先週末、通常のリーグ戦が再開されたが、矢野阪神は敵地・ナゴヤドームでの中日2連戦に2連敗を喫し、5月2日以来の借金生活に逆戻り、首位巨人との差は今季最大の「5・5」にまで開いた。初戦(6月29日)は先発・青柳が早々に沈没、2戦目(6月30日)は延長戦で守護神ドリスのサヨナラ暴投と後味の悪すぎる負け方だけに、虎のご意見番・小山正明氏も「課題が多すぎるわな」と嘆き節だ。ただ、復活・ジョンソン、中継ぎ転向の小野など、虎投には光明も見えた。2日のDeNA戦から始まる9連戦を前に不安は多いものの、ここは投手力で突破するしかない!!
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約2カ月間、貯金を持って“上位生活”を送ってきた矢野阪神だったが、それも呆気ない幕切れでジ・エンドとなった。6月最後となったナゴヤドームでの中日(11)戦。先発・高橋遥から必死の継投でドラ打線を無得点に抑えてきた阪神投手陣だったが、延長十一回、守護神ドリスが先頭への四球から2死一、三塁のピンチを招き、最後はサヨナラ暴投。わずか2安打の中日に敗れ、5月2日以来の借金を背負うハメになった。
「言葉もないわ…。せっかく(先発の)高橋遥が試合を作ったのになぁ。とにかく打てなさすぎるよ」
サヨナラ負けが決まった瞬間、小山正明氏の携帯を鳴らしたら、落胆ありありの声が飛び込んできた。氏はラジオを聞きながら0-0で経過した試合を頭に浮かべ、阪神の勝利を念じていたらしい。ところが結果は最悪。打たれて負けたのならともかく、四球と暴投でサヨナラ負けを食らったのだから、何ともやりきれない。
-同点の延長戦で出てくるドリスほど、危ないものはありません。そう思ってたら、やっぱりの結末になりました。
「なあ。彼には常のあの怖さが付きまとう。しかし、投手陣はよく踏ん張ったと思うよ。それだけに、2試合で1点しか取れんかった打線に目が向くんや。もっとしっかりしろ、と声を大にして言いたいね」
-初戦は1点できょう(6月30日)は延長11回で無得点。2試合で1点じゃ連敗も仕方ないですか。
「初戦の大野雄はともかく、2戦目の柳は今年絶好調。キレのある真っ直ぐに落差の大きなスライダーにチェンジアップをコーナーに決められたら今の阪神打線は赤子同然。それにしてもボール球を振り過ぎるわ」
小山氏は先日、関西の某所で行われた講演会に講師として登壇、終了後の質疑応答で高齢の女性ファンからこんな質問を受けたという。「何で阪神の打者はあんなにボール球を振るんですか?」。これを聞いた氏は「とにかくビックリしたよ。本当に野球が好きで、阪神戦をよく見ている」と苦笑いを浮かべたが、ファンの目にもはっきり見えるほど、虎の各打者はボールを振っている、ということなのかもしれない。
5月戦線のけん引役だった近本は相変わらず低空飛行で、糸井、大山、マルテのクリーンアップは6月通算たった3本塁打と破壊力不足は誰の目にも明らか。これでは首位・巨人に離され、DeNAに並ばれての同率3位もやむを得ないだろう。むしろ、リーグ最多の失策数を考えれば、借金1の状態とて「まだ踏ん張っている方」と言えなくもない。
後ろ向きなことを言えばキリはないが、少しは光明もある。交流戦前半に「蓄積疲労」から2軍調整が続いていたジョンソンが1軍復帰し、30日の試合では1イニングを完璧に抑えた。また、故障で出遅れていた小野も中継ぎから復帰し、一定の結果を残している。勝ち星はつかなかったものの、高橋遥のここ3戦の内容はよく、安定感が増してきた。小山氏も「(高橋遥は)キレのいい球を低めにきっちりと投げられている。あれが投手のお手本」と賞賛を惜しまない。この投手陣が大崩れの状態なら「7月戦線」は地獄になるが、まだ浮上の余地は十分ある。
2日から始まる同率3位・DeNAとの直接対決。勢いは向こうにあるが、それを止めれば虎の方に勢いがつく。舞台は今季5勝1敗と相性のいい横浜スタジアム。「ここは最低でも2勝1敗でいかんとアカンで。不振の近本の起用を含め、矢野監督の采配にかかってくるな」と小山氏は言う。遠ざかる原Gの背中を再び捉えるため、ここは一歩も退けない。西で臨む2日の初戦。梅雨空を吹き飛ばす快勝で、何としても連敗を止めたい。
(デイリースポーツ・中村正直=1997~99年阪神担当キャップ、前編集長、現販売局長)