公器こうきの幻影げんえい

現役げんえきの財務省ざいむしょう官僚かんりょう作家さっかが描えがくメディアの裏側うらがわ。

地方ちほう紙しから中央ちゅうおう紙し「東西とうざい新聞しんぶん」に移うつった鹿島かしま謙吾けんごには野心やしんがあり、いつの日ひか自分じぶんが書かいた記事きじで政治せいじ家かの「首くび」を取とることを、新聞しんぶん記者きしゃとしての目標もくひょうとしていた。中国ちゅうごくの西安しーあんで死刑しけい囚しゅうの臓器ぞうきが金銭きんせん絡がらみで日本人にっぽんじん患者かんじゃに移植いしょくされているという事実じじつを鹿島かしまは突つき止とめ記事きじにするが、中国ちゅうごく政府せいふは強つよく反発はんぱつし、日本にっぽん国内こくないでも臓器ぞうき提供ていきょうの要件ようけん緩和かんわを目指めざす法案ほうあんが動うごき出だす。臓器ぞうき移植いしょく法案ほうあんを政争せいそうの具ぐとして蠢うごめく政治せいじ家かたち。鹿島かしまはさらに脳死のうし判定はんていにおけるデータ改竄かいざんと政治せいじ家かたちの違法いほう献金けんきんを追おうが、それを公おおやけにすることは移植いしょく手術しゅじゅつを待まつ患者かんじゃたちの希望きぼうを打うちくことにもなってしまう。正義せいぎか、信条しんじょうか、功名こうみょう心しんか、揺ゆれ動うごく鹿島かしまの決断けつだんは……。
著者ちょしゃは「スコールの夜よる」で第だい5回かい日経にっけい小説しょうせつ大賞たいしょうを受賞じゅしょうして話題わだいを集あつめた現役げんえき財務省ざいむしょうキャリア官僚かんりょう・芦崎あしさき笙しょう氏し。受賞じゅしょう作さくでは大手おおて都市とし銀行ぎんこう初はつの女性じょせい管理かんり職しょくに抜擢ばってきされたヒロインの苦闘くとうを描えがき金融きんゆう界かいの深層しんそうに迫せまったが、本ほん作さくで選えらんだテーマは政治せいじをも動うごかす巨きょ大だいメディアでの新聞しんぶん。政治せいじ家かの「首くび」を狙ねらう野心やしん溢あふれる新聞しんぶん記者きしゃの生いき方かたを通とおして、公器こうき(マスコミ)とは何なにかを問といかける。

9784094063790