「またすぐに会えますわ。あなたを、愛していますもの」
気がつくと、僕はベッドに寝ていた。白い壁に囲まれた、病院のベッド。
混乱、そしてすがる過去がない事への恐怖。
闇夜に怯え、震える『僕』を救ってくれたのは、自分のメイドを名乗る少女、琴乃宮雪。
そして友人である宮代花梨、新城和泉、大和庄一。
みんなに助けられながらも『僕』の新しい生活は始まる。
それは、ぎこちなくも優しい時間。『僕』はそんな時間に幸せなものすら見出し始める。
けれども、目覚めたその日から続く悪夢だけは変わることなく『僕』を苦しめ続けた。
正面に海、背中に山を背負った町――那波町。
この誰もが懐かしさを感じる小さな町でそれは起ころうとしていた。
長い時を経て積み重なった伝承と、僕の思い出を抱えて、静かに――
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水月 ~すいげつ~
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