜんたいがことごとく西洋せいよう化かしていった。その変かわりゆく姿すがたを見みて、新渡戸にとべ稲造いなぞうは「日本人にっぽんじんとはなにか」を問とい直なおそうと考かんがえ始はじめた。そして彼かれは失うしなわれゆく日本にっぽんの伝統でんとう精神せいしんを振ふり返かえったとき、「武士ぶし道どう」こそが、日本人にっぽんじんの精神せいしん的てき支柱しちゅうであり、それを世界せかいに広ひろく紹介しょうかいすることが日本にっぽんのためになると考かんがえた。本書ほんしょはその現代げんだい語ご訳やくである。発刊はっかん当時とうじの明治めいじ期きと同様どうよう、現代げんだいの私わたしたちは急速きゅうそくな国際こくさい化かの中なかで、日本人にっぽんじんのアイデンティティを見失みうしないつつある。今いまこそ私わたしたちはもう一度いちど「日本人にっぽんじんとはなにか」を問とい直なおす時期じきにきているのではないか。倫理りんり観かん・道徳どうとく観かんを改あらためて考かんがえることができる格好かっこうの書しょ。

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