「阪神はんしん７－６ＤｅＮＡ」（１０日にち、甲子園こうしえん球場きゅうじょう）

　最後さいごはハヤタが決きめた！阪神はんしんが２夜や連続れんぞくで今季こんき８度目どめとなるサヨナラ勝がちを収おさめ、眼下がんかの敵てきであるＤｅＮＡに３連勝れんしょう。同点どうてんの九きゅう回かい２死し満塁まんるい、代打だいだ・伊藤いとう隼はやぶさ太ふとし外野がいや手しゅ（２８）が右みぎ越こえに決勝けっしょう打だを放はなった。今季こんき３戦せん全敗ぜんぱいと苦くるしめられていた先発せんぱつの浜口はまぐちは五ご回かい途中とちゅうでＫＯ。対戦たいせんの可能かのう性せいがあるＣＳに向むけて大おおきな収穫しゅうかくとなった。１２日にちからは宿敵しゅくてき巨人きょじんを甲子園こうしえんに迎むかえ撃うつ。

　飛とび出だした白球はっきゅうを見みつめ、高鳴たかなる胸むねの鼓動こどうが一瞬いっしゅんだけ止とまった。右翼うよくフェンスに直撃ちょくげきし、緑みどりの芝しばに転ころがると甲子園こうしえんが歓喜かんきに揺ゆれる。伊藤いとう隼はやぶさは力強ちからづよく拳こぶしを突つき上あげ、祝福しゅくふくのウオーターシャワーを全身ぜんしんに浴あびた。最高さいこうの準備じゅんびが生うんだプロ初はつのサヨナラ打だ。一生いっしょう忘わすれられない、格別かくべつな味あじだった。

　「今いままで味あじわったことがないような、最高さいこうの気分きぶんでした」

　一進一退いっしんいったいの攻防こうぼうが続つづき、クライマックスは６－６で迎むかえた九きゅう回かい裏うら。２死し満塁まんるいで出番でばんは訪おとずれた。「ネクストから緊張きんちょうしっ放ぱなしでした」。弱気よわきな心しんを拭ぬぐい捨すて、打席だせきに入はいれば無心むしんだった。８月はちがつ１８日にち・中日ちゅうにち戦せん（ナゴヤドーム）以来いらい、出場しゅつじょう１３試合しあいぶりのヒット。久々ひさびさの快音かいおんは、２夜や連続れんぞくの劇げき勝しょうへとつながっていた。

　“必殺ひっさつ仕事しごと人じん”の殊勲しゅくん打だに、金本かなもと監督かんとくも「本当ほんとうに一番いちばんいいところで打うってくれました」と最敬礼さいけいれいだ。ベンチ前まえで熱あつい抱擁ほうようを交かわした後のち、ヒーローは「ちょっと感情かんじょう的てきになってしまった」と勝利しょうりの余韻よいんに浸ひたっていた。今季こんき出場しゅつじょうした全ぜん６１試合しあいのうち、代打だいだ出場しゅつじょうが５８試合しあいで打率だりつ・２７８。独自どくじの準備じゅんび方法ほうほうが土壇場どたんばでの力ちからを引ひき出だしている。

　試合しあい終盤しゅうばんになると、ベンチ裏うらでラダーなどアジリティトレーニングを始はじめる。故意こいに自身じしんの息いきを切きらせ、心拍しんぱく数すうを増ふやした状態じょうたいで気持きもちを高たかめるのだ。さらに、打席だせきに向むかう直前ちょくぜんに両目りょうめを氷水こおりみずで冷ひやす。「一いち振ふりに懸かけてるから」と話はなす男おとこが、その意図いとを明あかした。

　「落おち着ついているベンチから、代打だいだで打席だせきに立たつと一気いっきに心拍しんぱく数すうが上あがってしまう。だから、最初さいしょからその状態じょうたいを作つくっておく。目めは、ベンチより視界しかいが明あかるい打席だせきを想定そうていして。冷ひやすと見みやすいよ」

　３連勝れんしょうの立役者たてやくしゃは人一倍ひといちばい、貪欲どんよくに勝利しょうりを追おい求もとめている。「最高さいこうです！」。虎とらは、まだここから強つよくなる。