2012年ねん1月がつ6日にち(金)きん

マスメディア時評じひょう

閉塞へいそく打開だかいの道みち示しめせぬ年頭ねんとう社説しゃせつ

　２０１２年ねん幕開まくあけの、全国ぜんこく紙しなどの社説しゃせつに目めを通とおしました。

　「朝日あさひ」は「新あたらしい年としも難問なんもんが続つづく」と書かき出だし、「読売よみうり」は「世界せかい的てきに『危機きき』が常態じょうたい化かしつつある」と筆ふでを起おこします。「毎日まいにち」も「政治せいじの問題もんだい解決かいけつ能力のうりょくが厳きびしく問とわれる」です。いずれも閉塞へいそく（へいそく）感かんが強つよまっていることの反映はんえいでしょうが、ではその閉塞へいそくをどう打うち破やぶるのか、新年しんねんらしい骨太ほねぶとの主張しゅちょうはどこにも見みあたりません。

「翼賛よくさん」の本質ほんしつ変かわりなし

　さすがに昨年さくねんのように各紙かくしがこぞって日米にちべい同盟どうめいの強化きょうかや消費しょうひ税ぜいの増税ぞうぜい、環太平洋かんたいへいよう連携れんけい協定きょうてい（ＴＰＰ）への参加さんかを政府せいふに迫せまったような露骨ろこつな「翼賛よくさん」的てきな論調ろんちょうは一見いっけん弱よわまったようにみえます。しかし、論ろんじるテーマ、主張しゅちょうする中身なかみが似にたり寄よったりで、結局けっきょくは政府せいふをけしかけるだけに終おわっているのには変かわりがありません。

　「難問なんもんが続つづく」と書かき出だした「朝日あさひ」がとりあげるのは、「戦後せんごずっと続つづいてきた『成長せいちょうの時代じだい』が、先進せんしん国こくではいよいよ終おわろうとしている」から、これからは「成長せいちょうから成熟せいじゅくへ」社会しゃかいを切きり替かえなければならないということです。「成長せいちょうが終おわった」という論ろん自体じたいは、１９７０年代ねんだいに２度どにわたる石油せきゆショックで戦後せんごの「高度こうど経済けいざい成長せいちょう」が終おわっていらいい古いふるされてきた議論ぎろんで何なんの新味しんみもなく、いまや何なん度目どめかの世界せかい経済けいざい恐慌きょうこうさえいわれるなかで「朝日あさひ」がまだそんな考かんがえでいたのかと驚おどろくほどです。

　実じつは、「朝日あさひ」がわざわざその手てあかにまみれた議論ぎろんを持もち出だしたのは、新興しんこう国こくとの競争きょうそうのために「国くにをもっと開ひらいて打うって出で（る）」とか、「将来しょうらい世代せだい」のことを考かんがえて「社会しゃかい保障ほしょうと税ぜいの一体いったい改革かいかく」を進すすめるとかの結論けつろんのためです。何なにのことはない、昨年さくねん同様どうようのＴＰＰ参加さんか、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい推進すいしんの論調ろんちょうです。この論調ろんちょうを「翼賛よくさん」と呼よばずなんと呼よべばいいのか。

　「朝日あさひ」は昨年さくねん末まつ、政府せいふが「一体いったい改革かいかく」案あんをようやくまとめたさいには、「豹変ひょうへん（ひょうへん）して進すすむしかない」（１２月じゅうにがつ３１日にち付づけ）と最大限さいだいげんの表現ひょうげんで野田のだ首相しゅしょうを持もち上あげ、実行じっこうを迫せまりました。増税ぞうぜいに苦くるしむ国民こくみんなど眼中がんちゅうにありません。「翼賛よくさん」姿勢しせいは露骨ろこつです。

