▲イヴの美麗びれいなキャラクターによるナラティブ体験たいけんが展開てんかいされる

　発売はつばい初日しょにちに購入こうにゅうした『Stellar Blade』）を1か月げつほどでクリアした。最近さいきんは、シリーズものでもクリアまでプレイを続つづけることが難むずかしい中なか、ここまで到達とうたつできたのは、結果けっか的てきに筆者ひっしゃが本ほん作さくの魅力みりょくをおおいに感かんじたからにほかならない。

　『Stellar Blade』は、韓国かんこくデベロッパーSHIFT UPによって開発かいはつされ、ソニー・インタラクティブエンタテインメントがパブリッシングを担当たんとうしている。日本にっぽん国内こくないにおいてSHIFT UPは、もともとスマホ向むけガンアクションRPG『勝利しょうりの女神めがみ：NIKKE』（以下いか、『NIKKE』）で既すでに知しられていたが、本ほん作さくで初はじめてコンソール機きに参入さんにゅうした。ネイティヴ（NA:tive）と呼よばれる不気味ぶきみな生命せいめい体たいによって事実じじつ上じょう支配しはいされた地球ちきゅうを追おわれ宇宙うちゅうコロニーでの存続そんぞくを余儀よぎなくされた近きん未来みらいの人類じんるいが地球ちきゅう奪還だっかんを図はかるストーリーで、その組織そしきのひとつ、第だい7空挺くうてい部隊ぶたいの主人公しゅじんこう女性じょせい戦闘せんとう員いん、イヴが、地上ちじょうに降おり立たち、ネイティブのせん滅めつを目指めざすアクションRPGである。

　本ほん作さくにおいて最もっとも注目ちゅうもくすべきは、アクションゲームとしての完成かんせい度どを徹底的てっていてきに高たかめているという点てんだろう。「“戦闘せんとう美少女びしょうじょ”を主人公しゅじんこうに据すえる」「アクション性せいを前面ぜんめんに押おし出だすゲームデザイン」といった要素ようそは、前述ぜんじゅつの『NIKKE』でのこだわりポイントを彷彿ほうふつさせるが、さそれをさらに「より華麗かれいに」作つくり上あげ、かつ「本格ほんかく的てきなアクション」に仕立したてるゲームデザインの作つくりこみも行おこなわれ、SHIFT UPがコンソール機きにも十分じゅうぶん対応たいおうしうる開発かいはつ能力のうりょくがあることを示しめした。

爽快そうかい感かんの極致きょくち：韓国かんこくデベロッパーが挑いどむ日本にっぽん的てきスタイリッシュアクションの進化しんか

　アクションシーケンス（アクションシーン）は、「Devil May Cry」シリーズや「DEAD OR ALIVE」シリーズなどを端緒たんしょに、「BAYONETTA (ベヨネッタ)」、シリーズ、「NINJA GAIDEN』（ニンジャガイデン）」シリーズといった数々かずかずのシリーズ作品さくひん群ぐんで発展はってんしてきた、スタイリッシュ3Dアクションの系譜けいふを継承けいしょうする、滑なめらかさと爽快そうかい感かんを感かんじられるものになっている。

　SHIFT UPの創業そうぎょう者しゃであり同どう作さくのディレクターであるキム・ヒョンテ氏しが、『Stellar Blade』にインスピレーションを与あたえたと認みとめた「Nier」シリーズも、スタイリッシュ3Dアクションの代表だいひょう格かく。こうした作品さくひん群ぐん、シリーズの魅力みりょくを受うけ継つぐ『Stellar Blade』は、空中くうちゅう攻撃こうげきや、ステルスキル、ラッシュ、バースト、変身へんしんモード（タキモード）など多様たような操作そうさによるダイナミックなプレイが魅力みりょくと言いえる。また、ワンボタン連打れんだといったいわゆる「ガチャプレイ」でも爽快そうかいなアクションをある程度ていど楽たのしむことができ、様々さまざまなコンボを繰くり出だすことでさらに華麗かれいなゲームプレイが可能かのうとなっている。とりわけ、「パリイ」から「カウンターアタック」の爽快そうかい感かんは秀逸しゅういつだ。このメカニクスは、「Nier」シリーズ同様どうよう、『Stellar Blade』のインスピレーションの源泉げんせんと公認こうにんされている『SEKIRO』をはじめとしたフロムソフトウェアのタイトルを彷彿ほうふつとさせる。

