公爵こうしゃく令嬢れいじょうはなにもしない【完全かんぜん版ばん】

王家おうけからの打診だしんを受うけ、ひとつ年上としうえの第だい二に王子おうじ殿下でんか・スヴェンとの婚約こんやく者しゃとなった公爵こうしゃく令嬢れいじょうルシア。
しかしスヴェンには、幼馴染おさななじみのレミリアという想おもい合あう相手あいてがおり、見目みめ麗うるわしく愛あいらしいふたりの恋愛れんあいは、王宮おうきゅう内ないで微笑ほほえましく見守みまもられていた。
そのため、ふたりの仲なかを裂さいたと周囲しゅういの者ものから疎うとまれており、軽微けいびなものとはいえ王子おうじ妃ひ教育きょういくのために王宮おうきゅうに召めされてから、王宮おうきゅうの侍女じじょからのルシアに対たいする嫌いやがらせを受うける日々ひびが続つづいていた。
王宮おうきゅうに来きた日ひに挨拶あいさつを交かわしたきりで一いち度ども会あいに来きていないスヴェンが、ある日ひ突然とつぜんお茶ちゃに誘さそってきた。しかもそれは、レミリアから婚約こんやく者しゃの責務せきむをちゃんとしろと諭さとされてのものだった。
「殿下でんかは私わたしになにをお求もとめですか？」
いまさらルシアとの関係かんけいを構築こうちくしようと訪たずねて来きたられても、ルシアにその気きなどまったくない。
仲なかを引ひき裂さかれて被害ひがい者しゃ気取きどりのスヴェンに対たいして「巻まき込こまれたのは私わたしだ。ほかの誰だれかを想おもっている相手あいてとの婚約こんやく……ましてやお二に人にんがルシアのために、と別わかれられても不愉快ふゆかいだ」とぶつけるルシア。
自分じぶんは無力むりょくだから、抵抗ていこうすることも愛あいされる努力どりょくも訴うったえることも、すべて無駄むだだと知しっている。
だから無駄むだなことはする気きもない……そう、私わたしはなにもしない。
「殿下でんかは……できることは別べつにある筈はずです」
その「なにもしない」ルシアに対たいして、スヴェンは考かんがえ悟さとるようになる。それはレミリアや王宮おうきゅう内ない、次期じき公爵こうしゃくのクライヴを巻まき込こむ。

自身じしんの気持きもちを相手あいてに伝つたえることの大切たいせつさや難むずかしさを感かんじてもらえる、不器用ぶきような恋こい物語ものがたり。

＜作者さくしゃより＞
沢山たくさんの作品さくひんの中なかから拙作せっさくのページへと跳とんでいただき、誠まことにありがとうございます。
私わたしにとっては初はじめての電子でんし書籍しょせき化かで至いたらない点てんも多おおいとは思おもいますが、大分おおいた推敲すいこうし、読よみやすく致いたしました。
ファンタジー要素ようそは多おおいですが、キャラクターの心情しんじょうがストーリーのメインとなります。徐々じょじょに詳つまびらかになっていく事柄ことがらの中なかで、キャラクターの誰だれかにどこかしらで共感きょうかんを覚おぼえていただけたら嬉うれしく思おもいます。