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• 【専門せんもん家かに聞きく】堀内ほりうち氏しインタビュー（後編こうへん）家庭かていでのタッチング

【専門せんもん家かに聞きく】
堀内ほりうち 園子そのこ氏しへインタビュー 後編こうへん
家庭かていで実践じっせんしてほしい
お互たがいの理解りかいを深ふかめるタッチング

「タッチング」とは、相手あいてのからだにふれること、または声こえかけや会話かいわでこころにふれること。「人ひとと人ひととのふれあい」と捉とらえてもらえるとわかりやすいでしょう。
「タッチングは、想おもいを相手あいてに伝つたえたり、相手あいてへの理解りかいを深ふかめたりするのに最適さいてきなんですよ」と話はなすのは、医療いりょう・介護かいごの現場げんばで長ながらくタッチングを実践じっせんしてきた、看護かんご学がく博士はかせの堀内ほりうち先生せんせい。
後編こうへんでは、家庭かていでタッチングをする意義いぎや効果こうか、コツなどを、ご自身じしんの育児いくじ経験けいけんをふまえて教おしえてもらいました。

• 堀内ほりうち 園子そのこ氏し

  看護かんご学がく博はく⼠・看護かんご師し／保健ほけん師し・ケアマネージャー／アロマ＆触ふれるケアプラクティショナー／グループホームせせらぎホーム⻑

  看護かんご師しをしていた母ははの影響えいきょうを受うけ、また小しょう・中ちゅう・高校こうこうそれぞれの恩師おんしの「これからの時代じだい、女性じょせいもスキルを磨みがいて社会しゃかいで活躍かつやくすべきだ」という言葉ことばがきっかけで、看護かんご師しを目指めざす。
  看護かんご学生がくせい時代じだいは小児しょうに看護かんごを研究けんきゅうするも、臨床りんしょう経験けいけんを積つむ中なかで「完治かんじを目め指させる状態じょうたいではない中なかで回復かいふくに向むけてがんばっている人ひとを支ささえたい」と感かんじるようになり、母ははが立たち上あげた記憶きおく力りょくや認知にんち機能きのうに困こまりごとを抱かかえる人ひとを対象たいしょうとしたグループホームで勤務きんむすることに。
  現在げんざいも現場げんばで活躍かつやくするかたわら、人材じんざい育成いくせいや啓発けいはつ活動かつどうなどにも積極せっきょく的てきに取とり組くむ。

両親りょうしんがふれてくれた記憶きおくを大切たいせつに、自分じぶんも子こどもへタッチングを続つづけてきた

堀内ほりうち先生せんせいご自身じしんは、これまでご家庭かていでどんなタッチングを経験けいけんされてきましたか？

幼おさない頃ころのタッチングの記憶きおくとしてまず思おもい出だすのは、母ははのマッサージですね。私わたしや妹いもうとがお腹なかの調子ちょうしを崩くずすと、いつも母ははがお腹なかに手てで「の」の字じを描えがくマッサージをしてくれたんです。母ははも看護かんご師しだったので、「ケアとしてのタッチング」をよくしてくれました。
一方いっぽう、父ちちとのふれあいで印象いんしょう的てきなのは、私わたしの手てをとってダンスをしてくれたこと。とても楽たのしくて、夢中むちゅうになって踊おどったのを覚おぼえています。
それぞれタッチングの種類しゅるいが違ちがいますが、母ははも父ちちも、たくさん私わたしにふれてくれました。そんな両親りょうしんの影響えいきょうを受うけ、私わたしが母ははになってからも、子こどもたちへのタッチングは欠かかしていません。

堀内ほりうち先生せんせいが子育こそだてで実践じっせんされたタッチングはどのようなものでしょう？

歌うたを歌うたいながらのベビーマッサージにはじまり、母はは直伝じきでんの「の」の字じのお腹なかマッサージもしました。子こどもたちが「ママにさわられるとよく眠ねむれる」と言いってくれたことがとてもうれしくて、ずっとふれあいを大切たいせつにしてきましたよ。
また、子こどもを応援おうえんしたいとき、励はげましたいときは、肩かたや背中せなかを「トントン」と叩たたくようにしていました。

小ちいさい頃ころから続つづけてきた「決きまりごと」が、思春期ししゅんきのコミュニケーションにも役立やくだつ

思春期ししゅんきを迎むかえたお子こさんへのタッチングは、なかなか難むずかしいと感かんじる保護ほご者しゃの方ほうが多おおいと思おもいます。コツやポイントはありますか？

