「5G」商用しょうようサービスがいよいよ開始かいし　ドコモ、au、ソフトバンクの戦略せんりゃくはどう違ちがう？：石野いしの純じゅん也のMobile Eye（1/3 ページ）

[石野いしの純じゅん也，ITmedia]

　3月25日にちにドコモが、翌よく26日にちにはauが、さらに27日にちにはソフトバンクが商用しょうようサービスを開始かいしし、大手おおて3キャリアの5Gがついに出でそろった。高速こうそく、大だい容量ようりょうで低てい遅延ちえんが特徴とくちょうの5Gで、3社しゃとも4Gとコアネットワークを共用きょうようするNSA（ノンスタンドアロン）方式ほうしきという点てんは同おなじだが、ネットワークの構築こうちくの仕方しかたや端末たんまつラインアップ、料金りょうきん設計せっけいには方向ほうこう性せいの違ちがいもある。その差さをチェックしていこう。

3社しゃとも現時点げんじてんでのネットワークはエリアではなくスポット、拡大かくだい方針ほうしんには違ちがいも

　5Gのネットワークは、3社しゃとも6GHz帯たい以下いかの周波数しゅうはすうを使つかう、Sub-6でサービスをスタートさせた。28GHz帯たいのミリ波ははKDDIが既すでに運用うんようを開始かいししている他ほか、ドコモも6月がつに導入どうにゅうを予定よてい。ソフトバンクもミリ波はの利用りようは予定よていしているが、時期じきは明あかされていない。ただし、スタート時点じてんでのエリアは、非常ひじょうに限定げんてい的てき。エリアというより、むしろスポットといった方ほうが正確せいかくな表現ひょうげんかもしれない。3社しゃで基地きち局きょく数すうに差さはあるものの、特定とくていの場所ばしょに行いかなければ使つかえないという点てんは共通きょうつうしている。

　ただし、ネットワークがずっとこのままというわけではなく、3社しゃともエリアは早期そうきに拡大かくだいしていく方針ほうしんを示しめしている。ドコモは6月がつ末まつに47都道府県とどうふけん全すべてをカバー。2021年ねん3月がつ末まつには500都市とし、同年どうねん6月がつ末まつには1万まん局きょくまで基地きち局きょくを増設ぞうせつする。2年ねん後ごの2022年ねん3月がつ末まつには、これを2万まんにする。年間ねんかんのペースでは、1万まん程度ていど基地きち局きょくを増ふやしていくようだ。KDDIも計画けいかくはほぼ同おなじで、年間ねんかんの基地きち局きょく設置せっちペースは約やく1万まん。2021年ねん3月がつ末まつには1万まん局きょく、2022年ねん3月がつ末まつには2万まん局きょくを超こえる計画けいかくを打うち出だしている。

　一方いっぽうで、ソフトバンクは総務そうむ省しょうに提出ていしゅつした開設かいせつ計画けいかくでも基盤きばん展開てんかい率りつは抑おさえめに出だしている。重視じゅうししているのは、既存きそんの周波数しゅうはすうの転用てんようと、人口じんこうカバー率りつだ。ソフトバンクの代表だいひょう取締役とりしまりやく 副ふく社長しゃちょう執行しっこう役員やくいん兼けんCOOの榛はしばみ葉は淳あつし氏しは「4000とか8000とか数すう万まんというレベルではなく、この段階だんかいで既すでに23万まんの基地きち局きょくがある。これがプライオリティを付つけられた形かたちで、効率こうりつ的てきに5Gの基地きち局きょくに転換てんかんされていく」と語かたっており、5Gのエリアを早期そうきに拡充かくじゅうすることを強調きょうちょうした。2021年ねん中ちゅうには、人口じんこうカバー率りつで90％を達成たっせいする計画けいかくだ。

　どのベンダーの基地きち局きょくを採用さいようしているかにもよるが、総務そうむ省しょうの認可にんかさえ下おりれば、一部いちぶの既存きそん基地きち局きょくはソフトウェアをアップデートするだけで、5Gに対応たいおうすることができる。新あらたに場所ばしょを探さがし、基地きち局きょくを建たててゼロからエリアを設計せっけいするより、効率こうりつははるかにいいことは間違まちがいない。同おなじ周波数しゅうはすうで運用うんようされる4Gと5Gの割わり当あて比率ひりつを動的どうてきに変更へんこうする「DSS（Dynamic Spectrum Sharing）」という技術ぎじゅつも商用しょうよう化か済ずみだ。4G用ようの周波数しゅうはすうは、現状げんじょう割わり当あて済ずみの5Gのそれよりも低ひくく、カバー範囲はんいを広ひろげやすいのもメリットといえる。

　4Gから転用てんようする周波数しゅうはすうは、KDDIも一部いちぶ活用かつようする方針ほうしんだ。KDDIの代表だいひょう取締役とりしまりやく社長しゃちょう、高橋たかはし誠まこと氏しによると、「総務そうむ省しょうの方ほうでも秋あきごろに整備せいびすると聞きいているが、これにはわれわれも対応たいおうしていきたい」と語かたる。1万まん、2万まんという基地きち局きょくの目標もくひょうにも、転用てんよう分ぶんが含ふくまれているという。一方いっぽうで「既存きそんの周波数しゅうはすうを5G化かすると、当然とうぜん帯域たいいき幅はばの問題もんだいもある」（同どう）という。

　同様どうようの理由りゆうから、ドコモは4G転用てんようには慎重しんちょうだ。同社どうしゃのネットワーク部ぶ 技術ぎじゅつ企画きかく担当たんとう部長ぶちょうの中南なかみなみ直樹なおき氏しは「既存きそんの周波数しゅうはすうを5G化かしても、速度そくどが上あがらない。今後こんごのサービスを考慮こうりょしながら、展開てんかいも含ふくめていつごろやるのかを検討けんとうしたいが、まずは新しん周波数しゅうはすうで1万まん、2万まんと（基地きち局きょくを）打うっていきたい」と語かたる。とはいえ、転用てんようで一気いっきにエリアが広ひろがれば、端末たんまつのピクト上じょうに「5G」の文字もじが表示ひょうじされる機会きかいが増ふえ、エリアが広ひろいというイメージが持もたれやすくなる。あくまでマーケティング的てきな観点かんてんだが、エリアが狭せまいと思おもわれるリスクもある。ユーザーとしては、こうした方針ほうしんの違ちがいを踏ふまえておいた方ほうがいいだろう。