【フルカラー48ページ】私は遊佐清司。ごく普通のサラリーマンだ。今日は妻は不在。一人で出張帰りの荷物を整理していると、遠くで雷のような音が聞こえた。窓の外を見てみると、さっきまで晴れていた空が、いつの間にか厚い雲に覆われ、そしてすぐさま──雨が降りだす。「きゃー、戸閉めて戸閉めて」「急に降ってくるんだもん」「あ~、もうビチョビチョ」どうやら、帰り道で土砂降りにあたったようで、娘の麻由と隣の宮森さんちの娘さん・玲奈ちゃんがずぶ濡れで帰ってきた。私は「お風呂にでも入ってきなさい」と、身体を温めることを勧める。麻由は玲奈ちゃんに先に入るよう勧めるが、そこは家の人が先と押し切られる形で浴室に入っていく。残された私と玲奈ちゃん。透けて見える玲奈ちゃんの胸元を意識しないようにしながら、なんとかしなければと思い、手近なワイシャツを手渡した。「風邪を引かないように、これを着て待っていなさい」その時、大きな雷鳴が鳴り、部屋の中が暗くなった。停電らしくリビングの中は夜みたいに真っ暗。薄暗いどころじゃない。だが、問題はそこじゃなかった。停電したこと以上に、この時の私には大きな難題が降りかかってきていた……。