結婚式で神父に名前を読み上げられた瞬間、ソニアの頭の中を、ソニアのものではない記憶が駆け巡った。ここから遠い世界——日本という国で社会人をしていた頃の自分の記憶。(あ、私異世界転生してる)ソニア・ブレイアムはそう理解した。新郎のデニック・ブレイアムは、前世で読んでいた小説のヒーローであり、ソニアは、彼とヒロインの前に立ち塞がる悪役である。デニックがヒロインに浮気することが許せず、二人の命を狙うが失敗、最後は獄中で死んでしまう…。死にたくなければ、死亡フラグを折るしかない。とにかく離婚さえできれば、ソニアは二人の障害になり得ないし、ソニアと離婚してから、デニックはヒロインと結婚したらいいーー。ソニアはデニックにい放った。
「一年後、離婚しましょう!」