大前提だいぜんていとして、無理むりにふれようとするのはおすすめできません。やはり年頃としごろになると、親おやに過剰かじょうにふれられるのを嫌いやがる子こは多おおいですからね。でも、私わたしの経験けいけん則そくでは、弱よわっているときは子こどものほうからサインを出だしてくれるんですよ。

「サイン」ですか？

我わが家やの子こどもたちの場合ばあい、なんとなく不安ふあんがある時ときはいつもより少すこしわたしの方ほうに近ちかづいて来くるんです。距離きょりが少すこし近ちかくなるという感かんじです。そういうちょっとしたサインを見逃みのがさず、その子こにとって負担ふたんにならない程度ていどを見極みきわめながらふれるのがいいと思おもいます。
思春期ししゅんきのお子こさんとは、言葉ことばでのコミュニケーションを十分じゅうぶんにとるのが難むずかしいこともあるでしょう。そんなときにほんの少すこしふれることで、言葉ことばを交かわす以上いじょうに伝つたえられるものがあると感かんじています。

堀内ほりうち先生せんせいはどのように思春期ししゅんきのお子こさんにふれてきたんですか？

先さきほど、子こどもたちが幼おさない頃ころに応援おうえんの意味いみを込こめて肩かたや背中せなかを「トントン」と叩たたくとお話はなししましたが、思春期ししゅんきを迎むかえてもそれは続つづけていました。
ポイントは、幼おさない頃ころから「お母かあさんがトントンとするのは『大好だいすきだよ、がんばれ！』の合図あいずだからね」と伝つたえ、「我わが家やの決きまり事ごと」にしていたこと。そうすると、機会きかいは減へっても、ほんの一瞬いっしゅんでも、「トントン」だけで親おやの想おもいを伝つたえられます。
まだお子こさんが小ちいさいご家庭かていでは、ぜひ試ためしていただきたいです。

タッチングは、相手あいてのことを見みて、考かんがえること。理解りかいを深ふかめるきっかけになる

堀内ほりうち先生せんせいは、タッチングにどんな効果こうかがあると考かんがえていますか？

相手あいてにふれることは、相手あいてを見みること、考かんがえることにつながっています。つまり、タッチングを実践じっせんすることで、相手あいてへの理解りかいが着実ちゃくじつに深ふかまるんです。
たとえば、私わたしが娘むすめにハンドマッサージをしてあげたときのこと。テニスの練習れんしゅうに明あけ暮くれている彼女かのじょの手てのひらに大おおきなマメができていることに、そのとき初はじめて気きづきました。毎日まいにち一緒いっしょに食卓しょくたくを囲かこんでいましたが、手てのひらの状態じょうたいまではなかなか見みえませんからね。
マメができた娘むすめの手てをマッサージすることで、必死ひっしに練習れんしゅうしていることがひしひしと伝つたわってきて。私わたしが直接ちょくせつ見みることのできない「娘むすめの世界せかい」を覗のぞくことができました。また、「ママも昔むかしはテニスをしていたんだよ」などと会話かいわも広ひろがり、自分じぶんのことを娘むすめに知しってもらえましたよ。

いたわるべきは家族かぞくだけじゃない。まずは自分じぶんに目めを向むけることから始はじめて

この記事きじを読よんで家庭かていでタッチングを実践じっせんしようとする読者どくしゃのみなさんに、伝つたえたいメッセージはありますか？

ひとつは、自分じぶんの手てが持もっている可能かのう性せいを信しんじて、臆おくせずさわってみてほしいということ。きっとあなたの手てで、大切たいせつな人ひとを励はげまし、支ささえられるはずです。
そして、家族かぞくへのタッチングを実践じっせんする前まえに、まずは自分じぶんにも目めを向むけてみてほしいですね。

「自分じぶんに目めを向むける」とは？

大切たいせつな家族かぞくのために何なにかしてあげようとするのは素晴すばらしいことですが、一方いっぽうで自身じしんのことは後あとまわしにしがちな方ほうが多おおいように思おもいます。でも、たまには自分じぶんのこともねぎらってあげないと！
誰だれかにふれようとする前まえに、ぜひ自分じぶんの手てを見みてみてください。家事かじに育児いくじに仕事しごとに、毎日まいにちがんばって手てが荒あれていませんか？ そんなときは、クリームを塗ぬってマッサージをして、まず自分じぶんのことをいたわってください。
そうやって自身じしんを認みとめて、褒ほめてあげると、きっと周まわりにしてあげられることがさらに増ふえるはずです。まずは自分じぶんに優やさしくして、そこから温あたたかい思おもいやりを広ひろげていってもらえたらと思おもいます。