　このような緻密ちみつなアクションプレイの積つみ上あげは、「スパイダーマン」シリーズや「STAR WARS ジェダイ」シリーズ、「バットマンアーカム」シリーズなどの海外かいがいタイトルにも見みられるが、あくまでも「日本にっぽんのお家芸いえげい」だと筆者ひっしゃは思おもっていた。だが本ほん作さくは外国がいこく産さんゲームとしてはそのどれよりも日本にっぽん的てきスタイリッシュアクションを組くみ入いれており、コアゲーマーや批評ひひょう家かから、「ボスファイト」「挑戦ちょうせんしがいのあるアクション性せい」「アクションの多様たよう性せい」といった要素ようそが高たかく評価ひょうかされるに至いたっている。もちろん、本ほん作さくに参画さんかくした多おおくのスタッフがMMOアクションゲーム『ブレイドアンドソウル』に携たずさわっていたという事実じじつも、ここまで優すぐれたアクション体験たいけんを盛もり込こむのに大おおきく貢献こうけんしていることだろう。

▲日本にっぽん的てきスタイリッシュアクションを踏襲とうしゅうし、爽快そうかいなプレイを楽たのしめる

キャラクターデザインと物語ものがたりの深層しんそう：批判ひはんと称賛しょうさんの狭間はざまで

　その一方いっぽうで、SNSで話題わだいにのぼったのは男性だんせいプレイヤーに訴求そきゅうする要素ようそが高たかいイヴのキャラクターデザインが昨今さっこんの潮流ちょうりゅうに合致がっちしないといった話題わだいである。だが、このような美麗びれいなキャラクターが採用さいようされている理由りゆうも物語ものがたり体験たいけんの根源こんげんと直結ちょっけつしており、ディレクターが表明ひょうめいしたように「単たんにエンタメだから」というわけではない。本ほん作さくが目指めざすナラティブ体験たいけんは、人類じんるい、ネイティブ、アンドロイド、さらにAIまでを巻まき込こんだ三みつ巴どもえならぬ四よっつ巴ともえの壮絶そうぜつな歴史れきしと戦たたかいであり、ザイオン、アルテス･レボワやアビス・レボワなどの空間くうかんにある様々さまざまなアーティファクトやリギオン兵へいの記録きろくから物語ものがたりの断片だんぺんをつなぎ合あわせることで明あきらかになってくる。これは、フロムの宮崎みやざき英えい高だか氏しがいうところの「環境かんきょうストーリーテリング」をしっかりと踏ふまえた展開てんかいになっている。そのため、オープンフィールドは限かぎられているものの、数すう百ひゃく年ねんにも数すう千せん年ねんに及およぶこの世界せかいを実感じっかんできるつくりとなっている。

　また、「Nier」シリーズはもちろん、「攻殻機動隊こうかくきどうたい」シリーズ、「ブレードランナー」シリーズ、「マトリックス」シリーズなど、サイバーパンクやSFジャンルのアニメ、ゲーム、実写じっしゃ映画えいがのオマージュが多数たすう散ちりばめられている。その一方いっぽうで、アルファネイティヴなどのデザインは『グエムル-漢江かんこうの怪物かいぶつ』や『OKJA』といった韓国かんこくのファンタジー実写じっしゃ映画えいがのモンスターデザインを手掛てがけたチャン・ヒチョルが担当たんとうしているなど、映画えいが界かいからも著名ちょめいクリエイターを引ひき入いれている。結果けっか的てきに、サイバーパンクからホラーまであらゆる要素ようそがシームレスに統合とうごうされた世界せかい観かんが紡つむがれている。

『Stellar Blade』が描えがく未来みらいの可能かのう性せい：広ひろがる物語ものがたりのキャンパス

　このようにゲーム全体ぜんたいのボリュームや主要しゅようキャラクター数すうといった観点かんてんでは、新規しんきIPであるがゆえの限定げんてい的てきなものになってはいるものの、「環境かんきょうストーリーテリング」を実践じっせんしたことで、今後こんごの展開てんかいに様々さまざまな可能かのう性せいを感かんじられる一いち作さくとなった。欧米おうべいで広ひろく受うけ入いれられている、トランスメディアストーリーテリングの展開てんかいが容易よういに想像そうぞうできる様々さまざまな物語ものがたり要素ようそに今後こんごの期待きたい感かんが持もてる。まだ本ほん作さくでは探求たんきゅうされていない地域ちいきから宇宙うちゅう空域くういきといった空間くうかん軸じくの広ひろがりのみならず、数すう百ひゃく年ねんから場合ばあいによっては数すう千せん年ねん単位たんいの時間じかん軸じくまで何なんらかの物語ものがたり展開てんかいが可能かのうだろう。「Stellar Blade」ユニバースが示しめしたキャンパスは広大こうだいで、そこに広ひろがった様々さまざまな断片だんぺんを今後こんご、どのような形かたちで拾ひろっていくかで、IPとしての「Stellar Blade」のポテンシャルが開花かいかされるか否ひかが決定けっていづけられることだろう。

▲イヴの髪型かみがたを自在じざいに設定せってい