我々われわれはプーチンのガス支配しはいから解放かいほうされなければならない

ポーランドのドナルド・トゥスク首相しゅしょうはドイツがロシアの天然てんねんガスに依存いぞんしていることが欧州おうしゅう政治せいじてき主権しゅけんおどかしているとのかんがえをしめした。ドイツのエネルギー政策せいさくおおきく変革へんかくさせてはならず、環境かんきょう保護ほごもほどほどにせよ、というのだ。トゥスク視点してんただしいが、その結論けつろん間違まちがっている。

ポーランドのドナルド・トゥスク首相しゅしょうは3がつ19にち、ドイツのアンゲラ・メルケル首相しゅしょうがワルシャワを訪問ほうもんするまえに、ドイツがロシアの天然てんねんガスに依存いぞんしていることが欧州おうしゅう政治せいじてき主権しゅけんおどかしているとのかんがえをしめした。ドイツのエネルギー政策せいさくおおきく変革へんかくさせてはならず、環境かんきょう保護ほごもほどほどにせよ、というのだ。トゥスク視点してんただしいが、その結論けつろん間違まちがっている。

ロシアへのエネルギー依存いぞんはドイツだけの問題もんだいではない。欧州おうしゅうのどのくにも、化石かせき燃料ねんりょう輸入ゆにゅうたよっているのだ。ロシアからだけではない。毎年まいとし欧州おうしゅうは5せんおくユーロにのぼ石炭せきたん石油せきゆ、ガスおよびウランを輸入ゆにゅうしている。欧州おうしゅう連合れんごう必要ひつようとする石油せきゆの84%は欧州おうしゅう域外いきがいから調達ちょうたつされている。ウランはじつに100%で、そのうちの20%がロシアからだ。天然てんねんガスの輸入ゆにゅうりょうは45%にのぼる。

ドイツは輸入ゆにゅう年間ねんかん900おくユーロを支払しはらっている。ロシアからの輸入ゆにゅうぶんは、石炭せきたんは20%、原油げんゆは34%、そして天然てんねんガスは31%にのぼる。ドイツは年間ねんかん330おくユーロをロシアの新興しんこう財閥ざいばつ手渡てわたしているのだ。

もし欧州おうしゅうがクリミアの編入へんにゅうたいしてロシアへの経済けいざい制裁せいさい次第しだいつよめていくつもりなら、その手段しゅだんかぎられている。うまでもなく、モスクワでは株式かぶしき市場いちば下落げらくし、ロシアの経済けいざいてき評価ひょうかあきらかに失墜しっついした。長期ちょうきてきればこうした対立たいりつからロシアがこうむ損害そんがいのほうがEUよりおおきくなる。短期たんきてきると、経済けいざい制裁せいさいはロシアの支配しはいそう経済けいざいてき基盤きばん打撃だげきあたえないだろう。かれらのSUVのほうがもちろんはるかに高価こうかなのだ。しかしかれらの資金しきん権力けんりょく源泉げんせん依然いぜんとして石油せきゆやガスの輸出ゆしゅつである。

エネルギー分野ぶんやでの経済けいざい制裁せいさい信頼しんらいせいにも有効ゆうこうせいにもける。ドイツの原油げんゆ備蓄びちくは59にちぶんしかない。天然てんねんガスの貯蔵ちょぞうりょう天候てんこうにも左右さゆうされるが75にちから80にちといったところだろう。しかもその一部いちぶはガスプロムしゃ所有しょゆうする地下ちか洞窟どうくつにあるのだ。一番いちばん影響えいきょうけやすいのが石炭せきたん輸送ゆそうである。それなのに、輸入ゆにゅうりょうらしたからといって支払しはらいも全部ぜんぶめられるわけではない。長期ちょうき配送はいそう契約けいやくわされており、さきんじて支払しはらいがんでいる供給きょうきゅうぶんがあるのだ。

そのうえ、クリミア危機きき欧州おうしゅうのエネルギー外交がいこう政策せいさく矛盾むじゅんてんあきらかにした。ロシアは、ひかえめにっても、エネルギー供給きょうきゅう背骨せぼねなのだ。おたがいの依存いぞん関係かんけい強力きょうりょく簡単かんたん解消かいしょうはできない。そんなことをすれば双方そうほう経済けいざいてきおおきな痛手いたでけるのだ。この状況じょうきょうにより対立たいりつ限定げんていてきなものになる。だからといって一方いっぽうてき依存いぞん関係かんけいのぞむところではない。

もし欧州おうしゅうがエネルギーを輸入ゆにゅうたよ依存いぞんらすならば、それは同時どうじに、海外かいがいかってより自由じゆう活動かつどうができるようになる。つまり、欧州おうしゅうがよりおおきな政治せいじてき主権しゅけんのぞむならば、我々われわれはエネルギー分野ぶんや変革へんかく環境かんきょう保護ほごすすめなければならない。均整きんせいれたエネルギー変革へんかく我々われわれ政治せいじてき主権しゅけん後押あとおしするのだ。

EUエネルギー委員いいんのギュンター・エッチンガーのもとめにしたがって供給きょうきゅうもと多様たようすることによってのみ、危険きけん要因よういん拡散かくさんできる。しかし要因よういんりはしない。ドイツはまだヴィルヘルムズハーフェン(ニーダーザクセンしゅう都市とし)に認可にんかした液化えきかガスのターミナルについて建設けんせつ着手ちゃくしゅしていない。またそこにはカタールから天然てんねんガスがやってくる予定よていだが、このくにはサウジアラビアが世界中せかいじゅうでジハード(聖戦せいせん)を支援しえんしているため、さきごろ同国どうこく紛争ふんそう状態じょうたいとなっているのだ。

