寅とら右みぎ衛門えもんどの 江戸えど日記にっき 殿様とのさま推参すいさん

人情にんじょう時代じだい劇げきを得意とくいとする井川いかわ香かおり四郎しろう氏しによる文庫ぶんこ書かき下おろしシリーズ
「寅とら右みぎ衛門えもんどの 江戸えど日記にっき」の第だい5巻かんにして完結かんけつ編へん。

時ときは老中ろうじゅう・松平まつだいら定信さだのぶの頃ころ。
江戸えどの長屋ながやにフラリと現あらわれ居候いそうろうとなった「自称じしょう・改易かいえきされた元もとお大名だいみょう」の与あずか多た寅とら右みぎ衛門えもんが、茫洋ぼうようたる立たち振ぶる舞まいと、見掛みかけに似合にあわぬ腕うでっぷし、どこから知恵ちえが出でてくるの？という突拍子とっぴょうしもない奇策きさくで、長屋ながやにまつわる大だい事件じけん、小しょう事件じけんを解決かいけつしていく痛快つうかい人情噺にんじょうばなし……と思おもいきや、物語ものがたりは度重たびかさなる急きゅう展開てんかい。
実じつは寅とら右みぎ衛門えもんは越後えちご四条しじょう藩はんの殿様とのさまの「影武者かげむしゃ」であったと判明はんめい。
とはいえ殿様とのさま同様どうようの教養きょうようと武芸ぶげいを身みに着つけた寅とら右みぎ衛門えもんの活躍かつやくは江戸えどの評判ひょうばんになり、旗本はたもとから仕官しかんの話はなしが舞まい込こんだり、元もとの藩はんからの刺客しかくに狙ねらわれたり。
やがて幕府ばくふの大物おおものに見込みこまれ、なんと幕府ばくふの「若年寄わかどしより」に抜擢ばってき、それに伴ともない武蔵むさし滝山たきやま藩はんの藩主はんしゅ、つまり「本物ほんものの殿様とのさま」になってしまった、というのが前回ぜんかいまでのお話はなし。

最終巻さいしゅうかんでも、庶民しょみんに味方みかたし理想りそうを語かたる「型破かたやぶりな若年寄わかどしより」ぶりを発揮はっきする寅とら右みぎ衛門えもんだが、その行ゆく手てには「改革かいかく老中ろうじゅう」を気取けどりながら増税ぞうぜいばかりを考かんがえる出世しゅっせ主義しゅぎの上役うわやく、財政ざいせい再建さいけんの「妙手みょうしゅ」を引ひっさげ幕政ばくせいに食くい込こもうとする胡散臭うさんくさい事業じぎょう家か、財源ざいげんもなしに大胆だいたんな救民きゅうみん政策せいさくを打うち出だす野心やしん家かの勘定かんじょう奉行ぶぎょう……と、次々つぎつぎに難題なんだいが立たち塞ふさがる。
さらに江戸えどの子供こどもがさらわれる誘拐ゆうかい事件じけん、消きえた身代金みのしろきん、その裏うらに潜ひそむ幕まく閣かく内ないの抗こう争そう。
寅とら右みぎ衛門えもんは、長屋ながや時代じだいの仲間なかまたちの助たすけを借かりて難なん敵てきに立たち向むかう寅とら右みぎ衛門えもんだが、そこに謎なぞの女おんなの影かげが!?

最終巻さいしゅうかんは、謎なぞあり、活劇かつげきあり、人情にんじょうあり、恋こい（？）ありと盛もり沢山だくさん。
落語らくごファン、時代じだい劇げきファン、そして硬派こうはな歴史れきしファンも楽たのしめること間違まちがいなし。
寅とら右みぎ衛門えもんどのの物語ものがたりは、大団円だいだんえんを迎むかえることができるのか？


【目次もくじ】
第だい一いち話わ 月夜づきよに提灯ちょうちん
第だい二に話わ 流りゅう雲くもの如ごとく
第だい三さん話わ 逢魔が富とみ
第だい四よん話わ 殿様とのさま推参すいさん

9784167910174