　一方いっぽう、世界せかい的てきに「危機きき」が常態じょうたい化かしているとし、「政治せいじが機能きのう不全ふぜんから脱却だっきゃくする必要ひつようがある」と主張しゅちょうする「読売よみうり」は、どんな政治せいじを求もとめるのか。１ページの大半たいはんを費ついやした大型おおがた社説しゃせつで「読売よみうり」が主張しゅちょうするのは結局けっきょく、「消費しょうひ税ぜい、沖縄おきなわ、ＴＰＰ、原発げんぱつの各かく課題かだいは、いずれも先送さきおくりできない」という結むすびの一言ひとことに尽つきます。原発げんぱつの再さい稼働かどうもあからさまに要求ようきゅうしているところが「読売よみうり」らしいところですが、結局けっきょくはこれまで同様どうよう、政府せいふに悪政あくせいをけしかける主張しゅちょうです。

　同おなじように「政治せいじの問題もんだい解決かいけつ能力のうりょくが厳きびしく問とわれる」という「毎日まいにち」があげるのも、税ぜいと社会しゃかい保障ほしょうの一体いったい改革かいかく、ＴＰＰ参加さんか問題もんだいなどです。「毎日まいにち」は、「改革かいかくの中身なかみが国民こくみんに新あらたな負担ふたんを求もとめるものであることを明確めいかくに（して）」、野田のだ政権せいけんが「説明せつめいと説得せっとく」にあたれと主張しゅちょうします。１日にち付づけを論説ろんせつ委員いいん長ちょうの恒例こうれいの論評ろんぴょうにした「産経さんけい」も、３日にち付づけ主張しゅちょうからは連日れんじつ、ＴＰＰ参加さんかや集団しゅうだん自衛じえい権けん行使こうし容認ようにんの論ろんを張はっています。政府せいふには言いいにくい本音ほんねを、文字通もじどおり先取さきどりするものです。

「二ふたつの異常いじょう」打うち破やぶれば

　全国ぜんこく紙しをはじめマスメディアが、「アメリカ・財界ざいかい使つかい走はしり」の野田のだ佳彦よしひこ政権せいけんがやろうとしていることに「翼賛よくさん」し、そればかりかもっとやれとけしかけるのでは、マスメディアの重要じゅうような機能きのうである「権力けんりょくの監視かんし」役やくを果はたすことはできません。お先棒さきぼうを担かつぐだけなら、言論げんろん機関きかんの自殺じさつ行為こういです。そこには社会しゃかいに向むかって警鐘けいしょうを鳴ならす「木鐸ぼくたく（ぼくたく）」としてのジャーナリズムの姿すがたはどこにもありません。

　政治せいじも社会しゃかいも閉塞へいそく状じょう況きょうにあるという日本にっぽんの現状げんじょうは、戦後せんご長ながく続つづいた異常いじょうな対たい米べい従属じゅうぞくと財界ざいかい・大だい企業きぎょうの横暴おうぼうな支配しはいという「二ふたつの異常いじょう」を打うち破やぶらない限かぎり、自民党じみんとうの政権せいけんでも民主党みんしゅとうの政権せいけんでも、国民こくみんの暮くらしも平和へいわも守まもられないことをますます明あきらかにしています。閉塞へいそくを打開だかいするには、まず、議論ぎろんそのものが、この「閉塞へいそく」から抜ぬけ出だす必要ひつようがあります。

　日本にっぽん国こく中ちゅうに軍事ぐんじ基地きち網もうを張はり巡めぐらすアメリカの横暴おうぼうな支配しはいを打破だはすれば、沖縄おきなわの普天間ふてんま基地きちといえば県内けんない「移設いせつ」しかないというような行いき詰づまりは打開だかいできます。財界ざいかい・大だい企業きぎょうに経済けいざい力りょくにふさわしい負担ふたんを求もとめれば、消費しょうひ税ぜいを増税ぞうぜいしなくても、福祉ふくしを向上こうじょうさせる財源ざいげんを確保かくほすることもできます。

　こうしたマスメディア状況じょうきょうの中なか、「二ふたつの異常いじょう」を打開だかいすれば困難こんなんも危機ききも抜ぬけ出だせることを国民こくみんに明あきらかにし、「日本にっぽん改革かいかく」の実現じつげんのために力ちからを合あわせる「しんぶん赤旗あかはた」の役割やくわりは、今年ことしもいよいよ重大じゅうだいです。（宮坂みやさか一男かずお）