輸入ゆにゅうしている国々くにぐにへの依存いぞんであれかぎりある資源しげんへの依存いぞんであれ、はたまた増大ぞうだいする需要じゅようへの依存いぞん完全かんぜん独裁どくさいてきでそれゆえ不安定ふあんていなシステムへの依存いぞんであれ、依存いぞん関係かんけいつづく。しかしポーランドのトゥスク首相しゅしょうは、供給きょうきゅうもと国々くにぐにやしながら燃料ねんりょう多様たようはかるつもりだ。ガスと石油せきゆくわ石炭せきたんやウランまで。そして石炭せきたんやウランの半分はんぶんはロシアからドイツにやってくる。

エネルギーの独立どくりつせいはドイツにとって重要じゅうようである。国民こくみんの75%ちかくがそれをのぞんでいる。これほどおおくの支持しじがあれば、国民こくみんの69%が承認しょうにんしているかくエネルギーの段階だんかいてき廃止はいしよりも優先ゆうせんおおきいはずだ。エネルギーてき独立どくりつせいいたるためには、輸入ゆにゅうりょうらし、再生さいせい可能かのうエネルギーのわせをやし、エネルギー効率こうりつげてエネルギーの保存ほぞんつとめる以外いがい手立てだてはい。

ドイツのエネルギー変革へんかく独立どくりつせい主権しゅけん両方りょうほういちれいである。再生さいせい可能かのうエネルギーの急激きゅうげき増大ぞうだいにより、1おく5せんまんトンの温室おんしつ効果こうかガスを毎年まいとし削減さくげんできるばかりではない。毎年まいとし100おくユーロ前後ぜんこう輸入ゆにゅうがくをあわせて削減さくげんできるのだ。こうしてドイツにはあらたなとみがたまる。プーチンやサウジアラビアのアブドゥッラ国王こくおう強大きょうだいさせることもない。もし我々われわれ環境かんきょう保護ほごおよび再生さいせい可能かのうエネルギーの目標もくひょうけて野心やしんてき実践じっせんするならば、わがくには2020ねんまでにさらに5000おくユーロを倹約けんやくできるだろう。このがく現在げんざい輸入ゆにゅう取引とりひき半分はんぶんたる。

わがくにがロシアとのあいだかかえる問題もんだい電力でんりょくではない。需給じゅきゅう不安定ふあんていおぎな予備よび電力でんりょくようこう効率こうりつなガス火力かりょく発電はつでんしょ開発かいはつすれば、独立どくりつせいすことができる、などという議論ぎろん論理ろんりてきりたない。現実げんじつに、わがくに混合こんごう電力でんりょくなかでガスがめる割合わりあいはせいぜい10%にぎず、それも減少げんしょう傾向けいこうにある。ガス火力かりょく発電はつでんしょひとひと稼動かどう終了しゅうりょうしているのだ。ドイツでは、旧式きゅうしき褐炭かったんもちいる火力かりょく発電はつでんしょささえられて、電力でんりょく実際じっさいあまっている。

エネルギー変革へんかくはこれまでのところ電力でんりょく変革へんかくだった。ねつ利用りよう分野ぶんやわきいやられていた。ガスの90%以上いじょうねつ供給きょうきゅうするためにやされるのだ。ロシアのガスから自由じゆうになりたいとのぞむのであれば、建物たてもの次々つぎつぎ改修かいしゅうしたり産業さんぎょうかいにエネルギー削減さくげんのための投資とうしファンドをつくったりするような野心やしんてきなプログラムを採用さいようしなくてはならない。そして、本当ほんとう石油せきゆ輸入ゆにゅう削減さくげんしたいとかんがえるなら、メルケル首相しゅしょうがBMWの利益りえきになるようブリュッセルでやったように、意欲いよくてきくるまはいガス規制きせいさまたげてはならない。

グローバルに拡大かくだいした経済けいざいではエネルギーの自給自足じきゅうじそくなど幻想げんそうである。安全あんぜん保障ほしょう観点かんてんからものぞましいことではない。しかし、一方いっぽうてき依存いぞん関係かんけいけなければならない。それゆえ、我々われわれはエネルギーの保存ほぞんとより効率こうりつてき利用りようつとめるべきだし、いっそう再生さいせい可能かのう資源しげんからエネルギーをつくすべきである。つまり、国内こくないで。

これはドイツだけにてはまることではない。野心やしんてき環境かんきょう保護ほご目標もくひょう再生さいせい可能かのうエネルギーを拡大かくだいする目標もくひょう、そしてエネルギーのこう効率こうりつ目標もくひょう欧州おうしゅう連合れんごうのために必要ひつようである。参加さんかこくそれぞれがその目標もくひょう拘束こうそくされてこれをささえるのだ。それにもかかわらず、欧州おうしゅう委員いいんかい欧州おうしゅう理事りじかい、ドイツそれにまずポーランドがこれに反対はんたいしている。

だからこそ、これは欧州おうしゅう主権しゅけん問題もんだいなのだ。もし欧州おうしゅうがフリーハンドをのぞむのなら、化石かせき燃料ねんりょう輸入ゆにゅうへの依存いぞんらさなければならない。そしてそのためには、より再生さいせい可能かのうエネルギーをやし環境かんきょう保護ほごすすめるしかみちはないのである。

(2014ねん3がつ16にち、「フランクフルター・アルゲマイネ」日曜にちようばん掲載けいさい

[ドイツ

風力発電施設(シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州)

ドイツのエネルギーシフト

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